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片雲の風に誘われて

自転車で行ったところ、ことなどを思いつくままに写真と文で綴る。

8/27 小川哲『地図と拳』読了

2025-08-27 22:58:39 | 読書

 どこかで書評を読んだことがあった。何回か在庫を探したがいつも貸し出し中だった。在庫しているのを見付けて、手に取ってみると6百ページを超える厚さ、一瞬その分量にたじろいだが購入するわけでは無し借りるのだから、いやになったら止めればよいと借りてきた。
 満州に人生をささげた人々の話。日露戦争の前、満州におけるロシアの存在を調べるために渡るところから始まる。確かにこのころはロシアの南進に対して日本はどうするべきか。朝鮮をどうする。清はどう出てくるか。が日本国内で大きな関心を集めていた。祖父も大学を出て弁護士や内務省の手伝いをしている時、吉林省の南部、豆満江北方左岸地域で現在は延辺朝鮮族自治州の「間島」に入っていた。朝鮮人が多く北上していた。日露戦争後発生した「間島問題」の事前の下調べだ。清も己が故郷の地として漢人の立ち入りを禁止していた。しかし清も力が弱まり、漢人もなし崩しで入植を始め、ロシアも南下するという混乱した状況であった。このような東アジアの状況の中で密偵として満州に渡りロシアの官憲の目をくぐりながら日本の権益を築こうとする日本人の若者たちだ。時は義和団が暴れまわっている時期。二人は松花江を船で遡るとき、同乗の漢人が自分の故郷には「作物が育つ土」と「燃える土」、「燃えない土」があると話すのを聞いた。もしかしたら「燃える土」とは石炭のことかと考える。しかし、満州のそのあたりに石炭の層があるとはどこの資料にもない。そこは李家鎮と言う貧しい田舎だった。しかしやはり石炭があり、日本が満州経営に乗り出したときはこの石炭を開発しようと近くに鉄道を引いたり鉱山を開発してゆく。この新しい土地にどのように町や産業を築いてゆくかが「地図」でそのための武力や強制力が「拳(こぶし)」だ。
 そこから日中戦争で日本が負け、満州から引き揚げるころまでの時代にこれに参加した多くの人物たちも物語だ。町が作られてゆく様子などは、大連やハルピン、瀋陽などを思い浮かべさせる。また岸信介など当時の若く気負った新官僚などの姿も見えてくる。多くの登場人物が出てくるが、核になっているのは最初、密偵として入った二人とその子供たちだ。
 この作者はこれで直木賞を受賞している。この作者の他の小説を読むかは、この読疲れが少し薄らいでから考えよう。
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8/20 若松邦弘『わかりあえないイギリス』読了

2025-08-20 23:42:48 | 読書

 イギリスのサッチャー後の政治について解説している。
イギリスの政治では長い間保守党、労働党の二大政党時代が続いていた。そこに自由党(現自民党)が第三党として顔を出す。その頃はサッチャーの保守党が新自由主義的な経済政策を推し進めた。国有企業の民営化、規制緩和、減税など。70年代の崩壊しかかったイギリス経済の立て直しに一定の効果を上げた。しかし、一方社会的な格差や地域間の格差を増大させた。それまで政治は社会勢力間の「経済軸」に沿って編成されてきた。そこにサッチャー後は第二の軸として社会的な保守とリベラルと言う「社会文化的な軸」が現れてくる。「ロンドンのエリート」に対する「地方からの反乱」など。これがイギリスの政治社会に大きな分断を生み出してきた。それが2016年の国民投票におけるブレグジット賛成に至った。経済エリートやインテリ層、経済界はイギリスの不利になるブレグジットなど否決されるに決まっているとしていたにもかかわらず可決されてしまった。それまでエリートに任せておけばよいとする大衆の意識、例えばコロナ渦で国民が生活を律していたにもかかわらず、時の首相は官邸でパーティーに明け暮れていたなどがその傲慢さ、大衆蔑視で民心を大きく離れさせた。そして大衆の政治的意向の多様性を表すように新たな政党が台頭してきた。連合王国を分裂させる、または大衆を地域などによって細分化させるなどそれぞれが要求を出すようになった。「ロンドンなど大都市」に対する「地方からの反乱」、「社会的リベラル」対「社会的保守」など「社会文化的」な対立が明瞭になった。これらの分断が顕わになったのが現在で今後この傾向がどうなってゆくかはあまりよく見通せない。
 これらは日本をはじめ世界的な傾向だ。日本でもエリートの信用は多く棄損されている。今までではとても信じられなかったことを平気で発言する政治家も現れてきた。これら新興の政治勢力に投票したのが若者たちだという。そうすると日本では「若者」対「年寄り」と言う分断が始まって始まっているのかもしれない。

 最近よく眠れない。そこで夜中ウイスキーを飲みながら本を読み続けたりすることになる。すると翌日昼間にうつらうつらすることになる。悪循環だ。前立腺の薬をもらっている医者にそのことを訴えると、睡眠導入剤を試してみたらと言われ服用した。確かにその夜は直ぐに寝就いたようで、目が覚めたのは朝6時過ぎだった。その間トイレにも起きていない。効果抜群だ。そして昨夜は12時を回ると少し眠くなってきたので飲まずに寝た。30分以上寝れなかったがそのうち寝たようだ。しかし、2時頃に目覚めたり浅い眠りのようだった。今日は飲んで寝てみようと思う。ただしこの薬を飲むときはアルコール禁止だとのこと。これが少し苦になるかもしれない。
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8/17  友松夕香『グローバル格差を生きる人びとー「国際協力」のデストピア』読了

