日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(319)「象は鼻は(が・も)長い」の「述語論理」。

2019-08-12 15:48:59 | 象は鼻が長い、述語論理。

(01)
よく知られているように、「私理事長です」は語順を変え、
 理事長は、私です。
と直して初めて主辞賓辞が適用されのである。また、かりに大倉氏が、
 タゴール記念会は、私理事です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念館」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)
従って、
(01)により、
(02)
① 私理事長です。
理事長は私です。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
② 理事長は私です。      ⇔ 私以外は理事長ではない
② 理事長ならば私である。⇔ 私でなければ理事長ではない
は、「対偶(Contraposition)」である。
従って、
(03)により、
(04)
理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない
に於いて、
②=③ である。
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① 私理事長です。
理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
① タゴール記念会は、私理事長です。
② タゴール記念会は、理事長は私です。
③ タゴール記念会は、私以外は理事長ではない
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(06)により、
(07)
① 象は、鼻長い。
② 象は、長いのは鼻である。
③ 象は、鼻以外は長くない
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(08)
③ 象は、鼻以外は長くない。⇔
③ 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
従って、
(07)(08)により、
(09)
① 象は鼻長い。⇔
① 象は、鼻以外は長くない。⇔
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(10)
(ⅰ)
1  (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} A
1  (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)  1UE
1  (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)                2&E
1  (4)                  ∀z(~鼻za→~長z)  2&E
1  (5)                     ~鼻ca→~長c   4UE
 6 (6)                     ~鼻ca& 長c   A
 6 (7)                     ~鼻ca       6&E
16 (8)                          ~長c   57MPP
 6 (9)                           長c   6&E
16 (ア)                       ~長c&長c   89&I
1  (イ)                   ~(~鼻ca& 長c)  6アRAA
1  (ウ)                 ∀z~(~鼻za& 長z)  イUI
1  (エ)                 ~∃z(~鼻za& 長z)  ウ量化子の関係
1  (オ)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z)  3エ&I
1  (カ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)} オUI
(ⅱ)
1  (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)} A
1  (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z)  1UE
1  (3)   象a→∃y(鼻ya&長y)                2&E
1  (4)                 ~∃z(~鼻za& 長z)  2&E
1  (5)                 ∀z~(~鼻za& 長z)  4量化子の関係
1  (6)                   ~(~鼻ca& 長c)  5UE
 7 (7)                     ~鼻ca       A
  8(8)                           長c   A 
 78(9)                     ~鼻ca& 長c   78&I
178(ア)                   ~(~鼻ca& 長c)&
                          (~鼻ca& 長c)  89&I
17 (イ)                          ~長c   8アRAA
1  (ウ)                     ~鼻ca→~長c   7イCP
1  (エ)                  ∀z(~鼻ca→~長c)  ウUI
1  (オ)   象a→∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻ca→~長c)  3エ&I
1  (カ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} オUI
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①=② である。
従って、
(12)
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ~∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~~∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
③=④ である。
然るに、
(13)
二重否定」により、
~~∃z(~鼻zx& 長z) は、
④   ∃z(~鼻zx& 長z) に、「等しい」。
従って、
(12)(13)により、
(14)
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
③=④ である。
従って、
(11)(14)により、
(15)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
然るに、
(16)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
に於いて、
①と③ は、「矛盾」する。
従って、
(15)(16)により、
(17)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①と④ は、「矛盾」する。
従って、
(09)(17)により、
(18)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない
④ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、あるzはxの鼻ではないが、zは長い
に於いて、
①と④ は、「矛盾」する。
然るに、
(19)
④ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、あるzはxの鼻ではないが、zは長い
といふことは、
④ 象は鼻は長く、鼻以外も長い。
といふ、ことである。
然るに、
(20)
④ 象は鼻は長く、鼻以外も長い。
といふことは、
④ 象は鼻長い。
といふ、ことである。
従って、
(09)(18)(20)により、
(21)
① 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
①と④ は、「矛盾」する。
従って、
(22)
「番号」を付け直すと、
① 象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
②と③ は、「矛盾」する。
然るに、
(23)
(ⅱ)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1(2)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
1(3)   象a→∃y(鼻ya&長y)               2&E
1(4)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)}              3UI
(ⅲ)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)} A
1(2)   象a→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)  1UE
1(3)   象a→∃y(鼻yx&長y)               2&E
1(4)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)}              3UI
従って、
(23)により、
(24)
① 象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
② ならば、① であって、
③ ならば、① である。
従って、
(24)により、
(25)
① 象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
①と② は、「矛盾」せず、
①と③ も、「矛盾」しない。
然るに、
(26)
① 鼻は長い。
といふのであれば、
② 鼻以外については、「何も、言ってゐない。」
従って、
(27)
① 象は鼻は長い。
といふのであれば、
③ 象の鼻以外については、「何も、言ってゐない。」
従って、
(26)(27)により、
(28)
① 象は鼻長い。
② 象は鼻が長い。
③ 象は鼻も長い。
に於いて、
①と② は、「矛盾」せず、
①と③ も、「矛盾」しない。
従って、
(25)(28)により、
(29)
① 象は鼻長い。
② 象は鼻長い。
③ 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}
といふ「述語論理式」に、すなはち、
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長い。
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、あるzはxの鼻ではないが、zは長い。
といふ「意味」である所の、「述語論理式」に、相当する。
従って、
(29)により、
(30)
「普通の日本語」で言へば、
① 象は鼻は長い=象は鼻は長い。
② 象は鼻長い=象は鼻は長く、鼻以外は長くない
③ 象は鼻長い=象は鼻は長く、鼻以外も長い。
といふ、ことになる。


