ノリの東京の友人の生きる糧(福岡編)

日々のちょっとした楽しみや悲しみを徒然に語ります。

なぜか自然と涙が流れた日 ~ 悲しき田んぼ ~

2012年11月09日 | 日々の出来事

 埼玉の片田舎にある会社に勤め始めてから2年が経過しましたが、それ以前の22年間の東京都内での生活と比べて大きく変わったのは、農業が身近になった事だと思います。

 お客様にも農家の方がたくさんいらっしゃいますし、仕事関係にも兼業農家の人が何人もいます。そんな環境なので、畑で収穫した野菜や果物等を頂く事が日常茶飯事になっています。今月に入ってからは柿のおすそ分けが連発しています。こんな事は東京時代では一度もなかった事なので新鮮ですね。「田舎の人間関係もいいなぁ。」と思ったりしています。

 それに加えて、日々変わっていく広大な稲作の田んぼを見ながら田舎道を車を走らせるのも何とも良い感じです。
 私は農業の事は全く判りませんが、ゴールデンウィークの頃の田植え、植えられた苗が稲に日々成長していく様子、見渡す限りの黄金色の稲穂の大地、そして秋の稲刈り、と言った一連の流れに日々接しているだけで少し癒される気がします。やはり、コンクリートジャングルの中での暮らしとは全然違いますね。最近ストレスをあまり感じなくなったのは、こんな新しい生活環境の影響かもしれません。

 そんな少し身近になっている農業ですが、1つだけ頭を悩ませている事があります。それは『人間』です。

 仕事の関係者に兼業農家の人が何人もいる事を最初に書きましたが、その中の1人(以下:彼)が稲作の仕事を理由に頻繁に休みを取ります。
 他の人達から、「貴方の田んぼはそんなに広くないじゃん。なんでそんなに休まいないといけないの?。」と、よくツッコまれているのですが、我関せずで好きな日に休みます。尚、休んだ日に本当に稲作の仕事を行なっているかは定かではありません。ただし、「別の場所で見かけたよ。」と言うタレコミは複数の関係者から上がってきています。

 そんな感じなので、他の人間が仕事の穴埋めを行なっているのですが、その事に対して、「昨日は休んですみませんでした。」の一言もありません。一緒に働いている仕事仲間達はイヤ~ンな気分が蓄積し続けています。まぁ、「有給は労働者の権利だ!!。」と言って理由も聞かずに休みを承認する上司が一番悪いんですけどね。

 そして、今週の火曜日。
 月曜日に休みを取って火曜日に出社した彼は、「明日と金曜日は休みます。」と言ったそうです。それには、さすがの仕事仲間も呆れ果てたそうです。忙しくなったこの時期に、週に3日も平気で休みを取るなんてサラリーマンとして異常ですからね。呆れ果てながらも冷静に休みの理由をツッコんで聞いてみると、「稲刈り!!。」との事でした。周りの田んぼは9月と10月で稲刈りはとっくに終わっているので、「まだ稲刈りしていないのか?。」と、仕事仲間はまたまた呆れたそうです。もう何を言っても無駄ですね。

 その話を私は昼休みに聞いたので、上司に相談した上で仕事の空いた夕方の時間に彼の田んぼを見に行く事にしました。こんな調子で冬の繁忙期に彼に休みをガンガン取られたら大変な事態になってしまいますからね。全員が忙しいので彼の仕事の穴埋めなんて手が回りません。

 そして、私は彼が耕している田んぼの場所は知っていたので、事務所から車を10分くらい走らせて現地に向かいました。

 目的地は複数の農家の方の田んぼが広大に広がっている場所で、その場所を車の中から遠目に見た途端、「稲刈りは全部終わっているじゃん。」と私は思いました。事務所から車を走らせる途中もずっと道の周りは見渡す限り田んぼだったのですが、全て稲刈りは終わっていました。これが埼玉の11月の稲作の田んぼのリアルな状況なんでしょうね。

 「結局、彼の話は嘘だったのか。」と私は思いながら車を田んぼの中を通っている小道に進めていったところ、所々に草が伸びている田んぼがいくつかある事に気が付きました(下記写真)。近づいてみると、それは草ではなく稲が生えている田んぼでした。どうやら彼が『稲刈りのために休みを取る』と言う話は本当の話だったようです。こんな時期まで稲刈りをしていない農家の方がいるとは思えないので、稲刈りの終わっていないいくつかの田んぼは彼のモノなのでしょう。

 

 彼の話が嘘ではない事が判ったので、少し安心して車を降り、彼の田んぼをじっくりと見る事にしました。知っている人が耕している田んぼを見る事なんて滅多にないですからね。

 そして、田んぼをじっくりと見ていると、なぜか私の目から自然と涙が流れてきました。
 私の心の中には、「これでは稲や田んぼが可哀想すぎる。」と言う想いが浮かんできました。こんな悲しい田んぼを見るのは初めてです。

 彼の田んぼは、稲穂は倒れ、稲の間には雑草らしき草が生えていて、私がイメージする稲作の黄金色の美しい田んぼとは大違いです(下記写真)。事務所に戻ってこの写真を上司に見せたところ、「何の手入れもしていないね。あれだけ休みを取って何をやっていたんだろうね。」と言う言葉が返ってきました。他の仕事仲間にも見せましたが同意見でした。写真を見ながら何とも言えない悲しそうな表情をみんなが浮かべていました。

 

  

 


 以上が、私が涙を流した『悲しき田んぼ』の話です。

 私は農業の知識はないので、本当はこの田んぼは正常な状態で、十分な収穫を得られる田んぼなのかもしれません。万が一そうだとしても、この状態の田んぼを放置している彼の農業に対する気持ちは理解できません。周りの農家の方はどう思っているんですかね。

 なんだか暗い気分になった晩秋の夕方でした。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 立場が逆転!! 悪い人間を倒... | トップ | そろそろ選考作業開始(1)... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Maki)
2012-11-12 16:27:48
きっと、この写真の周りの農家の方も同じ思いだと思います。
私の知っている範囲の農家の方はそれはそれは丁寧に田んぼや畑の面倒を見ています。自分達が生活している最も大切な分野であり、その環境そのものが暮らしを直結しているので、皆さん、丁寧かつ厳格です。村を守る意識もとても高いものです。

だから、この写真はやはり「悲しき田んぼ」だと思います。
返信する
Makiさんへ (ノリの東京の友人)
2012-11-12 18:56:58
 こんな親父の小言のような記事にコメントを頂きまして、誠にありがとうございます。

 今日、彼と話をした上司によると、金土日と休みがあったにも関わらず、まだ稲刈りは終わっていないそうです。彼が何のために農業をやっているのか理解不能です。
 Makiさんのおっしゃる通り、周りの農家の方達も悲しい思いで彼の田んぼを見ているんでしょうね。本人が変わらない限り、この悲しい光景は来年以降も続いていくんでしょうね。
返信する

コメントを投稿

日々の出来事」カテゴリの最新記事