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風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

名前のない風になって

2022年04月22日 06時09分06秒 | 詩集

 名前のない風になって
 この空を飛ぼう
 太陽をめがけて
 どこまでも
 どこまでも
 夢を追いかけて

 君も
 名前のない風になるといいさ
 手をつないで
 海を渡ろう
 どこまでも
 どこまでも
 愛を抱きしめて

  くるりと宙返り
  右へ大きく曲がって
  それから
  爽やかな白い雲を突き抜ける

  海から海へ
  島から島へ
  名前のない風の
  名前のない旅
  君と僕の
  ふたりだけの旅

 名前のない風になって
 この空を飛ぼうよ
 君の夢と
 ほがらかな笑顔を
 僕は抱きしめる
 いつまでも
 いつまでも
 そばにいるから

抱き寄せてmoonlight

2022年04月08日 20時05分20秒 | 詩集

 きれいだよ君
 うるんだ瞳
 泣きぼくろ
 今夜だけは
 僕の胸を離れないで

 深い悲しみを
 さとったんだね
 夜空に流れ去るのは
 運命さ
 君を苦しめるものは
 もうなにもない

 抱き寄せてmoonlight
 こんな夜は
 さやかな光を
 肌にしみこませ
 愛をあたためよう


 瞬く星々の
 やさしい鼓動を
 聞いてごらん
 天空が語りかける
 純粋な言葉
 愛の言葉

 涙は
 心の海があふれただけ
 君を苦しめる
 つらい記憶も
 いっしょに
 流してしまえばいいさ

  星が鈴を鳴らす
  清らなメロディーが
  鳴り渡る

 抱き寄せてmoonlight
 こんな夜は
 ほのかな夢を
 この手に握りしめ
 愛を確かめよう

さみしさの海の底へ

2022年03月25日 06時06分48秒 | 詩集

 さみしくなったら
 もっと
 もっと
 ひとりになればいい

 深い
 深い
 さみしさの海へ
 もっと深く
 潜ればいい

 そうして
 冷たい
 さみしさの海の深みで
 だれかを
 あてにすることもなく
 なにかに
 すがりつくこともなく
 ただひとりきりになって
 泳いでみればいい

 ほんとうの
 ひとりぼっちは
 ほんとうに
 怖いものだ
 見放されたと思ってしまう
 心臓がきゅっと締まって
 もう生きていかれないと
 なにもかも捨てたくなる

 だけど
 ほんとうの
 ひとりぼっちに
 なってみなければ
 わからないことがある
 気づかないことがある

 さみしさの海の底で
 かすかな光に気がつく
 さみしさの闇のなかでしか
 見つけられない
 光に気がつく
 あとは
 祈ることを覚えるだけ
 愚かな私には
 祈ることしかないのだと

