ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

バグボ元大統領釈放!〜コートジボワール危機と国際刑事裁判所(3)・国際社会は正義か?

2019-01-18 16:40:00 | アフリカ情勢
連載中の「バグボ元大統領釈放!〜コートジボワール危機と国際刑事裁判所」、第三話を続けたい。

バグボ元大統領釈放!〜コートジボワール危機と国際刑事裁判所
第一話 コトの顛末
第二話 政局タイムマシーン

コートジボワール危機の最終段階、和平プロセスの最後にやってきた大統領選挙が荒れることは、誰もが予期していた。そのため、フランス、アメリカ、国連コートジボワールミッション(ONUCI)をはじめ、国際社会は選挙準備のために惜しみない支援を用意し、そして選挙は徹底的に監視された。投票後、投票箱を開票所に輸送し、集計が行われる過程においても、可能な限りのロジシティック支援と、監視の目を挟み込んだ。その結果、独立選挙管理委員会が「ワタラ候補勝利」の結果を発表すると、国際社会はいちはやくこの結果に対する支持を表明した。本来、中立的立場であるはずの、国連PKOでさえも。

しかしコートジボワール憲法は、憲法裁判所による承認と確定を要求した。もちろん、憲法裁判所の裁判長はバグボ大統領(当時)が指名しており、中立性には大きな疑問がつく。しかし南部を中心としたコートジボワール国民のかなりの有権者がバグボ前大統領を支持していたことも忘れてはならない。

・・・世界観は、国際社会によって「勧善懲悪」の構図に作り上げられた。悪役バグボ。そういった中、国連とフランスによる「選挙後危機」に対する支援と介入が行われた。

選挙後危機の結果は、繰り返し述べているように内戦に発展。ワタラ候補陣営は、反乱軍を実質指揮するギヨーム・ソロ(当時首相)の支援を受け進軍。国際社会はこれを軍事的に支援。激しい内戦の末、バグボ前大統領は拘束され、事態は軍事的に解決した。

その後、バグボ氏は国際司法裁判所から「戦争に対する罪」「人道に対する罪」の科で国際司法裁判所の訴追を受け、愛国青年党を扇動したブレ・グデ元青年大臣とともにハーグに移送された。バグボ大統領の夫人は長く北部の戦略都市コロゴに拘留され、その後コートジボワールの司法の手によって裁かれる身となる。


上記構造の中で、少なからずの疑問が呈されることとなる。
まず、「勝者が敗者を裁く」構造が許されるのか。現政権側だって、悪いことをたくさんしたではないか。いや、現政権の方が蛮行を繰り返してきたのではないか。なぜ敗者だけが裁かれるのか。そのような疑問。

次に、なぜバグボ氏はアフリカではなく、ハーグで裁かれるのか。なぜアフリカの裁判をヨーロッパで裁くのか。そもそも国際社会も中立ではなかったではないか。国際刑事裁判所とは何者なのか、という疑問。

国際刑事裁判所に関する疑問はさらに奥深い。昨年、欧州系独立メディア「Mediapart」は、バグボ氏の国際刑事裁判所移送に関し、ある疑惑をスッパ抜いた。そのことは、このブログ『ぶら★アフ』でも連載した。
国際刑事裁判所は正義か?〜コートジボワール危機をめぐるスキャンダル
第一話 選挙後内戦とバグボ前大統領拘束
第二話 勝者による裁き
第三話 コートジボワール危機をめぐるスキャンダル

疑惑とは2011年、コートジボワールがいわゆる選挙後危機を脱した直後に 、ルイス・モレノ・オカンポ検事総長が、フランス人外交官に、ローラン・バクボ前大統領の身柄を釈放しないよう求め、可及的速やかにハーグのCPIに移送してほしいと要請。そしてそれに基づいて、バグボがハーグに移送された、というもの。

記事によれば、この疑惑には様々な問題が含まれている。CPI側がまるで「営業」するかのごとく、コートジボワール危機を扱っているように見えること。その「営業先」が、当事国ではなく、旧宗主国であり、本紛争にも深く介入してきたフランスであること。・・・さらに。この当時、コートジボワールは国際刑事裁判所設立に関するローマ議定書の批准が行われておらず、そもそも国際刑事裁判所の管轄権がなかったのではないかという疑念も指摘されている。


国際刑事裁判所のあり方については、アフリカ大陸規模の大きな問題となってきた。そのことも、このブログ『ぶら★アフ』で繰り返し記事にしてきた。
国際刑事裁判所、アフリカ諸国の脱退ドミノ?〜アフリカの犯罪をアフリカで裁けるか?(7)

これはアフリカの真の自立と、大国や国際社会介入からの解放をめぐる、核心的な問題である。アフリカ諸国は国際社会の傲慢を糾弾し、集団脱退をほのめかせた。・・・しかし、当のアフリカがまともな司法機能を有していない、蛮行が繰り返される、そして不処罰が横行する・・・そのことの鏡でもあるのだが。


さらに。国際司法裁判所による管轄権の問題のみならず、もう一つ、最近の判例が国際刑事裁判所の有効性や正当性を揺るがしている。昨年にはコンゴ民主共和国のジャン・ピエール・ベンバ氏が、10年の拘留ののち、罪状認められることなく釈放となった。2016年にはケニアのウフル・ケニヤッタ、ウィリアム・ルト両氏に向けられた嫌疑も、棄却となった。そして今回のバグボ、グデ両氏裁判。7年の交流の末、一審は証拠不十分により、釈放を命じた。

15日の釈放命令から4日。検察側は上告手続きをとり、釈放に否定的な意見を提出している。未だに両氏の釈放は実現していない。これらの経緯を見ると、国際刑事裁判所の検事側は、威信と存在意義にかけても、この裁判に安易に妥協することはできないのだ。・・・そんな風な態度にも映る。

(バグボ氏は帰ってくるのか?RFIウェブサイトより)


今回のバグボ氏公判をめぐる動静。そのインパクトは、政治、外交、社会、そして国際司法にも多くの波紋を投げかけている。そして多くのパンドラの箱が開こうとしている。

(おわり)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。