らぷんつぇる**

日々のささいな出来事をつづったり
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ひとりごとを言ってみたり。など。

『いのちの食べかた』

2009年01月25日 10時54分15秒 | Books
以前記事を書いた『世界屠畜紀行』も、いきものがお肉になるまでとそれに関わる人々を取り上げた本でしたが、森達也さんのこの本も、そんな感じです。
タイトルからしてまさに!ですが。
こっちは、こどもにもわかりやすい文章が心がけてあって、読みやすいです。
内容は『世界屠畜紀行』の方が詳しく工程が説明されています。
(なにしろ「世界」ってことで日本以外の屠畜についてもカバーされてるからなぁ。)

やっぱり、お肉になるまでの話と、差別問題っていうのは切っても切れない話なんでしょうか。
この本の流れとしては

みんなが食べているお肉、どこからきてるか知ってる?

生きている豚や牛がお肉になるまで、その「あいだ」を知らないのはどうして?

いつごろから豚や牛とのおつきあいが始まったか見てみよう

じゃあ次に、豚や牛がお肉になるまでを見てみよう
(屠場やそこで働く人たちに対する差別の話も絡めて)

「穢れ」と差別について、無意識に目をそらすことをやめてみない?

てな感じで、半分くらいが被差別や差別の構造についての話。
築地の魚市場はよくテレビで取り上げられるのに、食肉市場は取り上げられないのか、その理由のひとつに、そこで働く人たちを映すこと自体が差別を助長するとテレビ局側が考えている、と著者は指摘しています。
でも、そうした問題を避けて取り上げないことで、誰も傷つけずにすむと思っていることが大きな間違いだ!というのが彼の主張。
屠場から目をそむけ続けてきたからこそ、屠場で働く人たちも仕事を隠さなくてはならなくなった。自分たちがお肉を食べるためには、誰かが殺さなければいけないのだということ、もっと知ろうよ。という感じでしょうか。

「子どもの学校の宿題が『お父さんの職業』についての作文だと聞いたとき、自分は本当につらい思いをした。でも子どもは違った。作文を後から読んだ。『肉を作るお父さんの仕事は、とても大切です。だから僕はお父さんが大好きです』と書いてくれた。嬉しかった。涙が出た。この仕事をやってきてよかったと今は思っている」

お肉になるまでの話を知るのはすごく大事だと思う。
でも、差別について、子どもに教えるのってかなり難しいんじゃないだろうか。
子どもは純粋なだけに結構残酷だから、「あのへんの地域に住む人たちは昔差別されていたんだよ」なんて話を聞いたら、それをネタに差別やいじめが始まったりしないだろか。
上の、引用した話も、もしその子の周りで「食肉市場=被差別」なんて話題が出てたら、やっぱり「お父さんの仕事はお肉を作る仕事です」って書いたその子にも余波がくると思うのだよね。
被差別について、どうやって教えるか、慎重に考えた方がいいと思う。
似たような仲間と集団を作って身を守りつつ、他者との違いをあれこれ理由にして差別したがるのは、大人だけじゃなくて子どもも同じはず。
むー、やっぱり他人の痛み(←自分が経験を積むことでしかわかり得ないことだと思うけど)を知りましょう的な教育の後でしか、この話は無理なのか…。

*データ*
著者:森達也
出版社:理論社 よりみちパン!セ
定価:1000円+税
ISBN:4-652-07803-X

ポケットを叩けばビスケットが増える♪どころじゃない還元率

2009年01月19日 22時17分41秒 | きょうのできごと
はじめて、インスタント焼きそばを食べました。
お湯を捨てた時点での匂いは怪しいのに、ソースを絡めるとちゃんと焼きそばっぽい。
しかしあれだな、なんというか、カップラーメン以上に孤独な食べ物じゃない??

