(01)
よく知られているように、「私が理事長です」は語順を変え、
理事長は、私です。
と直して初めて主辞賓辞が適用されのである。また、かりに大倉氏が、
タゴール記念会は、私が理事です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念館」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)
従って、
(01)により、
(02)
① 私が理事長です。
② 理事長は私です。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
② 理事長は私です。 ⇔ 私以外は理事長ではない。
② 理事長ならば私である。⇔ 私でなければ理事長ではない。
は、「対偶(Contraposition)」である。
従って、
(03)により、
(04)
② 理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① 私が理事長です。
② 理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
① タゴール記念会は、私が理事長です。
② タゴール記念会は、理事長は私です。
③ タゴール記念会は、私以外は理事長ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(06)により、
(07)
① 象は、鼻が長い。
② 象は、長いのは鼻である。
③ 象は、鼻以外は長くない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(08)
③ 象は、鼻以外は長くない。⇔
③ 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
従って、
(07)(08)により、
(09)
① 象は鼻が長い。⇔
① 象は、鼻以外は長くない。⇔
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(10)
(ⅰ)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (2) 象a→∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z) 1UE
1 (3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 2&E
1 (4) ∀z(~鼻za→~長z) 2&E
1 (5) ~鼻ca→~長c 4UE
6 (6) ~鼻ca& 長c A
6 (7) ~鼻ca 6&E
16 (8) ~長c 57MPP
6 (9) 長c 6&E
16 (ア) ~長c&長c 89&I
1 (イ) ~(~鼻ca& 長c) 6アRAA
1 (ウ) ∀z~(~鼻za& 長z) イUI
1 (エ) ~∃z(~鼻za& 長z) ウ量化子の関係
1 (オ) 象a→∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z) 3エ&I
1 (カ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)} オUI
(ⅱ)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)} A
1 (2) 象a→∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z) 1UE
1 (3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 2&E
1 (4) ~∃z(~鼻za& 長z) 2&E
1 (5) ∀z~(~鼻za& 長z) 4量化子の関係
1 (6) ~(~鼻ca& 長c) 5UE
7 (7) ~鼻ca A
8(8) 長c A
78(9) ~鼻ca& 長c 78&I
178(ア) ~(~鼻ca& 長c)&
(~鼻ca& 長c) 89&I
17 (イ) ~長c 8アRAA
1 (ウ) ~鼻ca→~長c 7イCP
1 (エ) ∀z(~鼻ca→~長c) ウUI
1 (オ) 象a→∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻ca→~長c) 3エ&I
1 (カ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} オUI
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①=② である。
従って、
(12)
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ~∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~~∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
③=④ である。
然るに、
(13)
「二重否定」により、
④ ~~∃z(~鼻zx& 長z) は、
④ ∃z(~鼻zx& 長z) に、「等しい」。
従って、
(12)(13)により、
(14)
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
③=④ である。
従って、
(11)(14)により、
(15)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
然るに、
(16)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
に於いて、
①と③ は、「矛盾」する。
従って、
(15)(16)により、
(17)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①と④ は、「矛盾」する。
従って、
(09)(17)により、
(18)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
④ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、あるzはxの鼻ではないが、zは長い。
に於いて、
①と④ は、「矛盾」する。
然るに、
(19)
④ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、あるzはxの鼻ではないが、zは長い。
といふことは、
④ 象は鼻は長く、鼻以外も長い。
といふ、ことである。
然るに、
(20)
④ 象は鼻は長く、鼻以外も長い。
といふことは、
④ 象は鼻も長い。
といふ、ことである。
従って、
(09)(18)(20)により、
(21)
① 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
④ 象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
①と④ は、「矛盾」する。
従って、
(22)
「番号」を付け直すと、
① 象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
②と③ は、「矛盾」する。
然るに、
(23)
(ⅱ)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1(2) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
1(3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 2&E
1(4)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)} 3UI
(ⅲ)
1(1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)} A
1(2) 象a→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z) 1UE
1(3) 象a→∃y(鼻yx&長y) 2&E
1(4)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)} 3UI
従って、
(23)により、
(24)
① 象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
② ならば、① であって、
③ ならば、① である。
従って、
(24)により、
(25)
① 象は鼻_長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 象は鼻も長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
①と② は、「矛盾」せず、
①と③ も、「矛盾」しない。
然るに、
(26)
① 鼻は長い。
といふのであれば、
② 鼻以外については、「何も、言ってゐない。」
