医科歯科通信  (医療から政治・生活・文化まで発信)



40年余の取材歴を踏まえ情報を発信

再生医療薬、日本で開発活

2015-01-07 12:58:38 | 医療と介護
 
規制緩和で外資も進出


日本経済新聞 電子版 2015年1月6 日

 病気やけがで損なわれた身体機能を回復させる再生医療向けの薬を日本で開発する動きが活発になってきた。昨秋の再生医療の規制緩和で世界で最も早く実用化できるようになり、国内企業に加え海外のバイオベンチャーの進出も相次ぐ。薬の承認手続きが煩雑で敬遠されていた日本を見直す動きが広がり、再生医療の世界的な研究開発拠点になる可能性がある。
 再生医療の薬は人の細胞からつくられる。昨年11月に医薬品医療機器法(旧薬事法)が施行され、国の承認を得るまでにかかる期間が従来の7年程度から大幅に短縮された。実用化で先行する欧米でも同程度かかるが、日本では早ければ2~3年程度で市販できる。
 米ナスダック上場のイスラエル企業、プルリステム・セラピューティクスは胎盤からつくった細胞を培養し、足の血流が悪くなる病気の治療薬を開発する。年内にも日本企業と提携し、安全性を確かめる臨床試験(治験)に入る計画だ。同社は細胞を短期間に大量培養するノウハウを持つ。提携は国内企業の技術力向上にもつながりそうだ。
胎児由来の細胞を使って脳梗塞の治療薬を開発する英リニューロンも日本に進出する。「実用化を短期間で認める独自の制度ができ、日本は非常に魅力的になった」(ジョン・シンデン最高科学責任者)とし、年内にも治験に入る見込みだ。
 再生医療は、従来の化学合成の薬では対処できない難病などの治療に効果が期待される。海外企業が日本で開発することで、母国より早く日本で発売する例も出てくるとみられる。国内の患者にとっても治療の選択肢が増えるメリットがある。
 韓国のメディポストはへその緒の血からつくった細胞で関節軟骨の損傷を治す薬を開発する。韓国では製品化済みで、より規模が大きい日本市場を狙う。既存の海外の再生医療製品の国内発売も増える可能性がある。
 国内勢も富士フイルム子会社の重いやけどの治療に使う人工皮膚などに続き、JCRファーマが昨年9月に骨髄移植後などの合併症を治療する薬、テルモが昨年10月に心不全治療のための細胞シートの製造販売承認を申請。両社とも年内発売をめざしている。
 再生医療に使う薬の安全性に関しては、規制緩和後も従来の薬と同等の確認が求められる。薬の有効性については承認までの症例数などの基準を緩和する代わりに、投与した全ての患者を追跡調査して効き目や副作用の確認を続けることを条件に早期の市販を認めた。
 経済産業省によれば、国内の再生医療の市場は2012年の段階で90億円。20年には950億円、30年には1兆円まで拡大する。安倍政権は再生医療関連ビジネスを成長戦略の柱の一つに掲げている。高い技術を持つ外国企業を国内に呼び込めれば、産業育成環境の整備が一気に進みそうだ。


H26.12.26(金) 塩崎厚生労働大臣閣議後記者会見概要

2015-01-07 12:53:09 | 厚生労働省

(11:28 ~ 11:51 省内会見室)

【厚生労働省広報室】

会見の詳細
《閣議等について》
(大臣)

 私の方からまず、3点ございます。最初に、閣議の前に「第4回まち・ひと・しごと創生会議」がございました。そこにおきまして、以下のとおり発言いたしました。地方創生は日本の創生であり、従来型の政策ではなく、地方の独自性を生かすとともに、官民を上げて取り組むことにより、何としてでも成し遂げなければいけないと認識している。地方創生を実現するためには、何よりも地域に産業をつくること等を通じて、地方に雇用を生み、地方への新たな人の流れを生み出す好循環を確立しなければならない。それに関連して、私が申し上げたのは、対内直接投資についての言及がありますが、これについて、やはり、海外から投資をしてみようと思うぐらい魅力的な地域にならないと、国内の企業も投資しないんじゃないか、ですから、それを基準に考えると何をすべきかが、よく分かるんじゃないかという意味合いのことを申し上げました。こうした好循環をつくりだす地域の産業や、人材の育成について総合戦略にも盛り込まれた新型交付金も活用しつつ、集中的に取り組み、経済成長の礎(いしずえ)をつくることが重要であると考える。その上で、地方でも安心して働ける支援を行うとともに、結婚・妊娠から出産・子育てまでの切れ目のない支援体制の構築や、地域になくてはならない医療・介護等の生活支援サービスの確保に、厚生労働省の政策を総動員して取り組んでいく。また、地方創生コンシェルジュとして、厚生労働省では、都道府県ごとに62名専任するなど、地方自治体の取り組みもしっかり応援していきたいということを申し上げました。
 2点目は、これは閣議で発言いたしましたが、雇用関係の点についてでございます。11月の完全失業率は、前月と同水準の3.5パーセント、有効求人倍率は0.02ポイント上昇いたしまして、1.12倍でございました。現在の雇用情勢は、一部に厳しさは見られるものの、着実に改善が進んでいます。ただし、消費者マインドの低下や、海外景気の雇用への影響について注視していく必要があります。雇用情勢の地域差などの課題に対応した、雇用対策の推進や、正社員実現加速プロジェクトによる正社員就職の促進などにより、雇用情勢の一層の改善が進むよう、取り組んでいきます。
 3点目でありますけれども、労働者健康福祉機構の虚偽報告に関する処分などの発表についてでございます。12月17日に、労働者健康福祉機構の虚偽報告について、第三者委員会より報告書が発表されたところでありますけれども、それを受けて、厚生労働省及び労働者健康福祉機構の関係者に対する処分及び人事異動が決まりましたので、発表させていただきます。まず、本日労働者健康福祉機構の所在地を管轄する神奈川労働局より、横浜地方検察庁に対して、機構の平成24年、25年の総務部長であった、高崎真一、小山浩一及び平成24年の理事であった細川和彦、この3名について、追加で刑事告発を行いました。なお、法人につきましては、すでに11月17日に刑事告発を行っておるところであります。今般の労働者健康福祉機構の行為は、障害者雇用率制度の健全・適正な運営を根底から覆すものであって、同時に、障害者の方々からの行政に対する信頼を失墜させる重大かつ深刻な背信行為だと思っております。所管独立行政法人を監督する官庁としてはもとより、何よりも、障害者雇用促進に責任のある行政当局として、決して看過することができない重大事案であることから、虚偽報告に関して、個人についても告発に踏み切ることといたしました。
 また、労働者健康福祉機構においては、同じく本日付けで第三者委員会報告書を踏まえ、厳正に処分量定を決定し、最も重い者、6名につきましては、停職1か月相当の報酬返納を求めるなど、決裁記録等により、故意・過失が認められた平成18年度以降の関与者、31名おりますが、それに加えて、管理監督者5名について、厳格な処分等を行うと聞いております。
 厚生労働省においては、機構に出向した本件に関与した職員に関し、本日付けで人事異動等を行いました。具体的には、都道府県労働局長についてた職員3名、これは滋賀・和歌山・長崎、各労働局長であります。この3名について、企業に対する障害者雇用率達成指導の責任者としてはふさわしくないと判断いたしまして、本日付けで労働局長の職を解く等の人事異動を行います。また、前労災審議官の高崎真一、彼は11月18日付けで官房付にすでに異動済みであります。この高崎真一については、虚偽報告の事実を知りながら、是正を指示しなかったという、国家公務員としての責任を重ねて問い、減給1月、10分の1の懲戒処分を行いました。
 今後第三者委員会からの報告を踏まえて、労働者健康福祉機構においては、再発防止策を厳格に取り組むことを強く求めるとともに、厚生労働省としては、公法人での障害者雇用の適正な報告を確保するための仕組みについて検討してまいりたいと思います。また、第三者委員会の報告書では、本省からの出向者の責任が厳しく指摘をされた一方で、出向者である現総務部長が今回の不正の発見・是正に貢献した点にも言及した上で、出向者の受け入れの必要性・合理性について、改めて十分な検証が必要とされるところでございます。これに関して、厚生労働省としても再び同様の事態を招くことにならないように、今後の出向人事のあり方について見直しを図っていきたいというふうに考えており、特に総務部長や、人事課長といった、法人運営の枢要なポストに継続して出向者を出してきた点については、見直す必要があると考えております。このため、現在空席になっております人事課長については、当面厚生労働省からの後任者の出向を行わないということを決定いたしました。なお、詳細はこの後、事務方にお聞きをいただければと思いますので、私からは以上といたしたいと思います。以上、私から3点申し上げたところでございます。