 さみしくなったら
 もっと
 もっと
 ひとりになればいい
 深い
 深い
 さみしさの海の底へ
 潜っていけばいい

海へ還る

2022年03月10日 15時10分00秒 | 詩集

 もしも命が
 海からやってきて
 海へ還るものなら
 祈りを深くして
 あなたを想いたい

 あなたが還った
 海の果ての遠い島
 魂のふるさと
 あなたはそこで
 元気でしょうか

 潮騒に心をゆだね
 水平線を見つめます
 きらめく春の海
 沖ゆく貨物船
 悲しみは悲しみとして
 この胸に抱きしめて

 愛された日々の
 思い出があるから
 もう少しは
 生きてゆけそうです
 いつかあなたに
 再び巡り会う時を
 心待ちにしながら

 もしも命が
 海からやってきて
 海へ還るものなら
 祈りを深くして
 あなたを想いたい

梅の香り

2022年02月18日 20時20分10秒 | 詩集
 梅の香り
 夜に満ちて
 月の光
 さやかにこぼれる

 夢のため息
 かすかに響き
 ひんやりと
 透きとおる風

 紅い花
 好きな人を想い
 息をつめて
 星を見つめる

 白い花
 静かにたたずみ
 光を探す
 消えない光を

 冬の星座
 眠たげに瞬き
 月に
 うっすらとかかる雲

 梅の香り
 夜に満ちて
 わたしの想い
 時を奏でる

幸せかい

2022年02月08日 06時15分30秒 | 詩集

 幸せかい
 好きなことに
 打ち込んでいるかい
 自分で見つけた宝物に
 磨きをかけているかい

 腹の底から
 笑っているかい
 心の窓辺に
 花を飾っておくんだ
 それだけで
 福は向こうからやってくる

 真実を
 見つめているかい
 善きものを
 見つめているかい
 美しいものを
 見つめているかい
 ちっぽけな人間の知恵を越えた
 なにか大切なものを

 愛する人を
 抱きしめているかい
 お前の愛する人は
 満ち足りているかい
 愛する人の瞳に
 素敵な光を宿らせるのは
 お前の仕事だぜ

 幸せかい
 その掌にしっかりと
 夢を握りしめているかい
 自分の道を歩いているかい

愛び

2022年01月18日 05時15分15秒 | 詩集
 竹の葉がさざめく
 季節の花が咲いた裏庭
 夕陽があなたの頰を染める
 風の声になんとなく
 耳を傾けるふたり

 ふと触れ合った指先
 うつむいたあなた
 交わす言葉にうなずきあう
 結ばれたなら
 ほかにはなにもいらない

 愛うつくしび
 ここであなたを待っていた
 ずっとあなたを待っていた


 清らな瀬の音
 とまらない川の流れ
 ふたりの鼓動を
 たかぶらせては鎮しずめめ
 鎮めてはたかぶらせ

 月の光の匂いは
 あなたの香りに似ている
 長い黒髪に光が跳ねて
 心のしずくになる
 せつない吐息

 愛うつくしび
 ここであなたを呼んでいた
 ずっとあなたを呼んでいた

北星

2022年01月05日 20時03分40秒 | 詩集

 灯りの消えた寝台車の通路
 折り畳みの椅子に腰掛けて
 夜の車窓を眺めた
 雪をかぶった暗い田んぼ
 雨戸を閉めた家
 車輪が雪煙を巻き上げる

 窓に映った僕の顔
 歪んだ僕の顔
 君の笑顔を破ったのは
 この僕だ
 君が悪いわけじゃない

  北の空に
  ひときわ明るく輝く星よ
  消えそうな僕の後悔を
  なにも言わずに預かっておくれ


 轍が続く雪の道
 不意に現れては流れる踏切
 警告音が胸に突き刺さる
 僕が逃げただけのこと
 僕が弱いだけのこと
 君が悪いわけじゃない

  北の空に
  ひときわ明るく輝く星よ
  あの女ひとの凍える悲しみを
  なにも言わずに預かっておくれ

雪のプラットホーム

2022年01月03日 06時10分20秒 | 詩集
 
 さよならを言った
 雪のプラットホーム
 誰もいない木造駅舎
 君の頰は林檎の色

 雪をまとった裸木
 銀色に染まった山並み
 吹きつける粉雪が
 君の髪を凍らせる

 僕のための
 涙はいらない
 君のためだけに
 泣けばいい

 汽笛が鳴る
 恋が終わる
 もう逢えない
 夢のなかでさえ

藁ぼっちと祭囃子

2021年12月09日 05時45分45秒 | 詩集
 刈り入れの終わった田んぼ
 ずらりとならんだ藁ぼっち
 空は秋晴れ 日本晴れ
 澄んだ風が吹き抜ける

「もういいかい?」
「まあだだよ」
 藁色の田んぼで
 かくれんぼしているのは
 幼な子の姿をした
 かわいい稲の妖精たち

 はしゃぎまわって
 かけまわって
 とんで はねて
 天までとどくような
 ほがらかな笑い声を
 はじかせる

 祭囃子
 神社の御神輿
 軽やかな音色
 男のかけ声
 女のかけ声
 稲の妖精たちは遊びをやめて
 みんな神輿へ駆けあがる

 刈り入れの終わった田んぼ
 ずらりとならんだ藁ぼっち
「春になったらまたくるからね」
 神輿に乗った稲の妖精たちは
 ころころと笑いながら
 田んぼに手をふる

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