風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

もうやめよう

2012年06月29日 17時00分15秒 | 詩集

  こんなことを続けていたら
  ふたりのためによくないよ
  もうやめよう もうやめよう
  君を傷つけたのは僕なんだ

  もつれたあやとりは切るしかない
  もつれた気持ちも切るしかない
  もうやめよう もうやめよう
  上手に切って さよならさ

   カーテンを開けて 外を見てごらん
   君に似合いの景色が見えるだろう
   そこに僕はいないんだよ
   僕たちの部屋は砂漠になった


  恋を続けるのはかんたんさ
  心と体を求めるだけでいい
  もうやめよう もうやめよう
  求められることに疲れたんだ

  いまさらそんなに泣くだなんて
  なんだかずるい気もするよ
  もうやめよう もうやめよう
  君が出した答えなんだから

   窓を開けて 風にあたってごらん
   ほら よさげな匂いがするだろう
   それが君のあしたの香りさ
   今にしがみつくことなんてないんだから


  ふんぎりをつけられないなら
  背中を押して 追い出してあげようか
  もうやめよう もうやめよう
  見送りなんてしないからね

  ドアが閉まれば それっきり
  思い出も あったはずの未来も
  もうやめよう もうやめよう
  もうやめよう もうやめよう




  「小説家になろう」サイト投稿作品
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社会主義と独裁主義は別物(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第113話)

2012年06月20日 08時05分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 中国のことを「社会主義だから独裁主義なのだ」という人がよくいるが、本来、社会主義と独裁主義はまったくの別物だ。「社会主義=独裁主義」という流布された通説は冷戦時代に意図的に作られた誤解だ。
 ひと口に社会主義といっても何種類もあるが、ここでは単純にマルクス主義のことにしておこう。ちなみに、カール・マルクスと彼の盟友だったエンゲルスが提唱した共産主義は数ある社会主義のうちの一種類にすぎない。マルクスは、自分たちの社会主義はひと味もふた味も違うのだと主張し、自分たちの思想を共産主義と名付けた。
 マルクスの予言(とあえて書く)によれば、社会主義革命はイギリスのような資本主義の先進国で起きるはずのものだった。資本主義の矛盾が極まり、どうにもならないほどに行き詰って革命が発生し、社会主義へ移行するというわけだ。
 しかし、実際に革命が起きたのは、イギリスのような資本主義の最先端を行く国ではなく、ロシアや中国といった資本主義の後進国だった。もちろん、後進国というのは「資本主義」という尺度で見ればということであって、別の尺度をとれば、違った見方ができる。ロシア人も中国人も僕は好きだ。
 さて、ロシアと中国は資本主義的な発展の遅れた国だったという以外にも、別の共通点がある。それは、強い権力を好むという国民性だ。ロシアはかつてモンゴル人に国土を蹂躙されたこと――タタールの軛《くびき》――が民族的なトラウマとなり、自分たちの身を守るためには強力な権力が必要だと信じるようになった。
 中国は広大な領土と膨大な人民をまとめるために強力な権力を必要とし、世界でも例を見ないほどの巧妙な専制機構を作りあげてきた。中国の歴史は専制強化の歴史といってもいい。なにしろ、大学のなかに公安の派出所があるのだからびっくりしてしまう。もちろん、この公安は酔っ払った学生や喧嘩した学生を取り押さえるためのものではなく、反政府的な動きがあればすぐに取り締まるためのものだ。これでは自由な学問や思想など、生まれるはずもない。
 ところで、マルクスはドイツ人だ。ドイツも後発の資本主義国だが、民主主義の土壌がある国だ。というのは、民主主義は西欧のキリスト教から生まれた思想であり、平たく言えば、神の前では皆平等という考え方が強くなければ成立しないものだからだ。おそらく、マルクスは社会主義というものは民主的なものでしかありえないと思っていた節がある。よく言えば楽天的と言えるし、悪く言えば、独裁国家で社会主義政権が誕生した際にどのような事態が発生することになるのか、その見極めが甘かったと言える。
 独裁主義国で誕生した社会主義国家は、民主主義にはなりようがなかった。
 ロシアも中国も彼らの流儀で政権を運営することになり、社会主義という理想は、革命家たちが権力闘争を重ねるうちに独裁主義によって換骨奪胎されてしまった。つまり、権力維持のために、あるいは権力闘争のために社会主義が利用されるようになったのである。ソ連ではスターリンが、中国では毛沢東が政敵を抹殺するために大粛清を行なった。その犠牲者は数百万人とも数千万人ともいわれている。豊かで平等な社会を創造するはずが本末転倒なことになってしまった。たとえどんな素晴らしい理想であっても、人間の物欲や権力欲という手垢のついた時点で堕落してしまうものなのだけど。
 冷戦時代、ソ連や中国は言うまでもなくアメリカや日本といった西側諸国の敵だった。
 社会主義という思想は、アメリカの自由競争原理主義とは正反対のものであり、わかりやすく言えば、アメリカンドリームとは相容れないものだ。日本にとっては、社会主義は天皇制の廃止につながり、国体(国の基礎的な政治体制)を脅かすものだ。アメリカの為政者にとっても、日本の為政者にとっても、社会主義は自国の原理を脅かす危険な思想だったため、そこで社会主義=独裁主義というレッテルを貼り、悪のイメージを植えつけようとした。ソ連や中国はたしかに独裁体制の国だったので、こうしたプロパガンダはわかりやすく効果があり、誤った通説が広まった。
 こんなことを書いている僕も、昔はこの通説を信じていた。だが、中国へきて中国人と混じって暮らしているうちに、この国はもともと独裁体制しかあり得ない国で、独裁主義と社会主義は別物なのだということが骨身にしみてわかるようになった。また、コーポラティズム(※)または新自由主義という名の極度に歪んだ資本主義の時代に暮していると、昔は過去の遺物にすぎないと思っていたマルクスを見直すようになった。マルクスの分析には、なるほどとうなずかされるものが多い。
 通説、俗説、過去の観念といったものにまどわされずに、真実の在りかを見極めたいものだと思う。
 