《質疑》
(記者)

 独立行政法人労働者健康福祉機構の虚偽報告について、労働行政の所管大臣としての責任はどう認識されていますでしょうか。


(大臣)

 障害者雇用促進というのは、厚生労働省の政策であるわけでありますから、そのベースになる数値の報告について虚偽報告を、それもこともあろうに厚生労働省の所管の独法(独立行政法人)で行われてきた、それも継続的に行われてきたということは、本当に許し難い行為であり、また、言ってみれば障害者の皆様方にとってみれば、一体、障害者雇用促進という政策そのものの本気度が問われるという指摘をされても、それはやむを得ないというぐらい大変重たいことだと思っておりますので、私どもとしても、まずは関わった者の厳正なる処分を行う。その上で、なぜ起きたのかということを、もちろん第三者委員会が機構に関しては、ある一定程度の、この提言をしているわけですけれども、厚生労働省においても改めて考えた上で、とりあえず、処分をきちっとする、そしてまた、刑事告発もするということに、この労働局の方がやったわけでありますが、今後こういうことが起きないためには、さらに考え、また、先ほど申し上げたとおり、公法人の報告制度についての真正性担保の仕組みがないということが今まで行われてきたわけでありますから、これについても、立入検査、抜き打ち検査を含めて、もう1回再構築していかなきゃいけないというふうに思います。


(記者)

 実質賃金についてなんですけれども、今日発表されて、4.3パーセント減と、17か月連続でマイナスになっております。また、現金給与自体も下がっていますが、今後本当に賃上げができるのでしょうか。その認識をお願いします。


(大臣)

 統計は過去の数字であるということをまず踏まえなきゃいけないのと、昨日も申し上げましたけれども、賃金は経済実態から少し遅れて反応する遅行指標と考えるのが普通の経済政策での実態だろうと思います。今、実質賃金のお話もありましたが、給与総額自体もですね、マイナスの1.5パーセントということで減少しているわけでありますが、これは一言で言ってしまえば、年末に限っての統計技術的な要因というのがあって、「特別に支払われた給与」という項目がありますが、これが前年同月比27パーセント減ということになっています。これは大幅に減少しているわけでありますけれども、これは例年ですね、11月の速報値の公表日が早いものですから、事業所のデータが出そろわないうちに公表になるということで、低く算出されるという癖がございまして、この「特別に支払われた給与」については今年も確報で大幅に修正されるものというふうに認識をしているわけであります。11月の速報値のみで賃金の動向を判断するという今の御懸念は少しお時間を置いていただいて、この確報値を見てから御判断をいただいた方がいいのではないかと思う一方で、先ほど申し上げたように、賃金をこれから上げられるのかというお話が今御質問としてありましたが、これはすでに政労使でも賃上げについての御同意を経営者側からもいただいているわけでもありますし、実体経済としても収益等との環境は好転をしているということを考えてみると、賃金は引き続き少なくとも名目賃金は上昇していく筋合いにあるというふうに考えるべきだろうと思いますが、しかし、まだまだ地方にもこの影響がしっかり波及しているというわけでもありませんので、だからこそ我々は今回、地方創生に軸足をさらに重きを置いて、これから地方の再生を図っていくということは地方の企業の支払う賃金についても上がるようにもし、できるだけ上がることによって物価の上昇率よりも高くなるというように、我々は実体経済を変えていかないといけない。それがまさにアベノミクスで、潜在成長力を上げていくのに等しいようなことをやっていこうということでありますので、その結果として、物価を上回る賃金の上昇を我々としては引き出すことは可能ではないか。ただし、そのためには2年度にわたってもうすでに発表してきた(日本)再興戦略を着実に実行すること、さらにそこで書いてある仕込み中の、あるいはこれから仕込む政策もたくさんあるわけですから、これらが確実に実行されるようにしていくということが大事だというふうに思います。


(記者)

