連日話題になっていた東京都青少年健全育成条例改正案は、2010年12月13日に都議会総務委員会で可決(賛成11、反対2 )、同月15日に都議会本会議で可決され、成立した。自民、公明、民主が賛成、共産党と生活者ネットワーク・みらいが反対。
参照:青少年条例改正案 委員会で可決
参照:性描写漫画販売規制 東京都の条例改正案が可決、成立
可決に際しては以下のような付帯決議が付けられている。
第七条第二号及び第八条第一項第二号の規定の適用に当たっては、作品を創作した者が当該作品に表現した芸術性、社会性、学術性、諧謔的批判性等の趣旨を酌み取り、慎重に運用すること。
また、東京都青少年健全育成審議会の諮問に当たっては、新たな基準を追加した改正条例の趣旨に鑑み、検討時間の確保など適正な運用に努めること。
参照:第百五十六号議案 東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例に付する付帯決議
この付帯決議は、「『表現の自由を侵す恐れがある』との批判を受け、慎重な運用を求める付帯決議が付けられた。 」(上記朝日新聞記事)などと説明されているが、このような付帯決議が付けられなければならないという事実が、本条例の問題点を明らかにしている。慎重な運用を求めるということは、裏返せば、慎重では無い運用も可能な条文であるということに他ならないからだ。
条文が曖昧であるために、運用に幅ができ、そこに公権力の恣意が入る余地がうまれ、またどこまでが規制の対象となるか分からないために萎縮的効果が生じてくる。これこそ、規制反対派が問題視してきた点はないか。この付帯決議は、前回否決に回った民主党に依るところが大きいと思うが、ならば更なる議論を続けるべきではなかったか。
付帯決議の前段は、これを条文に組み入れることはできなかったのか。改正案の公開から議決までの日数が少なかったことが影響し、より良い条例改正案の成立が阻害された可能性もある。
※追記
民主幹部も「来春の統一地方選が控えており、PTAなど保護者の意向を無視して引き延ばすことはできない」と影響があったことを明かした。
参照:都職員の説得奏功 性描写規制条例 石原知事「大人の責任」
後段については、民主党小山有彦都議 が①審議会委員が内容を吟味できるよう、対象漫画本を委員に事前配布すること、②審議会の公開ことを要求したという。特に後者は、審議会の公平性透明性を担保する意味でも極めて重要な要求である。都民・国民に見られて困るようなことをやっていないのであれば、広く公開するべきである。
参照:都青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 付帯決議で慎重運用要求 /東京
(11年1月12日追記)
審議会の公開という点について、東浩紀氏は審議会等のネット中継及び視聴者の意見のフィードバックを東京都副知事の猪瀬直樹氏に提案している。先に行われた事業仕分けの<UST中継+ツイッター>の組み合わせに近い発想であるが、東氏はこれをルソーという古典の読み替えを行うことで根拠付けようとしている(現在雑誌『本』紙上にて連載中の「一般意志2.0」)。
この提案が実際に都政に反映されるかは不明だが、まずはネット中継だけでも導入されるべきである。
参照:Togetter-東氏、猪瀬氏に提案をする
***
本問題に関しては、ニコニコニュースも踏み込んだ記事を配信している。総務委員会を傍聴していた人について記事にしたのはニコニコニュースくらいではないだろうか。また、都議会総務委員会のインターネット生中継が拒否された経緯についても書かれている。
傍聴していた女性は「私たちはがんばって想いを届けてきたので、聞いた瞬間に悲しくなりました」「この件はむしろ女性に与える影響が大きい」と涙をこぼした。また別の女性は「何か私たちが悪いことをしているのかな」と目に涙をためながら、うつむいた。
参照:都条例改正案、総務委で可決 「私たちが悪いのかな?」傍聴女性の目に涙
***
札幌税関事件判旨PDF(最高裁判決昭和59年12月12日)
「表現の自由を規制するについては、基準の広汎、不明確の故に当該規制が本来憲法上許容されるべき表現にまで及ぼされて表現の自由が不当に制限されるという結果を招くことがないように配慮する必要が」ある。
なお、今回の都条例問題について、「検閲」という概念に言及される場面が散見される。判例上「検閲」の概念はとても狭いので注意する必要がある。
「憲法二一条二項にいう『検閲』とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。」
参照:青少年条例改正案 委員会で可決
