○ やっとスピードを取り戻したボロ船は、翌4月29日は順調に航行しましたが、いつ何時故障するのではないかと不安で一杯でした。午後になって船内放送で予定の変更が伝えられました。①台湾到着は2日遅れの5月1日の朝。②台湾でのツアーはすべて取りやめ。③台湾で昼食にホテルで中華料理を提供する。④台湾で船の修理の専門家を乗船させる。⑤横浜到着は一日遅れの5月4日になる。というものでした。
○ 船内の客室はスイートルームから2段ベッドの4人部屋まで色々なグレードの部屋があり、価格も500万円から90万円まで様々です。私は窓無しの一人部屋でしたが値段は220万円、ベッドはセミダブルとシングルの2つがあり、ロッカーも二人分を使いました。各部屋にはトイレとシャワーはありますが、テレビは船内放送のビデオだけしか見られません。
○ 部屋の清掃とベッドメーキングはインド人のバジリオ君が担当してくれましたが、朝早くから夜まで働いて月給は1000ドルほどのようでした。部屋の前の廊下に常駐していますので、私にとっては英語の練習相手としては最適でした。しかし、私の部屋に女性の訪問客があった場合には少々の言い 訳が必要でした。
○ 食事は朝食と昼食はバイキング形式で、野菜、果物、ヨーグルト、牛乳、パン、ご飯、肉、魚、卵などがありますが、例えば肉類はベーコンかハム・ソーセジ、野菜はキャベツ・トマト・インゲンなどと航海中は同じものばかりでした。夕食はウエイターがサーヴしてくれますが、日本料理の定食が多く、カロリーも700~800Kcal程度の質素なもので、ビフテキや刺身などはほとんど出てきません。前年の11月に入院しましたが、病院食の方が良いと思う日も多々ありました。
○ 他にモーニングコーヒーと午後のティータイムがあり、夜はスナックやダンスが出来るラウンジ、小料理屋の酒場がありますが、かなり値段が高く、例えば缶ビル1本が345円、焼酎を1升キープすると約5000円でした。なお、キャビンによる食事のランク別はありません。
○ 4月30日は平穏な航海でした。少し涼しくなり、東アジアに近づいたことが感じられます。夜になると台湾に近づいたためか、陸地の明かり が見えるようになりました。翌5月1日の朝は台湾の景 色が近くに見えました。緑が濃く日本と同じようなアジアが感じられる風景です。
○ 午前8時45分に台湾のキールン港に入港しました。予定より遅れた到着でしたので、漂流の状況などを携帯電話やメールで日本の家族に連絡しました。午前10時には上陸して、港のすぐ前にあるホテルに移り、大急ぎで中華料理を食べました 。台湾では台北に行き故宮博物館を観る予定でしたが、昼食のために寄港しただけで、13時30分にはキールン港を出港し、尖閣列島の北の東シナ海を方位65度で日本を目指しました。
○ ソマリア沖とベトナム沖の2度に亘る漂流で、大幅な遅れが生じたため、インド、シンガポール、台湾はほとんど観光ツアーが出来ない形式的な寄港になりました。最後の寄港地の台湾ではお土産を買う予定でしたが、それもできません。それにも拘わらず旅行社側は中華料理を一度食べさせ、謝金として1万円を返還するだけという不誠実な対応でした。船のスタッフはよそよそしく、乗客に目を合わせるのを避けながら、早くこの航海が終わることを願っているような感じでした。
「ボロ船の 故障続きで 冷めた旅」 道生