従って、
(27)
① 象は鼻は長い。
といふのであれば、
③ 象の鼻以外については、「何も、言ってゐない。」
従って、
(26)(27)により、
(28)
① 象は鼻は長い。
② 象は鼻が長い。
③ 象は鼻も長い。
に於いて、
①と② は、「矛盾」せず、
①と③ も、「矛盾」しない。
従って、
(25)(28)により、
(29)
① 象は鼻は長い。
② 象は鼻が長い。
③ 象は鼻も長い。
といふ「日本語」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∃z(~鼻zx& 長z)}
といふ「述語論理式」に、すなはち、
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長い。
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、あるzはxの鼻ではないが、zは長い。
といふ「意味」である所の、「述語論理式」に、相当する。
従って、
(29)により、
(30)
「普通の日本語」で言へば、
① 象は鼻は長い=象は鼻は長い。
② 象は鼻が長い=象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
③ 象は鼻も長い=象は鼻は長く、鼻以外も長い。
といふ、ことになる。
(01)
①{象の体の、各部分}を「変域(ドメイン)」とすると、
①「象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。」
従って、
(01)により、
(02)
① 象は鼻が長い。⇔
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
(03)
②{象、兎、馬、キリン}を「変域(ドメイン)」とすると、
②「鼻は象が長く、耳は兎が長く、顔は馬が長く、首はキリンが長い。」
従って、
(03)により、
(04)
② 鼻は象が長い。⇔
② 鼻は象は長く、象以外(兎、馬、キリン)は長くない。⇔
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}⇔
② すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、xがyの鼻であって、yが象でないならば、xは長くない。
然るに、
(05)
(ⅰ)
1 (1)象は鼻が長い。 A
1 (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。 A
2 (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)有る兎は象である。 A
3 (〃)∃x(兎x&象x) A
3 (〃)あるxは兎であって象である。 A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 1UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 48MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 57MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
2 6 (ウ) ∃y(耳ya&長y) ア&E
エ (エ) 鼻ba&長b A
オ(オ) 耳ba&長b A
1 6 (カ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (キ) ~鼻ba→~長b カUE
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
2 6 (ケ) 耳ba→~鼻ba クUE
オ (コ) 耳ba オ&E
2 6オ (サ) ~鼻ba ケコMPP
12 6オ (シ) ~長b キサコMPP
オ (ス) 長b オ&E
12 6オ (セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b ウオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
12 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ナUI
12 (〃)兎は象ではない。 ナUI
(ⅱ)
1 (1)鼻は象が長い。 A
1 (〃)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x} A
2 (2)兎は象ではないが、兎には鼻がある。 A
2 (〃)∃y∃x(兎y&~象y&鼻xy) A
1 (3) ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(鼻ay&~象y)→~長a} 1UE
1 (4) (鼻ab&象b)→長a&(鼻ab&~象b)→~長a 3UE
1 (5) (鼻ab&~象b)→~長a 4&E
6 (6) ∃x(兎b&~象b&鼻xb) A
7(7) 兎b&~象b&鼻ab A
7(8) 兎b 8&E
7(9) ~象b 8&E
7(ア) 鼻ab 8&E
7(イ) 鼻ab&~象b アイ&I
1 7(ウ) ~長a 4ウMPP
1 7(エ) 兎b&鼻ab 9ア&I
1 7(オ) 兎b&鼻ab&~長a ウエ&I
1 7(カ) ∃x(兎b&鼻xb&~長x) オEI
1 6 (キ) ∃x(兎b&鼻xb&~長x) 67カEE
1 6 (ク)∃y∃x(兎y&鼻xy&~長x) キEI
12 (ケ)∃y∃x(兎y&鼻xy&~長x) 26クEE
12 (〃)あるyは兎であって、あるxはyの鼻であって、xは長くない。 26クEE
12 (〃)鼻が短い兎がゐる。 26クEE
って、
(01)~(05)により、
(06)
それぞれ、
① 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻は象が長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(07)
② 鼻は象が長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
であるならば、
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
であっても、良いのではと、思はれるかも、知れない。
然るに、
(08)
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於いて、「左辺」である、
③ 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
③{象以外の動物}に関しては、「何も、述べてはゐない」。
然るに、
(09)
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於ける、「右辺」である、
③ ∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
の場合は、
③ (~象x&鼻yx)→~長y=象以外の動物の鼻は長くない。
に於いて、
③{象以外の動物}に、「言及してゐる」。
従って、
(08)(09)により、
(10)
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
の場合は、
③「左辺」≠「右辺」 であって、
③「左辺」=「右辺」 ではない。
従って、
(06)~(10)により、
(11)
① 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻は象が長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於いて、
① は、「正しく」、
② も、「正しく」、
③ は、「正しくはない」。
従って、
(12)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
といふ「日本語」の「論理構造」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
といふ風に、「同じ」ではない。
然るに、
(13)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
に於いて、
①「述語」は「長い」であって、
②「述語」は「長い」である。
然るに、
(14)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
に於いて、
①「長い」のは、「象は」ではなく、「鼻が」であって、
②「長い」のは、「象が」ではなく、「鼻は」である。
然るに、
(15)
学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① 象は鼻が長い。
に於いて、
①「鼻が」が、「長い」に対する「主格の補語」であるならば、
②「鼻は」は、「長い」に対する「主格の補語」でなければ、ならない。
従って、