 群馬大学病院の腹腔鏡(手術)で8人死亡した事案についてなんですけれども、その後、それよりもごく一般的な開腹手術でもそれ以前に10人亡くなっているということが、しかも同じ執刀医が行った手術で10人亡くなっているということが明らかになりました。それまで、死亡事案についての症例検討会なども行われていなかったということで、大学の安全管理体制やチェック機能が十分ではなかったんではないかという問題も明らかになってきているんですけれども、一方で、高い水準の医療を提供する特定機能病院として群馬大学病院は指定されているわけですけれども、その承認した厚生労働省の大臣としてですね、どのように受け止めているかということをうかがいたいんですけれども。


(大臣)

 報道でこの開腹での肝臓の手術においても死亡事例が相次いでいたということが報道されているわけでありますが、厚労省としてもこの群馬大学病院に対して、今、調査及び説明を求めておるところでございます。この病院においてすでに腹腔鏡手術での死亡事例に関しても再発防止策の策定とその適切な実施を行うように求めているわけでありますけれども、腹腔鏡手術死亡事例への再発防止策の実施状況の確認とですね、それから今回さらに明らかになったこの開腹手術での死亡事例にかかる事実関係の把握を進めるために、厚労省としては立入検査をしなければいけないというふうに考えているわけでございまして、目下、その段取りを検討しているところでございます。


(記者)

 大臣として、厚労省の方針はわかったんですけれども、実際に8人プラス10人、一人の医師、同じ医師が執刀して亡くなっているという事態について、特定機能病院として厚労省が承認していて、さらに診療報酬上も様々な優遇を受けているその病院でこういう事態が起きているということについて、大臣としてどう受け止めているのかという、そのお考えをうかがいたいんですけれども。


(大臣)

 尋常な事態ではないことはもう間違いないことであって、だからこそ説明を求め、そしてまた、立入検査もする中で、実態の掌握、これをまずやることが厚労省として、あるいは特定機能病院を指定した厚労大臣としてのまずやるべきことであるというふうに思います。その上で、その実態に即してどうするかということを考えるのであって、今、指定したことについての是非等については、まだ最終判断するには早いということなので、今はなんにしろ実態の把握をする、そしてなぜこういうことが起き、そしてなぜ本来取らなければいけないプロセスを病院内において取ってこなかったのか、これらについてはやはり重大な問題として我々はしっかりと見ていかなきゃいけないというふうに思います。


(記者)

 本日発表された雇用統計で、労働力調査なんですが、非正規社員が初めて2,000万人を超えました。高齢化が進んでいるということと、女性の就業が進んでいるということが背景だということなんですが、その受け止めをおうかがいしたいのと、あともう1点、正規社員は前月まで2か月間増えていたんですが、今月は減少になりまして、正社員実現のプロジェクトなんかも進めてらっしゃいますけれども、正社員の有効求人倍率が伸びている中で、今後また上昇に転じていくというふうに見てらっしゃいますでしょうか。その方向の見立てをお願いできればと思います。

(大臣)

 今、御指摘のように、(総務省の労働力調査で)非正規雇用が初めて2,000万人の大台に乗ったということでありまして、確かに非正規雇用労働者が増加基調であることは事実だと思います。これは一つはですね、高齢者、高年齢層で再雇用等による非正規への移行が増加しているんではないかというのが第1点、そして第2点は景気回復に伴って女性を中心にパートなどで働き始める方々が増加しているんではないかというのが第2点で、これは選挙戦を通じてもずいぶんこの話が議論の対象になったと思います。非正規雇用も減少している時と比べると雇用者自体の数は増えているということではあるわけでありますけれども、しかし、我々としてもやっぱり正規雇用が増えるということが大事で、今、御指摘のように、今回それが減ったということもあまり好ましいとは思っておりませんけれども、しかしこれは統計で一月の話でありますので、我々としてはまず雇用全体が増えるということ、その中でやはり正規雇用が進むように、増えるようにキャリアアップの努力を企業にも求める、あるいは制度としても、それを担保するような制度を加えるというようなことを続いてやっていかなきゃいけないというふうに思っているわけで、もう少し様子を見ないといけないと思いますけれども、いずれにしても、雇用全体が増えるということはプラスの話であり、正規雇用を増やすという政策目的は、我々としては何も変わっていないということであります。

「医療事故情報収集等事業第39回報告書の公表について」

2015-01-07 12:49:55 | 医療と介護
┏━━━━━━━━━━【PMDAメディナビ】━━━━━━━━━━┓
「医薬品・医療機器に関連する医療安全対策に係る厚生労働省通知」
掲載のお知らせ (2015/01/05 配信)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

医薬品・医療機器に関連する医療安全対策に係る、
以下の通知が発出されましたので御案内いたします。

(2014年12月26日付)
「医療事故情報収集等事業第39回報告書の公表について」
http://www.info.pmda.go.jp/iryoujiko/file/20150105-001.pdf

■本事業は、医療機関から報告された医療事故情報等を収集、分析し
 提供することにより、広く医療機関が医療安全対策に有用な情報を
 共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、
 医療安全対策の一層の推進を図ることを目的として実施されています。

■本通知の内容については、医療機関の医療に係る安全管理のための委員会の関係者、
 医療安全管理者、医薬品及び医療機器の安全使用のための責任者等に対しても、
 周知いただきますようお願いします。

(参考)
公益財団法人日本医療機能評価機構ホームページ
http://www.med-safe.jp/

大野病院事件から10年

2015-01-07 12:47:51 | 医療と介護

大野病院事件スペシャル対談◆加藤医師 vs.安福弁護士
福島離れず、産婦人科医として勤務 ◆Vol.1

m3.com 2015年1月5日(月) 

■過去1年間、2人で年間700分娩
 2008年8月の無罪判決から6年以上経った今でもなお、多くの医療者の記憶に刻まれている福島県立大野病院事件。m3.comが、医師会員を対象に昨年実施した調査でも、「過去10年間で最も印象に残っているニュース」の1位に選ばれた(『大野病院・割り箸事件、今も医師の記憶に』を参照)。
 帝王切開手術後に妊婦が死亡したこの事件は、業務上過失致死傷罪容疑による医師逮捕に発展し、医療界に大きな衝撃が走った。本事件の検証は、今年10月に創設される医療事故調査制度をはじめ、今後の医療の在り方を考える上でさまざまな示唆を与える。
 事件の被告となった加藤克彦氏は今、国立病院機構福島病院の産婦人科部長として、臨床に従事する。加藤氏と、大野病院事件の弁護団で中心的役割を果たした弁護士、安福謙二氏に、今だから語れるエピソードも交えながら、大野病院事件を検証していただいた(対談は、2014年11月15日に実施。計21回の連載。本文中、敬称略)。
(司会・まとめ:橋本佳子m3.com編集長)
________________________________________
  
