ぱたぱた仙鳩ブログ

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埼玉大学 鳳翔閣

2014年10月13日 | インポート

Houshoukaku10月10日(金)夜~12日(日)にかけて、埼玉 大学で全国大学書道学会・全国大学書写書道教育学会が開催され、参加してきました。

飛行機で行きましたが、ちょうど台風が近づいてきていましたので、帰りの飛行機が飛ぶのか心配しました。でもなんとかぎりぎりで台風の前に徳島に戻ってきたところです。

今年は全国大学書道学会で、「阿波の藍商書家 三木雲城の生涯と書」と題した発表をしました。昨年から研究していた、阿波松茂中喜来の三木氏の第11世、三木順治(号は雲城)の書に関することです。11日の午後に発表しました。

大宮駅前のスーパーホテルというビジネスホテルに宿泊し、埼京線とバスを利用して2日間通った埼玉大学教育学部に、見事な書作品が展示されていました。

明治11年に三条實美が書いた「鳳翔閣」の文字です。その当時の埼玉師範学校の校舎につけられた名前だということです。堂々たる書にしばし見とれました。三条實美は明治維新に活躍した公家・政治家で、日下部鳴鶴とも昵懇でした。この時代の政治家は、スケールの大きさが書にも自然に表れています。

書道は、筆を自由にコントロールしたりにじみやかすれを適度に加える技術や、作品内の布置章法の知識などがもちろん重要なのですが、それに加えて作品全体を作る時の空間の感覚が重要です。どのような大きさや空間で処理していくべきかは、書道の法帖を見て学ぶだけでなく、絵画・工芸・生花・建築・写真など他分野の空間芸術や、自然の中にある様々な造形や文学などでも身につくものです。また様々な分野の一流人との多くの交流によって理解が進んでいくものです。つまり、「どのような表現が人の心をとらえるかの原理」をよく理解しているということです。他の分野で成功した人は長い時間をかけてこのような感覚が自然と身についているように思います。

ですから、専門書家のように書道技術だけを徹底的に磨く時間はそれほどなかったはずなのに、書家以上の風格を持った作品を書いてしまうのです。歴史上の有名人の書に魅力を感じる理由がここにあります。

三木雲城の作品にもそのような側面があります。彼は藍商・政治家・剣道家・俳人・書家など、様々な顔を持つ魅力的な人物でした。このような方々についてこれまで書道面での研究があまりなされてきませんでしたが、現代のような生涯学習として重要度が増している時代の書道には、むしろこのような汎用的能力の高い人たちの書作品や考え方こそ学ぶべき面があるように思っています。三条實美もそのような魅力的な作品を書く人物の一人です。

現在この名から「鳳翔」の名を付けた日本酒を大学で開発して販売しているそうです。その題字は、埼玉大学の大橋先生が揮毫されているそうです。

今年は、発表数も多く、意外に疲労も伴います。でも新しい知識もたくさん得ることができ、充実した学会でした。


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