(15)(16)により、
(17)
三上章先生が言ふやうに、単純に、
「~は」は「主題は」であって、
「~が」は「主格は」である。といふことには、ならない。
(18)
Antonius(主格) amabat(動詞) Cleopatram=アントニウス(主語)は、クレオパトラを愛してゐた。
Antonium amabat(動詞) Cleopatra(主格) =アントニウスを、クレオパトラ(主語)は愛してゐた。
従って、
(18)により、
(19)
「ラテン語」等に於いて、「一番簡単な、主格の定義」は、
「述語動詞の主語」を「指定」するのが「主格」である。といふことになる。
従って、
(18)(19)により、
(20)
Antonius(主格) amabat(動詞) Cleopatram=アントニウス(主語)は、クレオパトラを愛してゐた。
Antonium amabat(動詞) Cleopatra(主格) =アントニウスを、クレオパトラ(主語)は愛してゐた。
の場合は、「主語とは、すなはち、主格である。」
従って、
(21)
「主語」と「主格」が「別のもの」である。といふ「前提」が、私には良く分からない。
(01)
{象、兎、馬、キリン}を「変域(ドメイン)」とすると、
「鼻は象が長く、耳は兎が長く、顔は馬が長く、首はキリンが長い。」
従って、
(01)により、
(02)
① 鼻は、象が長い。⇔
① 鼻は、象は長く、象以外(兎、馬、キリン)は長くない。⇔
① ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}⇔
① すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、xがyの鼻であって、yが象でないならば、xは長くない。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1 (1)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x} A
1 (2) ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(鼻ay&~象y)→~長a} 1UE
1 (3) (鼻ab&象b)→長a&(鼻ab&~象b)→~長a 2UE
1 (4) (鼻ab&象b)→長a 3&E
1 (5) (鼻ab&~象b)→~長a 4&E
6 (6) 長a A
6 (7) ~~長a 6DN
16 (8) ~(鼻ab&~象b) 56MTT
16 (9) ~鼻ab∨ 象b 8ド・モルガンの法則
16 (ア) 鼻ab→ 象b 9含意の定義
1 (イ) 長a→(鼻ab→ 象b) 6アCP
ウ (ウ) 長a& 鼻ab A
ウ (エ) 長a ウ&E
1 ウ (オ) 鼻ab→ 象b イエMPP
ウ (カ) 鼻ab ウ&E
1 ウ (キ) 象b カキMPP
1 (ク) (長a& 鼻ab)→象b ウキCP
ケ (ケ) ~象b A
1 ケ (コ) ~(長a& 鼻ab) クケMTT
1 ケ (サ) ~長a∨~鼻ab コ、ド・モルガンの法則
1 ケ (シ) 長a→~鼻ab サ含意の定義
1 (ス) ~象b→(長a→~鼻ab) ケシCP
セ(セ) ~象b& 長a A
1 セ(ソ) ~象b セ&E
1 セ(タ) 長a→~鼻ab スゾMPP
セ(チ) 長a セ&E
1 セ(ツ) ~鼻ab タチMPP
1 (テ) (~象b&長a)→~鼻ab セツ
1 (ト) (鼻ab&象b)→長a&(~象b&長a)→~鼻ab 4テ
1 (ナ) ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(~象y&長a)→~鼻ay} トUI
1 (ニ)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy} ナUI
(ⅱ)
1 (1)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy} A
1 (2) ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(~象y&長a)→~鼻ay} 1UE
1 (3) (鼻ab&象b)→長a&(~象b&長a)→~鼻ab 2UE
1 (4) (鼻ab&象b)→長a 3&E
1 (5) (~象b&長a)→~鼻ab 3&E
6 (6) 鼻ab A
6 (7) ~~鼻ab 6DN
16 (8) ~(~象b&長a) 67MTT
16 (9) 象b∨~長a 8ド・モルガンの法則
16 (ア) ~~象b∨~長a 9DN
16 (イ) ~象b→~長a ア含意の定義
1 (ウ) 鼻ab→(~象b→~長a) 6ウCP
エ (エ) 鼻ab& ~象b A
エ (オ) 鼻ab エ&E
1 エ (カ) ~象b→~長a ウオMPP
エ (キ) ~象b エ&E
1 エ (ク) ~長a カキMPP
1 (ケ) (鼻ab&~象b)→~長a エクCP
1 (コ) (鼻ab&象b)→長a&(鼻ab&~象b)→~長a 4ケ&I
1 (サ) ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(鼻ay&~象y)→~長a} コUI
1 (シ)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x} サUI
従って、
(03)により、
(04)
① ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(01)により、
(05)
② yが兎であって、 xが長いならば、xは、yの鼻ではなく耳であり、
② yが馬であって、 xが長いならば、xは、yの鼻ではなく顔であり、
② yがキリンであって、xが長いならば、xは、yの鼻ではなく首であり、
それ故に、
① xがyの鼻であって、yが象以外(兎、馬、キリン)であるならば、xは長くない。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 鼻は、象が長い。⇔
① 鼻は、象が長く、象以外(兎、馬、キリン)は長くない。⇔
① ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}⇔
① すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、xがyの鼻であって、yが象でないならば、xは長くない。
② 鼻は、象が長い。⇔
② 鼻は、象が長く、象以外(兎、馬、キリン)で長いとすれば、鼻ではない。⇔
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(~象y&長x)→~鼻xy}⇔
② すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、yが象ではなくて、xが長いならば、xはyの鼻ではない。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(06)により、
(07)
② 鼻は、象が長い。
に於いて、
②「長い」のは、「鼻(x)」であって、
②「長い」のは、「象(y)」ではない。
従って、
然るに、
(08)
「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② 鼻は、象が長い。
③ 象は、鼻が長い。
に於いて、
②「長い(述語)」の「主格の補語」は、「象は」であって、
②「長い(述語)」の「主格の補語」は、「象が」である。
従って、
(09)により、
(10)
② 鼻は、象が長い。
に於いて、
②「長い(述語)」の「主格の補語」は、「象は」であって、「象が」ではない。
(01)
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
従って、
(01)により、
(02)
② 象は鼻が長い。といふわけではない。⇔
② ~∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。といふわけではない。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1 (1)~∀x{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (2)∃x~{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} 1量化子の関係
3 (3) ~{ 象a→ ∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)} A
3 (4) ~{~象a∨ ∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)} 3含意の定義
3 (5) 象a&~∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z) 4ド・モルガンの法則
3 (6) 象a 5&E
3 (7) ~∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z) 5&E
