年金、医療、介護に使う社会保障給付費が25年には141兆円になるとの厚生労働省の推測について、対GDP(国内総生産)比でみると19%で、03年時点の先進7カ国(G7)と比べても最低レベルの額にすぎないとの試算を、権丈(けんじょう)善一・慶応大教授(医療経済学)が示している。社会保障費の膨張が問題とされているが、日本が各国より少ない社会保障予算のまま超高齢社会に突入することを示す結果で、権丈教授は社会保障予算増の必要性を訴えている。
厚労省が25年の高齢化率を28・7%として推計した医療費の将来予測と、経済協力開発機構(OECD)のデータから分析した。
03年の社会保障支出(対GDP比)が、25年の日本より少ないのは、
カナダ(17・3%)とアメリカ(16・4%)だけ。
しかも、高齢化率は、
カナダ12・8%、
アメリカ12・4%で、日本より大幅に低い。
他の4カ国は、高齢化率が10%台後半にもかかわらず、対GDP比の支出は20%を超えている。
フランスは高齢化率16・3%だが、G7最高の28・9%を支出。
高齢化率18・6%のドイツも28・4%を支出している。
日本は06年から20年の間に、高齢化率が10ポイント上昇する見通し。だが、社会保障給付費の対GDP比は17・5%から19%にしか上昇しないと推測されている。
権丈教授は「社会保障に日本よりはるかに多く支出しているドイツやフランスでさえ、医療費が足りないと問題になっている。日本が現在と同じ程度の支出で、超高齢社会に対応できるわけがなく、せめてヨーロッパ並みに医療費を増やすべきだ。今、公的医療費だけをみても、ドイツ並みなら7・5兆円、フランス並みなら10兆円必要」と指摘している。【田村彰子】
毎日新聞 2008年6月23日 東京朝刊
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