(01)
1 (1) ∃x{私x&∀y(大野y→x=y)} A
2 (2) 私a&∀y(大野y→a=y) A
2 (3) 私a 2&E
2 (4) ∀y(大野y→a=y) 2&E
2 (5) 大野b→a=b 4UE
6 (6) 大野b A
26 (7) a=b 56MPP
26 (8) 大野a 67=E
26 (9) 私a&大野a 3&I
2 (ア) 大野b→私a&大野a 69CP
イ (イ) 私a→~大野a A
イ (ウ) ~私a∨~大野a イ含意の定義
イ (エ) ~(私a&大野a) ウ、ド・モルガンの法則
2 イ (オ) ~大野b アエMTT
2 (カ) (私a→~大野a)→~大野b イオCP
キ (キ) ~(私a& 大野a) A
キ (ク) ~私a∨~大野a ク、ド・モルガンの法則
キ (ケ) (私a→~大野a) ク含意の定義
2 キ (コ) ~大野b カケMPP
2 (サ) ~(私a& 大野a)→~大野b キコCP
シ(シ) 大野b A
シ(ス) ~~大野b スDN
2 シ(セ) ~~(私a& 大野a) サスMTT
2 シ(ソ) (私a& 大野a) セDN
2 (タ) 大野b→(私a&大野a) シソCP
2 (チ) ∀y{大野y→(私a&大野a)} タUI(2にbは無い)
2 (ツ)∃x∀y{大野y→(私x&大野x)} チEI
1 (テ)∃x∀y{大野y→(私x&大野x)} 12ツEE
従って、
(01)により、
(02)
① ∃x{私x&∀y(大野y→x=y)}
② ∃x∀y{大野y→(私x&大野x)}
に於いて、すなはち、
① あるxは{私であって、すべてのyについて(yが大野であるならば、xはyである)。}
② あるxとすべてのyについて{yが大野ならば(xは私であって、大野である)。}
に於いて、
① ならば、② である。
然るに、
(03)
① ∃x{私x&∀y(大野y→x=y)}
② ∃x∀y{大野y→(私x&大野x)}
に於いて、
① には「=」があるが、
② には「=」が無い。
従って、
(04)
① ならば、② である。
と「同時」に、
② ならば、① である。
としても、そのことを「証明」する『術(=に関する、規則)』が無い。
然るに、
(05)
(ⅰ)
1 (1)∃x{私x& ∀y(大野y→x=y)} A
2 (2) 私a& ∀y(大野y→a=y) A
2 (3) 私a 2&E
2 (4) ∀y(大野y→a=y) 2&E
2 (5) 大野b→a=b 4UE
2 (6) ~大野b∨a=b 5含意の定義
8 (8) ~大野b A(6選言枝、右)
7 (9) 大野b 7&E
78 (ア) ~大野b&大野b 89&I
8 (イ) ~(大野b&a≠b) 7アRAA
ウ(ウ) a=b A(6選言枝、左)
7 (エ) a≠b 7&I
7 ウ(オ) a=b&a≠b ウエ&I
ウ(カ) ~(大野b&a≠b) 7オRAA
2 (キ) ~(大野b&a≠b) 28イウカ∨E
2 (ク) ∀y~(大野y&a≠y) キUI(2にbは無い)
2 (ケ) ~∃y(大野y&a≠y) ク量化子の関係
2 (サ)∃x{私x&~∃y(大野y&x≠y)} コEI
1 (シ)∃x{私x&~∃y(大野y&x≠y)} 12サEE
(ⅲ)
1 (1)∃x{私x&~∃y(大野y&x≠y)} A
2 (2) 私a&~∃y(大野y&a≠y) A
2 (3) 私a 2&E
2 (4) ~∃y(大野y&a≠y) 2&E
2 (5) ∀y~(大野y&a≠y) 4量化子の関係
2 (6) ~(大野b&a≠b) 5UE
2 (7) ~大野b∨~(a≠b) 6ド・モルガンの法則
2 (8) ~大野b∨a=b 7DN
2 (9) 大野b→a=b 8含意の定義
2 (ア) ∀y(大野y→a=y) 9UI(2にbは無い)
2 (イ) 私a& ∀y(大野y→a=y) 3ア&I
2 (ウ)∃x{私x& ∀y(大野y→x=y)} イEI
1 (エ)∃x{私x& ∀y(大野y→x=y)} 12ウEE
従って、
(05)により、
(06)
① ∃x{私x& ∀y(大野y→x=y)}
③ ∃x{私x&~∃y(大野y&x≠y)}
に於いて、すなはち、
① あるxは{私であって、すべてのyについて(yが大野であるならば、x=yである)。}
③ あるxは{私であって、あるyが(大野であって、尚且つ、x=yでない)といふことはない。}
に於いて、
①=③ である。
従って、
(06)により、
(07)
① 私と、大野は、同一人物である。
③ 私以外に、大野は、存在しない。
に於いて、
①=③ である。
然るに、
(08)
① 私と、大野が、「同一人物」である。
ならば、そのときに限って、
② 私は大野であり、大野は私である。
従って、
(07)(08)により、
(09)
① 私と、大野が、「同一人物」である。
ならば、そのときに限って、
② 大野は私である。
③ 私以外に、大野はゐない。
に於いて、
②=③ である。
然るに、
(10)
(3) 未知と既知
この組み合わせは次のような場合に現われる。
私が大野です。
これは、「大野さんはどちらですか」というような問いに対する答えとして使われる。つまり文脈において、「大野」なる人物はすでに登場していて既知である。ところが、それが実際にどの人物なのか、その帰属する先が未知である。その未知の対象を「私」と表現して、それをガで承けた。それゆえこの形は、
に置きかえてもほぼ同じ意味を表わすといえる(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、34頁)。
従って、
(09)(10)により、
(11)
① 私と、大野が、「同一人物」である。
ならば、そのときに限って、
② 大野は私です。
③ 私以外は大野ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(11)により、
(12)
③ 私以外は大野ではない。
といふことが、「事実」であって、尚且つ、
③ 私以外は大野ではない。
といふ「情報」に、「価値」が有るならば、そのときに限って、
① 私が大野です。
② 大野は私です。
といふ風に、「発言」する。
従って、
(12)により、
(13)
③ 私以外は大野ではない。
といふことが、「事実」であったとしても、
③ 私以外は大野ではない。
といふ「情報」に、「価値」が無いのであれば、
① 私が大野です。
② 大野は私です。
とは言はずに、
④ 私は大野です。
といふ風に、「発言」する。
従って、
(10)(13)により、
(14)
「大野さんはどちらですか」というような問いがある場合は、
③ 私以外は大野ではない。
といふ「情報」に、「価値」が有るが故に、
① 私が大野です。
② 大野は私です。
といふ風に、「返答」する。
従って、
(14)により、
(15)
「逆」に言へば、
「大野さんはどちらですか」というような問いが無い。
に拘らず、
④ 私は大野です。
とは言はずに、いきなり、
① 私が大野です。
② 大野は私です。
といふ風に、言ふのであれば、その場合は、
「相手の側」は、「怪訝」に思ふ、ことになる。