参照:性描写漫画販売規制 東京都の条例改正案が可決、成立
可決に際しては以下のような付帯決議が付けられている。
第七条第二号及び第八条第一項第二号の規定の適用に当たっては、作品を創作した者が当該作品に表現した芸術性、社会性、学術性、諧謔的批判性等の趣旨を酌み取り、慎重に運用すること。
また、東京都青少年健全育成審議会の諮問に当たっては、新たな基準を追加した改正条例の趣旨に鑑み、検討時間の確保など適正な運用に努めること。
参照:第百五十六号議案 東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例に付する付帯決議
この付帯決議は、「『表現の自由を侵す恐れがある』との批判を受け、慎重な運用を求める付帯決議が付けられた。 」(上記朝日新聞記事)などと説明されているが、このような付帯決議が付けられなければならないという事実が、本条例の問題点を明らかにしている。慎重な運用を求めるということは、裏返せば、慎重では無い運用も可能な条文であるということに他ならないからだ。
条文が曖昧であるために、運用に幅ができ、そこに公権力の恣意が入る余地がうまれ、またどこまでが規制の対象となるか分からないために萎縮的効果が生じてくる。これこそ、規制反対派が問題視してきた点はないか。この付帯決議は、前回否決に回った民主党に依るところが大きいと思うが、ならば更なる議論を続けるべきではなかったか。
付帯決議の前段は、これを条文に組み入れることはできなかったのか。改正案の公開から議決までの日数が少なかったことが影響し、より良い条例改正案の成立が阻害された可能性もある。
※追記
民主幹部も「来春の統一地方選が控えており、PTAなど保護者の意向を無視して引き延ばすことはできない」と影響があったことを明かした。
参照:都職員の説得奏功 性描写規制条例 石原知事「大人の責任」
後段については、民主党小山有彦都議 が①審議会委員が内容を吟味できるよう、対象漫画本を委員に事前配布すること、②審議会の公開ことを要求したという。特に後者は、審議会の公平性透明性を担保する意味でも極めて重要な要求である。都民・国民に見られて困るようなことをやっていないのであれば、広く公開するべきである。
参照:都青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 付帯決議で慎重運用要求 /東京
(11年1月12日追記)
審議会の公開という点について、東浩紀氏は審議会等のネット中継及び視聴者の意見のフィードバックを東京都副知事の猪瀬直樹氏に提案している。先に行われた事業仕分けの<UST中継+ツイッター>の組み合わせに近い発想であるが、東氏はこれをルソーという古典の読み替えを行うことで根拠付けようとしている(現在雑誌『本』紙上にて連載中の「一般意志2.0」)。
この提案が実際に都政に反映されるかは不明だが、まずはネット中継だけでも導入されるべきである。
参照:Togetter-東氏、猪瀬氏に提案をする
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本問題に関しては、ニコニコニュースも踏み込んだ記事を配信している。総務委員会を傍聴していた人について記事にしたのはニコニコニュースくらいではないだろうか。また、都議会総務委員会のインターネット生中継が拒否された経緯についても書かれている。
傍聴していた女性は「私たちはがんばって想いを届けてきたので、聞いた瞬間に悲しくなりました」「この件はむしろ女性に与える影響が大きい」と涙をこぼした。また別の女性は「何か私たちが悪いことをしているのかな」と目に涙をためながら、うつむいた。
参照:都条例改正案、総務委で可決 「私たちが悪いのかな?」傍聴女性の目に涙
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札幌税関事件判旨PDF(最高裁判決昭和59年12月12日)
「表現の自由を規制するについては、基準の広汎、不明確の故に当該規制が本来憲法上許容されるべき表現にまで及ぼされて表現の自由が不当に制限されるという結果を招くことがないように配慮する必要が」ある。
なお、今回の都条例問題について、「検閲」という概念に言及される場面が散見される。判例上「検閲」の概念はとても狭いので注意する必要がある。
「憲法二一条二項にいう『検閲』とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。」
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