(318)「象は鼻が長い」と「鼻は象が長い」の述語論理。

2019-08-10 13:29:34 | 「鏡の中の、上下左右」

(01)
①{象の体の、各部分}を「変域(ドメイン)」とすると、
①「象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。」
従って、
(01)により、
(02)
① 象は鼻長い。⇔
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
(03)
②{象、兎、馬、キリン}を「変域(ドメイン)」とすると、
②「鼻は象が長く、耳は兎が長く、顔は馬が長く、首はキリンが長い。」
従って、
(03)により、
(04)
② 鼻は象が長い。⇔
② 鼻は象は長く、象以外(兎、馬、キリン)は長くない。⇔
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}⇔
② すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、xがyの鼻であって、yが象でないならば、xは長くない。
然るに、
(05)
(ⅰ)
1     (1)象は鼻長い。                        A
1     (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2    (2)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。              A
 2    (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)有る兎は象である。                      A
  3   (〃)∃x(兎x&象x)                      A
  3   (〃)あるxは兎であって象である。                 A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  1UE
   6  (6)   兎a&象a                       A
   6  (7)   兎a                          6&E
   6  (8)      象a                       6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  48MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  57MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)               9&E
 2 6  (ウ)      ∃y(耳ya&長y)               ア&E
    エ (エ)         鼻ba&長b                A
     オ(オ)         耳ba&長b                A
1  6  (カ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
1  6  (キ)                    ~鼻ba→~長b   カUE
 2 6  (ク)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    耳ba→~鼻ba   クUE
    オ (コ)                    耳ba        オ&E
 2 6オ (サ)                        ~鼻ba   ケコMPP
12 6オ (シ)                         ~長b   キサコMPP
    オ (ス)             長b                オ&E
12 6オ (セ)             長b&~長b            シス&I
12 6  (ソ)             長b&~長b            ウオセEE
123   (タ)             長b&~長b            36ソEE
12    (チ)~∃x(兎x&象x)                     3タRAA
12    (ツ)∀x~(兎x&象x)                     チ量化子の関係
12    (テ)  ~(兎a&象a)                     ツUE
12    (ト)  ~兎a∨~象a                      テ、ド・モルガンの法則
12    (ナ)   兎a→~象a                      ト含意の定義
12    (ニ)∀x(兎x→~象x)                     ナUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ナUI
12    (〃)兎は象ではない。                       ナUI
(ⅱ)
1   (1)鼻は象長い。                         A
1   (〃)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x} A
 2  (2)兎は象ではないが、兎には鼻がある。               A
 2  (〃)∃y∃x(兎y&~象y&鼻xy)                A
1   (3)  ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(鼻ay&~象y)→~長a} 1UE
1   (4)     (鼻ab&象b)→長a&(鼻ab&~象b)→~長a  3UE
1   (5)                 (鼻ab&~象b)→~長a  4&E
  6 (6)  ∃x(兎b&~象b&鼻xb)                A
   7(7)     兎b&~象b&鼻ab                 A
   7(8)     兎b                         8&E
   7(9)        ~象b                     8&E
   7(ア)            鼻ab                 8&E
   7(イ)                  鼻ab&~象b       アイ&I
1  7(ウ)                           ~長a  4ウMPP
1  7(エ)     兎b&鼻ab                     9ア&I
1  7(オ)     兎b&鼻ab&~長a                 ウエ&I
1  7(カ)  ∃x(兎b&鼻xb&~長x)                オEI
1 6 (キ)  ∃x(兎b&鼻xb&~長x)                67カEE
1 6 (ク)∃y∃x(兎y&鼻xy&~長x)                キEI
12  (ケ)∃y∃x(兎y&鼻xy&~長x)                26クEE
12  (〃)あるyは兎であって、あるxはyの鼻であって、xは長くない。   26クEE
12  (〃)鼻が短い兎がゐる。                       26クEE
って、
(01)~(05)により、
(06)
それぞれ、
① 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻は象長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(07)
② 鼻は象長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
であるならば、
③ 象は鼻長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
であっても、良いのではと、思はれるかも、知れない。
然るに、
(08)
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於いて、「左辺」である、
③ 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
③{象以外の動物}に関しては、「何も、述べてはゐない」。
然るに、
(09)
③ 象は鼻長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於ける、「右辺」である、
③ ∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
の場合は、
③                  (~象x&鼻yx)→~長y=象以外の動物の鼻は長くない
に於いて、
③{象以外の動物}に、「言及してゐる」。
従って、
(08)(09)により、
(10)
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
の場合は、
③「左辺」「右辺」 であって、
③「左辺」=「右辺」 ではない
従って、
(06)~(10)により、
(11)
① 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻は象が長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於いて、
① は、「正しく」、
② も、「正しく」、
③ は、「正しくはない」。
従って、
(12)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
といふ「日本語」の「論理構造」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
といふ風に、「同じ」ではない
然るに、
(13)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
に於いて、
①「述語」は「長い」であって、
②「述語」は「長い」である。
然るに、
(14)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
に於いて、
①「長い」のは、「象は」ではなく、「鼻が」であって、
②「長い」のは、「象が」ではなく、「鼻は」である。
然るに、
(15)
学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① 象は鼻が長い。
に於いて、
①「鼻」が、「長い」に対する「主格の補語」であるならば、
②「鼻」は、「長い」に対する「主格の補語」でなければ、ならない。
従って、
(15)(16)により、
(17)
三上章先生が言ふやうに、単純に、
「~」は「主題は」であって、
「~」は「主格は」である。といふことには、ならない。
(18)
Antonius(主格) amabat(動詞) Cleopatram=アントニウス(主語、クレオパトラ愛してゐた。
Antonium amabat(動詞) Cleopatra(主格) =アントニウス、クレオパトラ(主語愛してゐた。
従って、
(18)により、
(19)
「ラテン語」等に於いて、「一番簡単な、主格の定義」は、
「述語動詞の主語」を「指定」するのが「主格」である。といふことになる。
従って、
(18)(19)により、
(20)
Antonius(主格) amabat(動詞) Cleopatram=アントニウス(主語、クレオパトラを愛してゐた。
Antonium amabat(動詞) Cleopatra(主格) =アントニウスを、クレオパトラ(主語愛してゐた。
の場合は、「主語とは、すなはち、主格である。」
従って、
(21)
主語」と「主格」が「別のもの」である。といふ「前提」が、私には良く分からない。


