2013年4月23日
様似町と広尾町の境界にある野塚岳に、三度行ってみた。
前回と同様に、天馬街道の長い野塚トンネルを抜けると・・・
そこは快晴であった。
もう残雪期、すでに4台も車が駐車してあり
そのうちの1台は単独者で、準備をしていた。
トレースを見ると、集団でトヨニ岳に向かったようです。
準備していた単独者は野塚岳だが、自分のルートとは異なり
真直ぐに川沿いを行き、最後尾根を登りあげるルートを選択するとのこと。
このルートが最短ですし、登り返しがないからね。
トレースはないが、2/16と3/13にも来ているが
2/16の厳冬期とは比べ様もないぐらい斜面はしまっており
スノーシューでサクサク登れる。
中央のピークが、野塚岳です。
笹も見えてきていますが、スノーシューで大丈夫!
左の1147mピークを超えて、右の1223mピークを通過して
右回りに野塚岳に登るというルートです。
1147mピークを、越えたところ
1147mピーク前から雪質の変化からスリップするので、アイゼンを装着!
次は1223mピークを、目指します。
1223mピークに近づくと、野塚岳の山容が目の前に現れる。
この辺りだろうか?
今年の3/31に芽室山の会所属の4人が、野塚岳を目指し登り
先頭の方が行方不明、遭難。
http://globalwarming-mondai.seesaa.net/article/353604282.html
今現在も見つかっていない・・・・・
コルに下って、最後のひと登りだ!
1147mピークを過ぎた頃から間欠的に風は吹くが、
厳冬期のような厳しさは、もうない。
あと少しで、山頂だ!
ハイ、野塚岳山頂に到着!
バックにここからも日帰り縦走可能なオムシャヌプリ!
ここからトヨニ岳に連なるリッジの雪稜が、綺麗だ!
ここからの展望を見たくて、三度も訪れた甲斐があった。
冬季日高山脈全山縦走をした志水哲也の「果てしなき山稜」を読み
その一端の雪稜を自分の目で、見てみたかったのだ。
トヨニ岳をバックに、パチリ!
来し方のルートを、眺める。
そういえば山頂付近に、まったく足跡がなかったので
駐車場で会った単独の人は引き返したようだ。
下りは登りとルートを変えて、山頂から真直ぐ尾根を降りていくことに・・・
氷化した斜面に、5cm位の硬さが異なる雪の層がのっている。
歩くと5cmの表面の層だけが、バラバラ流れていく。
これは滑ると止まりそうにないな・・・・
なんて考えていたのに・・・・・
少し下って傾斜がゆるくなったところで、
何を思ったか?
尻すべりを、してみた。
滑り出して、これはまずいとすぐに気づき
アイゼンとストックを刺したが、少し減速したかな?と思ったが
表層雪崩の原理で、すぐにストックが刺さらないぐらいの雪の厚さに乗っており
グングンスピードが乗ってきて、木々が目前に迫ってきた。
(ピッケルも持参していたが、ザックにくくりつけてあった)
木に衝突しそうになり、体を傾けてよけれたが
その後は雪で視界はなくなり、突然横臥位の体勢で
腹部に木が衝突して引っかかり、助かったと思ったのも束の間
一緒に流れた来た雪に押されて、
くるっと回転させられ、また谷間に流されていった。
足に木があたる衝撃の後、谷でようやく止まった。
立ち上がろうとしたが、左足に全く負重がかけられず
膝下の形態がおかしく、ぐらついている。
しまった!やってしまった!
膝下で骨折したのかと思ったが、触ってみるも軋轢音はないので
膝関節が脱臼したようです。
右足だけで立ち上がろうとしたが、右足首も痛めてしまったようです。
直ぐに左膝に、悶絶するような激痛が襲ってきた。
這っていこうにも、膝下が動くと激痛がはしり、動けない。
手持ちの鎮静剤を飲んでも、30分は悶絶するような激痛で動けなかった。
さて無くしたものは、メガネ(度入りのサングラス、裸眼は0.1以下)とニット帽
ここは携帯電話が圏外で、駐車場でも圏外なので
救助を求めることは出来ないので、自力で戻るしかありません。
ゲイターやポール、スノーシュー、ピッケルなどで外固定を試みているときに
膝の脱臼が整復された。
脱臼が整復されると、痛みはなくなる。
しかし膝の内側から外側へと少しでも力が掛かると
再脱臼して、痛くて整復されるまで動けない。
体育座りで、左足は脱臼させないように
腕で一歩ずつ持ち上げて、何とか降りていく。
滑りがいいところは、右足を下にして膝を少し曲げ
その上に左足をピタリとあわせて、腕で漕いでいく。
それでも左足の膝下が少しでもずれると、脱臼して悶絶・・・・・・
これまでのペースだと3時間で300mしか進めていない。
これでは間違いなく、ビバーク決定か・・・・
明日は雨になるかもしれないので、誰も登ってこないだろう。
膝は内出血によりかなり腫れてきて、脱臼しにくくなってきた。
今日中に戻るには、立って歩くしかない。
意を決して、立ち上がる。
膝を内側に力をかけるようにすると、ゆっくりだが負重でき、何とか歩ける。
脱臼して倒れこんでも、膝を伸展したり、足首を内側に曲げることにより
早めに整復できるように、なってきた。
谷を下りきると、出発時に会った単独者のトレースが出てきた。
それをたどって、脱臼させないように、ゆっくりゆっくり歩いていく。
川沿いになると、膝まで踏み抜くことが出てきた。
踏み抜くと這い上がるのに、四苦八苦する。
右足だけスノーシューを装着するもそれでも
左足を踏み抜いて、抜け出すのに四苦八苦する。
最後はヘッドライトを点灯させて、何とか両足スノーシューを装着して
19時28分 駐車場に、辿り着けた。
登り3時間15分
下り7時間38分 試練の山歩きが、終了した。
帰路浦河赤十字病院に寄ろうかと思ったが、整形外科の医師がいなければ
鎮静剤貰って終わりだし、まずは札幌を目指して車を走らせた。
今回は天気が穏やかで助かったのとメガネがなくなったが
トレースがあり、道迷いの心配もなかった。
左足なので、何とか車の運転も可能だった。
こういうので、遭難死してしまうのだろうな・・・・・