茨城ゴールデンゴールズ・片岡安祐美氏
毎日新聞 2014年10月28日 東京夕刊
◇厳しく、気持ちよく
−−優勝した全日本クラブ選手権は、初戦で九回に3点差を追いつくなど、終盤の集中力が印象的だった。
◆選手も私も、先のことは考えず、目の前のゲームだけに集中していた。メンバーが20人しかいない分、一人一人が自分の役割を自覚してくれていたと思う。ボールボーイやバット引きでも、スムーズに仕事をできるかが試合を左右すると常々言ってきた。試合に出ない人間も含めて、皆が「俺の力でチームを勝たせる」と思えたから、連戦で「ずたぼろ」状態でも、強くなれたのだと思う。
−−タレントの萩本欽一さんが2010年に監督を勇退し、元プロの選手がいなくなった後の優勝という意味でも、価値がある。
◆欽ちゃん(萩本さん)がいなくても、立派な球場で平日夜は週3日、土、日は終日練習できるのは、(本拠地の茨城県)稲敷市のおかげ。支えてくれる方々への恩返しは、優勝だと思っていた。
07、08年に連覇したが、優勝経験者は私を含め4人しか残っていない。チームの存続のためにも、若い選手が優勝を経験できたことは大きい。練習への熱意が高まり、勝つことは大事なんだと改めて思った。
−−萩本監督に後継指名される形での就任だった。
◆タレントの仕事も含めてプロ選手に接することは多く、野球を勉強する機会には恵まれている。でも、私を監督として育ててくれたのは選手だろう。
1年目は悩んで体調を崩した。その後「力を貸してほしい。でも最終的な判断は私がするし、責任はとる」と選手に言った。
欽ちゃんが目指したように、ゴールデンゴールズは愛される球団でなくてはいけない。選手に厳しさを示しつつ、気持ちよく野球ができるように支える。そんなふうにできるようになったのは、3年目の途中から。助監督兼任の岩田や主将の樋口ら年長の選手が、「監督なんだから、好きにやれ」と言ってくれるのも大きい。
−−女性初の全日本クラブ選手権優勝監督になった。女性であることが注目されるのはどう受けとめるか。
◆就任当初は、女と見られるのがいやだった。でも今は、女性であることがチームの役に立つなら、それも良いと思える。男同士、カッとなってつかみ合いになる場面も、私が間に入れば違う形になる。女性に「かっこいい」と励まされて悪い気がしないのは、自然なこと。女性監督初の優勝は、素直に誇らしく思っている。【聞き手・藤倉聡子】
◇かたおか・あゆみ:熊本商高、流通経大卒。2005年の茨城GG創設から内野手としてメンバーに加わる一方、女子日本代表でも活躍した。11年から監督。27歳。