3 (8) ~∃y(鼻ya&長y)∨~∀z(~鼻za→~長z) 7ド・モルガンの法則
3 (9) ∃y(鼻ya&長y)→~∀z(~鼻za→~長z) 8含意の定義
ア (ア) ∃y(鼻ya&長y) A
3ア (イ) ~∀z(~鼻za→~長z) 9アMPP
3ア (ウ) ∃z~(~鼻za→~長z) イ量化子の関係
エ(エ) ~(~鼻ca→~長c) A
エ(オ) ~( 鼻ca∨~長c) エ含意の定義
エ(カ) (~鼻ca& 長c) オ、ド・モルガンの法則
エ(キ) ∃z(~鼻za& 長z) カEI
3ア (ク) ∃z(~鼻za& 長z) ウエキEE
3 (ケ) ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z) アクCP
3 (コ) 象a& ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z) 6ケ&I
3 (サ) ∃x{象x& ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} コEI
1 (シ) ∃x{象x& ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} 23サEE
(ⅱ)
1 (1)~∃x{象x& ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} A
1 (2)∀x~{象x& ∃y(鼻yx&長y)→ ∃z(~鼻zx& 長z)} 1量化子の関係
1 (3) ~{象a& ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 2UE
1 (4) ~象a∨~{∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 3ド・モルガンの法則
1 (5) 象a→~{∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 4含意の定義
6 (7) 象a A
16 (8) ~{ ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)} 57MPP
16 (9) ~{~∃y(鼻ya&長y)∨ ∃z(~鼻za& 長z)} 8含意の定義
16 (ア) ∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za& 長z) 9ド・モルガンの法則
16 (イ) ∃y(鼻ya&長y) ア&E
16 (ウ) ~∃z(~鼻za& 長z) ア&E
16 (エ) ∀z~(~鼻za& 長z) ウ含意の定義
16 (オ) ~(~鼻ca& 長c) エUE
16 (カ) ~~鼻ca∨~長c オ、ド・モルガンの法則
16 (キ) ~鼻ca→~長c カ、含意の定義
16 (ク) ∀z(~鼻za→~長z) キUI
16 (ケ) ∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z) イク&I
1 (コ) 象a→∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z) 6ケCP
1 (サ) ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)} コUI
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
に於いて、
① を「否定」すると、
② になり、
② を「否定」すると、「二重否定」により、
① になる(戻る)。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
の「否定」は、
② ある象は、鼻が長いならならば、鼻以外も長い。⇔
② ∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}⇔
② あるxは象であり、あるyがxの鼻であって長いならば、あるzはxの鼻ではないが、長い。
である。
従って、
(05)により、
(06)
① すべての象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② ある象は鼻以外も長い=∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
① の「否定」は、② であり、
② の「否定」は、① である。
然るに、
(07)
② ある象は鼻以外も長い = ∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)}。
③ 鼻以外も長い象はゐない=~∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)}。
に於いて、
② の「否定」は、③ であり、
③ の「否定」は、② である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
① すべての象は鼻が長い = ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
③ 鼻以外も長い象はゐない=~∃x{象x&∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)}。
に於いて、
①=③ である。
然るに、
(09)
③ 鼻以外も長い象はゐない。
といふのであれば、そのときに限って、
③ すべての象は、鼻以外は長くない。
従って、
(08)(09)により、
(10)
① すべての象は鼻が長い。
③ すべての象は鼻以外は長くない。
に於いて、
①=③ である。
従って、
(10)により、
(11)
① 鼻が長い。
③ 鼻以外は長くない。
に於いて、
①=③ である。
従って、
(11)により、
(12)
① 私が理事長です。
③ 私以外は理事長ではない。
に於いても、
①=③ である。
然るに、
(13)
③ 私以外は理事長ではない。
の「対偶(Contraposition)」は、
② 理事長は私です。
である。
従って、
(12)(13))により、
(14)
① 私が理事長です。
② 理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(15)
よく知られているように、「私が理事長です」は語順を変え、
理事長は、私です。
と直して初めて主辞賓辞が適用されのである。また、かりに大倉氏が、
タゴール記念会は、私が理事です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念館」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① タゴール記念会は私が理事長です。
② タゴール記念会は理事長は私です。
③ タゴール記念会は私以外は理事長ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(16)により、
(17)
① 象は鼻が長い。
② 象は長いのは鼻である。
③ 象は鼻以外は長くない。
に於いても、
①=②=③ である。
従って、
(17)により、
(18)
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻以外は長くない。
に於いても、
①=② である。
然るに、
(19)
「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
然るに、
(20)
② 鼻が長い。
に於いて、
②「鼻が」が、「長い」の「主格の補語」であるならば、
② 象は鼻が長い。
に於いて、
②「象は」も、「鼻が長い」の「主格の補語」であるに、違ひない。
従って、
(21)
「象は」は、「主題」であり、
「鼻が」は、「主格」である。
といふ「説明」が、私には、良く分からない。
(01)
この漢語文法の基礎となっている文法的な関係として、次の四つの関係をあげることができる。
(一)主述関係 主語 ― 述語
(二)修飾関係 修飾語―被修飾語
(三)補足関係 叙述語― 補語
(四)並列関係 並列語― 並列語
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、281・282頁改)
然るに、
(02)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」に於いて、
① に有るのは、「(三)補足関係」だけであり、
② に有るのは、「(二)修飾関係・(三)補足関係」である。
然るに、
(03)
「(二)修飾関係」は、「国語(訓読)の語順」と「同じ」であるが、
「(三)補足関係」は、「国語(訓読)の語順」と「同じ」ではない。
従って、
(02)(03)により、
(04)
「国語(訓読)の語順」だけを考へるのであれば、
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」に於いて、
① に有るのは、「(三)補足関係」だけであり、
