風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

すべてを言葉に

2014年03月29日 00時03分41秒 | 詩集

 雨を言葉に
 風を言葉に
 雪を言葉に
 月を言葉に

 花を言葉に
 嵐を言葉に
 鳥を言葉に
 夢を言葉に

 さすらいを言葉に
 あこがれを言葉に
 まばゆさを言葉に
 光を言葉に

 おののきを言葉に
 ふるえを言葉に
 絶望を言葉に
 涙を言葉に

 すべてを言葉にして
 すべてを描きつくそう
 そうして
 すべてを言葉へ変えたあとでも
 まだ残っているなにかに
 語りつくせないなにかに
 じっと耳を傾けよう
 小雨降る池のほとりで
 静かに釣り糸を垂れる
 詩人のように

 やさしさを言葉に
 巡りあいを言葉に
 ぬくもりを言葉に
 すべてを言葉に

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客の呼びこみに必死なタクシーとサイレンを高らかに鳴らす救急車(『ゆっくりゆうやけ』第228話)

2014年03月23日 08時28分01秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 広東省広州の街角を散歩していたらこんな光景に出くわした。
 交差点の横断歩道の前にタクシーが赤信号でとまっていて、その後ろに救急車が続いている。
 歩道にはタクシーに乗りたそうな素振りの女の子の三人連れがいた。救急車はサイレンを回しているのだが、タクシーの運転手は窓から身を乗り出してその女の子たちに声をかけ呼び込もうと必死だ。道を譲ろうとはしない。じれた救急車はサイレンをひときわ高く鳴らしたのだが、それでもタクシーの運転手は一向に気にせず、
「乗りなよ」
 と大声で叫び続けた。
 結局、信号が青に変わるまでタクシーは動かなかった。女の子の三人連れもタクシーに乗らなかった。救急車は、青信号でタクシーが発進した後にようやく走ることができた。
 日本では救急車が後ろからくればさっと道を譲ったり、救急車の邪魔にならないように救急車が走ってくるレーンへ入らないようにして道を空けたりする。しかし、広州ではそんな光景はほとんど見かけない。むしろ、青い回転灯を回した救急車が渋滞にはまって身動きがとれなくなっている姿をよく見る。
「他人のことはまったく関係ない」
 というのが中国人の基本的なスタンスだから、「急病で誰が苦しんでいようと関係ない」ということになるのだろう。

 ここで救急車に道を譲らないなどとは道徳(モラル)がなってない、と批判するのは簡単なことだが、根はもっと深い。
 道徳(モラル)というものは、ルールを設けてお互いの行動を規制し、その結果、お互いが気持ちよく行動できるようにしたり、お互いに利益を分かち合えるようにしましょうというものだ。たとえば、交通ルールを守るからこそ、お互いに安全を確保できるわけで、行列を作るのも、行列を守ることで順番を確保することができる。だから、赤の他人との信頼関係が暗黙の了解のうちにある程度結ばれる文明でなければ、道徳(モラル)は成立しない。信頼関係のないところでは、利益を奪い合うだけになり、道徳(モラル)を守れば損をする一方になってしまう。誰がルールを守ろうとするだろうか?
 もちろん、暗黙の了解の信頼関係がある程度あったほうが物事はスムーズに運ぶ。日常生活を営むうえでも便利だ。困った時に手助けしてもらえる。だが、ある程度の信頼関係を赤の他人と暗黙の了解のうちに結ばない――つまり、社会を作らないという中国の文明は、長い歴史やいろんな経緯があってできあがったものだ。一朝一夕に変えることはできない。
 このような文明のなかで暮らすのは、中国人自身にとってもなかなかきついものだと思う。




(2013年3月23日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第228話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/
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上海散策2014 ~浦東

2014年03月17日 23時50分38秒 | フォト日記

 ぶらりと上海へ行ってきた。
 浦東のあたりをぶらぶらしてきた。

 

 

 蘇州号が停泊していた。


 

 

 東方明珠電視塔。
 展望台は張り出しの床がガラス張りになっていてしたをのぞくことができる。
 ちょっとばかり足がすくむ。
 このテレビ塔のまわりはすっかり金融センターになって高層ビルが建ち並んでいる。昔は荒地だったのだけど。
 


 

 

 浦東から外灘を望む。
 天気が良くてきもちよかった。
 案内してくれた上海人の友人は子供の頃、実家が外灘のすぐ近くにあったそうだ。
 毎日、時計台から時を知らせる鐘の音が聞こえていたそうだ。


 

 中央左側の屋根に尖塔のついている洋館がロシア領事館。その後ろの洋館が浦江飯店。


 了
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なんだかなあという感じの消防訓練(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第227話)