(317)「鼻は象が長い。」の「鼻は」は「主格」であって「主題」ではない。

2019-08-09 19:32:45 | 象は鼻が長い、述語論理。

(01)
{象、兎、馬、キリン}を「変域(ドメイン)」とすると、
「鼻は象長く、耳は兎長く、顔は馬長く、首はキリン長い。」
従って、
(01)により、
(02)
① 鼻は、象長い。⇔
① 鼻は、象は長く、象以外(兎、馬、キリン)は長くない。⇔
① ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}⇔
① すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、xがyの鼻であって、yが象でないならば、xは長くない。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1    (1)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x} A
1    (2)  ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(鼻ay&~象y)→~長a} 1UE
1    (3)     (鼻ab&象b)→長a&(鼻ab&~象b)→~長a  2UE
1    (4)     (鼻ab&象b)→長a                3&E
1    (5)                 (鼻ab&~象b)→~長a  4&E
 6   (6)                            長a  A
 6   (7)                          ~~長a  6DN
16   (8)                ~(鼻ab&~象b)      56MTT
16   (9)                 ~鼻ab∨ 象b       8ド・モルガンの法則
16   (ア)                  鼻ab→ 象b       9含意の定義
1    (イ)              長a→(鼻ab→ 象b)      6アCP
  ウ  (ウ)              長a& 鼻ab           A
  ウ  (エ)              長a                ウ&E
1 ウ  (オ)                  鼻ab→ 象b       イエMPP
  ウ  (カ)                  鼻ab           ウ&E
1 ウ  (キ)                       象b       カキMPP
1    (ク)             (長a& 鼻ab)→象b       ウキCP
   ケ (ケ)                      ~象b       A
1  ケ (コ)            ~(長a& 鼻ab)          クケMTT
1  ケ (サ)             ~長a∨~鼻ab           コ、ド・モルガンの法則
1  ケ (シ)              長a→~鼻ab           サ含意の定義
1    (ス)             ~象b→(長a→~鼻ab)      ケシCP
    セ(セ)             ~象b& 長a            A
1   セ(ソ)             ~象b                セ&E
1   セ(タ)                  長a→~鼻ab       スゾMPP
    セ(チ)                  長a            セ&E
1   セ(ツ)                     ~鼻ab       タチMPP
1    (テ)            (~象b&長a)→~鼻ab       セツ
1    (ト)     (鼻ab&象b)→長a&(~象b&長a)→~鼻ab  4テ
1    (ナ)  ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(~象y&長a)→~鼻ay} トUI
1     (ニ)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy} ナUI
(ⅱ)
1     (1)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy} A
1    (2)  ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(~象y&長a)→~鼻ay} 1UE
1    (3)     (鼻ab&象b)→長a&(~象b&長a)→~鼻ab  2UE
1    (4)     (鼻ab&象b)→長a                3&E
1    (5)                 (~象b&長a)→~鼻ab  3&E
 6   (6)                           鼻ab  A
 6   (7)                         ~~鼻ab  6DN
16   (8)                ~(~象b&長a)       67MTT
16   (9)                  象b∨~長a        8ド・モルガンの法則
16   (ア)                ~~象b∨~長a        9DN
16   (イ)                 ~象b→~長a        ア含意の定義
1    (ウ)            鼻ab→(~象b→~長a)       6ウCP
  エ  (エ)            鼻ab& ~象b            A
  エ  (オ)            鼻ab                 エ&E
1 エ  (カ)                 ~象b→~長a        ウオMPP
  エ  (キ)                 ~象b            エ&E
1 エ  (ク)                     ~長a        カキMPP
1    (ケ)           (鼻ab&~象b)→~長a        エクCP
1    (コ)     (鼻ab&象b)→長a&(鼻ab&~象b)→~長a  4ケ&I
1    (サ)  ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(鼻ay&~象y)→~長a} コUI
1    (シ)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x} サUI
従って、
(03)により、
(04)
① ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(01)により、
(05)
② yが兎であって、  xが長いならば、xは、yの鼻ではなく耳であり、
② yが馬であって、  xが長いならば、xは、yの鼻ではなく顔であり、
② yがキリンであって、xが長いならば、xは、yの鼻ではなく首であり、
それ故に、
① xがyの鼻であって、yが象以外(兎、馬、キリン)であるならば、xは長くない
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 鼻は、象長い。⇔
① 鼻は、象が長く、象以外(兎、馬、キリン)は長くない。⇔
① ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}⇔
① すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、xがyの鼻であって、yが象でないならば、xは長くない。
② 鼻は、象長い。⇔
② 鼻は、象が長く、象以外(兎、馬、キリン)で長いとすれば、鼻ではない。⇔
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy}⇔ 
② すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、yが象ではなくて、xが長いならば、xはyの鼻ではない。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(06)により、
(07)
② 鼻は、象長い。
に於いて、
②「長い」のは、「(x)」であって、
②「長い」のは、「象(y)」ではない
従って、
然るに、
(08)
「象」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② 鼻、象が長い。
③ 象は、鼻長い。
に於いて、
②「長い(述語)」の「主格の補語」は、「象」であって、
②「長い(述語)」の「主格の補語」は、「象」である。
従って、
(09)により、
(10)
② 鼻、象が長い。
に於いて、
②「長い(述語)」の「主格の補語」は、「象」であって、「象」ではない