② に有るのも、「(三)補足関係」だけである。
然るに、
(05)
① 不〔読(文)〕。
に於いて、
① 不〔 〕⇒〔 〕不
① 読( )⇒( )読
といふ「移動」を行ふと、
① 不〔読(文)〕⇒
① 〔(文)読〕不=
① 〔(文を)読ま〕ず。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
(06)
② 不〔常読(漢文)〕。
に於いて、
② 不〔 〕⇒〔 〕不
② 読( )⇒( )読
といふ「移動」を行ふと、
② 不〔常読(漢文)〕⇒
② 〔常(漢文)読〕不=
② 〔常には(漢文を)読ま〕ず。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(07)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(03)~(07)により、
(08)
① 不〔読(文)〕。
② 不〔常読(漢文)〕。
に於ける、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「括弧」は、
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」の、「補足構造」と、「訓読の語順」の、両方を、表してゐる。
従って、
(09)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文の補足構造」は、両方とも、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
である。
従って、
(09)により、
(10)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文の補足構造」は、「等しい」。
然るに、
(11)
① 不レ 読レ 文。
② 不三 常読二 漢文一。
従って、
(11)により、
(12)
① 不読文(文を読まず)。
② 不常読漢文(常には漢文を読まず)。
に付く「返り点」は、
① レ レ
② 三 二 一
である。
従って、
(09)(12)により、
(13)
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文の補足構造」は、両方とも、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
であるが、「返り点」は、
① レ レ
② 三 二 一
といふ風に、「同一」ではない。
従って、
(09)~(13)により、
(14)
① 不読文。
② 不常読漢文。
に付く「返り点」である、
① レ レ
② 三 二 一
の内、「少なくとも一方」は、「漢文の補足構造」を、表してはゐないし、「結論」だけを言へば、
① レ レ
② 三 二 一
は、「両方とも」、「漢文の補足構造」を、表してはゐない。
従って、
(08)(14)により、
(15)
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「 括弧 」は、「漢文の補足構造」と「漢文の語順」を表してゐるものの、
① レ レ
② 三 二 一
といふ「返り点」は、「漢文の語順」だけを表してゐる。
然るに、
(16)
① 不レ 読レ 文。
② 不三 常読二 漢文一。
といふ「返り点」が分かれば、
① 文を読まず。
② 常には漢文を読まず。
といふ「訓読」が分かる。
然るに、
(08)により、
(17)
① 文を読まず。
② 常には漢文を読まず。
といふ「訓読」が分かれば、
① 不〔読(文)〕。
② 不〔常読(漢文)〕。
といふ「括弧」が分かる。
然るに、
(08)により、
(18)
① 不〔読(文)〕。
② 不〔常読(漢文)〕。
に於ける、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
といふ「括弧」は、
① 不読文。
② 不常読漢文。
といふ「漢文」の、「補足構造」を、表してゐる。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
「任意の漢文」の、
「返り点」が分かれば、
「 括弧 」が分かり、
「 括弧 」が分かれば、
「その漢文の、補足構造」が、分かる。
従って、
(19)により、
(20)
「 括弧 」は、「直接」、「漢文の補足構造」を、表してゐて、
「返り点」は、「括弧」を通じて、「間接的」に、「漢文の補足構造」を、表してゐる。
然るに、
(21)
然るに、
(22)
① 不〔 読( 文) 〕⇒〔 ( 文を)読ま〕ず。
② 不〔 読(漢文) 〕⇒〔 (漢文を)読ま〕ず。
③ 不〔常読( 文) 〕⇒〔常には( 文を)読ま〕ず。
④ 不〔常読(漢文) 〕⇒〔常には(漢文を)読ま〕ず。
⑤ 非〔 読(文)者 〕⇒〔 ( 文を)読む者に〕非ず。
⑥ 非〔 読(漢文)者〕⇒〔 (漢文を)読む者に〕非ず。
⑦ 非〔常読( 文)者〕⇒〔常には( 文を)読む者に〕非ず。
⑧ 非〔常読(漢文)者〕⇒〔常には(漢文を)読む者に〕非ず。
従って、
(05)(06)(08)(21)(22)により、
(23)
① 不読文。
② 不読漢文。
③ 不常読文。
④ 不常読漢文。
⑤ 非読文者。
⑥ 非読漢文者。
⑦ 非常読文者。
⑧ 非常読漢文者。
といふ「漢文の補足構造」は、
① 不〔読(文)〕。
② 不〔読(漢文)〕。
③ 不〔常読(文)〕。
④ 不〔常読(漢文)〕。
⑤ 非〔読(文)者〕。
⑥ 非〔読(漢文)者〕。
⑦ 非〔常読(文)者〕。
⑧ 非〔常読(漢文)者〕。
に於ける、
①〔 ( ) 〕
②〔 ( ) 〕
③〔 ( ) 〕
④〔 ( ) 〕
⑤〔 ( ) 〕
⑥〔 ( ) 〕
⑦〔 ( ) 〕
⑧〔 ( ) 〕
である。
従って、
(08)(09)(10)(23)により、
(24)
① 不読文。
② 不読漢文。
③ 不常読文。
④ 不常読漢文。
⑤ 非読文者。
⑥ 非読漢文者。
⑦ 非常読文者。
⑧ 非常読漢文者。
といふ「漢文の補足構造」は、「8つとも、全て、等しい」。
然るに、
(25)
① 不読文。
② 不読漢+文。
③ 不常+読文。
④ 不常+読漢+文。
⑤ 非読文+者。
⑥ 非読漢+文+者。
⑦ 非常+読文+者。
⑧ 非常+読漢+文+者。
といふ風に、書けば、
①
② +
③ +
④ + +
⑤ +
⑥ + +
⑦ + +
⑧ + + +
といふ「+」は、「(二)修飾関係」を、表してゐる。
従って、
(25)により、
(26)
① 不読文。
② 不読漢文。
③ 不常読文。
④ 不常読漢文。
⑤ 非読文者。
⑥ 非読漢文者。
⑦ 非常読文者。
⑧ 非常読漢文者。
といふ「漢文の修飾構造」は、「8つとも、全て、同じではない」。
(01)
① 楚人有鬻盾與矛者。誉之曰、盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也=
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)弗る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざる也=
⑤ 楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
然るに、
(02)
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也。
に於いて、
② 有[ ]→[ ]有
② 鬻〔 〕→〔 〕鬻
② 與( )→( )與
② 誉( )→( )誉
② 莫( )→( )莫
② 誉( )→( )誉
② 於( )→( )於
② 無( )→( )無
② 不( )→( )不
② 以( )→( )以
② 陥( )→( )陥
② 弗( )→( )弗
② 能( )→( )能
といふ「(左から右への)移動」を行ふと、
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
といふ「語順」になり、
(03)
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
に於いて、
③ 有[ ]←[ ]有
③ 鬻〔 〕←〔 〕鬻
③ 與( )←( )與
③ 誉( )←( )誉
③ 莫( )←( )莫
③ 誉( )←( )誉
③ 於( )←( )於
③ 無( )←( )無
③ 不( )←( )不
③ 以( )←( )以
③ 陥( )←( )陥
③ 弗( )←( )弗
③ 能( )←( )能
といふ「(右から左への)移動」を行ふと、
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也。
といふ「語順」に戻る。
然るに、
(04)
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
に対して、「平仮名を補ふ」と、
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)弗る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざる也。
といふ「訓読」が、成立する。
cf.
