らぷんつぇる**

日々のささいな出来事をつづったり
本や映画や食べ物の感想を載せてみたり
ひとりごとを言ってみたり。など。

『王妃の離婚』

2007年01月15日 01時57分04秒 | Books
第121回直木賞受賞作。
今まで直木賞受賞作ってあまり好みではなかったけど、(といいつつそんなに読んでないけど、)これは結構面白かったー。

*あらすじ*
15世紀末のフランス。
先王シャルル8世の崩御により、オルレアン公であったルイ12世が王位についた。
彼がまず着手したのは、暴君として知られた先々王ルイ11世の娘であるジャンヌ・ドゥ・フランスとの離婚であった。
ルイ12世にとってこの醜い妻との離婚は、ブルターニュの女公主アンヌ・ドゥ・ブルターニュと再婚しブルターニュ地方を獲得する上で重要な政治的意味も持っていた。
絶対的な権力により離婚裁判を押し進めるルイ12世側。
一方ジャンヌ王妃側は、弁護団は国王の権力におびえきった上に証人は国王側に寝返り、まともな弁護もままならない始末。
裁判の行く末は見え透いていた。
かつて輝かしい未来をルイ11世によって奪われたナントの弁護士フランソワ・ヴェトゥーラスは、この裁判で暴君の娘である王妃が裁かれる様子を傍聴席から冷ややかに見守っていた。
しかし、かつての恋人に導かれるかのように、彼は王妃の弁護士として裁判の渦中に巻き込まれていく…。


見どころは、
カルチェ・ラタンの学生生活のはじけっぷり(僧なのにい。)と
ルイ12世のダメ男っぷりと
フランソワの手腕…かな。

遺伝学の知識がなかったこの時代になぜ近親婚がタブーとされたのかの理由が知りたい人は読んでみてください。
このくだりで結構受けました。そんな理由かよ!って。
ヨーロッパの王族なんてほとんど親戚同士だったはずなのにねえ。
にしても裁判で参考になる最も重要な書物が「六法全書」じゃなくて「聖書」だとこんな裁判になってしまうのか。
結婚に関してまでここまで書いてある聖書ってある意味すごいな。
ちょっとグダグダだったフランソワが復活してからはやるな~の一言です。策略家。

王妃が美人じゃない一方でルイ12世は美男子って設定がほろ苦くてなかなか読ませます。
でもルイはダメ男.
ハハ。

*データ*
著者:佐藤賢一
出版社:集英社
定価:1900円(税抜、ハードカバー)

『クラッシュ』

2007年01月15日 01時27分33秒 | Movies
やっと借りられましたー。
まえ借りに来た時は全部レンタル中で借りられなかったのだ。
この作品、期待してたのです。

*あらすじ*
舞台はアメリカ・LA。
車を盗まれた地方検事、白人に敵意を抱く車泥棒の黒人青年2人、黒人の家政婦や庭師に不満を募らせる検事の妻、黒人刑事とそのヒスパニック系の恋人、白人警官に屈辱的な仕打ちを受けた黒人女性とTVディレクターである夫、差別主義者のベテラン警官と彼のパートナーのうら若い警官、黒人の鍵屋とその5才の娘、英語が理解できず不当な差別に憤るペルシャ人の雑貨店主…。
暴力と人種差別がはびこる街で、様々な人生が「衝突」し、思いがけない連鎖を生み出していく…。


す、スゴイ。
こんな映画が作れるなんて。
登場人物がそれぞれ「主人公」の映画で、その人生が複雑に絡み合って物語が進んでいくあたり、すごく上手い。
色んな人種が入り乱れるアメリカの、これがホンネで実情なんじゃないのかなー。
アメリカに詳しいわけじゃないけど…。
ほぼ単一民族の日本で暮らしているとなかなか実感わかないけど、言葉の壁・文化の壁・不幸な人種差別が生んだ壁はかなり厚いと思う。
何十年も前に法律上の差別はなくなっても、それまでの経緯がバックグラウンドとして現代まで脈々と受け継がれているのだから。

以前「メゾン・ド・ヒミコ」の監督がムーミン谷について書いていたコラムを読んだ。
この映画を見てそれを思いだした。
彼女曰く、ムーミン谷は種族の違ういろいろな生き物が同じところで暮らしていて、それぞれが根本的に異なっているから意外と喧嘩が絶えない。
けれどもあまりにもわかりあえなさすぎて、みんなでいることを「ひとりでいるよりちょっとはまし」くらいに思っている…みたいな文だったと思う。
ムーミン谷の考え方は怖いくらいあっさりしてると思うけど、真の理想の社会生活は多分こうなんだよなあ。

アメリカは現実の世界のムーミン谷かもしれない。
いろんな民族がごちゃまぜで暮らしているあたりが。
でも、ムーミン谷の半分ほどもうまくいっていない気がする。
変な「人種」っていうカテゴリにとらわれすぎているように見える。
ムーミンたちは生物的な分類の域を超えて共存しているのにね。
アメリカはムーミン一家を見習うべきなのだ。

5才の子供が銃におびえるのがアメリカ、
相手がポケットを探って何か出そうとしたらすぐに身を守ることをかんがえなければいけないのがアメリカ、
表向きは差別なんかないように振る舞っていても、本音ではなにがしかの人種差別感情を抱いているのがアメリカ。
むき出しのアメリカは結構怖い。
あの国は個々のアメリカ人のあらゆるルーツを呑み込んで「アメリカ」を作り上げているけど、結局根っこには何があるんだろう。
いわゆる「アメリカ大陸発見」がプロローグで、「アメリカ独立」からが本編なんだとすれば、つまるところあの国はやっぱり侵略者の国で、だから基盤は暴力と差別で、やっぱり悪循環から抜け出せないんじゃないだろうか。

自分にとってはヌルマ湯な日本にどっぷり浸かって、アメリカ抱えてる問題の深刻さに思いを馳せてみたのでした。
それにしてもこのDVDのジャケット、写真も題字のフォントも、映画に合わないぞー。

*データ*
監督:ポール・ハギス
出演:サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ジェニファー・エスポジートなど
初公開年月:2006年2月
制作国:アメリカ
上映時間:112分
公式ホームページ:クラッシュ