(01)
①{象,机}であれば、
①{机}は「動物」ではないため、
①{象}が「動物」である。
然るに、
(02)
②{象,馬}であれば、
②{象}は「動物」であるとしも、
②{馬}も「動物」であるため、
②{象}が「動物」である。
とは、言へない。
従って、
(01)(02)により、
(03)
①{象}は「動物」であり、
①{象}以外は「動物」ではない。
ならば、そのときに限って、
①{象}が「動物」である。
然るに、
(04)
①{象}以外は「動物」ではない。
②「動物」は{象}である。
に於いて、
①=② は、「対偶(Contraposition)」である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 象が動物である。
② 動物は象である。
③ 象以外は動物ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(05)により、
(06)
① AがBである。
② BはAである。
③ A以外はBではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(07)
よく知られているように、「私が理事長です」は語順を変え、
理事長は、私です。
と直して初めて主辞賓辞が適用されるのである。また、かりに大倉氏が、
タゴール記念会は、私が理事長です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念会」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)
従って、
(06)(07)により、
(08)
① 私が理事長です。
② 理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
① 私が大野です。
② 大野は私です。
③ 私以外は大野ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(10)
【名字】大野
【読み】おおの,おの,おおや,おうの
【全国順位】 71位
【全国人数】 およそ220,000人
(苗字由来net)
従って、
(09)(10)により、
(11)
全国には、大野さんが、約22万人ゐるにも拘らず、
③ 私以外は大野ではない。
といふのであれば、
①(今、この場に於いては)私が大野です。
②(今、この場に於いては)大野は私です。
③(今、この場に於いては)私以外は大野ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(12)
(3) 未知と既知
この組み合わせは次のような場合に現われる。
私が大野です。
これは、「大野さんはどちらですか」というような問いに対する答えとして使われる。つまり文脈において、「大野」なる人物はすでに登場していて既知である。ところが、それが実際にどの人物なのか、その帰属する先が未知である。その未知の対象を「私」と表現して、それをガで承けた。それゆえこの形は、
大野は私です。
に置きかえてもほぼ同じ意味を表わすといえる(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、34頁)。
従って、
(11)(12)により、
(13)
確かに、
①(今、この場に於いては)私が大野です。
②(今、この場に於いては)大野は私です。
③(今、この場に於いては)私以外は大野ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(14)
② 大野は私です。
③ 私以外は大野ではない。
に於いて、
②=③ は、「対偶(Contraposition)」である。
従って、
(12)(14)により、
(15)
① 私が大野です。
② 大野は私です。
に於いて、
①=② である。といふことは、
① 私が大野です。
③ 私以外は大野ではない。
に於いて、
①=③ である。といふことに、他ならない。
然るに、
(12)により、
(16)
「大野」なる人物はすでに登場していて既知である。
とあるものの、
「すでに登場してゐる」のは、「大野」なる「人物」ではなく、「大野」といふ「名前」である。
従って、
(12)(16)により、
(17)
「大野さんはどちらですか」といふ「問ひ」が、なされる以上、
「大野」といふ「名前」については、「既知」であるとしても、
「大野」といふ「人物」は、「未知」であると、すべきである。
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