與(前置詞)=と(格助詞・後置詞)。
然るに、
(05)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
例へば、
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也。
③ 楚人[〔盾(矛)與〕鬻者]有。(之)誉曰、盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕弗也。
に於ける、
②[ 〔 ( )〕 ]( )( )( )( )〔 ( ) 〕( )( )〔 ( ) 〕
③[ 〔 ( )〕 ]( )( )( )( )〔 ( ) 〕( )( )〔 ( ) 〕
といふ「括弧」は、それぞれ、
②「漢文の補足構造」と、
③「国語の補足構造」を、表してゐて、尚且つ、
③ に関しては、
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)弗る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざる也。
といふ「訓読の語順」を、表してゐる。
従って、
(02)(06)により、
(07)
例へば、
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。
であれば、
② 有[ ]→[ ]有
② 鬻〔 〕→〔 〕鬻
② 與( )→( )與
といふ風に、
②「括弧の左にある一語」は、「訓読」では、
③「括弧の右にあるもの」と見做して、「その順番」で読むならば、
④ 楚人に[〔盾と(矛)與を〕鬻ぐ者]有り。
といふ「訓読の語順」を、得ることになる。
然るに、
(08)
② 128[6〔35(4)〕7]。
に於いて、
② 8[ ]→[ ]8
② 6〔 〕→〔 〕6
② 5( )→( )5
といふ「(左から右への)移動」を行ふと、
② 128[6〔35(4)〕7]→
③ 12[〔3(4)5〕67]8=
③ 1 2 3 4 5 6 7 8。
といふ「順番」になる。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② 楚人有[鬻〔盾與(矛)〕者]。
に於ける、
②[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、「訓読」に於ける、
② 128 6 35 4 7 。
といふ「順番」を表してゐる。
然るに、
(10)
② 楚人有鬻盾與矛者。
に付く「返り点」は、
② 楚人有下 鬻二 盾與一レ 矛者上。
すなはち、
② 下 二 一レ 上
である。
従って、
(09)(10)により、
(11)
②[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、例へば、
② 下 二 一レ 上
といふ「返り点」に相当する。
然るに、
(12)
②[ 〔 ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、その他にも、少なくとも、
② レ レ レ
② レ 二 一レ
② レ レ 二 一
② レ 三 二 一
② レ 二 レ 一
② 四 三 二 一
② 乙 下 二 一 上 甲
といふ「返り点」に相当する。
従って、
(12)により、
(13)
「(レ点を含む)返り点」は、「括弧」よりも、「複雑」である。
(14)
例へば、
② 非[不〔 読( 書)〕]→[ 〔(書を )読ま〕不るに]非ず。
② 非[不〔常読(漢文)〕]→[〔常には(漢文を)読ま〕不るに]非ず。
に於いて、「両者の補足構造」は、「等しい」ものの、
② レ レ レ
② レ 三 二 一
といふ風に、「返り点」は、「同じ」にならない。
従って、
(14)により、
(15)
「返り点」は、直接には、「漢文の補足構造」を、表してはゐない。
従って、
(13)(15)により、
(16)
「(レ点を含む)返り点」は、「括弧」よりも、「複雑」であって、尚且つ、「括弧」とは異なり、「返り点」は、直接には、「漢文の補足構造」を表してはゐない。
(01)
― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
然るに、
(02)
1 (1)∃x(盾x)&∃y(矛y) A
1 (2)∃x(盾x) 1&E
3 (3) 盾a A
1 (4) ∃y(矛y) 1&E
5 (5) 矛b A
6 (6)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} A
6 (7) 矛b→∃x(盾x&~陥bx) 6UE
56 (8) ∃x(盾x&~陥bx) 57MPP
9 (9) 盾a&~陥ba A
9 (ア) ~陥ba 9&E
イ (イ)∀x{盾x→∃y(矛y& 陥yx)} A
イ (ウ) 盾a→∃y(矛y& 陥ya) イUE
3 イ (エ) ∃y(矛y& 陥ya) 3ウMPP
オ (オ) 矛b& 陥ba A
オ (カ) 陥ba オ&E
9 オ (キ) ~陥ba&陥ba アカ&I
56 オ (ク) ~陥ba&陥ba 89キEE
356 イ (ケ) ~陥ba&陥ba エオクEE
1 56 イ (コ) ~陥ba&陥ba 23ケEE
1 6 イ (サ) ~陥ba&陥ba 45コEE
6 イ (シ)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 1サRAA
6 イ (ス) ~∃x(盾x)∨~∃y(矛y) シ、ド・モルガンの法則
6 イ (セ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y) ス含意の定義
ソ (ソ) ∃y(矛y) A
ソ (タ) ~~∃y(矛y) ソDN
6 イソ (チ) ~∃x(盾x) セタMTT
6 イ (ツ) ∃y(矛y)→~∃x(盾x) ソチCP
6 イ (テ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y)&
∃y(矛y)→~∃x(盾x) セツ&I
(03)
(ⅰ)
1 (1) ∃x(盾x)→~∃y(矛y) A
2 (2) ∃x(盾x)& ∃y(矛y) A
2 (3) ∃x(盾x) 2&E
2 (4) ∃y(矛y) 2&E
12 (5) ~∃y(矛y) 13MPP
12 (6) ∃y(矛y)&~∃y(矛y) 45&I
1 (7)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 26RAA
(ⅱ)
1 (1)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 26RAA
2 (2) ∃x(盾x) A
3 (3) ∃y(矛y) A
23 (4) ∃x(盾x)& ∃y(矛y) 23&I
123 (5)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)}
&(∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 14&I
12 (6) ~∃y(矛y) 35RAA
1 (7) ∃x(盾x)→~∃y(矛y) 26CP
従って、
(03)により、
(04)
① ∃x(盾x)→~∃y(矛y)
② ~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)}
に於いて、
①=② である。
従って、
(04)により、
(05)
③ ∃x(矛x)→~∃y(盾y)
④ ~{∃x(矛x)& ∃y(盾y)}
に於いて、
③=④ である。
従って、
(02)~(05)により、
(06)
1 (1)∃x(盾x)&∃y(矛y) A
1 (2)∃x(盾x) 1&E
3 (3) 盾a A
1 (4) ∃y(矛y) 1&E
5 (5) 矛b A
6 (6)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} A
6 (7) 矛b→∃x(盾x&~陥bx) 6UE
56 (8) ∃x(盾x&~陥bx) 57MPP
9 (9) 盾a&~陥ba A
9 (ア) ~陥ba 9&E
イ (イ)∀x{盾x→∃y(矛y& 陥yx)} A
イ (ウ) 盾a→∃y(矛y& 陥ya) イUE
3 イ (エ) ∃y(矛y& 陥ya) 3ウMPP