※加藤克彦氏(左) あまりメディアに登場しないが、今回は事件当時、全国の医療者から支援を受けたことへの感謝の意味も含め、対談を引き受けてくださった。
※安福謙二氏(左) 大野病院事件弁護団の弁護士。1972年東京大学経済学部卒、78年弁護士登録。

安福 加藤先生、本当に元気そうでよかったですね。
――先生方がお会いになるのは、いつ以来なのですか。
安福 私は大野病院事件を検証したいと考えており、2年ぐらい前にここ(福島県郡山市)に来て、加藤先生に相談したことがあるのです。
 弁護人として持っている刑事記録を外に出すことは、いろいろ問題が生じるため、うかつに外に出せません。公判が始まる前はもちろん、裁判が終わっても、一切に外に出せず、ましてやメディアに語れない。
 刑事訴訟法には、「何人も,被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる」と書いてあります。刑事確定訴訟記録法でも原則公開としていますが、「次の場合に限る」とされ、公益目的に限定されています。過去の判例を見ると、この公益の意味が極めて狭く、ほとんどの申請は却下される。ここに刑事事件を検証する難しさがあります。
――医療の場合には、事故調査を実施して検証しますが、裁判の場合には、記録の閲覧ができないならば、検証ができないことになりますか。
安福 その通りです。大野病院事件は、公開法廷だったから、傍聴できたので、少しは検証は可能。しかし、略式罰金で終わる場合には、公開法廷がないから何も分かりません。なぜ略式罰金で終わったのかが、分からないわけです。間違い、冤罪があっても、検証される可能性はほとんどありません。
 例えば、大野病院事件も、実況中継したら、「いかにお粗末なことを検察が言っているか」を世界に流布できたはずです。話が飛んでしまいましたが……。
――では、まず加藤先生の今の仕事についてお伺いできますか。国立病院機構福島病院(福島県須賀川市)に勤務されているとのことです。
加藤 産婦人科部長をしています。
――産婦人科の医師は、何人いるのですか。
加藤 今は4人になりましたが、つい最近までは2人でした。
――年間の分娩数はどのくらいでしょうか。
加藤 700例弱ですね。
――それを2人体制で対応していた。
加藤 大学(福島県立医科大学)から、月10日間、医師に来てもらっていました。ただし、あくまで応援なので、本質的な部分は全部2人にかかってきます。2人体制は1年間だけだったのですが、さすがに大変でしたね。今は、オンコールは月7、8回くらいです。
安福 先生は須賀川に移られて、何年ですか。
加藤 5年が経ちました。
安福 大野の判決が終わって、すぐではないですよね。
加藤 まず(福島県の)会津でリハビリしました。会津中央病院です。1年間いました。
安福 それから、須賀川に来られた。
加藤 はい。
安福 最初のお子さんは?
加藤 小学校3年、8歳です。
安福 確か、逮捕された翌週でしたね、ご長男がお生まれになったのは。先生の逮捕は、予定日までまさに1週間があるかないかの時期。そういう状況で対応されたのだから、本当に大変なことでした。
 私は(2006年の)2月18日、土曜日の夕刊で、先生が逮捕されたことを、とても小さい記事でしたが、読んでいました。すごく気になっていた。と言うのも、その1カ月後の3月18日に、医師法21条と医師の過重労働という二つのテーマで、シンポジウムを企画、その準備をしていたからです。
 この二つのテーマにそっくり当てはまる事件が、まさに起きたわけです。1人医長だった加藤先生が逮捕された。21条も問題視された。「こういうことが、このタイミングで現にあるのか」と、すごく重苦しい思いをしたことを覚えています。
 そうしたら翌月曜日、2月20日の朝に知り合いから、「あの事件、知っている?福島の」「お前、やれよ」と電話がかかってきた。最初は本音で焦った。しかし、気付いた時には、あっという間に、事件の渦中にいました。でも、一番、しんどい思いをされたのは先生。一人目のお子さんが生まれる直前で、奥様も不安な状況で……。よくそんなタイミングで逮捕したのか、わざとなのか……。
(つづく)

