ノリの東京の友人の生きる糧(福岡編)

日々のちょっとした楽しみや悲しみを徒然に語ります。

相場に左右される商品は難しい ~ 『玉ねぎ』の仕入・販売にかかわって思うこと ~

2019年05月26日 | 日々の出来事

 私が事務処理要員になって約3ヶ月が経過しました。

 去年の10月中旬に入社して2月上旬に左ひざが痛くなるまでは力仕事ばっかりで毎日汗だくになって働いていました(冬なのになぜか私だけ湯気が身体から出ていました)。10㎏くらい痩せたので、かなり身体の状態は良かったですし、夜はぐっすりと寝れました。
 しかし、その約4ヶ月で簡単に落ちた体重も、事務所で内勤になってから、あっと言う間に元に戻ってしまいました。ほとんど動かずにパソコンに向かっている状況なので仕方がないですね。動かないのに動いていた時と同じメニューの食事をしてはダメです。

 そんな事務処理ライフを送っている私ですが、頭をほとんど使わないでよかった力作業と違って毎日頭を使って数字を扱う事務処理をしていると色々なモノが見えてきました。事務所にいると会社の上層部の人間との会話も増えますからね。入ってくる情報量がかなり多くなりました。農業を全く知らない状態で入社しましたが(他業種の人間が欲しいと言われて入社)、最近は色々と判ってきました。

 現在、私の会社ではミカンや甘夏等の柑橘類のシーズンが終わったので、『玉ねぎ』を主要商品として取り扱っています。
 仕事は、農家の畑からトラックで集荷(仕入れ)して、それを選果場で選果して、大きさ毎に分けて箱詰めして、付き合いのある全国の市場に出荷する流れです。玉ねぎの取り扱いは2月から7月くらいまでです。9月からミカンのシーズンが始まります。

 その『玉ねぎ』に関する事務処理をしていて最近思うのは、

 「価格が相場に左右される商品は扱いが大変だなぁ。」

と言うことです。5月に入ってからは価格がどんどん下がってきたので、農家の方に支払う仕入代金を計算する度に、「これって誰が儲かってんだ。」と思うようになっています。

 『玉ねぎ』はミカンと同じように大きい順に、3L、2L、L、M、S、と言ったサイズが決まっていて、そのサイズ毎に箱詰めして市場に出荷します。私の会社では1つのダンボールの箱に10㎏分の玉ねぎを詰めて出荷します。

 仕入先である農家に対しては、市場で売れた値段から運賃やダンボール代や手数料を引いた金額を支払うのですが、その市場で付く金額が相場によって毎日違うので、出荷する時期によって全く値段が違ってきます。これが生産者である農家だけでなく、仕入れている私の会社にも悩ましい状況を作っています。最近のように安値で価格が停滞してしまうと、「誰が儲かってんの。」と思うことになります。市場も決まった手数料しか取らないので、ぼろ儲けしている感じではないです。敢えて言えば、安く買うことができる消費者だけが勝者ですかね。

 玉ねぎの価格ですが、一例をあげると、某市場で2Lサイズの玉ねぎの1箱(10㎏)に付いた2月上旬の値段は1,600円だったのですが、今は400円くらいに下がっています(もっと安い市場もあります)。
 その400円から我々の会社でかかった経費を引いた分を農家に渡すので、400円だと農家の取り分は微々たるものです。収穫を手伝ってくれた人夫さんに賃金を払う必要もありますしね。1,600円の値段が付いた2月とは大きく収支が違います。あまりに値段が安いと、我々の会社も利益を得るための経済活動と言うよりは、経費を何とか捻出して赤字を出さないようにする経済活動になってしまいます(すでに赤字かもしれませんが)。お金は回っていますが、中身がないですね。成長要素がありません。

 さらに最近は値段が下がっただけでなく、市場から、「余っているのでしばらく送ってこないで下さい。」とか「大きいサイズの3L、2L、Lはいらないので、MとSサイズだけを送って下さい。」とか言われているので本当に頭が痛いです。トラック数台で集荷して、その8割9割が3L、2L、Lの大きいサイズだけと言うのはざらにありますからね。「大きい玉ねぎは売れないからいらない。」と言われても、我々も農家も困ります。

 そんな状況なので、値段の安い大きいサイズの玉ねぎは扱えば扱う程、私の会社にはリスクになります。経費を抑えるとしたら運賃くらいなので、遠くの市場(関東)ではなく、なるべく近場の市場(遠くても大阪まで)との取引が増えている状況です。

 同業他社では買取を制限している会社も出てきているみたいで、拒否された農家から買い取りを依頼されるケースも増えてきました。ただし、新規のお客様はありがたい話ではあるのですが、赤字になる値段では買取はできないので、農家の方に支払う金額は少なくならざるを得ません。金額でもめることも多いみたいですね。

 ちなみに、玉ねぎの大きさによる味の違いに関してですが、私の会社と直接取引している飲食関係の会社はSサイズよりも更に小さい2Sと言うサイズの玉ねぎしか欲しがりません。小さい2Sがなかった時に3L、2L、Lと言った大きなサイズの玉ねぎを無料で試してもらったのですが、後日感想を聞くと、「やっぱり2Sがいいです。」との返事でした。大きな玉ねぎを使ったらいつも作っているハンバーグの味が変わってしまった、とコックさんが嘆いていたそうです。私は料理をしないので判らないのですが、玄人の舌にかかると大きな違いがあるようですね。

 さて、相場に価格が左右される農産物ですが。中には相場の動きを読んで出荷時期を決めている農家の方もいます。玉ねぎと違ってミカンの話になりますが、去年、「もう少し待てば相場が上がるからまだ売らない。」と言っていた農家があったのですが、相場は上がることなく下がり続けて、結局、ミカンの大半を腐らせてしまった例に私は接したことがありました。大損してしまったそうです。農業って本当に難しいですね。

 そんな玉ねぎの値段が下がっている状況なので、私も玉ねぎの市況を確認する日々が続いています。市場との交渉を行っている上司は私の顔を見る度に、「また下がったぞ。もっと安く買って来ないとダメ。」と言いますが、農家と接している営業マン(バイヤー)は高齢者の農家の方にあまり強く言えないので胃の痛い日々が続いているようです。


 以上、「相場に左右される商品は難しいな。厳しいな。」と思っている人生で初めて体験している『玉ねぎ』の仕入・販売の話でした。ひょっとすると私が知らないだけで、玉ねぎで儲けている人もいるかもしれません。他と差別化してブランド化している玉ねぎもあるみたいですからね。まだまだ私の知らないことばかりです。

 私が今までやってきた取引ではこんなに価格が変動するアイテムはありませんでした。私はお客さん側(今回の場合は農家)に立って考えてしまうので、私が営業担当だったら毎日気が重い日々を過ごすことになるでしょうね。こんなに価格が下がったら『Win-Winの関係』は築けないと思います。

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