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社説:総裁選 危機感が伝わらなかった

2007年09月22日 | スクラップ
 自民党総裁選は23日投開票され、新総裁が決まる。同党にとっては参院選の歴史的惨敗、安倍晋三首相の政権放り投げを受けた、まさに崖(がけ)っぷちでの総裁選である。

 しかし政策論争は盛り上がらず、候補者からは強い危機感は伝わってこなかった。総裁選ではまず安倍政権、それを生み出した自民党に対する反省が必要だった

 21日の日本記者クラブ主催の公開討論会で、福田康夫元官房長官は、参院選で惨敗し国民から信頼を失った自民党について「深くおわびする」と切り出した。首相の辞任表明についても「タイミングが適当でなかった」とし、「参院選敗退が(辞める)決断の時期だった」と、首相の判断の間違いを批判した。

 麻生太郎幹事長は辞任表明によって国会開会中に政治空白が生まれたことをわびたが、選挙後の首相続投については「参院選は前政権の負の遺産も引き継ぎ、すべての責任を一人が背負うのはいかがなものか」と、首相をかばった

 麻生氏は首相に続投を進言し、幹事長の座についた経緯がある。政権を支えた立場からも首相批判はしにくく、それは麻生氏の弱みにもなっている。一方、選挙で民意を失った時点で辞任すべきだったという福田氏の認識は正しく、同氏が党内で支持を拡大している一つの理由でもあろう。

 参院選惨敗は「政治とカネ」問題に対する政府・与党の対応の甘さが大きな原因だった。民主党は、政治資金収支報告書に1円以上からの領収書添付を義務付ける、政治資金規正法改正案を今国会に提出する方針だ。

 しかし「1円以上」に対しては、公開討論会で両氏ともに「政治活動の自由」を理由に慎重姿勢だった。公開したから政治活動が制限されるという理屈が、どこまで国民の理解を得られるか。「政治とカネ」問題に対する自民党内の危機感の欠如を反映したものだ。

 小泉純一郎前首相の掲げた構造改革路線については、これまで福田氏は「問題があれば丁寧に修正することはある」としながらも「方向性は変わらない」と路線継承の立場だ。麻生氏は「改革を急激にやれば必ず改善と改悪が出る。(改悪の)分に対する手当てが必要」と修正に力点を置いている。

 ただ中央と地方との格差是正について、両氏とも地方への配慮は強調するものの具体性に乏しい。両氏の準備不足が政策論争を乏しくしたようだ。

 一方、拉致問題では対話の必要性に言及する福田氏と、これまでの「対話と圧力」の対応は間違っていないとする麻生氏との違いが出ている。また安倍政権が避けた消費税率引き上げには両氏とも検討する立場を明らかにした。今後の政権運営にも影響を与える選挙戦を通じての注目点だ。

 情勢は福田氏有利だが、派閥の締め付けが利く時代ではなく、票読みは難しい。自民党総裁は首相に直結する。投票する同党の国会議員も地方代表も重い責任を負っていることを肝に銘じてほしい。




毎日新聞 2007年9月22日 0時07分
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