悩める三木谷 新経連 

2015-01-07 12:46:01 | 社会問題・生活
 
北欧の小国に求める次の針路

日経新聞 電子版 2015年1月5日

楽天社長の三木谷浩史が率いる経済団体、新経済連盟(新経連)が変革を迫られている。新経連は総力をあげて一般用医薬品(大衆薬)のネット販売解禁を推進したが、全面解禁は勝ち取れず、「自分の商売ばかり」など予想外の反発を食らった。
悩む三木谷らが視察団を組んで足を運んだのがIT(情報技術)先進国の北欧。解は見つかったのか、同行して探った。
■人口が日本の1%の「IT大国」
 昨年11月半ば、バルト3国の1つエストニアの首都タリン。三木谷ら視察団一行は同国政府職員の説明を、身を乗り出すようにして聞き入っていた。人口が日本の1%(130万人)、GDPは0.5%(244億ドル)に過ぎない小国の何が三木谷らを引き付けているのか。
 「国民はこの1枚のIDカードがあれば、行政のサービスも民間のサービスも、スムーズに受けられます」。15歳以上の全国民に発行するIDカードは身分証明書でもあり、バスなど交通機関のパスにもなる。ネットバンキングも、ネット投票もこのカード一枚あれば事足りる。
 政府機関も電子化が進んでいる。国家情報の基盤をつかさどるシステムが整い、市民や政府の各機関、金融機関などがつながる。多くの官民サービスでITが活用されている。2007年に世界初ともいわれる大規模なサイバー攻撃を受けて以降、高度なサイバー防衛体制も築いている。
 日本ではようやく国民一人ひとりに固有の番号を割り当て、社会保障や税などの手続きを効率化する「マイナンバー制度」が来年度から動き出す段階。エストニアは小国ながら、日本のはるか先を行く「世界一のIT大国」だ。
 「ITを活用した『現代型』小さな政府を目指すべきだ」。エストニア中を丸1日駆け回った三木谷氏はそう漏らした。「15年春にも電子政府のあり方についての構想をまとめ、政府に提言していきたい」という。
 これまで、新経連は大衆薬のネット販売や不動産のネット取引など個別テーマに焦点をあてて、規制緩和を政府に求めてきた。常にネット事業の壁となって立ちはだかる「対面書面の原則」撤廃の突破口とする狙いがあった。しかし、相手にした官僚は手ごわく、頼みの民意も冷ややかだった。
 「自分のところの薬の販売拡大につなげるつもりだろう」。三木谷が強く主張すればするほど、楽天に向けられる視線は冷めていった。確かに楽天としてビジネス上の利点はあるが、ネット販売が広く認められれば医療費抑制など国民生活にもプラスになる確信があった。しかし、その問題意識は届かなかった。
 「どうやって変えていけばいいかわからない。だから北欧に来た」――。行き詰まり感がにじむなかの渡欧だった。
■現れなかった「援軍」
 三木谷は大胆な規制緩和を掲げ、共感が得られやすい「官VS民」の対決構図を作りだそうとしてきたが、いまひとつ援軍が得られなかったのはなぜなのか。新経連の成り立ちに要因の1つがあるかもしれない。
 新経連立ち上げは2012年6月。前身の「eビジネス推進連合会」を母体に名称変更した。経団連を脱会してから1年後のことだった。
 04年、経団連会長だった奥田碩(当時、トヨタ自動車会長)から直々の誘いを受け、楽天は経団連に入会した。ところが、奥田の経団連会長退任以降、三木谷が訴える規制緩和への対応が鈍い経団連との「距離」が広がっていった。
 決定的だったのが、東日本大震災後の電力会社に対するスタンスの違い。「3.11」で電力産業の制度疲労が露呈したにもかかわらず、公然と東京電力を擁護する経団連会長。発送電分離が持論の三木谷は最終的に「(経団連の)電力業界を保護する姿勢が許せない」とツイッターでつぶやき、たもとをわかった。
 新経連発足当初、三木谷は「経団連に対抗するつもりはない」と公言していたが、設立の経緯を見れば、「アンチ経団連」に映るのはやむを得なかった。薬のネット通販で国を相手に訴訟を起こすなど、旧勢力との対立軸を打ち出すことで存在感を高めていったのも事実。新経連の主張は、はじめから経団連企業の賛同が得られにくいのだ。
 首相の安倍晋三と個人的な友好関係もある三木谷は、安倍政権で産業競争力会議の民間議員を務め、昨年6月に策定された安倍政権の成長戦略にも影響を与えたとされる。しかし、経団連会長が安倍と距離を積極的に縮めようとする東レ会長の榊原定征に交代し、賃上げ問題、原発再稼働など国民的課題が浮上すると、重厚長大産業を抱える経団連の存在感が高まってくる。「難しい政治課題こそ経団連の出番」(関係者)と腕まくりする経団連は、「既成勢力との対決構図を打ち出して存在感を高めるやり方では限界がある」と新経連を批判し、共闘する意思はない。
 70年の歴史がある経団連と「支持率」を競ったところで、設立から2年半に過ぎない新経連には分が悪い。政治や官界との距離の取り方も未熟だ。いつの間にか経団連の土俵にのり、本来の持ち味を失っていたのではないか。
■派手になる「新経済サミット」
 例えば、新経連にとって最大の年間行事である「新経済サミット」。これまで2回開かれた新経済サミットには、米オラクル創業者のラリー・エリソン、米ツイッター共同創業者のジャック・ドーシーら世界IT界のスター経営者が登壇。首相の安倍晋三もあいさつに駆けつけるなど、三木谷の幅広い人脈を誇る内容となった。だが、派手になればなるほど入りにくくなり、参加者は限られ、三木谷が目指す「起業をムーブメントにしていく流れ」とは遠ざかっていく。新経済サミットをどう変えるか。
 エストニアに入る前日、三木谷氏はフィンランドの首都ヘルシンキで開かれた起業家向けイベント「スラッシュ」に登壇した。2日間で1万人以上が参加するスラッシュは欧州最大級の起業家向けイベントといわれる。経営者だけでなくフィンランド首相ら政治家も登壇し、ベンチャー熱を高める。
 スラッシュが始まったのは2008年。世界の携帯端末市場の4割を握ったこともある携帯電話会社、ノキアの衰退期だ。フィンランド最大級企業の退潮で閉塞した状況を打開するために開かれ、実際にフィンランドでベンチャーブームが起こるきっかけともなった。
 ヘルシンキ市内の廃屋のような施設で開催し、市民も訪れるスラッシュは、国をあげた「お祭り」として浸透している。三木谷が目指していた「起業のムーブメント」に近い姿があった。
 三木谷は、今回の視察をもとに新経済サミットの見直しを事務方に指示した。「日本は大きい国だから突然変えるのは難しいが、足元から変えなければいけない」(三木谷氏)。起業を『草の根』で広げていくには、地道な活動も欠かせないとの考えだ。
 北欧の旅で新経連の針路の手がかりは得たとしても、最大の問題は、三木谷が新経連をまとめあげていけるかどうかだ。
■「新経連は負担」の声も…
 新経連には現在、ネット企業を中心に約550社が加盟しているが、経営体力に乏しい未上場の小規模企業が多い。財界活動にさける人材や資金の余裕がある企業は限られている。「新経連の活動はビジネスの負担になる」。設立から2年半、目立った成果に乏しいせいか、そんな不満が加盟企業から漏れてくる。
 新経連の事務局には楽天が多くの人材を送りこんで運営しているのが実態。結果的に「楽天の団体のように見えてしまう」(同関係者)。新経連の加盟企業には「楽天色」があまりに強まることへの懸念も垣間見える。楽天と並ぶIT業界の旗手、ヤフーは加盟せず、新経連の動きとは一線を画している。新経連が「IT業界の代表」と言い切れるかは微妙だ。
 新経連は定款で団体の目的について「ITビジネスなど新産業の発展を通じ、国政の健全な運営や地域社会の健全な発展に資する」としている。この2年半の活動によって理念が国民に浸透したとは言い難い。新経連は三木谷の個性と、国を訴えることも辞さない強硬手法などで知名度は高まったが、ネット販売の解禁だけを訴える団体との誤解も招いた側面がある。
 北欧の旅を終えた三木谷は個別テーマで攻めるゲリラ戦より、社会の将来像を描いたうえで幅広い支持を得て戦う総力戦を考えているようだ。大義を声高に唱えるだけでは世論は動かない。2015年、新経連は一皮むけるだろうか。=敬称略
(企業報道部 名古屋和希)

