
地球儀に唇あてているこのあたり白鯨はひと知れず死にしか
‥‥‥
大滝和子の歌である。
この人は、スケールの大きい歌を作る。
地球儀に唇をあてている。
何を思っているのか。
メルヴィルの「白鯨」を
思っているのかもしれない。
孤独や老いを思っているのかもしれない。
いずれにせよ、鑑賞の幅を大きくしないと、
受け入れることができないだろう。
次のような歌も作っている。
‥‥‥
なぞなぞの通勤鞄乗せながら無限の道を走りゆく橇
海草を買いたるのちにおのずから牛車の外で三日月あおぐ
岩戸から羊歯の葉激しくあふれ出せみどりの活路いずこに向かう
椋鳥の群れ飛び立ちてわが裡に未知の駅らの連なるけはい