オムニバスフェチを自称する私にとって、ど真ん中を行く作品でした。
私が読んだことのあるオムニバス形式の小説や漫画は、ほとんどの場合、それぞれの短編で主人公となる人の人間関係の中に別の短編の主人公が登場して、その短編の中ではほかの短編内の出来事と時間を共有しているような描写はあまり出てこないものだけど、この作品の中ではそれぞれの主人公が同じ出来事を共有している描写が多くて、一つの出来事がいろんな角度から表現されるのがとても面白い。
有川浩作品というのは今まで読んだことがなかったのだけど、非常に読みやすくて、優しい作品でした。
この後読んだ『東京島』がものすごかっただけにね…。
私はおこがましくも、作中のデキる女、翔子を自分に重ねてしまう。
テキパキ仕事をして、弱音を吐かない女は傷つかないわけじゃない。
私の人生は、耐えずちょっとした「翔子体験」の積み重ねだったような気がして、なんだか少し泣きたくなった。
まあ実際は、私がデキる女だというよりは、甘えたり本音を言ったりしないで肩肘張って生きていることがいけないんだけど。
そんなこんなで、色々思い描いては泣きたくなったりもしたけれど、全体的に優しくて幸せになれる作品でした。
描写も素晴らしくて、駅や町の情景が頭に浮かぶようで、この作品を読んで実際に電車に乗りに行った人がたくさんいるというのが良くわかる。
今年は西に旅行しようかしら。
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