オ (オ) 矛b& 陥ba A
オ (カ) 陥ba オ&E
9 オ (キ) ~陥ba&陥ba アカ&I
56 オ (ク) ~陥ba&陥ba 89キEE
356 イ (ケ) ~陥ba&陥ba エオクEE
1 56 イ (コ) ~陥ba&陥ba 23ケEE
1 6 イ (サ) ~陥ba&陥ba 45コEE
6 イ (シ)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 1サRAA
6 イ (ス) ~∃x(盾x)∨~∃y(矛y) シ、ド・モルガンの法則
6 イ (セ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y) ス含意の定義
ソ (ソ) ∃y(矛y) A
ソ (タ) ~~∃y(矛y) ソDN
6 イソ (チ) ~∃x(盾x) セタMTT
6 イ (ツ) ∃y(矛y)→~∃x(盾x) ソチCP
6 イ (テ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y)&
∃y(矛y)→~∃x(盾x) セツ&I
6 イ (ト)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)}&
~{∃x(矛x)& ∃y(盾y)} テ含意の定義
従って、
(06)により、
(07)
(1)ある盾xが存在し、ある矛yが存在する。 と「仮定」して、
(6)すべてのyについて、yが矛ならば、あるxは盾であって、yはxを陥さない。と「仮定」して、
(イ)すべてのxについて、xが盾ならば、あるyは矛であって、yはxを陥す。 と「仮定」すると、
(テ)ある盾xが存在するならば、ある矛yは存在せず、
ある矛yが存在するならば、ある盾xは存在しない。が故に、
(ト)盾xと矛yが、「同時に、存在する」といふことはない。
然るに、
(08)
夫不可陷之盾与無不陷之矛、不可同世而立。今堯舜之不可両譽、矛盾之説也=
夫不〔可(陷)〕之楯與[無〔不(陷)〕之矛]、不[可〔同(世)而立〕]。今堯舜之不〔可(両譽)〕、矛楯之説也⇒
夫れ〔(陷す)可がら〕不るの楯と[〔(陷さ)不る〕無きの矛]とは、[〔(世を)同じくして立つ〕可から]不。今堯舜の〔(両つながら譽む)可から〕不るは、矛楯の説なり=
いかなる矛であっても、突き通すことが出来ない「盾」と、いかなる盾であってあっても、突き通さないことが無い「矛」とは、同時に存在することはできない。堯と舜とを同時に誉めたたへることが出来ないのは、この「盾と矛の例へ」と同じである。
cf.
儒教思想を批判した韓非は、儒者が堯・舜を、万人を感化した聖人であるとして賞賛するのを反対して、堯が万人を感化したなら、もはや舜はその後をうけて人民を感化する必要はないし、舜が堯にかわって万人を感化する必要があったとするならば、堯は聖人として不十分であったという証拠になる。という。したがって堯・舜ふたりとも聖人であるというのは矛盾であるとして、この話を引用したのである。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、34頁)
従って、
(06)(07)(08)により、
(09)
この場合の「韓非子の説」は、「漢文」としても、「日本語」としても、「述語論理」としても、「正しい」。
(01)
(ⅰ)
1 (1)∃x∃y{我x&汝y&∀z(欲踊xz→z=y} A
2 (2) ∃y{我a&汝y&∀z(欲踊az→z=y} A
3 (3) 我a&汝b&∀z(欲踊az→z=b) A
3 (4) 我a&汝b 3&E
3 (5) ∀z(欲踊ac→c=b) 3&E
3 (6) 欲踊ac→c=b 5UE
7(7) c≠b A
37(8) ~欲踊ac 67MTT
3 (9) c≠b→~欲踊ac 78CP
3 (ア) ∀z(z≠b→~欲踊az) 9UI
3 (イ) 我a&汝b&∀z(z≠b→~欲踊az) 4ア&I
3 (ウ) ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az)} イEI
2 (エ) ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az)} 23ウEE
2 (オ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} エEI
1 (カ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} 12オEE
(ⅱ)
1 (1)∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} 1
2 (2) ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az)} A
3 (3) 我a&汝b&∀z(z≠y→~欲踊az) A
3 (4) 我a&汝b 3&E
3 (5) ∀z(z≠y→~欲踊az) 3&E
3 (6) c≠y→~欲踊ac 5UE
7(7) 欲踊ac A
7(8) ~~欲踊ac 7DN
37(9) ~(c≠y) 68MTT
37(ア) c=y 6DN
3 (イ) 欲踊ac→c=y 7アCP
3 (ウ) ∀z(欲踊az→z=b) イUI
3 (エ) 我a&汝b&∀z(欲踊az→z=b) 4ウ&I
3 (オ) ∃y{我a&汝y&∀z(欲踊az→z=y} エEI
2 (カ) ∃y{我a&汝y&∀z(欲踊az→z=y} 23オEE
2 (キ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(欲踊xz→z=y} カEI
1 (ケ)∃x∃y{我x&汝y&∀z(欲踊xz→z=y} 12キEE
従って、
(01)により、
(02)
① ∃x∃y{我x&汝y&∀z( 欲踊xz→z=y)}
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
(ⅱ)
1 (1) ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz} A
2 (2) ∃y{我a&汝y&∀z(z≠y→~欲踊az} A
3 (3) 我a&汝b&∀z(z≠b→~欲踊az) A
3 (4) 我a&汝b 3&E
3 (5) ∀z(z≠b→~欲踊az) 3&E
3 (6) c≠b→~欲踊ac 5UE
3 (7) ~c≠b∨~欲踊ac 6含意の
3 (8) ~(c≠b& 欲踊ac) 7ド・モルガンの法則
3 (9) ∀z~(z≠b& 欲踊az) 8UI
3 (ア) ~∃z(z≠b& 欲踊az) 9量化子の関係
3 (イ) ~~(我a&汝b) 4DN
3 (ウ) ~~(我a&汝b)&~∃z(z≠b& 欲踊az) 9イ&I
3 (エ)~{~(我a&汝b)∨ ∃z(z≠b& 欲踊az)} ウ、ド・モルガンの法則
3 (オ)~{ 我a&汝b → ∃z(z≠b& 欲踊az)} エ含意の定義
3 (カ) ∃y~{我a&汝y→∃z(z≠y& 欲踊az)} オEI
2 (キ) ∃y~{我a&汝y→∃z(z≠y& 欲踊az)} 23カEE
2 (ク)∃x∃y~{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} キEI
1 (ケ)∃x∃y~{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} 12クEE
1 (コ)∃x~∀y{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} ケ量化子の関係
1 (サ)~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y& 欲踊xz)} コ量化子の関係
(ⅲ)
1 (1)~∀x∀y{我x&汝y →∃z(z≠y&欲踊xz)} A
1 (2)∃x~∀y{我x&汝y →∃z(z≠y&欲踊xz)} 1量化子の関係
1 (3)∃x∃y~{我x&汝y →∃z(z≠y&欲踊xz)} 2量化子の関係
4 (4) ∃y~{我a&汝y →∃z(z≠y&欲踊az)} A
5 (5) ~{我a&汝b →∃z(z≠b&欲踊az)} A
5 (6) ~{~(我a&汝b)∨∃z(z≠b&欲踊az)} 5含意の定義
5 (7) ~~(我a&汝b)&~∃z(z≠b&欲踊az) 6ド・モルガンの法則
