セックスレスに悩むあなたへ

 

　「毎日らいふ」で執筆していました「スローライフ・スローセックス」は、今月からリニューアルし、「毎日ｊｐ」での連載となりました。今回から主に、みなさんの性や婦人科系の病に関するご相談をもとに、話を進めていきます。さっそく２９歳の会社員の方から、同棲生活が３年近くもあり、どこへ行くのも一緒の彼なのに、１年以上セックスをしていないとの相談を受けました。お相手は２７歳で、現在は結婚に向け準備を進めているそうですが、「たまにセックスをしても彼が挿入する前に勃起が収まってしまう。本人は一時的もので、すぐに治ると言いますが、私は二人の将来のためにも医者に診てもらうほうが安心できると思っています」と悩んでいらっしゃるようです。

　日本性科学会では、「特殊な事情が認められないにもかかわらずカップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが１カ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」をセックスレスと定義しています。セクシュアル・コンタクトとは、「ペッティング、オーラルセックス、裸での同衾（どうきん）などを含む」とされていますから、仮に性器を結合することがなくても触れ合いがあればセックスレスとは言えません。ただし、この文面からは「仲が良くどこへ行くにも一緒」とはあっても、性的な触れ合いがあるかはうかがい知ることができません。いずれにせよ、「１年以上もセックスをしていない」ことからすれば、このままでいいのだろうかと疑問を抱くのは至極当然だということになります。

　２００１年に朝日新聞社がインターネットを通じて行った「夫婦の性１０００人に聞く」によれば、１カ月以上セックスがない、いわゆるセックスレスの理由として男性では「面倒くさい」（２０．５％）、「仕事の疲れから」（１５．７％）、「出産後なんとなく」（１５．７％）、「セックスより趣味など楽しいことがあるから」（９．６％）、「家族（肉親）のように思えるから」（７．２％）などが上位を占めていました。まだ結婚していないとはいえ、同棲生活も３年近くにもわたり仲睦まじい日常を送っておられるお二人のこと。ここに挙げた理由に思い当たる節がありませんか。

　僕のクリニックでも、この方と同様な悩みを抱えている女性に出会うことが少なくありません。結婚前は週末に会うたびにセックスしていたのに結婚を境にセックスレスになったというのです。彼女によれば、結婚前は「１週間会えなかった切ない思いを癒すためにセックスを求めた」「ホテルなど異空間での行為が二人の気持ちを高めた」、結婚後には「いつでもできるという安心感」「気まずい空気を作りたくないので独身時代ほどに言いたいことが言えない」「日常の多忙な仕事を目の当たりにしたためのお互いへの配慮」「同じ場所での営みで興奮度が低い」などがセックスレスに至った理由ではないかと分析結果を披露してくれました。さもありなんとは思いませんか？　したがって、ここに挙げた理由の逆を行けばセックスレスからの解消が可能になるのかも知れません。

　阿部輝夫博士によれば、セックスレスには「したくてもできない群」「しなくてもいい群」の２群に分けられるとしています。前者にはこの女性が心配している勃起障害をはじめ、性嫌悪症、早漏、濡れないなどが含まれています。例えば勃起障害については、ストレスなど心因的要因によって起こる機能性勃起障害、脊髄損傷・手術・透析・動脈硬化・糖尿病・高血圧など原因が明確な器質性勃起障害、さらに薬を飲んでいるなどを含む混合性勃起障害の三つに分類されます。

　パートナーの勃起障害の原因がはっきりすればそれを除去することで問題の解決を図ることができます。一度、性機能障害の治療法に詳しい医療機関を訪ねてみてはいかがでしょうか。

　結婚を考えておられる方に、こんなアドバイスをするのもお節介な話ですが、わが国の離婚理由のトップは常に「性格が合わない」。本当のところは「性の不一致」だと言われています。彼とのセックスに不安や不満を感じておられるのでしたら、時間をかけて十分納得のいく結論を出されることをお勧めします。

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日本性機能学会専門医一覧
http://www.jssm.info/sp/list.html

毎日新聞　2008年5月8日