(316)「象は鼻が長い」の「述語論理」の「否定命題」。

2019-08-06 11:42:20 | 象は鼻が長い、述語論理。

(01)
① 象は鼻長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
従って、
(01)により、
(02)
② 象は鼻長い。といふわけではない。⇔
② ~∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。といふわけではない。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1   (1)~∀x{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} A
1   (2)∃x~{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} 1量化子の関係
 3  (3)  ~{ 象a→ ∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)} A
 3  (4)  ~{~象a∨ ∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)} 3含意の定義
 3  (5)     象a&~∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)  4ド・モルガンの法則
 3  (6)     象a                            5&E
 3  (7)        ~∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)  5&E
 3  (8)        ~∃y(鼻ya&長y)∨~∀z(~鼻za→~長z)  7ド・モルガンの法則
 3  (9)         ∃y(鼻ya&長y)→~∀z(~鼻za→~長z)  8含意の定義
  ア (ア)         ∃y(鼻ya&長y)                A
 3ア (イ)                    ~∀z(~鼻za→~長z)  9アMPP
 3ア (ウ)                    ∃z~(~鼻za→~長z)  イ量化子の関係
   エ(エ)                      ~(~鼻ca→~長c)  A
   エ(オ)                      ~( 鼻ca∨~長c)  エ含意の定義
   エ(カ)                       (~鼻ca& 長c)  オ、ド・モルガンの法則
   エ(キ)                     ∃z(~鼻za& 長z)  カEI 
 3ア (ク)                     ∃z(~鼻za& 長z)  ウエキEE 
 3  (ケ)         ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)  アクCP 
 3  (コ)     象a& ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)  6ケ&I
 3  (サ)  ∃x{象x& ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} コEI
1   (シ)  ∃x{象x& ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} 23サEE
(ⅱ)
1   (1)~∃x{象x&  ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} A
1   (2)∀x~{象x&  ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} 1量化子の関係
1   (3)  ~{象a&  ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 2UE
1   (4)   ~象a∨~{∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 3ド・モルガンの法則
1   (5)    象a→~{∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 4含意の定義
 6  (7)    象a                             A
16  (8)      ~{ ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 57MPP
16  (9)      ~{~∃y(鼻ya&長y)∨ ∃z(~鼻za& 長z)} 8含意の定義
16  (ア)         ∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z)  9ド・モルガンの法則
16  (イ)         ∃y(鼻ya&長y)                ア&E
16  (ウ)                    ~∃z(~鼻za& 長z)  ア&E
16  (エ)                    ∀z~(~鼻za& 長z)  ウ含意の定義
16  (オ)                      ~(~鼻ca& 長c)  エUE
16  (カ)                       ~~鼻ca∨~長c   オ、ド・モルガンの法則
16  (キ)                        ~鼻ca→~長c   カ、含意の定義
16  (ク)                     ∀z(~鼻za→~長z)  キUI
16  (ケ)         ∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)  イク&I
1   (コ)      象a→∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)  6ケCP
1   (サ)   ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} コUI
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
に於いて、
① を「否定」すると、
② になり、
② を「否定」すると、「二重否定」により、
① になる(戻る)。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
① 象は鼻長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
の「否定」は、
② ある象は、鼻が長いならならば、鼻以外も長い。⇔
② ∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}⇔   
② あるxは象であり、あるyがxの鼻であって長いならば、あるzはxの鼻ではないが、長い。
である。
従って、
(05)により、
(06)
① すべての象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② ある象は鼻以外も長い=∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
① の「否定」は、② であり、
② の「否定」は、① である。
然るに、
(07)
ある象は鼻以外も長い = ∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)}。
③ 鼻以外も長い象はゐない=~∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)}。
に於いて、
② の「否定」は、③ であり、
③ の「否定」は、② である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
① すべての象は鼻が長い = ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 鼻以外も長い象はゐない=~∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
①=③ である。
然るに、
(09)
③ 鼻以外も長い象はゐない
といふのであれば、そのときに限って、
③ すべての象は、鼻以外は長くない。 
従って、
(08)(09)により、
(10)
① すべての象は鼻長い。
③ すべての象は鼻以外は長くない
に於いて、
①=③ である。
従って、
(10)により、
(11)
① 鼻長い。
③ 鼻以外は長くない
に於いて、
①=③ である。
従って、
(11)により、
(12)
① 私理事長です。
③ 私以外は理事長ではない
に於いても、
①=③ である。
然るに、
(13)
③ 私以外は理事長ではない
の「対偶(Contraposition)」は、
理事長は私です。
である。
従って、
(12)(13))により、
(14)
① 私理事長です。
理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(15)
よく知られているように、「私理事長です」は語順を変え、
 理事長は、私です。
と直して初めて主辞賓辞が適用されのである。また、かりに大倉氏が、
 タゴール記念会は、私理事です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念館」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① タゴール記念会は私理事長です。
② タゴール記念会は理事長は私です。
③ タゴール記念会は私以外は理事長ではない
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(16)により、
(17)
① 象は鼻長い。
② 象は長いのは鼻である。
③ 象は鼻以外は長くない
に於いても、
①=②=③ である。
従って、
(17)により、
(18)
① 象は鼻長い。
② 象は鼻以外は長くない
に於いても、
①=② である。
然るに、
(19)
「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
然るに、
(20)
② 鼻が長い。
に於いて、
②「鼻が」が、「長い」の「主格の補語」であるならば、
② 象は鼻が長い。
に於いて、
②「象は」も、「鼻が長い」の「主格の補語」であるに、違ひない。
従って、
(21)
「象」は、「主」であり、
「鼻」は、「主」である。
といふ「説明」が、私には、良く分からない。


(315)「括弧」と「返り点」(Ⅱ)。

2019-08-05 16:00:47 | 「鏡の中の、上下左右」

(01)
この漢語文法の基礎となっている文法的な関係として、次の四つの関係をあげることができる。
(一)主述関係  主語 ―  述語
(二)修飾関係  修飾語―被修飾語
(三)補足関係  叙述語―  補語
(四)並列関係  並列語― 並列語
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、281・282頁改)
然るに、
(02)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」に於いて、
① に有るのは、「(三)補足関係」だけであり、
② に有るのは、「(二)修飾関係・(三)補足関係」である。
然るに、
(03)
「(二)修飾関係」は、「国語(訓読)の語順」と「同じ」であるが、
「(三)補足関係」は、「国語(訓読)の語順」と「同じ」ではない
従って、
(02)(03)により、
(04)
「国語(訓読)の語順」だけを考へるのであれば、
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」に於いて、
① に有るのは、「(三)補足関係」だけであり、
② に有るのも、「(三)補足関係」だけである。
然るに、
(05)
① 不〔読(文)〕。
に於いて、
① 不〔 〕⇒〔 〕不
① 読( )⇒( )読
といふ「移動」を行ふと、
① 不〔読(文)〕⇒
① 〔(文)読〕不=
① 〔(文を)読ま〕ず。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
(06)
② 不〔常読(漢文)〕。
に於いて、
② 不〔 〕⇒〔 〕不
② 読( )⇒( )読
といふ「移動」を行ふと、
② 不〔常読(漢文)〕⇒
② 〔常(漢文)読〕不=
② 〔常には(漢文を)読ま〕ず。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(07)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(03)~(07)により、
(08)
① 不〔読(文)〕。
② 不〔常読(漢文)〕。
に於ける、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「括弧」は、
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」の、「補足構造」と、「訓読の語順」の、両方を、表してゐる。
従って、
(09)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文の補足構造」は、両方とも、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
である。
従って、
(09)により、
(10)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文の補足構造」は、「等しい」。
然るに、
(11)
① 不 文。
② 不 常読 漢文
従って、
(11)により、
(12)
① 不読文(文を読まず)。
② 不常読漢文(常には漢文を読まず)。
に付く「返り点」は、
① レ レ
② 三 二 一
である。
従って、
(09)(12)により、
(13)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文の補足構造」は、両方とも、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
であるが、「返り点」は、
① レ レ
② 三 二 一
といふ風に、「同一」ではない
従って、
(09)~(13)により、
(14)
① 不読文。
② 不常読漢文。
に付く「返り点」である、
① レ レ
② 三 二 一
の内、「少なくとも一方」は、「漢文の補足構造」を、表してはゐないし、「結論」だけを言へば、
① レ レ
② 三 二 一
は、「両方とも」、「漢文の補足構造」を、表してはゐない。
従って、
(08)(14)により、
(15)
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「 括弧 」は、「漢文の補足構造」と「漢文の語順」を表してゐるものの、
① レ レ
② 三 二 一
といふ「返り点」は、「漢文の語順」だけを表してゐる。
然るに、
(16)
① 不 文。
② 不 常読 漢文
といふ「返り点」が分かれば、
① 文を読まず。
② 常には漢文を読まず。
といふ「訓読」が分かる。
然るに、
(08)により、
(17)
① 文を読まず。
② 常には漢文を読まず。
といふ「訓読」が分かれば、
① 不〔読(文)〕。
② 不〔常読(漢文)〕。
といふ「括弧」が分かる。
然るに、
(08)により、
(18)
① 不〔読(文)〕。
② 不〔常読(漢文)〕。
に於ける、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「括弧」は、
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」の、「補足構造」を、表してゐる。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
「任意の漢文」の、
「返り点」が分かれば、
「 括弧 」が分かり、
「 括弧 」が分かれば、
「その漢文の、補足構造」が、分かる。
従って、
(19)により、
(20)
「 括弧 」は、「直接」、「漢文の補足構造」を、表してゐて、
「返り点」は、「括弧」を通じて、「間接的」に、「漢文の補足構造」を、表してゐる。
然るに、
(21)