(2011年6月26日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第113話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
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広州散策 ~中山六路から 2

2012年06月13日 22時31分58秒 | フォト日記

 広州の中山六路から横丁へ入って、あてどなくぶらぶらしてみた。




 右手前の柱につけてある看板は「貸し部屋あり」の広告。左奥には「盲人按摩」のたて看板がある。広州の横丁には盲人按摩の店がけっこうある。




洋館風の建物がいまもあちらこちらに残っている。そのうち再開発されてしまうのかな。








 横丁は静か。ぶらぶらしていると落ち着く。

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腕のいい理容師さんに切ってもらったのだろうけど(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第110話)

2012年06月11日 08時10分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 理髪店で「すこし短めに」と頼んだら、思いっきり短くされ、なんだか漢民族好みの髪型にされてしまった。こちらの人はぴしっと整っていて精悍そうな髪型を好む。もっとも、ダサイと言えばダサイし、オヤジくさいと言えばオヤジくさい。中国に住んでいるといろんなリスクを引き受けなければならないのだけど、変な髪形にされてしまうのもチャイナリスク(?)の一つだからしょうがないとあきらめている。虎刈りでもないし、ちゃんと整った形になっている。悪くはない。でも、やっぱり、割り切れない。
 以前、中国人の友人に、
「どうしてそんなくしゃくしゃの髪型をするのか?」
 と訊かれて困ったことがあった。
 前髪を垂らし、ヘアセメントワックスをつけてすこしずつ髪をひねり、波立つような感じにしていた。日本でなら珍しくともなんともない髪型だ。だけど、それが彼の目には「くしゃくしゃ」と映ったらしい。
 この波立つ感がいいのだといろいろ説明しても、相手は全然納得してくれない。「子供っぽいからやめておいたほうがいいよ。ぼさぼさだもん」のひと言で終わってしまった。頑固な中国人の固定観念を打ち破るのはむつかしい。いつも負けてばっかりだ。僕がもっと丁寧にセットしておけば、わかってくれたのかもしれないけどさあ。
 ところで、今は髪型は中国人に受けがいい。
「さっぱりしたね。前よりずっといいよ」
 なんて言われる。
 この間、散髪に行った店では、腕のいい理容師さんに当たったのだろう。
 誉めてくれるのは嬉しいんだけどね。なんだかなあ。
 


