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いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

短歌界の巨人春日井建~その1~

2019-01-03 19:11:05 | 短歌


春日井建は、
高名な歌人である。
昭和33年、歌集「未成年」で一躍有名になった。
この歌集には、三島由紀夫が
序文を寄せ、
「現代の定家」と激賞した。
岡井隆、塚本邦雄等とともに、
時代の寵児となり、
2004年、65歳で逝去するまでに、
9冊の歌集を出版している。
歌風は、独特で、
孤独、死を含む歌、
虚構性の高い歌が多い。
今回は、
処女短歌集
「未青年」
から、
4首を抽出してみる。
ことに、
第4首は、代表作のひとつと言われている。

‥‥‥

大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき

空の美貌を怖れて泣きし幼児期より泡立つ声のしたたるわたし

太陽が欲しくて父を怒らせし日よりむなしきものばかり恋ふ

童貞のするどき指に房もげば葡萄のみどりしたたるばかり

貧困の医師生活を経て~歌人上田三四二~

2019-01-03 15:27:46 | 短歌


実験室にわが居る隅はいつもいつも壁のなかゆく水の音する

‥‥‥

これは、歌人にして医師であった、
上田三四二が、
国立療養所勤務の頃、
作った歌である。

京都大学を出て、
国家試験に合格した上田であるが、
当時は、研究室で研究しつつ、
無休で生活せざるを得なかった。
やがて結婚し、子どもももうけたが、
体を壊して、
研究室をやめ、
国立療養所で、
ほそぼそと医師生活をおくらねばならなかった。

その間も、少しずつ研究する。
療養所の部屋の壁の中に、
配水管があり、
常時水が流れている。
冒頭の歌の
「壁のなかゆく水の音」
の由来である。

その後、
歌人として賞をとり、
京都大学で博士号もとった。

国立療養所時代の歌を、
もう三首挙げておく。

‥‥‥

病舎裏の原に赤土の堆積あり実験済みし犬を葬る

実験室にもの言はず今日も暮れしかなドアの名刺を裏返し出づ

苦しみて肺組織標本を作り終ふ窓に梧桐の実の垂るるころ








獄中にありて~北原白秋・哀傷編~

2019-01-03 14:53:47 | 短歌


北原白秋は、
ある時期、
日本における
もっとも高名な歌人、詩人、童謡作歌であった。
ところが、人気を得ている最中に
人妻との恋に落ち、
姦通罪で(戦前であったゆえ)訴えられ、拘留された。
その間の
哀感を歌った連作がある。
「哀傷編」である。
4首挙げておく。

‥‥‥

鳴きほれて逃ぐるすべさえ知らぬ鳥その鳥のごと捕らえられにけり

かなしきは人間のみち牢獄みち馬車の軋みてゆく礫道

ふたつなき阿古屋の玉をかき抱きわれ泣きほれて監獄に居たり

罪びとは罪びとゆゑになほいとしかなしいぢらしあきらめられず