然るに、
(22)
① 不〔 読( 文) 〕⇒〔   ( 文を)読ま〕ず。
② 不〔 読(漢文) 〕⇒〔   (漢文を)読ま〕ず。
③ 不〔常読( 文) 〕⇒〔常には( 文を)読ま〕ず。
④ 不〔常読(漢文) 〕⇒〔常には(漢文を)読ま〕ず。
⑤ 非〔 読(文)者 〕⇒〔   ( 文を)読む者に〕非ず。
⑥ 非〔 読(漢文)者〕⇒〔   (漢文を)読む者に〕非ず。
⑦ 非〔常読( 文)者〕⇒〔常には( 文を)読む者に〕非ず。
⑧ 非〔常読(漢文)者〕⇒〔常には(漢文を)読む者に〕非ず。
従って、
(05)(06)(08)(21)(22)により、
(23)
① 不読文。
② 不読漢文。
③ 不常読文。
④ 不常読漢文。
⑤ 非読文者。
⑥ 非読漢文者。
⑦ 非常読文者。
⑧ 非常読漢文者。
といふ「漢文の補足構造」は、
① 不〔読(文)〕。
② 不〔読(漢文)〕。
③ 不〔常読(文)〕。
④ 不〔常読(漢文)〕。
⑤ 非〔読(文)者〕。
⑥ 非〔読(漢文)者〕。
⑦ 非〔常読(文)者〕。
⑧ 非〔常読(漢文)者〕。
に於ける、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
③〔 ( ) 〕
④〔 ( ) 〕
⑤〔 ( ) 〕
⑥〔 ( ) 〕
⑦〔 ( ) 〕
⑧〔 ( ) 〕
である。
従って、
(08)(09)(10)(23)により、
(24)
① 不読文。
② 不読漢文。
③ 不常読文。
④ 不常読漢文。
⑤ 非読文者。
⑥ 非読漢文者。
⑦ 非常読文者。
⑧ 非常読漢文者。
といふ「漢文の補足構造」は、「8つとも、全て、等しい」。
然るに、
(25)
① 不読文。
② 不読漢+文。
③ 不常+読文。
④ 不常+読漢+文。
⑤ 非読文+者。
⑥ 非読漢+文+者。
⑦ 非常+読文+者。
⑧ 非常+読漢+文+者。
といふ風に、書けば、

②    +
③   +
④   +  +
⑤    +
⑥    + +
⑦   +  +
⑧   +  + +
といふ「+」は、「(二)修飾関係」を、表してゐる。
従って、
(25)により、
(26)
① 不読文。
② 不読漢文。
③ 不常読文。
④ 不常読漢文。
⑤ 非読文者。
⑥ 非読漢文者。
⑦ 非常読文者。
⑧ 非常読漢文者。
といふ「漢文の修飾構造」は、「8つとも、全て、同じではない」。


