いい日旅立ち

平凡な元大学教師の日々の感想をつづったブログです。ちょっと、スパイスを効かそうと思ったのですが。……

娘を亡くした歌人二人~和泉式部と五島美代子~

2018-12-10 22:53:13 | 短歌


恋多き宮廷人であった
平安時代の歌人
和泉式部。
愛する人を次々に亡くした。
娘、小式部は、貴族の子をうんだものの、早くに亡くなる。
恋多き和泉式部は、何をすることもできなかった。

とゞめおきて誰をあはれと思ふらん子はまさるらん子はまさりけり

現代の歌人
五島美代子。
娘は、戦後まもなく、
当時としては珍しい、
東大に入った娘とともに
東大の講義に出る。
しかし、しばらくののち、
娘は自死してしまった。
あまりにも悲しい喪失であった。

うつそ身は母たるべくも生まれ来しををとめながらに逝かしめにけり
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宮柊二の歌~その8~病と死

2018-12-10 22:25:54 | 短歌


宮柊二は、
晩年に
歌人の宿命と言える。
死と老いの歌を残した。
戦争からの影響か、
実際より老いて見えたようだ。
歌誌「コスモス」
の編集をするにあたっての
もどかしさも言い残しているが、
それはともかく、
最晩年の作品を挙げてみる。

‥‥‥

明日逝かん境涯のきて何思ふまでにて想像止みぬ

身勝手に老いし体の痛む腕痛む目かばひ味気なく臥す

兵たりし無理が体に現ると囁きていふ見舞える友が

痛み増す手首なだめて暁に始めし選歌長く続かぬ
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北原白秋の歌~その5~

2018-12-10 22:10:52 | 文学


童謡作家のといわれる
北原白秋。
短歌

童謡。

ひっくるめて、
「童謡の作家」
である、という評価が高い。

‥‥‥

かやの木山の かやの実は
いつかこぼれて ひろわれて
山家のお婆さは いろり端
粗朶たき 柴たき 燈つけ
かやの実 かやの実
それ 爆ぜた
今夜も雨だろ もう寝よよ
お猿が啼くだで 早よお眠よ
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寂しき夕の歌~百田宗治の詩~

2018-12-10 21:46:30 | 文学


大正期
民衆派の詩は、
心を打つものが多い。
貧しい民衆の
境遇をいとおしみつつ
文学に救いを求めた作家たち。

今回は、百田宗治の詩
「寂しき夕の歌」
を取り上げる。

‥‥‥

子よなんぢの生まれ来るのは貧しき家にて、
なんぢのこの世にいづる前の日まで、
父は汝をこの世の寒き風にあたらざらしめんための
衣買ふ金に心を労するなるべし。

なんぢの産着は木綿にて、
まづしきなかより小切れなど買ひ集め、
くらき夜のともしびのもとに
汝の母の縫ひ
しものなり。
いかなる人を父と呼び、
いかなる人を母と呼ぶかを
なんぢはいまだ知らぬなり。
子よいみじくも神のみ膝に、
遊び暮らしていまはあらん生まれ来る子よ。
人の世は侘しくさびしきところなれども、
おのれ自らその日の糧を得ざるべからざるところなれども、
ちゝはゝはむなしく二つの心をあはせて、
ひたすらに汝のこの世に来る日を待つなり。

とぼしくくらき燈火の下に、
額を合わせ
あはれけふもさびしき夕とはなりつ。








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「一つの列車とハンケチ」福田正夫

2018-12-10 16:41:03 | 文学


大正期の
「民衆派」の
文学作品は、
搾取や戦争といったテーマを
自由主義的な観点から歌った。
福田正夫も
その流れに属する。
シベリア出兵のため、
出発する若者たちに
捧げられた詩を
次に
示す。