そうじゃなくて…。
焼きそば、自販機で買ったんだけど、1000円入れたらお釣りがなんと1180円返ってきた。
って、増えてるではないですか!!
なんかやたら10円玉がおおいなぁ、まさか100円分10円玉で返ってきた?と思って確かめたら、500円玉いっこ、100円玉ろっこ…ってこの時点で入れた分より増えてるし。
おそらく前のヒトがお釣りを取り忘れたんだろうけど、もらっちゃったよ。
ちょっとらっきぃ。

『「生きづらさ」について 貧困、アイデンティティ、ナショナリズム』

2009年01月11日 15時35分41秒 | Books
内定取り消しはなかったものの、修論の締め切りが差し迫り、もし卒業できなかったら…と思うとほんとにワーキングプアとかひとごとじゃない、と思う今日この頃です。

さて、今回の本は、不安定な就業状態にあることを強いられた若者達(プレカリアート)とともに人間らしく生きる権利を求めて戦っている雨宮処凛(あめみやかりん)さんと、元フリーターで今は津田塾の准教授である萱野稔人(かやのとしひと)さんとの対談です。
雨宮さんは見た感じ不思議な雰囲気の漂う人(なにしろゴスロリ)で、経歴も不思議。
いじめ、リストカットやオーバードーズを経験し、フリーター歴もあり、右翼団体に所属していたこともあるそうです。
もともとは精神的な「生きづらさ」について探究していたのが、今では、金銭的に困っていたりなかなか安定した仕事に就けなかったりという社会的・経済的な理由も「生きづらさ」につながるのではないか、と労使問題を取り上げていることで有名。

今や、日比谷公園に「年越し派遣村」ができるくらい派遣労働者の失業が多くて、それでも生活保護はなかなか受けられないし、ちょっと世の中の出世コースからはずれてしまうとこんなにも悲惨な状況になってしまうのかと思うことが多すぎます。
ほんと、一歩はずれたら自分も…っていうのが身にしみる。
親を早くに亡くしてしまう(経済的に困るし、保証人になってくれる人がいなくなってしまう)とか、心の病を抱えてしまうとか、体に障害があるとか、母子家庭だとか、誰にでも有り得るじゃないですか。。。
彼らは住所がなかったりするので例の定額給付金(1万2000円だっけ?)ももらえない。
まわりの人たち(経済的にかなり恵まれている人たち)は「すこしでもいいからもらえたら嬉しい、新しいテレビが欲しい」と言っていますが、彼女たちにとってのテレビと、働きたくても働けない人たちにとっての生きる糧と、どっちにお金を流すべきかなんて考えるまでもないだろーがっと思う。
中流階級の人たちにお金を渡せば、一部の大企業を間接的に支援することになる気がする。
結局、国としては大企業を守ることで日本の経済を守ろうとしているんだろうな。
その大企業が、大量の失業者を生み出した諸悪の根元なのに。
大企業が儲かることで新たな雇用が生まれるだろうなんて考えているとしたら、甘いと思うなぁ。
テレビ番組でも、ワタミの社長が「お金は分散させればさせるだけ効果が薄くなるから、一点に集中して使わないと」って言っていたけど、ほんとにそうだと思う。

ところで、この本で書かれている雨宮さんの意見と、ワタミの社長とで明らかに違うのは「自己責任」について。
雨宮さんは「若ければ若いほど、社会への視点を閉ざされていて、そのうえで「自己責任」という言葉を強烈に刷り込まれていますよね。それは本当に危険だと思います。苦しい当事者自身が「社会のせいにするのはいけないこと、全部自分が悪い」といっている。その人自身にもダメなところはあるでしょう。だけど、すべて「個人の責任」ではない。」と書いています。
一方で、ワタミの社長は「確かに不安定な雇用を生み出した政策については政府に責任があるし、この不況にも原因はあるけれど、当事者自身も人のせいにしすぎ。もっと「自己責任」を感じるべきだ」というスタンス。

ワタミの社長は一人ががんばってもどうにもできないときがあるし、自己責任だと思うほど身動きが取れなくなって、結果死ぬしかない、みたいな状況を想像することができないんじゃないかな。
体育会系的な、「がんばれば結果はついてくるんだ!言い訳を考えているヒマがあったら努力しろ!」みたいなノリではどうしようもできない状況もあるのだよ。
まあ、人によるとは思いますが。
今まで特に努力もせずのらくら生きてきたのが急に不景気になって失業し、何もかも国や社会のせいにしてふてくされている人だって絶対いるし。
努力して社会的地位を築いてきたって自負のある人から見れば、イラッとくるのは、わかる。
でも、ちょっとしたはずみで不幸スパイラルに陥ってどうしようもなく自分を責め続けている人も少なくないはず。
そういう人に対しては、スパイラルから抜け出す支援が必要だと思うなあ。