(314)「括弧」と「返り点」。

2019-08-04 16:38:35 | 返り点、括弧。

(01)
① 楚人有鬻盾與矛者。誉之曰、盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也=
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)弗る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざる也=
⑤ 楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
然るに、
(02)
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也。
に於いて、
② 有[ ]→[ ]有
② 鬻〔 〕→〔 〕鬻
② 與( )→( )與
② 誉( )→( )誉
② 莫( )→( )莫
② 誉( )→( )誉
② 於( )→( )於
② 無( )→( )無
② 不( )→( )不
② 以( )→( )以
② 陥( )→( )陥
② 弗( )→( )弗
② 能( )→( )能
といふ「(からへの)移動」を行ふと、
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
といふ「語順」になり、
(03)
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
に於いて、
③ 有[ ]←[ ]有
③ 鬻〔 〕←〔 〕鬻
③ 與( )←( )與
③ 誉( )←( )誉
③ 莫( )←( )莫
③ 誉( )←( )誉
③ 於( )←( )於
③ 無( )←( )無
③ 不( )←( )不
③ 以( )←( )以
③ 陥( )←( )陥
③ 弗( )←( )弗
③ 能( )←( )能
といふ「(からへの)移動」を行ふと、
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也。
といふ「語順」に戻る。
然るに、
(04)
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
に対して、「平仮名を補ふ」と、
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)弗る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざる也。
といふ「訓読」が、成立する。
cf.
與(前置詞)=と(格助詞・後置詞)。
然るに、
(05)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
例へば、
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也。
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
に於ける、
②[ 〔 ( )〕 ]( )( )( )( )〔 ( ) 〕( )( )〔 ( ) 〕
③[ 〔 ( )〕 ]( )( )( )( )〔 ( ) 〕( )( )〔 ( ) 〕
といふ「括弧」は、それぞれ、
②「漢文の補足構造」と、
③「国語の補足構造」を、表してゐて、尚且つ、
③ に関しては、
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)弗る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざる也。
といふ「訓読の語順」を、表してゐる。
従って、
(02)(06)により、
(07)
例へば、
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。
であれば、
② 有[ ]→[ ]有
② 鬻〔 〕→〔 〕鬻
② 與( )→( )與
といふ風に、
②「括弧のにある一語」は、「訓読」では、
③「括弧のにあるもの」と見做して、「その順番」で読むならば、
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。
といふ「訓読の語順」を、得ることになる。
然るに、
(08)
② 128[6〔35(4)〕7]。
に於いて、
② 8[ ]→[ ]8
② 6〔 〕→〔 〕6
② 5( )→( )5
といふ「(左から右への)移動」を行ふと、
② 128[6〔35(4)〕7]→
③ 12[〔3(4)5〕67]8=
③ 1 2 3 4 5 6 7 8。
といふ「順番」になる。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。
に於ける、
②[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、「訓読」に於ける、
② 128 6 35 4  7 。
といふ「順番」を表してゐる。
然るに、
(10)
② 楚人有鬻盾與矛者。
に付く「返り点」は、
② 楚人有 盾與一レ 矛者
すなはち、
② 下 二 一レ 上
である。
従って、
(09)(10)により、
(11)
②[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、例へば、
② 下 二 一レ 上
といふ「返り点」に相当する。
然るに、
(12)
②[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、その他にも、少なくとも、
② レ レ レ
② レ 二 一レ
② レ レ 二 一
② レ 三 二 一
② レ 二 レ 一
② 四 三 二 一
② 乙 下 二 一 上 甲
といふ「返り点」に相当する。
従って、
(12)により、
(13)
「(レ点を含む)返り点」は、「括弧」よりも、「複雑」である。
(14)
例へば、
② 非[不〔 読( 書)〕]→[   〔(書を )読ま〕不るに]非ず。
② 非[不〔常読(漢文)〕]→[〔常には(漢文を)読ま〕不るに]非ず。
に於いて、「両者の補足構造」は、「等しい」ものの、
② レ レ レ
② レ 三 二 一
といふ風に、「返り点」は、「同じ」にならない。
従って、
(14)により、
(15)
返り点」は、直接には、「漢文補足構造」を、表してはゐない
従って、
(13)(15)により、
(16)
「(レ点を含む)返り点」は、「括弧」よりも、「複雑」であって、尚且つ、「括弧」とは異なり、「返り点」は、直接には、「漢文補足構造」を表してはゐない


(313)「矛盾・韓非子」の「述語論理」(Ⅲ)。

2019-08-04 09:20:59 | 漢文・述語論理

(01)
― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
然るに、
(02)
1       (1)∃x(盾x)&∃y(矛y)      A
1       (2)∃x(盾x)             1&E
 3      (3)   盾a              A
1       (4)       ∃y(矛y)      1&E
  5     (5)          矛b       A
   6    (6)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} A
   6    (7)   矛b→∃x(盾x&~陥bx)  6UE
  56    (8)      ∃x(盾x&~陥bx)  57MPP
    9   (9)         盾a&~陥ba   A
    9   (ア)            ~陥ba   9&E
     イ  (イ)∀x{盾x→∃y(矛y& 陥yx)} A
     イ  (ウ)   盾a→∃y(矛y& 陥ya)  イUE
 3   イ  (エ)      ∃y(矛y& 陥ya)  3ウMPP