(2011年6月14日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第110話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
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広州散策 ~中山六路から

2012年06月09日 23時18分36秒 | フォト日記

 広州の旧市街地にある中山六路まで散歩に出かけた。

 中山路は昔のメインストリート。一本の道を一路、二路、三路……と数字をつけて区切っている。





 建物の一階部分が歩道になっていて、スコールの時でも濡れずに歩くことができる。

 道路の上の架線はトロリーバスのもの。

 

 歩道沿いに、小さな商店が並ぶ。

 左手前が服屋。半袖シャツが39元(約五百円)。服屋の隣がお茶屋。500g買うと250gプレゼントしますと書いてある。


 

 トロリーバス。広州市の中心部のあちらこちらを走っている。エコな乗り物だけど、運転が荒いので乗る時は注意。


 

 ライチを山盛り積んだリアカー。まだライチは出始め。もう少し経つとおいしくなる。

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やまもも酒をつけてみた

2012年06月06日 00時13分12秒 | フォト日記



 中国では果物屋の軒先で「やまもも」をよく売っている。甘すっぱくておいしい果物だ。

 ところで、漢語では「やまもも」のことを「楊梅」と呼ぶ。

「やまもも」は、いったい「もも」なのか「うめ」なのか? ちょっと混乱してしまう。

 ウィキペディアで調べてみると「もも」はバラ科の植物。「やまもも」はヤマモモ科だから、「もも」と「やまもも」は親戚ではないようだ。「うめ」はバラ科なので、やはり漢語の表現のほうがあっているのだろう。



 外国食材ショップで宝酒造の「純」を買ってきた。
 720ミリリットル一本が118元。けっこういい値段がするけど、こちらでは輸入品だからしょうがない。

 やまもも(楊梅)を500グラム買ってきて、氷砂糖を適当にほうりこんで、やまもも酒をつけてみた。





 これからじわじわやまもも色が滲み出して、いい感じに仕上がるのだろう。
 九月くらいになったら、飲んでみようかな。
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まっすぐ伸ばしたルーズソックスin昆明 (連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第108話)

2012年06月02日 16時08分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 ずいぶん前のことだけど、留学していた昆明の街角でルーズソックスを穿いた女の子を見かけた。もちろん、地元の中国人だ。だけど、穿き方が変だ。しわしわにして穿かないといけないのに、膝下あたりからぴんとまっすぐ伸ばしたまま穿いている。まるでブーツを履いているみたいだった。
「あれだけどさ」
 僕はその女の子の足をこっそり指しながら、一緒に歩いていた地元の中国人の友人に言った。
「知ってるわよ。日本ではやっているんでしょ」
「だけどさ、穿き方が違ってるんだよ」
「どうして?」
「足首のちょっと上くらいにして、ゆるい感じでしわしわにしてはかないと可愛く見えないんだよ。もっと上から穿いてもいいけど、やっぱり、足首あたりでしわしわの部分を作らないとね。あれじゃ、普通の靴下と同じだろ」
「なんでしわしわにするの?」
「だから、それが可愛らしいんだよ」
「そんなしわしわにしたらみっともないじゃない。変な風に思われてしまうわよ」
「だからさ――」
 と、話は平行線のまま終わってしまった。女性ならどう可愛いのかを説得する言葉を持っているのだろうけど、あいにく僕にはない。ファッション雑誌で見たことがあるだろうと言っても、「見たことはあるけど、やっぱり変よ」と返されておしまいだった。
 たぶん、ルーズソックスをまっすぐ伸ばして穿いていた女の子も、しわしわにすると格好悪いと思ってそうしていたのだろう。まっすぐ伸ばしたのでは「ルーズ」じゃないんだけどなあ。




(2011年6月7日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第108話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
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