つれづれに 

老いてゆく日々、興味ある出来事に私見を添えた、オールドレディーの雑記帳です。

政治の権力闘争に利用される検察???・・・

2009-07-25 | どう思いますか
 先日、読み終えたミステリー小説に非常に興味ある文章があった。20日のブログには、『「鳩山政治資金疑惑」は官僚の陰謀』という論文の一部を紹介したが、この小説にあるのは検察に対する疑念である。
 この小説は、1997年初版の小杉健治原作『検察者』で、この中に「検察審査会」という聞きなれない名称が出てくる。「検察審査会」とは、衆議院議員選挙人名簿から地域ごとに無作為に選ばれた11人で構成され、任期は半年、検察庁が不起訴にした刑事事件について、その判断が妥当だったかどうか民間人が吟味して意見を提出する制度で、日本全国に現在200ヶ所ほどあるそうだ。
 この『検察者』は日本で初めて「検察審査会」を取り上げた作品だそうで、管理者研修で起きたしごきによる死亡事件が不起訴になったことが妥当かどうかを審査する過程が描かれている。主人公は桐生という若手検事で、選ばれたメンバーの1人がある役割を持って審査員になったのではという疑を持つ。そして、関連性のなかったはずのもう一つの殺人事件との繋がりが…。
 
 (原文どおり)『桐生は検事と政治家の関係について憂慮していることがある。過去において摘発された政界の不正事件が明るみに出るのは、だいたいにおいてその人物が権力の座からおりたときか、あるいはその直前である。つまり、実力者がその力を失ったときに不正事件は検察の手によって摘発されるのだ。およそ、すべての政治家は叩けば埃の出る体かもしれない。それが発覚しないのは力で押さえているからである。少しでも、その力に翳りが見えたとき、対抗する実力者は検察の力を利用して、その人物を追い落とそうとする。過去の疑獄事件にこのような構図がある。だいたい汚職事件において金品の授受は密室で行われるのであり、普通の事件のように被害者が存在するわけではないので、この種の犯罪は発覚しにくい。なのに、どうして疑惑がうまれるのか。それは政界裏で飛び交う情報からであろう。その噂話の中から不正事件が発覚する。逆にいえば、その情報の操作によって検察を動かすことができるのだ。桐生は、政治の権力闘争に検察が利用されてはたまらないと思っている。』
 また、『桐生の憂慮は検察が政治家に利用されているのではないかという不安以上に、もっと積極的に検察内部に政治家と結びつく派閥が生じつつあるのではないかという疑念にある。政治家に弱い検察のイメージを拭いたい。それが桐生の念願である。確かに検察官の身分保障は絶対である。その身分保障は裁判官に良く似ている。憲法に謳われているように裁判官は独立しており、なにものからも圧迫を受けず公平な裁判ができるように身分保障されている。権力の都合により不当に身分を剥奪されることはない。これと同じように、検察官も不当に身分を奪われることはない。だが、裁判官と違い、検察官は検察庁という官僚的組織の中にある。そして、その検察庁を指揮する権限を有するのが法務大臣である。もっとも、個々の事件について直接の担当検事を指揮することはできず、検事総長のみを指揮することができるというものである。こうして法律的に他からの圧力がかからないようになっているが、組織の中で働く人間にとって大事な要素がここには欠如している。それは昇給、昇進という魔物である。検事は上司に睨まれたら一生うだつが上がらない。ここに堕落が待ち構えている。このことは裁判官とて同じである。最高裁事務局の顔色を常に窺っている判事の姿が見え隠れする。』と書かれている。

 この文章から、小沢さんの献金疑惑問題が明るみになったときのことを思い出している。あの当時も、なぜこの時期に? 国策捜査ではないか? 自民党が、政権交代を阻止するために民主党攻撃を強引に検察に指示したのはでは? などなど、疑念の声が上がった。自民党にも叩けばホコリの出る人はたんといるだろうに、民主党ばかりが狙い撃ちされているのはなぜか? 民主党に翳りが見えたからでも、小沢、鳩山両氏の力が弱まったからでもない。むしろ、民主党が強力になりすぎて出る杭が打たれたのではあろうと思われる。いずれにせよ、権力闘争は醜いものである。

 ところで、西松建設がダミーの政治団体を使い、自民党二階派政治団体のパーティー券340万円分を購入した問題で、大阪の市民団体が、東京第三検察審査会へ「起訴相当」の議決を求めて申し立てていたが、21日、二階氏の秘書(氏名不詳)を不起訴とした東京地検の処分について「不起訴不当」と議決した。東京地検は議決を受け、再捜査した上で改めて起訴か不起訴かを判断するという。
 現在、保釈中の小沢氏秘書の公判は秋以降に行われるという。もし二階氏秘書が再捜査で起訴されたら、これは面白いことになりそうだ。
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3 コメント

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Unknown (ばーば)
2009-07-25 22:39:09
検察と国策捜査の関係は、何処に指揮系統があるのか、想像することしか出来ないのが残念ですね。何処にでも表通りと裏通りがあるのでしょう。
私が大いに気になるのは、起訴したあとの”有罪率が99パーセント”という数字です。他の先進国の警察や検察と比べても、頭脳は同じくらいと思うのに、のけぞる位の有罪率が怖いです。
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検察官 (おくだっち)
2009-07-26 08:28:56
民主の小沢前代表の政治献金問題が起きて、自民も捜査?という話が出た時、誠実でカタブツなはずの検察官がストーカー行為かセクハラ行為で失職した事件がありましたが、その後自民の捜査がうやむやになって、すごく作為的なものを感じました。

また、この検察官事件もすぐマスコミから消え去り、裏で動いているものに恐怖感さえ感じました。
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Unknown (オールドレディー)
2009-07-26 08:43:18
♠ばーばさま
検察と政治家には何らかのつながりがあるのは確かなようですね。ただ、その力の均衡が政治家が上となると問題です。
いずれの世界も駆け引き、思惑というのが不可欠のようです。

”有罪率が99パーセント”、この中には冤罪もありうるわけで、それを少なくするために裁判員制度が作られたのでしょう。
でも、調査では選ばれても行かないという人が26%近くいたとか、まだまだ我々には遠い世界のようです。



♠おくだっちさま
結局、検察官もサラリーマンで、昇進、昇給というエサには勝てないのでしょうね。
それと、政治家の資質低下と同じように、検察官、警察官の資質にも大いに問題ありです。

せめて検察審査会だけでも公明正大であって欲しいです。
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