それにしても、基本的人権ってなんなんですかね。
どう考えても、ネットカフェ難民の人権が尊重されているとは思えないけど。
「おにぎりが食べたい」と書かれたメモを残して餓死した男性の話なんて、現代の日本でそんなことが…って、衝撃でした。

てなわけで、内容満載。
他人の評価を通じてしか、自分の存在価値を実感できない世の中に私たちは暮らしています。
昔ながらの共同体って窮屈だけど、それでもメンバーであるというだけでありのままを受けいれてもらえる場ってどこかに必要なんだろうな。
日本も、宗教団体が活躍しだしたり、するのかな…。

*データ*
著者:雨宮処凛 萱野稔人
出版社:光文社(新書)
定価:760円+税
ISBN:978-4-334-03461-0

2008年の本 ベスト5

2009年01月03日 11時25分40秒 | Books
去年読んだ本は、128冊。
100冊を突破しました。
論文とか、あんまり読んでない代わりにね…。
前は小説中心だったのが、最近はノンフィクションとかエッセイとか増えてきた気がする。

1.『ねにもつタイプ』 岸本佐知子 筑摩書房
やっぱりこれがヒットかな~。
好き嫌い分かれそうな感じだけど、個人的にはかなり「わかるわかる!」ってのが多かったので。
エッセイの中ではぴかいちです。
以前書いた記事はこちら→『ねにもつタイプ』


2.『愚か者、中国をゆく』 星野博美 光文社新書
香港に留学していた著者が、中国激動の時代にアメリカ人の友人と中国貧乏旅行をしたときの話。
怖い物見たさで乗った「硬座」(鉄道の最下等の座席)が二人の関係すら変える体験になってしまうのだが…。
今はもう鉄道の切符を買うのも何時間も待たされて、ってことはなくなったみたいだけど、共産圏ムードがむんむんの失われし中国を垣間見れるのは面白い。


3.『深夜特急』 沢木耕太郎 新潮文庫
新潮文庫で読んだので、1~6巻まであります。
バックパッカーの聖書みたいな本。
疑似旅行しているみたいな気分が味わえます。
そして、無性に旅に出たくなる。
各国の空気を感じるだけでなく、著者の心境の変化も注目ポイントかも。
最後のオチは、なんともいえない…。


4.『アフリカ・レポート-壊れる国、生きる人々』 松本仁一 岩波新書
4.『反米大陸-中南米がアメリカにつきつけるNO!』 伊藤千尋 集英社新書
甲乙つけがたいので、どっちも4位。
テーマ的にはちょっと似た感じです。
どうしてもアメリカとか中国に目が行きがちだけど、世界情勢を知るためにはやっぱり知っておくべき二つの大陸、南米とアフリカ。
帝国主義・植民地主義時代の負の遺産を一身に背負っている国々の、生の姿が描かれています。
わかりやすい本なので、お勉強っぽい感じでありながら読むのは苦になりません。
結構ショッキングで、人間って救いがたいよなって感じがするのだけど。
一読の価値有り、だと思います。
『アフリカ・レポートー壊れる国、生きる人々』
『反米大陸ー中南米がアメリカにつきつけるN0!』


なんとなく、旅、とか世界、とかいうキーワードが中心のセレクションになってしまいました。
きっと現実の閉塞感に反発したい気持ちを反映しているのでしょう。
2009年が、外に開けた年になるといいです。

あ、ランクからはずしてしまいましたが、『半島を出よ』(村上龍)も読み応えがありました。
小説部門では、これが今年の一位かな。

あけました

2009年01月02日 22時32分57秒 | きょうのできごと
2009年、あけましておめでとうございます。

更新さぼっちゃいました。
なにしろ、年末年始も実験しに行ってたもので
こんな年明けで良いのだろうか。
いろいろうまくいかなくてへこみつづけていましたが、叔父さんに借りた『生涯最高の失敗』(田中耕一著、朝日新聞社)を読んでちょっと元気が出ました。
今年は、まず修論・発表会という山を乗り越え、念願のマチュピチュに行き、内定ブルーをどうにかし、やっぱ関東(東京)っていいなという思いを断ち切り、仕事をどうやらこなし、底辺まで落ちた購買意欲を復活させ、関西も悪くないなって思える一年にしたいと思います。
がんばれ自分。

みなさまも良いお年になりますようおいのりもうしあげます