アレルギー申告していた患者が

2015-01-07 12:44:24 | 医療と介護
投薬ミスで死亡
読売新聞 2014年12月27日(土) 配信

 高知県立幡多けんみん病院(宿毛市)は26日、入院患者の高齢男性にショック症状を引き起こす薬剤を誤って投与し、死亡させたと発表した。
 男性は薬剤へのアレルギー歴を申告していたが、主治医らがカルテを確認せずに投与した。病院側はミスを認めて遺族に謝罪した。
 発表では、主治医は今月、男性の感染症治療のため、看護師に抗生物質製剤の点滴を指示。男性は投薬5分後にアレルギー反応が出て心肺停止となり、約1時間40分後に死亡した。
 同病院はマニュアルで、初めて薬を投与する際にはカルテでアレルギーの有無を確認する決まりだが、主治医らは確認を怠っていたという。
 橘寿人院長は「あってはならないミス。原因を分析し、再発防止策を徹底する」と話した。遺族への補償を検討しているという。

「新聞を考える本」

2015-01-07 12:02:34 | 医療と介護
★毎日新聞社の女性記者2人が若い世代に新聞の魅力を伝えたいと「新聞を考える本」
を出版した。
「新聞の意義や可能性、記者も迷い悩みながら記事を発進していることを知ってほしい」
小国綾子(48)記者は夫も記者で1男の母、1990年入社。
「国民の知る権利を守り隠れた事実を掘り起こし、世論を作る。私たそれに加え、さまざまな証言を集め、後世に伝える役割もある」
「私とあなたの意見は違うけど、対話することで、互いに新しい視点を得られたらいいな」という姿勢で、異なる意見持ち主と出会い、対話する作法を学んでほしい。小国記者
小林葉子記者(48)は夫も記者で1男一女の母。
15年前からNIE(教育に新聞を)活動に携わる。
著書の中で「異なる意見を持つ人と対話しよう」と呼びかけている小国記者。
「小学生であっても社会の一員であり、地球人の一人です。世の中で起きていることは皆さんに関わっているのです。
新聞はあなたと世界をつなぐ窓になる。そして知識は力になり、危険からあなたを守ることになります。新聞を通じてよりよい人生を開いてほし」小林記者

<創作欄>
沼田利根は大学卒業を控え、幾つかの企業の面接を受けた。
「ええ、知らないのですか?冗談でしょ!」面接の人は呆れていた。
成人なら当然知っているべき社会常識を全く知らないことが露呈したのだ。
「新聞を読んでいるのですか?」
「読んでいません」
「それはダメだね。話にならない」面接の人は互いに顔を見合わせて、顔をしかめた。
自宅ではずっと父親が毎日新聞を読んでいた。
母親はあまり新聞を読んでいなかったが、作家の太宰治が行方不明になった記事を食入いるように読んでいたことが思い出された。
三鷹に住んでいた母親(大正3年~)は山崎豊栄さんを知っていたのだ。

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山崎 富栄(やまざき とみえ、1919年(大正8年)9月24日 - 1948年(昭和23年)6月13日)は美容師。
作家・太宰治の愛人の一人であり、最晩年の太宰の看護や執筆活動の介助を続けたことと太宰と共に入水自殺を遂げたことでも知られる。
1947年(昭和22年)3月27日夜、屋台のうどん屋にて飲酒中の太宰治と知り合う。次兄・山崎年一(としかず)が旧制弘前高等学校で太宰の2年先輩だったことや、富栄の下宿が太宰行きつけの小料理屋の筋向いだったことから太宰に親しみを持つようになる。このとき富栄は太宰の著書を一冊も読んでいなかったが、「戦闘開始! 覚悟をしなければならない。私は先生を敬愛する」と日記に書いた。
5月3日、太宰から「死ぬ気で恋愛してみないか」と持ちかけられ、太宰夫人・美知子の立場を気遣いつつも、「でも、若し恋愛するなら、死ぬ気でしたい」と答える。5月21日、太宰と初めて結ばれる。

映画「チェンジリング」

2015-01-07 07:02:10 | 社会問題・生活
1月6日午前2時から映画「チェンジリング」をCSテレビで見た。
『チェンジリング』(Changeling)は、2008年のアメリカ映画。
クリント・イーストウッドがアンジェリーナ・ジョリーを主演に迎え、1920年代のロサンゼルスで実際に発生したゴードン・ノースコット事件の被害者家族の実話を元に映画化された。