      オ (オ)         矛b& 陥ba   A
      オ (カ)             陥ba   オ&E
    9 オ (キ)        ~陥ba&陥ba   アカ&I
  56  オ (ク)        ~陥ba&陥ba   89キEE
 356 イ  (ケ)        ~陥ba&陥ba   エオクEE
1 56 イ  (コ)        ~陥ba&陥ba   23ケEE
1  6 イ  (サ)        ~陥ba&陥ba   45コEE
   6 イ  (シ)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)}  1サRAA
   6 イ  (ス) ~∃x(盾x)∨~∃y(矛y)   シ、ド・モルガンの法則
   6 イ  (セ)  ∃x(盾x)→~∃y(矛y)   ス含意の定義
      ソ (ソ)          ∃y(矛y)   A
      ソ (タ)        ~~∃y(矛y)   ソDN
   6 イソ (チ) ~∃x(盾x)           セタMTT
   6 イ  (ツ)  ∃y(矛y)→~∃x(盾x)   ソチCP
   6 イ  (テ)  ∃x(盾x)→~∃y(矛y)&
             ∃y(矛y)→~∃x(盾x)   セツ&I
(03)
(ⅰ)
1       (1)  ∃x(盾x)→~∃y(矛y)  A
 2      (2)  ∃x(盾x)& ∃y(矛y)  A
 2      (3)  ∃x(盾x)          2&E
 2      (4)          ∃y(矛y)  2&E
12      (5)         ~∃y(矛y)  13MPP
12      (6)  ∃y(矛y)&~∃y(矛y)  45&I
1       (7)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 26RAA
(ⅱ)
1       (1)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 26RAA
 2      (2)  ∃x(盾x)          A
  3     (3)          ∃y(矛y)  A
 23     (4)  ∃x(盾x)& ∃y(矛y)  23&I 
123     (5)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 
           &(∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 14&I
12      (6)         ~∃y(矛y)  35RAA
1       (7)  ∃x(盾x)→~∃y(矛y)  26CP
従って、
(03)により、
(04)
①     ∃x(盾x)→~∃y(矛y)
② ~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)}
に於いて、
①=② である。
従って、
(04)により、
(05)
③     ∃x(矛x)→~∃y(盾y)
④ ~{∃x(矛x)& ∃y(盾y)}
に於いて、
③=④ である。
従って、
(02)~(05)により、
(06)
1       (1)∃x(盾x)&∃y(矛y)      A
1       (2)∃x(盾x)             1&E
 3      (3)   盾a              A
1       (4)       ∃y(矛y)      1&E
  5     (5)          矛b       A
   6    (6)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} A
   6    (7)   矛b→∃x(盾x&~陥bx)  6UE
  56    (8)      ∃x(盾x&~陥bx)  57MPP
    9   (9)         盾a&~陥ba   A
    9   (ア)            ~陥ba   9&E
     イ  (イ)∀x{盾x→∃y(矛y& 陥yx)} A
     イ  (ウ)   盾a→∃y(矛y& 陥ya)  イUE
 3   イ  (エ)      ∃y(矛y& 陥ya)  3ウMPP
      オ (オ)         矛b& 陥ba   A
      オ (カ)             陥ba   オ&E
    9 オ (キ)        ~陥ba&陥ba   アカ&I
  56  オ (ク)        ~陥ba&陥ba   89キEE
 356 イ  (ケ)        ~陥ba&陥ba   エオクEE
1 56 イ  (コ)        ~陥ba&陥ba   23ケEE
1  6 イ  (サ)        ~陥ba&陥ba   45コEE
   6 イ  (シ)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)}  1サRAA
   6 イ  (ス) ~∃x(盾x)∨~∃y(矛y)   シ、ド・モルガンの法則
   6 イ  (セ)  ∃x(盾x)→~∃y(矛y)   ス含意の定義
      ソ (ソ)          ∃y(矛y)   A
      ソ (タ)        ~~∃y(矛y)   ソDN
   6 イソ (チ) ~∃x(盾x)           セタMTT
   6 イ  (ツ)  ∃y(矛y)→~∃x(盾x)   ソチCP
   6 イ  (テ)  ∃x(盾x)→~∃y(矛y)&
             ∃y(矛y)→~∃x(盾x)   セツ&I
   6 イ  (ト)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)}&
           ~{∃x(矛x)& ∃y(盾y)}  テ含意の定義
従って、
(06)により、
(07)
(1)ある盾xが存在し、ある矛yが存在する。 と「仮定」して、
(6)すべてのyについて、yが矛ならば、あるxは盾であって、yはxを陥さない。と「仮定」して、
(イ)すべてのxについて、xが盾ならば、あるyは矛であって、yはxを陥す。  と「仮定」すると、
(テ)ある盾xが存在するならば、ある矛yは存在せず、
   ある矛yが存在するならば、ある盾xは存在しない。が故に、
(ト)盾xと矛yが、「同時に、存在する」といふことはない。
然るに、
(08)
夫不可陷之盾与無不陷之矛、不可同世而立。今堯舜之不可両譽、矛盾之説也=
夫不〔可(陷)〕之楯與[無〔不(陷)〕之矛]、不[可〔同(世)而立〕]。今堯舜之不〔可(両譽)〕、矛楯之説也⇒
夫れ〔(陷す)可がら〕不るの楯と[〔(陷さ)不る〕無きの矛]とは、[〔(世を)同じくして立つ〕可から]不。今堯舜の〔(両つながら譽む)可から〕不るは、矛楯の説なり=
いかなる矛であっても、突き通すことが出来ない「盾」と、いかなる盾であってあっても、突き通さないことが無い「矛」とは、同時に存在することはできない。堯と舜とを同時に誉めたたへることが出来ないのは、この「盾と矛の例へ」と同じである。
cf.
儒教思想を批判した韓非は、儒者が堯・舜を、万人を感化した聖人であるとして賞賛するのを反対して、堯が万人を感化したなら、もはや舜はその後をうけて人民を感化する必要はないし、舜が堯にかわって万人を感化する必要があったとするならば、堯は聖人として不十分であったという証拠になる。という。したがって堯・舜ふたりとも聖人であるというのは矛盾であるとして、この話を引用したのである。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、34頁)
従って、
(06)(07)(08)により、
(09)
この場合の「韓非子の説」は、「漢文」としても、「日本語」としても、「述語論理」としても、「正しい」。


