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社説 [9・29県民大会]再び山が動きつつある

2007年09月23日 | スクラップ
(2007年9月23日朝刊)



 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向けた取り組みが党派を超えた島ぐるみ運動の様相を見せている。

 県内四十一市町村長に対する本紙アンケートでは四十首長が県民大会への参加を表明した。

 県内の私立五大学で組織する県私立大学協会は連名で声明を発表。「一方の当事者の主張のみを取り上げ、審議会の検討経緯が明らかにされていないことなど文部科学省の回答は容認できない」と批判した。

 県内で市町村ごとに実行委員会を結成する動きが広がり、県知事、県教育長、県議会、県PTA連合会、労組など各種団体が大会への参加を呼び掛けている。民間では特別授業として生徒全員の参加を決めた専門学校もある。

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制を示す記述が削除されたことに対する県民の強い危機感の表れだろう。

 県外では、県内市町村と姉妹都市を結ぶ自治体などで意見書が相次いで可決され、全国の教育関係者でつくる団体がアピールを採択するなど、県民世論に呼応した動きも広がっている。

 検定意見撤回を求める県民大会の開催は、米兵による暴行事件を契機に、日米地位協定の見直しや基地整理縮小を求めた一九九五年の10・21県民大会にも匹敵する展開になってきた。

 安保再定義の動きに危機感を抱いた大田昌秀元知事が地位協定見直しを要請したのに対し、「議論が走りすぎ」と政府の対応は同様に冷淡だった。当時も県民の反発が一気に広がった。

 基地問題、沖縄戦に関する県民の感覚は鋭敏である。歴史体験の中ではぐくまれてきた共通の感覚だろう。党派を超えた県民大会は復帰後二度目になる。燎原の火のように広がってきた沖縄の怒り、県民の世論を政府はどう受け止めるのだろうか。

 県内六団体代表の撤回要請に対し、文部科学省の布村幸彦審議官は「審議会が決めたことに口出しできない」と説明してきた。伊吹文明文科相は「役人も安倍首相もこのことについては一言も容喙できない仕組みで教科書の検定は行われている」と述べ、面談にも応じようとはしなかった。

 その後、教科書審議会日本史小委員会では検討の実態がなく、文科省の調査意見が追認される形になっていたことが関係者の証言で判明し、県民の怒りに油を注ぐ結果になった。

 沖縄戦の「集団自決」の記憶は沖縄の琴線に触れる問題だ。なぜ怒りが渦巻き、再び山が動きだすのか。政府は県民世論から目をそらすことなく、正面から向き合うべきだ。



沖縄タイムス

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