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歴史から見るコンゴ民主共和国・大統領選挙2018の行方(3)〜2016年、幻の選挙とアフリカの憲法問題

2018-09-25 07:30:13 | アフリカ情勢
12月23日に近づくコンゴ民主共和国の大統領選挙、混迷するコンゴの政局に国際社会が注目している。

今回の選挙戦に至るまで、幾多の政局が動き、また国際社会の動きが作用してきた。選挙をめぐる問題を理解する上で、たくさんのポイントが含まれている。

ということで、先日よりコンゴ民主共和国・大統領選挙にまつわる過去を概観している。先週までに二つの記事で、2006年以降の2回の選挙を振り返った。
第一話 2006年、初の民主的選挙
第二話 2011年、象牙ショックに揺れた選挙

今回はその第三回目。本来は2016年に行われるべきだった「幻の大統領選挙」について。今年の12月に実施される選挙は、この選挙がズルズルと遅れてきたものだ。まさに陽炎を追っているかのように。

(キンシャサの夜明け)


「幻の大統領選挙」では大きく二つの焦点があった。一つは、憲法が禁止するジョセフ・カビラ現職大統領の三選立候補が認められるかという問題だ。

コンゴ民主共和国憲法第70条は、大統領任期を5年2回に限定している。したがって和平合意後、2006年に行われた大統領選挙以降、二期の任期を終えたカビラ大統領は、これ以上の立候補はできないこととなる。

2016年の選挙が近づきつつあった当時、一部報道や識者からは、カビラ大統領はこれ以上地位にとどまることは望んでいない、という情報が聞かれた。しかし権力に座ったものはなかなか離れ難い。少なくとも大統領与党側近は、カビラ政権維持を推し進める方向にあった。

時折しも「憲法改正問題」、言い換えれば大統領任期問題でアフリカが揺れていた時期にあった。
2015年12月、隣国のルワンダで憲法改正を問う国民投票が行われ、賛成多数で可決された。これによれば修正101条の大統領任期規定(5年任期2回)に、同171条の附則的規定(2016年の選挙では特別に7年の任期を与え、101条の規定は右任期終了後から適用)をあわせ読むと、カガメ大統領は最長2034年まで大統領の地位にとどまることができることになる。にわかに信じがたい規定だ。カガメとカビラは姻戚の関係にある。あいつがいけるなら、こちらもいける、そう思ったのかもしれない。

時を前後して、もう一つの隣国、川を隔てたコンゴ共和国でも憲法改正を与党主導で「強行」。こちらは任期を7年から5年に短縮、一度だけ再選可との規定となった。また大統領候補資格として、70歳以下の規定を取り除いた。これにより、超長期政権を堅持するサス・ンゲソ大統領の立候補が確保された。しかし憲法は185条で大統領任期に関する規定は不可変であると述べている。これにもかかわらず、憲法修正が強行され、野党勢力との物理的衝突が繰り返された。国際社会もこれに圧力。しかし結果として、修正憲法に基づく選挙が実施され、ンゲソ政権は継続している。

何もうまくいったケースばかりではない。もう一つの超長期政権が続いていた国、ブルキナファソでは2014年、与党が大統領任期規定を含む憲法改正を発議。国民議会での修正案採決のその日、「国民革命」でコンパオレ大統領は国を追われることとなった。

コンゴにとってのもう一つの隣国、ブルンジでは2015年、大統領任期をめぐる憲法改正の混乱のさなかでクーデター未遂が進行。国際社会の圧力にンクルンジザ大統領は真っ向から対峙。現在も国際社会から半ば排除された状況が続く。


当時のカビラ政権にとって、これらの先例は大きく作用したと思われる。そして2015年、有識者で組織された憲法審議会は、カビラ三選立候補は憲法上排除されないとしてその可能性を示唆した。このことは政局を大きく揺るがした。野党勢力の抵抗が激しさを増し、国際社会は断固これを認めないとの方針に立った。なんでルワンダはよくて、コンゴはだめなのか?そんな疑問も交錯する。そんな中、2016年10月18日、野党の一部が与党との合意に至り、12月に大連立政権を組織。主要野党UDPS出身のサミー・バディバンガが首相に就任し、なんと67人も大臣が存在するカタストロフな事態となった。

他方、広大な国土における選挙準備は極めて難航。強い政治的意思がなければ準備は整わない。2016年9月、独立選挙監視委員会は、準備が間に合わないとして選挙の延期を決定。このことがさらに緊張と混乱を生み、40名以上の死者を出す衝突に発展した。

その後、与野党の合意で選挙実施期限は2017年末と定められた。しかし2017年7月、独立選挙監視委員会は再び準備が整わないとして、再度の延期を決定。最終的に2018年12月23日、国民議会選挙との同時選挙として期日が決定された。


このような経緯の中、2018年6月30日、連立与党は「コンゴのための共同戦線(FCC)」を結成、統一候補擁立に、言い換えればカビラの三選に向けて、最後の調整が行われた。しかし8月8日、大統領選挙候補届出日までにその調整は整わず、大統領与党派連合はエマニュエル・ラマザニ・シャダリー現副首相を統一候補とし、立候補の届け出を行った。ここでカビラ大統領三選の野望はここで完全に潰えることとなった。


以上、「幻の大統領選挙」での二つの焦点の一つ、カビラ三選問題とアフリカの選挙問題について述べてきた。そして今回の選挙では、冒頭述べたように、もう一つの大きな問題がある。それは、、、

(次回につづく)


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