 衝撃の実話

第81回アカデミー賞主演女優賞・撮影賞・美術賞にノミネートされた作品『チェンジリング』(Changeling)。日本で公開されたのは2009年2月20日です。
名優クリント・イーストウッドが監督した『チェンジリング』は1920年代に実際にあったゴードン・ノースコット事件の被害者家族の実話を元に映画化されました。
ゴードン・ノックス事件は1920年代に発生した連続少年誘拐事件です。連続少年誘拐事件の被害者となったシングルマザーの母親役をアンジョリーナ・ジョリーが演じます。
アメリカで80年近く前の事件だったこともあり映画『チェンジリング』では関係者全員の名前が実名で出てきます。映画の中ででてくる衝撃的な出来事が、脚本ではなく事実ということに衝撃を受けます。
1920年代アメリカで実際に起きていた事実ということを考えると、被害者の母親がたった一人でロスアンゼルス市警という巨大な組織と立ち向かう姿に尊敬の念を感じます。
アンジョリーナ・ジョリーは最初に『チェンジリング』のオファーが来た時に、子どもを失うというストーリーに出演することに難色を示したそうです。しかし被害者の母がロスアンゼルス市警に立ち向かい、子どもへの愛を貫き通す姿に同じ母親として心を動かされ出演することを決めたのではないでしょうか。彼女がひたすら子どもの無事を信じ続けて、猛然と奮闘する姿に心を揺り動かされる作品です。
『チェンジリング』あらすじ
1928年3月。ロスアンゼルス郊外に住んでいる一人のシングルマザーのクリスティン・コリンズ(アンジョリーナ・ジョリー)が息子を小学校へと送り届けます。
息子を送り届けたその足で向かったのが電話局です。クリスティンは電話局で働いています。クリスティンは妊娠中に夫が逃げ出してから、彼女がひとりで息子ウォルターズを育ててきました。
ウォルターズから「なぜ父親がいないの?」という問いかけに対して「あなたが生まれたときに、いっしょにプレゼントが届いたの」と語り「何が入っていたの?」と尋ねるウォルターズに対して「Responsibility」責任と語り、息子が生まれてからも息子に対して深い愛情と責任を持って育ててきました。
仕事が休みの日の3月10日のことです。息子と映画に出かける約束をしていたクリスティンに会社から電話がかかります。クリスティンは急遽出社することになり、ウォルターをひとり家に残して会社へと向かいます。帰宅するはずの時間を大幅に過ぎて、クリスティンは急いで帰宅しましたが、留守番しているはずのウォルターの姿は既にありませんでした。
家出、それとも誘拐?すぐに警察に連絡をしますが、警察からは「子供の捜索は24時間経たないと出来ない。そのうちすぐに帰ってきますよ」と突っぱねられてしまいます。ウォルターが突然消えた翌日に警察はやってきて、ようやく翌朝から捜査は開始されたましたがウォルターの行方は全く掴めない行方不明の状態は続きクリスティンは眠れない夜を過ごしていきます。
1か月、2か月・・・・と時間だけが経過していきますが、ウォルターの行方不明はそのままで時間だけが経ちました。
5ヵ月後の8月に、クリスティンの会社にロス市警のジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)から連絡が入りました。それは「イリノイで息子さんの身柄を保護しました」という連絡です。クリスティンは、取り急ぎ駅まで息子を迎えに行きますが、列車から降り立った子どもはウォルターではなく全くの別人でした。
孤独な闘いクリスティンの中で
クリスティンは「私の子じゃない!!」と断言してジョーンズ警部に訴えますが、警部は応じません。久しぶりの子どもとの対面で混乱しているからだと全く応じません。「今は動揺しているから分からないんです。あれから5か月です。子どもは大人が考える以上のスピードで成長しているので」とクリスティンを無理やり納得させます。クリスティンは子どもが違うと警部に抗議はしますが、受け入れてもらえないので疑問を抱えたままその少年を連れて自宅へ連れて帰ります。
連れて帰った少年をお風呂へ入浴されると、少年の身体をみて割礼をされていることに気がつきます。そしてさらに少年の身長を測ってみると、ウォルターよりも身長が7cmも低かったのです。明らかにこの少年は自分の息子とは違うと確信を持ったクリスティンは、再びジョーンズ警部の元を尋ねまうす。そして少年は自分の子どもではない。と抗議を続け引き続きウォルターを探して欲しいとお願いするのですが、それでもジョーンズ警部は全く受け入れてくれません。
その間にジョーンズ警部は医師を派遣してきました。医師にもウォルターの身長よりも7cm低いことを訴え主張しますが、医師も全く受け付けてくれません。それどころかその医師は、報告書で「クリスティンが育児放棄をしている」と記録して提出するのでした。
少年が自分の息子ではない!といくら主張しても受け入れてもらえず、それどころか育児放棄の報告書まで提出されたクリスティンは納得できません。
マフィアと癒着していたロス市警の不正を暴く活動をしているグスタヴ・ブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)は、クリスティンに対して警察と戦うのであれば協力をすると申し出ます。
クリスティンは少年を歯医者に連れて行って少年の歯列を観察してもらいます。歯科医はウォルターと少年はまったく別人だと断言してその内容を書類に書きだします。ウォルターが通っていた小学校の担任教師も、少年はウォルターではない。と断言します。それをもとにジョーンズ警部に訴えても、それでもジョーンズ警部は動きません。
そこで、遂にクリスティンは記者会見を開き、新聞記者たちに発見された少年が息子のクリスティンではないこと、ロス市警が息子の捜索に手を貸してくれないことを訴えるのでした。
警察は明らかに自己防衛のために動いています。そしてクリスティンの記者会見を知ったジョーンズ警部は、クリスティンを警察に呼んで彼女を錯乱状態だとして病院の精神病棟に無理やり収容してしまう手はずを整え、精神病棟送りにするのでした。
クリスティンが送り込まれた精神病院で、彼女は"コード12"と分類されます。精神病棟で一晩泣き明かした彼女に、ひとりの患者がすべてを教えてくれました。「コード12と呼ばれている患者は、警察を敵に回した連中だ」と。コード12とは患者全員を指さす言葉だったのです。そしてクリスティンと同じように、警察に逆らったために精神病院へ収容された女性がたくさんいるのでした。
食事を終るとクリスティンは担当医に呼び出されます。そして「警察の捜査にミスはなかった」という内容が書かれた書面にサインをすれば、すぐにでも退院させると言うのです。病院側は明らかに警察から意向を受けて、クリスティンに病名を付けていたのです。そしてクリスティンは薬物を無理やり飲まされたり、精神的にも肉体的にもひどい扱いを受けます。必死に抵抗する彼女に力を貸してくれたのは、おしてくれたさきほどの女性でした。それでも、治療という名目で拷問がつづきますが、病棟で知り合った女性と出会ったことをきっかけにして、強い心を持ち始めていたクリスティンは、頑として「警察の操作にミスはなかった」という書面に断固としてサインを拒みます。
ノースコット事件
クリスティンが病棟で拷問を受けている頃、ある事件が発覚していました。事件が発覚したのは、1人の少年クラーク・ノースコットというカナダからの不法移民の身柄を確保したことから発覚しました。
身柄を確保されたことに、少年は脅えていました。そして、重大な恐るべき事実をしゃべり始めたのです。「従兄のゴードンに無理やり強制されて、20人の少年たちの殺害の手伝いをさせられた」という告白でした。少年は従兄のゴードン・スコットは誘拐した少年たちを自宅で殺害している。といいます。
その話を聞かされた刑事は、最近行方不明になった少年たちの顔写真を数十枚を提示します。そして少年が取り上げた1枚の写真が、ウォルター・コリンズの写真でした。当然、刑事は本署のジョーンズ警部に捜査方針を問い合わせをしますが、ジョーンズ警部の指示は無視しろと言う指示でした。
事件の甚大さはロス市警を震撼させる出来事ですが、クラーク・ノースコットの強制送還の日がやってきます。無視しろという指示をうけた刑事は職務に対しては忠実でした。そして半信半疑ではありますが、少年を供述の現場へ連れて行きます。そして少年と従兄が遺体を埋めたという場所を少年に掘り返させます。そしてそこからは人骨が出てきたのでした。
精神病院に強制入院させられたクリスティンは、病院に入れられてから1週間経過していました。担当医師は相変わらず警察に従うことが書かれている書類にサインをするように強制しますが、クリスティンは拒否し続けます。そんな中に、弁護士同伴で牧師が駆けつけてきました。そしてなかなか退院させない精神病院にクリスティンを退院させるように迫り、なんとかクリスティンを退院させることなりました。退院したクリスティンは新聞の号外でウォルターのことを知り、その場に崩れ落ちます。
全米でゴードン・ノースコット事件は、稀代の猟奇殺人事件へと発展していました。そして、無理やり精神病院へ強制的に令状も取らずにクリスティンを精神病院に強制入院させて閉じ込めたことも社会問題化します。クリステインに牧師は「これ以上、警察をつつくな。危険だ」と。しかし落ち着きを取り戻した彼女は「私には、もう失うものはない!」と警察と闘うことを主張します。
裁判:ノースコットと警察
ブリーグレブ牧師が中心となって、牧師の友人弁護士の助けをかり市民たちの声も味方につけてクリスティンは警察の腐敗を弾劾します。その一方で、カナダで身柄を確保されたノースコットの裁判も始まります。警察側は、裁判と市議会の聴聞会の日を同じ日に設定することでなんとか自分たちに都合の良いようにしようと姑息な手段をとりました。聴聞会のその場所からクリスティンを牧師は連れ出して、ノースコットの裁判へ傍聴へ行きます。
裁判の中でノースコットは否認をしています。
聴聞会では「子どもの取り違えを気が付いた段階で間違いを認めていれば、ウォルターは生きていたかもしれない。令状なしに警察の独断でコリンズ夫人を精神病院に送り込んだ!」と糾弾者が問い詰めていきますが、警察は自分たちの責任を認めようとはしません。糾弾者たちの問い詰めに、傍聴席からは拍手が起きていきます。
クリスティンの証言で、精神病院の"コード12"の患者が解放されます。聴聞会の結果、ジョーンズ警部は永久停職となり、ロス市警本部長は解職。市長は出馬を断念というクリスティン側の圧勝で終わります。
「ウォルターを殺してない!」と訴えるノースコットに対して、裁判で陪審員は有罪を評決します。そして裁判官は判決を読み上げ「2年の懲役刑を科す。その後直ちに死刑を執行するものとする」という判決が下されるのでした。
ちなみにウォルターではないのにウォルターだと名乗った少年は、映画スターに会いたいというのが理由で家出をした少年でした。そして少年は実の母親に引き取られることになりました。
ノースコットへ刑の執行
裁判でノースコットはウォルターを殺していないと主張してました。その言葉にクリスティは一縷の希望を抱いてウォルターは生きていると信じて探し続けていました。2年後の1930年に死刑の執行が迫る中、ゴードンから電報が届きました。それはクリスティが刑務所に来れば全てを話すという内容の電報でした。
クリスティは刑務所へわざわざ出向いていきますが、ノースコットは真実を語ることなく死刑執行の日を迎えそのまま処刑台へと上っていき、クリスティも立会い死刑は執行されました。
事件から7年後:1935年
ウォルターが突然消えてから7年経っても、クリスティンはいまだに息子の生存を信じていました。そしてクリスマス・イブの夜に警察から連絡が入ります。誘拐されていた少年の中の1人が警察に保護されたのです。しかし残念なことに、ウォルターではなく別の少年でした。保護された少年は当時のことが語られました。
「当時4人が閉じ込められていました。ウォルター・コリンズという子どももその中に間違いなくいました。その名前はどうしても忘れられない名前だからはっきり覚えています。誘拐されてから脱出するときに、ウォルターに助けられたんです。一緒に彼とは逃げ出しました。バラバラに逃げたからどうなったのかは分からないけど・・彼がぼくを助けてくれなければ、間違いなくぼくは殺されていました。逃げられたけど、怖くて名乗りだせませんでした。でも母さんたちに会いたくて・・・」と保護された経緯を語りました。
クリスティンは誘拐されていた場所から逃げ出して、ネバダで隠れながら生きていた少年の言葉を聞き両親へ逢いたいという思いで戻ってきた話を聞いて、お世話になった刑事にお礼の言葉を述べます。そして「夜に3人の子どもが逃げだそうとしました。ひとりが逃げ出せたのだとしたら、もうひとりいえ2人も逃げ出せたかもしれません。息子は本当のことを言うことで自分自身や私に危害があるのでは。とこわがっていて、どこかに隠れたままなのかもしれません。あの子の話から、私の胸からなくなっていたものが生まれました。」刑事が「それはなんですか?」と尋ねると「HOPE、希望です。」とクリスティンは答えその後、生涯をかけて息子ウォルターを探し続けていきました。