(312)「他ならぬ君に踊って欲しい。」の「述語論理」と「強調形」と「ラテン語」。

2019-08-03 06:09:05 | 論理

(01)
(ⅰ)
1   (1)∃x∃y{我x&汝y&∀z(欲踊xz→z=y}   A
 2  (2)  ∃y{我a&汝y&∀z(欲踊az→z=y}   A
  3 (3)     我a&汝b&∀z(欲踊az→z=b)   A
  3 (4)     我a&汝b                3&E
  3 (5)           ∀z(欲踊ac→c=b)   3&E
  3 (6)              欲踊ac→c=b    5UE
   7(7)                   c≠b    A
  37(8)             ~欲踊ac        67MTT
  3 (9)              c≠b→~欲踊ac   78CP
  3 (ア)           ∀z(z≠b→~欲踊az)  9UI
  3 (イ)     我a&汝b&∀z(z≠b→~欲踊az)  4ア&I
  3 (ウ)  ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az)} イEI
 2  (エ)  ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az)} 23ウEE
 2  (オ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} エEI
1   (カ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} 12オEE
(ⅱ)
1   (1)∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} 1
 2  (2)  ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az)} A
  3 (3)     我a&汝b&∀z(z≠y→~欲踊az)  A
  3 (4)     我a&汝b                3&E
  3 (5)           ∀z(z≠y→~欲踊az)  3&E
  3 (6)              c≠y→~欲踊ac   5UE
   7(7)                   欲踊ac   A
   7(8)                 ~~欲踊ac   7DN
  37(9)            ~(c≠y)        68MTT
  37(ア)              c=y         6DN
  3 (イ)              欲踊ac→c=y    7アCP
  3 (ウ)           ∀z(欲踊az→z=b)   イUI
  3 (エ)     我a&汝b&∀z(欲踊az→z=b)   4ウ&I
  3 (オ)  ∃y{我a&汝y&∀z(欲踊az→z=y}   エEI
 2  (カ)  ∃y{我a&汝y&∀z(欲踊az→z=y}   23オEE
 2  (キ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(欲踊xz→z=y}   カEI
1   (ケ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(欲踊xz→z=y}   12キEE
従って、
(01)により、
(02)
① ∃x∃y{我x&汝y&∀z(  欲踊xz→z=y)}
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
(ⅱ)
1   (1) ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz}  A
 2  (2)   ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az}  A
  3 (3)      我a&汝b&∀z(z≠b→~欲踊az)  A
  3 (4)      我a&汝b                3&E
  3 (5)            ∀z(z≠b→~欲踊az)  3&E
  3 (6)               c≠b→~欲踊ac   5UE
  3 (7)              ~c≠b∨~欲踊ac   6含意の
  3 (8)             ~(c≠b& 欲踊ac)  7ド・モルガンの法則
  3 (9)           ∀z~(z≠b& 欲踊az)  8UI 
  3 (ア)           ~∃z(z≠b& 欲踊az)  9量化子の関係
  3 (イ) ~~(我a&汝b)                 4DN
  3 (ウ) ~~(我a&汝b)&~∃z(z≠b& 欲踊az)  9イ&I
  3 (エ)~{~(我a&汝b)∨ ∃z(z≠b& 欲踊az)} ウ、ド・モルガンの法則
  3 (オ)~{  我a&汝b → ∃z(z≠b& 欲踊az)} エ含意の定義
  3 (カ)  ∃y~{我a&汝y→∃z(z≠y& 欲踊az)} オEI
 2  (キ)  ∃y~{我a&汝y→∃z(z≠y& 欲踊az)} 23カEE
 2  (ク)∃x∃y~{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} キEI
1   (ケ)∃x∃y~{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} 12クEE
1   (コ)∃x~∀y{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} ケ量化子の関係
1   (サ)~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} コ量化子の関係
(ⅲ)
1   (1)~∀x∀y{我x&汝y →∃z(z≠y&欲踊xz)} A
1   (2)∃x~∀y{我x&汝y →∃z(z≠y&欲踊xz)} 1量化子の関係
1   (3)∃x∃y~{我x&汝y →∃z(z≠y&欲踊xz)} 2量化子の関係
 4  (4)  ∃y~{我a&汝y →∃z(z≠y&欲踊az)} A
  5 (5)    ~{我a&汝b →∃z(z≠b&欲踊az)} A
  5 (6)  ~{~(我a&汝b)∨∃z(z≠b&欲踊az)} 5含意の定義
  5 (7)  ~~(我a&汝b)&~∃z(z≠b&欲踊az)  6ド・モルガンの法則
  5 (8)    (我a&汝b)&~∃z(z≠b&欲踊az)  7DN
  5 (9)    (我a&汝b)                8&E
  5 (ア)            ~∃z(z≠b&欲踊az)  8&E
  5 (イ)            ∀z~(z≠b&欲踊az)  ア量化子の関係
  5 (ウ)              ~(c≠b&欲踊ac)  5UE
  5 (エ)              ~c≠b∨~欲踊ac   ウ、ド・モルガンの法則
  5 (オ)               c≠b→~欲踊ac   エ含意の定義
  5 (カ)            ∀z{z≠b→~欲踊az)  オUI
  5 (キ)      我a&汝b&∀z{z≠b→~欲踊az)  9カ&I
  5 (ク)   ∃y{我a&汝y&∀z{z≠y→~欲踊az)} キEI
 4  (ケ)   ∃y{我a&汝y&∀z{z≠y→~欲踊az)} 45クEE
 4  (コ) ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} ケEI
1   (サ) ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} 34コEE
従って、
(03)により、
(04)
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
③ ~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y&欲踊xz)}
に於いて、
②=③ である。
従って、
(02)(04)により、
(05)
① ∃x∃y{我x&汝y&∀z(  欲踊xz→z=y)}
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
③ ~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y&欲踊xz)}
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
① あるxは私であり、あるyは汝であり、すべてのzについて、x(私)がzに踊って欲しいのであれば、そのzはy(汝)である。
② あるxは私であり、あるyは汝であり、すべてのzについて、zが、y(汝)でないならば、x(私)はzに踊って欲しくはない。
③ すべてのxとyについて、xが私であり、yが汝であるならば、あるzがy(汝)でなくて、x(私)がそのzに対して、踊って欲しい、といふことはない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(07)
② あるxは私であり、あるyは汝であり、すべてのzについて、zが、y(汝)でないならば、x(私)はzに踊って欲しくはない。
といふことは、
② 私は、あなた以外に、踊って欲しいとは思はない。
といふ、ことである。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
① ∃x∃y{我x&汝y&∀z(  欲踊xz→z=y)}
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
③ ~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y&欲踊xz)}
といふ「論理式」は、三つとも、
② 私は、あなた以外に、踊って欲しくない
といふ、「意味」である。
然るに、
(09)
② 私は、あなた以外に、踊って欲しくない
といふだけでは、
② 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふことには、ならない。
然るに、
(10)
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない。⇔
② ∃x∃y{我x&汝y&欲踊xy&∀z(z≠y→~欲踊xz)}⇔
② あるxは私であり、あるyは汝であり、x(私)はy(汝)に踊って欲しく、すべてのzについて、zが、y(汝)でないならば、x(私)はzに踊って欲しくはない。
従って、
(10)により、
(11)
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない
といふ「日本語」は、
② ∃x∃y{我x&汝y&欲踊xy&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
といふ「論理式」に、相当する。
然るに、
(12)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に於いて、
①   「あなたに」
を、殊更、「強く発音」するならば、
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない
② ∃x∃y{我x&汝y&欲踊xy&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
といふ「意味」になる。
然るに、
(13)
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない
といふことは、すなはち、
② 私は、あなたに、踊って欲しいのであって、あなた以外に踊って欲しくはない
といふことは、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ、ことである。
従って、
(12)(13)により、
(14)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に於いて、
①   「あなたに
を、殊更、「強く発音」するならば、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「意味」になる。
従って、
(14)により、
(15)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に於いて、
①   「あなたに
を、「強調」するならば、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「意味」になる。
然るに、
(16)
B:Te bene saltare audivi.Salta, obsecro.
A:Alium roga.
B:Te ipsum saltare videre volo.
(白水社、CDエクスプレスラテン語、2004年、66頁)
然るに、
(17)
B:君は踊りがうまいと聞いたことがあるぞ、お願いだ、踊ってくれ。
A:ほかの人に頼めよ。
B:君自身が踊るのを見たいんだよ。
(白水社、CDエクスプレスラテン語、2004年、67頁)
然るに、
(18)
A:ほかの人に頼めよ。
B:君自身が踊るのを見たいんだよ。
といふことは、
A:他の人に頼めよ。
B:私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ、ことである。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
B:Te ipsum saltare videre volo.
といふ「ラテン語」は、
B:私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい(意訳)。
といふ「日本語」に、訳すことが出来る。
然るに、
(20)
B:Te ipsum の、
     ipsum は、ipse の「対格」であって、
             ipse は「強意代名詞」である。
然るに、
(21)
上述の指示代名詞のほかに、「~自身、自体」「他ならぬ~」を意味する強意代名詞の ipse も、三人称代名詞になります(大西英文、はじめてのラテン語、1997年、174頁改)。
従って、
(19)(20)(21)により、
(22)
① Te             saltare videre volo.
② Te ipsum saltare videre volo.
といふ「ラテン語」は、
① 私は、     あなたに、踊って欲しい。
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に、相当する。
従って、
(15)(20)(21)(22)により、
(23)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
① Te saltare videre volo.
に於いて、
① あなたに、   を「強調」し、
① Te(you) を「強調」すると、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「意味」になる。