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「外国人は仲間」これが多文化共生の原点〜書評『使い捨て外国人』

2020年05月09日 | 提案提言
http://www.labornetjp.org/news/2020/0508hon
「外国人は仲間」これが多文化共生の原点〜書評『使い捨て外国人』
小林たかし

●『使い捨て外国人―人権なき移民国家、日本』(指宿昭一 著、朝陽会、2020年4月刊、1000円)

 自由の女神が泣いている……。彼女の足元にはアメリカ移民博物館があり、女神には「移民の母」の別称がある。だから彼女は移民を迎えるべく海を向いて立っている。アメリカは移民の国である。でも3年前、アメリカは移民排斥のトランプを大統領に選んだ。彼は4月22日、コロナウイルス感染拡大で失業者が急増したため米国人の雇用を守る、という理由で移民の受け入れを停止してしまった。

 移民国家アメリカには、9.11以来ゆらいでいるとはいえ、確固とした移民政策がある。1年以上居住している移民には、原則として市民権が付与される。日本も移民国家だ。でも、この本のサブタイトルにあるように「人権なき移民国家」である。日本はすでに、多様な外国人が暮らしている移民社会であるにもかかわらず、政府は彼らを移民としてとらえず、移民は受け入れない、移民政策はとらない、という姿勢で一貫している。ここに、日本における移民たちへの人権侵害、移民と日本人と間に差別や格差の生まれる源がある。

 本書は、事業主と入管の人権侵害によって、悲惨な目に遭遇している外国人労働者を援助する弁護士の奮闘記だ。著者・指宿(いぶすき)昭一は外国人事件専門の弁護士。彼は、かつてレイバーネットで取りあげた、東京にあるインドカレーのチェーン店「シャンティ」の事件を担当した弁護士だ。4年前のこの事件では、賃金不払い・会社破産に対抗して「シャンティ」のインド人とバングラディッシュ人の労働者15名が労組を結成し、職場占拠でたたかい、営業再開と再雇用を勝ちとった。


*「シャンティ」店内の外国人労働者と指宿弁護士(左)

 本書は、「外国人労働者受け入れ制度を検証する」と題する著者の講演録からはじまるが、これが総論的なものとなっている。ここには、日本にいる外国人のデータもあり、著者の技能実習制度の廃止を求める立場からの主張や、改定入管法に関するさまざまな論点への言及もある。

 「第1章 外国人労働者と人権」では、外国人労働者への暴力的なパワハラ・セクハラ、最低賃金以下の強制的労働など、雇用主側のやりたい放題の事件の数々が紹介される。「第2章 入管政策と人権」は、入管の理不尽な収監や強制送還の具体例をあげながらの報告集だ。

 労働現場の実態や入管の仕打ちを読むと、だれもが気分が悪くなるだろう――ひどすぎる、なんてことだ、なんとかならないのか、と。そんな悲観的な状況を、なんとかしようと起ちあがった人たちの努力で、何人かの外国人労働者が救われる。が、それは氷山の一角で、酷使され疲れ果てた外国人労働者の多くは、泣き寝入りのまま帰国するか強制送還される。彼らは、奴隷労働のはてに犯罪者扱いされるという、信じがたい事件がこの日本で多発しているのだ。著者はあとがきで、こうした状態を批判してこなかった私たち日本人の問題として、外国人労働者の境遇の改善を真剣に考えることを促している。

 資本主義のダイナミズムによって、多国籍企業による地球規模での生産体制がつくられ、世界中を移動する膨大な数の労働者が生まれた。国民国家の経済も社会も、この世界的な変動に影響され変貌し、誰が一国の人民であるかを定義することはもはや困難であり、意味のないことになった。移民国家において、一国的文化と一民族による国民統合などという、右翼為政者たちの「理想」は、国内労働者と移民労働者を分断するだけのアナクロニズムでしかない。 移民社会にふさわしい、自由、平等などの民主主義を保障する新しいメカニズムをつくらなければ、人間の共通性と差異を保障する多文化共生社会の実現をめざすのは至難のわざだ。パンデミックによって世界は大きく変わろうとしている。いまこそ私たちは、非正規滞在者も含めた外国人の人権をまもる活動の拡大と、政府にまともな移民政策をつくらせる運動を、最重要の課題として実行していく必要がある。

 最後に、あとがきから著者の訴えを紹介したい。「求められるのは、外国人を〝人〟としてみること、私たちの仲間としてみる視点である。これが多文化共生の原点だ。」

*参考資料①:パンフ『移民社会20の提案』(NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク発行、定価:税込300円)
*参考資料②:DVD『オキュパイ・シャンティ――インドカレー店物語』(ビデオプレス作製、43分、定価:税別3000円) 詳細HP


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