東京では大分飲み過ぎていたようだ。品川まで付いてきてくれた人が、大阪まで行ってしまわないかと心配してくれているのを覚えているが、食事の勘定をしたのかどうかが記憶にない。無事掛川駅で下車できた。朝まで少し残っているようだった。
何もする気力はなく、残っていた上掲を読んだ。図書館の棚で読んだ記憶がないなと借りてきた。読んでいるうちに読んだことがあるなとの思いは強くなっていったが、一向に筋書きや結末は思い出せない。
大学の教師をしている妻と設計事務所を経営している夫、高齢者に入りかかっている。ある時夫の声がかすれ始める。病院で受診すると心臓からの動脈にこぶ動脈瘤が出来ているという。それもいつ破裂してもおかしくないほどの大きさだと。手術を怖がる夫、手術以外の治療法を探す夫婦。食事療法や温泉の岩盤浴など効果があったと聞けば試す。それでも改善は見られない。最後は外科手術を受ける。手術を終えるまでのこの夫婦の物語だ。手術は無事終わるが、妻には何か晴れないものが残る。娘に「お父さんの動脈瘤は終わったがお母さんの動脈瘤は終わっていない」と言われる。
最後で病院に入院するという日の朝、北九州では珍しい大雪になり車の通行が困難になる。この場面まで来て確かに読んだことがあると確信が持てた。しかし面白かった。