2025-08-17 22:10:35 | 読書
 新しい知見をたくさん得ることができた。著者はアフリカの研究者。若いころからJICAなどでアフリカに係ってきた。それが21世紀に入ってすぐ頃からなので、アフリカが大きく変化してゆく頃だ。20世紀後半の独立、建国が盛んで高揚した時代を過ぎて少し停滞に入った頃がスタートだったのだろう。
独立後、教育が普及して識字率が向上始めた。2010年代に入りスマートホンが普及し始めた。それまで映画やTVでしか知らなかった白人の生活をすぐ身近に見ることができるようになった。それまで自分が黒人だということさえそれほど強く自覚していなかった人々に、西欧人との違いを思いっきり見せつけた。彼らは手元の情報機器を巧みに操作して金を稼ぐ方法を手に入れた。それが特に英国の植民地だった、英語を話せる西アフリカの若者の国際ロマン詐欺だ。その手口はかなり高度らしい。SNSで友達要請を若い白人の男性や女性を装ってする。それに引っかかったアメリカ人などと接触を重ねる。これらもすべてフォーマットができているそうだ。写真だけでなく、実際のチャットなども偽の白人女性のまま交わすこともできるそうだ。こうして大きなお金を手に入れて、車や家を購入している。こんなことができるのは若い教育を受けた高校生や大学生だそうだ。彼らにはほとんど罪の意識はないそうだ。地方の小さな村や町にもこうして金を稼いでいる若者がたくさんいるという。スマートホンの効用として、農産物の相場を知ることができ、それまで仲買に騙されて買いたたかれていたのを自分たちで直接市場に出すことができるようになり所得向上を実現した。などの話は聞いていたがこんな面でも活用されているのは知らなかった。スマートホン一つあればすぐに始められる。
他にも、最近のアフリカ経済の伸長は素晴らしい。若者が多く、今後の消費の伸びが大いに期待される、などのポジティヴな報道の陰にあることも教えてもらった。

 アサト・モンタロウは今夜父親が迎えに来て帰っていった。家山川の川遊びは彼らも楽しみにしていたが、この雨で増水している心配があるのでできなかったのが残念だ。一昨日エリーが下痢をして、それも血便だったというので娘が心配して昨日獣医に連れてい行った。エコーやら血液検査、検便をしてもどこにも悪いところはなさそうだと言われた。最後に最近強いストレスを受けたことはないですかと聞かれた。明らかに、アサト・モンタロウにいじり倒されているのが彼女にとっては大いなるストレスだったようだ。
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8/14 温又柔『永遠年軽』読了

2025-08-15 16:52:28 | 読書
 彼女のお決まりの設定の登場人物が出てくる。それらの人物に纏わる「日本人」の夫や友人が主人公になる話が並んでいる。確かに然も在りなんと言う筋が展開される。標題の「年軽」は漢語で一般的には「年が若い」あるいは「若い娘」「若い世代」を表す。小説の内容から判断すると、この「年軽」には輝く若さ、青春の輝きなどの極端に若さを肯定するニュアンスは少ないようだ。未熟だとかまだ若く愚かなど少し否定的な意味を持つ言葉のようだ。昔中国人と話した時もそんな使われ方をしていたのを思い出した。

 孫たちが来たのでそれまで独り寝をむさぼっていた西の離れを明け渡すことになった。普段は娘がフルートの教え子のレッスンに使っている。部屋中がそんな設えになっている。本来は母を同居させるようになる時、母に一部屋提供するのでそのために考えた部屋だった。しかし、話が進むうち、母には既存の部屋を使ってもらい、もう少し多用途に仕える広い部屋をと言うことで現在の仕様になった。普段私が足を踏み入れることはなかったが、今回避暑の部屋として使ってみてその快適さを実感している。四方の窓を全開すれば汗をかかずに眠ることができる。
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8/10 温又柔『私のものではない国で』読了

2025-08-10 22:16:06 | 読書
 父親の転勤で三歳の時生まれた台湾を離れ以後日本で生活してきた著者が日本語での物書きになった。家庭内で少しの台湾語、中国語を使用する他はほとんど日本語で暮らしてきた。そんな著者が日本や日本語について思うことを語っている。
 子供のころから自分は台湾人なのか日本人なのか考えてきた。日本では中国名を見た人は、日本語が上手だとほめ、台湾に行くと日本人のようだと言われる。私は日本語人だと気付くまでは多くの葛藤があった。
 最近では「日本人ファースト」などとどこかのバカの云い真似をして選挙に出るものまで現れている。この言葉の意味するところをどこまで理解しているのかと疑問になる。公に説明している言葉を聞いても全く奥まで理解していない。こんな日本は最近になってからと思ったが、著者のように、国外にルーツを持ち「日本人」の中で暮らしてきた人々にとってはそれほど目新しいことではないそうだ。私の気付かないところで「日本人ファースト」的な応対をしてきたのだと思い知らされた。
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