キャスト[編集]
役名 俳優 日本語吹替
クリスティン・コリンズ アンジェリーナ・ジョリー
湯屋敦子

グスタヴ・ブリーグレブ牧師 ジョン・マルコヴィッチ
壤晴彦

J.J.ジョーンズ警部 ジェフリー・ドノヴァン
内田直哉

ジェームズ・E・デーヴィス市警本部長 コルム・フィオール
佐々木敏

ゴードン・ノースコット ジェイソン・バトラー・ハーナー 平田広明

レスター・ヤバラ刑事 マイケル・ケリー
広瀬彰勇

キャロル・デクスタ エイミー・ライアン

サミー・ハーン ジェフ・ピアソン
ジョナサン・スティール デニス・オヘア

キャスト[編集]
役名 俳優 日本語吹替
クリスティン・コリンズ アンジェリーナ・ジョリー
湯屋敦子

グスタヴ・ブリーグレブ牧師 ジョン・マルコヴィッチ
壤晴彦

J.J.ジョーンズ警部 ジェフリー・ドノヴァン
内田直哉

ジェームズ・E・デーヴィス市警本部長 コルム・フィオール
佐々木敏

ゴードン・ノースコット ジェイソン・バトラー・ハーナー 平田広明

レスター・ヤバラ刑事 マイケル・ケリー
広瀬彰勇

キャロル・デクスタ エイミー・ライアン

サミー・ハーン ジェフ・ピアソン
ジョナサン・スティール デニス・オヘア