5 (8) (我a&汝b)&~∃z(z≠b&欲踊az) 7DN
5 (9) (我a&汝b) 8&E
5 (ア) ~∃z(z≠b&欲踊az) 8&E
5 (イ) ∀z~(z≠b&欲踊az) ア量化子の関係
5 (ウ) ~(c≠b&欲踊ac) 5UE
5 (エ) ~c≠b∨~欲踊ac ウ、ド・モルガンの法則
5 (オ) c≠b→~欲踊ac エ含意の定義
5 (カ) ∀z{z≠b→~欲踊az) オUI
5 (キ) 我a&汝b&∀z{z≠b→~欲踊az) 9カ&I
5 (ク) ∃y{我a&汝y&∀z{z≠y→~欲踊az)} キEI
4 (ケ) ∃y{我a&汝y&∀z{z≠y→~欲踊az)} 45クEE
4 (コ) ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} ケEI
1 (サ) ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)} 34コEE
従って、
(03)により、
(04)
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
③ ~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y&欲踊xz)}
に於いて、
②=③ である。
従って、
(02)(04)により、
(05)
① ∃x∃y{我x&汝y&∀z( 欲踊xz→z=y)}
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
③ ~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y&欲踊xz)}
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
① あるxは私であり、あるyは汝であり、すべてのzについて、x(私)がzに踊って欲しいのであれば、そのzはy(汝)である。
② あるxは私であり、あるyは汝であり、すべてのzについて、zが、y(汝)でないならば、x(私)はzに踊って欲しくはない。
③ すべてのxとyについて、xが私であり、yが汝であるならば、あるzがy(汝)でなくて、x(私)がそのzに対して、踊って欲しい、といふことはない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(07)
② あるxは私であり、あるyは汝であり、すべてのzについて、zが、y(汝)でないならば、x(私)はzに踊って欲しくはない。
といふことは、
② 私は、あなた以外に、踊って欲しいとは思はない。
といふ、ことである。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
① ∃x∃y{我x&汝y&∀z( 欲踊xz→z=y)}
② ∃x∃y{我x&汝y&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
③ ~∀x∀y{我x&汝y→∃z(z≠y&欲踊xz)}
といふ「論理式」は、三つとも、
② 私は、あなた以外に、踊って欲しくない。
といふ、「意味」である。
然るに、
(09)
② 私は、あなた以外に、踊って欲しくない。
といふだけでは、
② 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふことには、ならない。
然るに、
(10)
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない。⇔
② ∃x∃y{我x&汝y&欲踊xy&∀z(z≠y→~欲踊xz)}⇔
② あるxは私であり、あるyは汝であり、x(私)はy(汝)に踊って欲しく、すべてのzについて、zが、y(汝)でないならば、x(私)はzに踊って欲しくはない。
従って、
(10)により、
(11)
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない。
といふ「日本語」は、
② ∃x∃y{我x&汝y&欲踊xy&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
といふ「論理式」に、相当する。
然るに、
(12)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に於いて、
① 「あなたに」
を、殊更、「強く発音」するならば、
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない。
② ∃x∃y{我x&汝y&欲踊xy&∀z(z≠y→~欲踊xz)}
といふ「意味」になる。
然るに、
(13)
② 私は、あなたに、踊って欲しく、あなた以外に踊って欲しくない。
といふことは、すなはち、
② 私は、あなたに、踊って欲しいのであって、あなた以外に踊って欲しくはない。
といふことは、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ、ことである。
従って、
(12)(13)により、
(14)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に於いて、
① 「あなたに」
を、殊更、「強く発音」するならば、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「意味」になる。
従って、
(14)により、
(15)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に於いて、
① 「あなたに」
を、「強調」するならば、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「意味」になる。
然るに、
(16)
B:Te bene saltare audivi.Salta, obsecro.
A:Alium roga.
B:Te ipsum saltare videre volo.
(白水社、CDエクスプレスラテン語、2004年、66頁)
然るに、
(17)
B:君は踊りがうまいと聞いたことがあるぞ、お願いだ、踊ってくれ。
A:ほかの人に頼めよ。
B:君自身が踊るのを見たいんだよ。
(白水社、CDエクスプレスラテン語、2004年、67頁)
然るに、
(18)
A:ほかの人に頼めよ。
B:君自身が踊るのを見たいんだよ。
といふことは、
A:他の人に頼めよ。
B:私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ、ことである。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
B:Te ipsum saltare videre volo.
といふ「ラテン語」は、
B:私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい(意訳)。
といふ「日本語」に、訳すことが出来る。
然るに、
(20)
B:Te ipsum の、
ipsum は、ipse の「対格」であって、
ipse は「強意代名詞」である。
然るに、
(21)
上述の指示代名詞のほかに、「~自身、自体」「他ならぬ~」を意味する強意代名詞の ipse も、三人称代名詞になります(大西英文、はじめてのラテン語、1997年、174頁改)。
従って、
(19)(20)(21)により、
(22)
① Te saltare videre volo.
② Te ipsum saltare videre volo.
といふ「ラテン語」は、
① 私は、 あなたに、踊って欲しい。
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「日本語」に、相当する。
従って、
(15)(20)(21)(22)により、
(23)
① 私は、あなたに、踊って欲しい。
① Te saltare videre volo.
に於いて、
① あなたに、 を「強調」し、
① Te(you) を「強調」すると、
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
② 私は、他ならぬ、あなたに、踊って欲しい。
といふ「意味」になる。