風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

おやすみメール

2015年02月14日 22時45分15秒 | 詩集

おやすみ
おやすみ
今夜はこれで
おやすみなさい

おやすみ
おやすみ
ひとりぼっちの君に
おやすみなさい

おやすみ
おやすみ
ひとりぼっちの僕に
おやすみなさい

君に逢いたいな
むぎゅっと強く
抱きしめてあげたい
君のとなりで眠りたい

もしも僕が魔法使いだったら
三日月にロープをひっかけて
ひょいとひとっ跳び
君住む街まで
逢いにゆくのに

もしも君が魔女だったら
あごをこりこりっと
動かすだけで
僕の暮らす部屋まで
テレポーテーションしてくれるのに

 今宵は静かな夜です
 月も星も風も
 編み物でもするみたいに
 ひっそり黙しています
 ただ君を想う
 なにもない夜です

おやすみ
おやすみ
僕がはやく会いにいけるように
神様に祈っていてね

おやすみ
おやすみ
いい夢を見てね
おやすみなさい


天上の星 地上の願い

2015年02月10日 20時00分15秒 | 詩集

 白い星
 紅い星
 黄色い星
 蒼い星
 私(わたくし)はひとり
 星を眺めている

 宇宙から吹いてくる夜風が
 私の頬をそっとなでる
 色とりどりの星の色は
 なんの意味?
 そっと物想いに耽りながら

 届かないあの星々に
 まだ出逢ったことのない
 誰かさんが住んでいる
 言葉を交わすには遠すぎて
 向こうへ行く術もなくて

 そこにはきっと
 私の住む地上の愚かさを
 笑い飛ばしてくれる
 誰かさんがいるのだろう
 私の愚かさを
 叱り飛ばしてくれる
 誰かさんが

 純粋な愛や
 円満な慈悲と比べてみれば
 地上の人間の欲望は
 みなくだらないこと
 これが欲しい
 あれも欲しい
 それがしたい
 あれもしたい
 みな取るに足らないことばかり

 つまらないことはやはり
 つまらないことでしかないのだと
 気づいてはいるものの
 くだらないことが
 傷つけあうもとなのだと
 識(し)ってはいるけれど
 とはいえ
 つまらないことや
 くだらないことに
 まみれて生きるしかなくて

 悲しみをすべてなくしてしまうには
 私(わたくし)という生き物は
 あまりに幼くて
 あまりに愚かだから
 何度生まれ変われば
 ひそやかな星々へ
 たどり着くのだろう

 遠い星
 遥かな星
 あたたかな星
 冷たい星
 私はひとり
 星を眺めている





星に願いを

2015年02月07日 20時15分15秒 | 詩集

 星に願いをささやけば
 置き去りの夢 すすり泣く
 冬の川辺の遊歩道
 ふたり黙った帰り道
 そばにいたい だけど
 さよなら

 つらい想いをさせるため
 君を愛したわけじゃない
 僕の言葉が今たしか
 幼い君を傷つけた
 星が流れる だから
 さよなら

  君に逢うため 雲より高い
  山道越えて 旅を重ねてきたのに
  つぶらな瞳 涙が揺れる
  なにも言えなくて
  僕も泣いた


 君の倖せ願うのに
 なにもできない歯がゆくて
 どうしようもないことが
 あると思い知った夜
 すべて捨てて ここに
 残れたら
 
 愛を語った遊歩道
 いつもふざけあったベンチ
 君は迷子 小さな
 肩を震わせ 立ちすくむ
 星が消える 夢に
 さよなら

  強く抱くほど 悲しみが増える
  あふれる想いが響きあうのに なぜ
  涙のしずく 頬をつたわる
  好きとつぶやいて
  僕も泣いた


  君はマフラー ほどいて僕に
  やさしく巻きつけ 忘れないでとくりかえす
  あした 僕は帰る 遠い東の国
  倖せにできない
  許して 許して



『小説家になろう』サイト投稿作品

http://ncode.syosetu.com/n9010bx/

高速道路に落ちる鉄板コイル(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第280話)

2015年02月05日 17時15分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 中国の高速道路を走っていると、裸の鉄板コイル(薄い鉄板を巻いたもの)を荷台に固定せずにそのまま走っているトラックをよく見かける。荷台に輪留めを置いて、そのうえに重量約一トンの鉄板コイルをならべて載せるだけ。ロープで縛ったりもしない。かなり重いものだからちょっとやそっとの震動では動いたりしないのだろうけど、そんなトラックの側を走りぬけるときはちょっとぞっとする。もし頭のうえに鉄板コイルが落ちてきたりしたら一巻の終わりだ。
 案の定、時々、高速道路に鉄板コイルが落ちている。だいたいは急カーブでしかも急なアップダウンがあるところだ。スピードの出しすぎでハンドルを切り損ね、「おっとっと」という感じで荷台が傾いてしまい、すってんころりんと鉄板コイルが落ちてしまったのだろう。
 くわばらくわばら。



(2014年1月6日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第280話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/


人間、色を忘れてはいけない(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第277話)

2015年02月03日 07時15分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 広州在住十三年の日本人のおじいちゃんがいる。
 いつも肌がつやつやしているし快活で元気そうなので、五十代後半くらいかと思ったら、なんと七十歳だという。広州の日系企業で総経理(社長)をされているようだ。
 日曜日になると朝五時半に起きてゴルフへ出かけ、ゴルフが終わってからマッサージで疲れをほぐし、ゴルフ仲間と御飯を食べて、それから日式カラオケ(女の子がついてお酌してくれるカラオケ)へ行く。おじいちゃんよりはるかに年下のほかの仲間は夜十一時を回るとくたくたになって帰ろうとするのだけど(朝っぱらからゴルフをしているから当然だ)、おじいちゃんは、
「えっ? もう帰るの? まだ早いよ」
 と言って疲れも見せずに歌を歌い、女の子とはしゃぎながら戯れる。それで、夜中の一時になってようやく帰るのだとか。
 時々、行きつけの居酒屋でいっしょになるのだけど、僕が仕事でくたくたになっていると、
「野鶴ちゃん、会社人間になっちゃだめだよ。若いんだから遊ばなくっちゃ。今度いっしょにカラオケへ行こうよ。カッカッカ」
 と朗らかに笑う。僕は彼の息子くらいの歳だけど、おじいちゃんのほうが僕よりよっぽど元気だ。
「どうしてそんなに元気なのですか?」
 僕がそう訊くとおじいちゃんは真顔になって、
「人間、色を忘れてはいけない」
 と言う。
「いつもエロいことを頭のなかにインプットしておくんだ。そうすると心が活性化されて元気になるんだよ」
「うーん、僕はエロいことなんてずいぶんご無沙汰ですよ」
「それだから元気がないんだよ。仕事は忘れて遊びに行きなさい。女の子と遊んだら元気になるから。カッカッカ」
 おじいちゃんは人間はいつか動かなくなるのだから、動けるうちに思いっきり動いて遊んでおいたほうがいいと言う。人生は楽しんだほうがいいよな、とおじいちゃんと話をするたびにそう思う。
 

(2013年12月23日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第277話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/


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