風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

ニューミュージック演歌の流れるマクドナルドin広東省広州 (連載エッセイ第5話)

2011年03月02日 07時10分00秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
まえがき

 エッセイ『ゆっくりゆうやけ』は「小説家になろう」サイトで投稿している連載エッセイです。広東省の暮らしで感じたことや小説の話などを綴っています。本ブログではそのなかから自分のお気に入りをアップしようと思います。本編はふと立ち寄った中国広東省・広州のマクドナルドについて書いています。いろんなマクドナルドがあるものです。(2010年8月2日発表)
http://ncode.syosetu.com/n8686m/5/


本文


 会社からの帰り、広東省広州の街中にあるマクドナルドでフィレオフィッシュセットを食べていたら、聞き覚えのあるイントロが流れてきた。
 なんと昔の人気ドラマ『はぐれ刑事純情派』の主題歌だった『ガキの頃のように』(堀内孝雄さん)ではないか。ニューミュージック演歌といった感じのしっとりした曲調で、男の切なさを歌いあげた名曲だ。じっくり聴いていると泣けてくる。
 いい歌だとは思うけど、しかし、マクドナルドで流す歌なんだろうか? ふつう、マクドで演歌は流さないと思うんだけどなあ。ちなみに、ニューミュージック演歌が流れるからといって店の内装は日本のそれとほぼ同じだ。居酒屋のようなつくりではないので、念のため。居酒屋のようなマクドナルドがあったらこわいけど。
『ガキの頃のように』の次になにが流れるのだろうと思って待っていたら、『ドラえもん』の主題歌の中国語版だった。
 ニューミュージック演歌の次はアニメの主題歌。
 この落差に僕はまたびっくりしてしまった。
 ドラえもんの主題歌は、「アンアンアン♪」という部分以外は全部中国語だ。ちなみに、タケコプターの中国語は「竹直昇機」。そのまんまですね。雲南省昆明で留学していた頃、昆明弁バージョンの『ドラえもん(機械猫)』のDVDを借りて観たことがあるけど、さっぱり聞き取れなかった。ドラえもんの名前は、「小叮当(シャオ・ディン・ダン)」に変更されていたような気がする。叮当(ディン・ダン)とは鈴がちりんちりんと鳴ることを表現する擬音語だ。つまり、「ちりんちりんちゃん」というわけ。小学校へ上がる前の子供は北京標準語を話せないので各地でその土地の方言に吹き替えをした『ドラえもん』のDVDを売っている。
 そのマクドでは「ドラえもん企画」みたいなことをやっていて、店の中にドラえもんのポスターが張ってあった。セットに何元か足すとドラえもんの小さな人形が手に入る。時々、パッチ物のドラえもんで、微妙におかしいものや、なんだか怖い表情をしたドラえもんもどきを見かけるけど、そのドラえもんはちゃんとしていた。
 一度、なにを思ったのか、店員の若い女の子がそのドラえもん人形を僕に売りつけようとしたことがあった。
「要らないよ。そういうのは、子供とか子供連れに勧めなよ(不要了。那样的东西,你对小朋友或者带小孩子的父母推荐吧)」
 と、僕が店員に言ったら、
「プレゼント用でもいいかなって思って(我想送人也可以)」
 と、エヘヘと笑ってごまかす。誰にあげるねん。子供のいる勤め人がマクドで夕飯を食べたりしないだろう?
 ドラえもんの主題歌の後はなんだろうと思ったら、また『ガキの頃のように』が流れた。どうやらこの二曲が繰り返し流れているようだ。かえすがえすも、すごい取り合わせだ。どうせ日本の歌を流すのなら、浜崎あゆみさんとか中島美嘉さんとか、若い中国人の間でも人気のある歌手の歌を流せばいいと思うんだけどなあ。個人的には『ガキの頃のように』を歌っている堀内孝雄さんのボーカルが好きだからいいんだけど。アリスの歌が好きでよく聴いていた。今でも時々、こっそりギターの弾き語りをする。
 中国には足かけ六年近くいるけど、マクドナルドでニューミュージック演歌を流したりする中国人のセンスがいまだに理解できない。だから面白いんだけどね。やっぱり中国はワンダーランドだ。
 
 


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