‥‥‥

一つの列車が、
わっと魂ぎるやうに万歳をわめきながら、
シベリア出征の兵士をのせて、
通過していく疑問ーー。

窓から争ふやうにふるハンケチ、
沿道の人々は呆然として見送る、
ひとりの老いた車夫だけが、
万歳と叫んだ、帽子を振った。

私の魂はまず驚く、
何といふ悲壮だ、
まるでやけのやうに呼ばるる彼らの叫喚、

死ににいくのだ、死にに行くのだ、
なんといふ国民的の悲劇だ。

私は自ら流れてくる感激に、
思はずも壮然として粟立ち、
ついで来たものは満眼の涙であった。
ああ卿等よ、私は万歳を叫ぶにはあまりに凡てを知りすぎてゐる。
許せ、私は涙をもって卿等を送る。










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秋葉四郎の歌

2018-12-10 16:05:52 | 短歌


秋葉四郎の師
佐藤佐太郎は、
南極でオーロラを見ることを
切望した。
しかし、
その願いはかなえられることはなかった。

代わりに、
その弟子秋葉四郎が
アラスカを訪れた。
幸い、
赤光緑光の
オーロラを見ることができた。
「赤光」という語には、
師の師、
斎藤茂吉の歌集への
思いもよぎったであろう。

‥‥‥

湧き上がりあるいは沈みオーロラの赤光緑光闇に音無し
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宮英子の歌

2018-12-10 15:55:29 | 短歌


宮柊二が亡くなってから2年後、
妻の宮英子は、
中国へ旅立つ。
夫、宮柊二が、
凄惨な戦争体験をした
中国。
宮柊二が戦った地
黄河流域を旅する。
宮柊二と
その戦歴をたどりつつ、
今は、あまりに簡易に行ける
中国で、エアコンバスに乗りながら旅することを
少し恥じらいながら、
歌うのである。

‥‥‥

彼の日彼が指しし黄河を訪ない得たり戦なき世のエアコンバスにて
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河野裕子の歌~その3~

2018-12-09 22:27:56 | 短歌


「家族の歌」所収の
短歌一家の歌集第2弾。
河野は、
乳癌との
戦いの中で、
精神の平衡を失いかけたこともある。
辛抱強く、
温かく、
心から、
彼女を愛した
夫と
子どもたちが、
河野の闘病生活を支えた。

‥‥‥

ひと切れのさはらの切身を食べきれずだーれも居ない夜の食卓(河野裕子)

三歳のわたしはいつも待ってゐた父の来る日は父の帰る日(永田和宏)

夕暮れの小川に沿いてふく風の中を歩める姉弟の見ゆ(永田淳)

砂時計砂をこぼせる秋の日に指折りながら言葉をつなぐ(永田紅)




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半世紀を経た「蒼ざめた馬を見よ」

2018-12-09 22:06:31 | 文学


思い立って、
五木寛之著
「蒼ざめた馬を見よ」を
読んだ。
半世紀近く前の小説である。
作者のシビアな経験を
明らかにしつつ、
ハードボイルド調に仕上げた本である。
ある本の出版に当たり、
国際的な陰謀が展開される。

まだ、
資本主義か
社会主義か
という問題がホットであり、
それを超えた
「社会的共通資本」
といった考え方が浸透していなかった時代の産物である。

当時、
この書を勧めた男は、
愛媛県をアピールする会社の社長となり、
薦められた男は、
老書生として、
読書三昧の生活を楽しんでいる。
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玉井清弘の歌~その1~

2018-12-09 19:54:24 | 短歌


玉井清弘の歌。
軽妙なものあり、
叙情的なものあり、
ほのぼのするものあり。

日常の何事もなき姿を
歌にできるのだ、

知る。

‥‥‥

この世への形見にあらん何のため記さず一枚の書を送りくる

見る機会いずれあらんと許したるおのれのあまし祭り絶えたり

昨年のネットの動画いきなりに泥匂いたつ祭たけなわ

ふざけあいいつか真剣の泥試合飛び蹴りもあり斎庭の泥田
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