風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

亭主がいくら稼いでも自分の仕事は手放さない(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第448話)

2021年04月13日 06時30分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 上海人の奥さんの友人に夫がある中国企業のCEO(雇われ社長)をやっていてとても裕福な女性がいる。高級マンションを買っていい暮らしをしている。二人とも上海人だ。
 もともと看護士だった彼女は、息子を出産した後、月給八万円で元の病院に勤め始めた。彼女の亭主は、「会社は順調だし、給料は十分にもらっている。生活には困らないから、専業主婦になって息子の面倒を見ればいいじゃないか」と言ったのだが、彼女は、「生活に困るとか困らないの問題ではなくて、仕事をすることが大事なのよ」と言ってフルタイムの看護士にこだわった。
 中国では共働きが当たり前なので、子供の面倒はおばあちゃんやおじいちゃんが看るのが普通なのだが、彼女と彼女の夫は結構な高齢で元気いっぱいな赤子の面倒はとても看きれれない。そこでベビーシッターを雇うことにした。
 このベビーシッターの費用は、彼女の給料と同じくらいかかるそうだ。看護士の給料はすべてベビーシッター代で消えることになる。それでも彼女は看護士の仕事を辞めない。
「私の亭主は仕事ができて稼ぎもいいし、優しいし、いい夫でいい父親でいてくれるから今の家庭は十分幸せだと思う。でも男であろうと女であろうとフルタイムで自分を養っていける仕事を持ってこそ一人前の大人となるのよ。だから、仕事を辞めるわけにはいかないの。それにリスクを考えておく必要もあるわ。亭主の稼ぎがいいということは、亭主は私が老いたら私を捨てて若い女の子と再婚するかもしれないわ。実際、そんな男は山ほどいるしね。亭主が私を捨て、私に仕事がなかったら、私と息子は生きていけなくなるわ。仕事があれば、少なくとも生活できるから安心でしょ。仕事がある限り、私は独立した人間でいられるの」
 彼女は僕の奥さんにそう語ったそうだ。僕の奥さんは彼女の意見に激しく同意したそうだ。
 上海の女は強い。


(2019年6月16日発表)

 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第448話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/

ひたち海浜公園2021春

2021年04月11日 13時30分50秒 | フォト日記



ひたち海浜公園へ行ってきた。

勝田駅からひたちなか海浜鉄道に乗って阿字ヶ浦へ。

阿字ヶ浦駅から、ひたち海浜公園行きの無料のシャトルバスが出ている。

ひたちなか海浜鉄道はひなびたローカル線でなかなかよかった。






ちょうどチューリップが花盛りだった。
いろんな種類のチューリップが咲いていて綺麗だった。














みはらしの丘。ネルフィラが一面に咲いている。




いい感じで散歩できてよかった。

信じたい嘘

2021年04月02日 12時00分30秒 | 詩集

 信じたい嘘
 信じたくないほんとう
 信じたい噂
 信じたくないほんとう

 からくりを繋ぎ合わせて
 人は生きる
 嘘を信じないでは生きられない
 噂を信じないでは生きられない

 からくりの神に跪き
 嘘に嘘を塗り重ね
 噂のバージョンアップにいそしみ
 ふっと気がつけば
 がんじがらめの自縄自縛
 嘘や噂に操られる
 哀れなマリオネット

 欺瞞が自己増床すれば
 真実はボロボロになる
 嘘で膨らませた嘘を信じているうちは
 愛にたどり着かないのに
 人はいつまで偽りにしがみつくのか
 嘘はいらないと言うことから
 ほんとうの人生は始まる

 信じたい嘘
 信じたくないほんとう
 信じたい噂
 信じたくないほんとう

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