らぷんつぇる**

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『泥流地帯』

2006年12月10日 16時31分42秒 | Books
初めて三浦綾子の本を読んだ。
三浦綾子って『氷点』と『塩狩峠』しか知らなくて、高校の時『塩狩峠』の映画を見た時「ついていけん…」と思って以来敬遠してたんだけど…。
『泥流地帯』よかったです。すごく。
結構重くて、胸が締めつけられるような気持ちになるんですが。

*あらすじ*
時は大正時代。
北海道の十勝地方、日進。
石村拓一と耕作の兄弟は貧しさと親の不在にもかかわらず逞しくまっすぐに生きていた。
貧しくても思いやりを忘れない人々、逆にお金はあっても心の狭い人もいる。
お金のあるなしだけで人を判断するべきでない-
祖父母や恩師、の人々を通して様々な事を学んでいく兄弟。
しかしそんな健気に生きる人々にも大自然は牙をむくのだった。
大正15年5月、十勝岳の大噴火による泥流がを襲う。
長い時間をかけて築いた田畑や家、そして愛する人々を呑み込んで…。


かなり泣ける本です。
「真面目に生きても無駄なのか?」ということを問いかける本。
貧しさ故に夢をあきらめなければならなかったり、人の心の狭さに苦しめられたり、理不尽な搾取をされたり…報われないことだらけ。
それでも人を気遣う気持ちを忘れないところが本当にスゴイ。
食べかけのごはんを中断して人の家の馬を看病に行ったり。
時間をかけて作った薬を報酬を貰わずに人にあげたり。
そんなこと自分にできるかな…、自分ってなんてだめな人間なんだー!と思ってしまう。
石村家のじっちゃんは最高です。
一言一言が名言だし。
あと、菊川先生も素晴らしい。
こんな先生ばっかりだったら今小学校が抱えているような問題も解決できそうなのにな。


「おれはな耕作、あのまま泥流の中でおれが死んだとしても、馬鹿臭かったとは思わんぞ。もう一度生れ変わったとしても、おれはやっぱりまじめに生きるつもりだぞ」
「…………」
「じっちゃんだって、ばっちゃんだって、おれとおんなじ気持ちだべ。恐らく馬鹿臭いとは思わんべ。生れ変ったら、遊んで暮らそうとか、生ま狡く暮らそうなどどは思わんべな」



これだけの仕打ちにあってもなお「もう一度生まれてきても同じ生き方を選ぶだろう」っていう独白にものすごいプライドを感じる。
一見救いがないように見えて、心持ち一つでこうも見方が変わるものか、と。
「今度は金持ちに生まれて楽な暮らしをしたい」って思ってしまいそうなのに。
人が成功したかどうかっていうのはお金をどれだけ稼いだかじゃなくて、自分の生き方に誇りを持てたか、ってところなんだなあ。

続編もあるらしい。
気になる…。


*データ*
著者:三浦綾子
出版社:新潮社
価格:660円(文庫、Amazon)