2014年03月14日 21時54分04秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 中国広東省の勤め先で消防訓練があった。
 サイレンが鳴り、全員庭へ避難して整列する。
 消防署に指導をお願いしていたので、軍服のような濃緑色の制服を着た消防署の幹部がみんなの前に立ち、火事の際の注意事項などをいかめしく訓示した。
 避難訓練の後は消火訓練だ。
 ブリキ缶に入れた材木を燃やし、消火器を使った実地訓練を始める。まずは消防士の実演。消防士は消火器を手にしたかと思うとさっと火を消してしまう。その後、何人かの社員が入れ代わり立ち代り消火器を持って訓練をした。なかには怖がって腰が引けてしまってうまく消せない人もいたり、消したと思ったのだけど完全に消火できていなくて、再び火が燃え上がったりする人もいる。
 消防署の幹部は、
「さっき教えた消火器の使い方をきちんと守ってください。火のうえにかぶせるように消化剤をまくこと。でないと火は消えません」
 などとまたいかめしくのたまう。
 次に、ドラム缶に入れた木材を燃やした。
 庭にとまっていた消防車がサイレンを鳴らしてゆっくり走る。消防車の車体はいすゞ製。消防士の見せ場だ。
 消防士がさっと車を降り、消防車からホースを取り出して走る。日頃鍛えているだけあって、走りも素早いし、ポンプ車からドラム缶の手前まであっという間にホースを繋いでしまった。消防士がホースを構える。格好いい。ここまではよかったのだけど……。
 水が出ない。
 ポンプ車のタンクから水が出ないのだ。
 消防士はあせって操作をやり直したけど、何度やってもやっぱりだめだった。ポンプ車のエンジン音だけがむなしく響く。
 十分くらい経ち、あきらめた消防士は建物のそばの消火栓にホースを繋ぎ直した。
 今度はホースの長さが足りない。
 放水が届くかどうか微妙な距離だ。
 消防士は四十五度くらいの角度に水を打ち上げ、なんとかドラム缶に水を届かせようとする。がんばれ。さいわい、雨が降るようにばらばらとドラム缶のうえに水がかかり、ようやくのことで火が消えた。
「あかんな。保険の掛け金を増やしておこうか」
 僕のボスはぽつりと言う。
 消防署の幹部は苦しそうに顔をゆがめながら締めの挨拶をした。面目丸潰れで気が動転している。訓練の前に消防車を点検しておけば、こんな不細工なことにはならなかったのに。
 でもまあ、訓練でよかったよ。




(2013年3月15日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第227話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/
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体の抵抗力を奪う中国の牛乳(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第226話)

2014年03月08日 00時46分01秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 中国の北方に住んでいる知人がひどい鼻炎になった。
 鼻がつまって夜も眠れず、初めは花粉症に罹ったのではないかと疑ってしまったほどだそうだ。
 でも、中国で花粉症になる日本人なんていない。中国には日本のようなすさまじい花粉は飛んでいないから、日本から中国へ行くと花粉症の患者はみんな治ってしまう。花粉症になるはずがない。
 日本でも報道されていたとおり、この冬、北京を中心とした一帯は、激しいスモッグが続いていたから、彼はてっきりPM2・5(微小粒子状物質)のせいで鼻の粘膜がやられてしまったのだろうと思って病院へ行った。なにしろ、スモッグのひどい時は五十メートル先も見えなくなるうえにマスクをしていないと数時間で頭が痛くなる。毒ガスのなかで暮しているようなものだ。
 ところが不思議なことに医師は、
「毎日、牛乳を飲んでいるの?」
 と問診する。
「はい、飲みますけど……」
 鼻炎と牛乳となんの関係があるのだろうと途惑いながら彼は答えた。
「やっぱりね。やめなさい。中国の牛乳には雑菌がすごくいるんだ。それで、毎日飲んでいると体の抵抗力がなくなって炎症が起きてしまうんだよ。そんなものを飲んでいるとそのうち鼻炎ではすまなくなるよ」
 医師は自信たっぷりに断言する。
 ――そういうものなのかなあ。
 と、彼は半信半疑だったけど、試しに毎日飲んでいた牛乳をやめてみたところ、たちまち鼻炎がおさまり、体調もすこぶるよくなった。鼻炎の原因は医師の言うとおり牛乳だったのだ。なんでも中国の牛乳は、日本製の牛乳と比べて三十倍もの雑菌が入っているのだとか。怖い。牛乳を飲んで体の抵抗力を奪われてしまうなんて、誰も予想だにしないだろう。牛乳は健康のために飲むものなのだから。
 それにしても、雑菌だらけの牛乳も牛乳だけど、ひどい鼻炎の原因を牛乳だと見抜く医師もすごいなと彼の話を聞きながら感じ入ってしまった。やはり中国はなかなか奥の深い国だ。



(2013年3月7日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第226話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
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昆明駅大量殺人事件

2014年03月02日 01時37分23秒 | 日記

 3月1日21時20分頃、中国雲南省昆明駅で大量殺人事件が発生した。
 同じ服装をしたグループが昆明駅の切符売場へ乱入して周囲の人たちを殺傷した。2日午前零時の段階では、死者27名、負傷者109名と新華社が報道している。犯人や犯行目的・動機といったくわしいことはまだ報道していない。

↓事件発生直後の写真が掲載してある。すさまじい。
http://cn.epochtimes.com/gb/14/3/1/n4095379.htm

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