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コンゴ民主共和国で新大統領就任式〜「寄り切り」で与党連合の勝ち?!

2019-01-24 08:20:00 | アフリカ情勢
きょう24日、コンゴ民主共和国・首都キンシャサは、大混迷の中、新大統領選挙の就任式を迎える。一応、「コンゴ史上初、平和裡の中で民主的な政権交代」ということになるのだろうか。このフレーズには違和感しかない。

紆余曲折の末、先月12月30日に投票が行われたコンゴ民主共和国の大統領選挙。連日、各勢力による激しい応酬とサプライズが繰り返され、事態はジェットコースターのように推移した。結果として、独立選挙管理委員会(CENI)が発表し、憲法裁判所が妥当と判断した選挙結果に基づき、フェリックス・チセケディ新大統領が誕生する趨勢となった。

(フランス国際ラジオ放送(RFI)ウェブサイトより)


そういえば当地きょう23日、国際会議の場で旧知のコンゴ人マダムと隣り合わせの席となった。
ンボテ「ンボテ、マダム。年末は大荒れのコンゴへお帰りで?!」
コンゴ人マダム「あらンボテさん。そう、キンシャサに帰ったわ。もちろん投票のためよ。」
ンボテ「まさに!!いろいろあって、キンシャサも大変でしたね。」
マダム「あら、そんなことはないわ。もう落ちついてるわよ。」
ンボテ「明日は就任式、予告どおり行われるのですかね??」
マダム「ええ、もちろん。もう心配ないわ。」

すばらしいコンゴ・オプティミズムだ。

もうひとり、つい最近までコンゴに赴任していた、ある国際機関のアフリカ人女性所長ともご挨拶。
ンボテ「コンゴ、だいぶ荒れましたね。」
マダム「私が赴任してたのは中央カサイ州だったの。だからよけいに事態は心配されたわ。」
ンボテ「へえ、ぼくは前、西葛西に住んでましたよ(彼女無言/笑)。でも中央カサイ州、ミュニティ間の衝突に難民、はたまたアンゴラからの強制帰還。大変な時を過ごされたのでは??」
マダム「そうなのよ。選挙以前の問題が山積み。」
ンボテ「まあ、コンゴだから。」
マダム「そう、コンゴだから。」
こちらはコンゴ・ペシミズムに。



さて、コンゴの大統領選挙をめぐる一連の経緯、細かい経緯はさておき、ざっくりと振り返ってみよう。

10日未明、独立選挙管理委員会(CENI)は開票速報を発表。38.57%の得票により野党離脱組による候補、PDPSのフェリックス・チセケディ候補が当選する見込みだと発表した。野党側候補の勝利かと、ニュースは驚きをもって迎えられた。

選挙前の動きにさかのぼれば、チセケディ候補は野党候補一本化のための巨頭会談の掟を破り一転、独立候補となった。同時に野党合意を離脱し、同氏支援に回ったヴィタル・カメレ元国民議会議長と共闘会派(CACH)を形成した経緯がある。

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しかしその後、こともあろうか裏取引で、現政権・カビラ大統領派(FCC)と「与党連合」を形成していたのだった。漏洩文書によれば、大臣の数までも議論されていたという。

フェリックス・チセケディ。コンゴの政治史上、その名を残す、永遠の野党指導者エチエン・チセケディの実息。ちょうど一年前にエチエンは他界。偉大なる指導者の逝去は、支持層を超え、コンゴ国民に深く轟いた。あれから一年、息子フェリックスは、安易に与党連合に与みすることとなった。父は天国から、どう見つめているのだろうか。

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連合を組んだカメレ元国民議長も、2010年以降、アンチ・カビラではなかったのか。もはや仁義なき戦いである。


さて、選挙後の経緯に戻ろう。独立選挙管理委員会の暫定結果発表には、相次いで疑義が呈された。カトリック司教会は、「独自に入手、把握している選挙結果と異なる」と糾弾。与党統一候補のマルタン・ファユル候補は「自らが60%超を得票しトップ当選した」ことを主張。国際社会はCENI発表の選挙結果を疑わしいものと捉え、再開票と対話を求めた。

このような動きを受け17日、アフリカ連合(AU)はコンゴ問題に関する緊急首脳会談を招集。コンゴ司法当局に、最終結果を発表しないように勧告し、あわせて緊急に首脳レベルのミッションをキンシャサ急行させることで合意した。ちなみにAU議長国はルワンダ、ポール・カガメ大統領。コンゴのカビラ大統領と姻戚、大湖地方問題では共謀関係にあるともいわれてきた。

AUの勧告に対し、コンゴ政府は「内政干渉甚だしい。AUの指図を受ける筋合いはない。」と強く反発を示し、憲法裁判所は確定結果を発表。フェリックス・チセケディ候補の勝利を宣言した。

ひとたび憲法上の手続きがコンゴ政府によって最終化されると、他国はこれに反して対して介入を行うことは難しくなる。エジプト、ケニア、モザンビーク、南アフリカなどアフリカ連合の加盟国は、相次いでこれに対する支持と祝意を表明。また南部アフリカ経済共同体(SADC)も同調した。「平和裡の政権交代を評価」、「いっそうの国民統合に向け新大統領に期待」、「アフリカ民主主義の勝利」など、チセケディ大統領の誕生を歓迎する論調となった。そしてAU首脳会談の勧告とと加盟国政府の姿勢の間に、大きなねじれが生じることとなった。AUはキンシャサへの首脳ミッション派遣を取りやめた。

少し遅れてフランス、アメリカなど、西側諸国はチセケディ大統領誕生に「協働の用意がある」との姿勢を表明。欧州連合(EU)は、新政権に平和、ガバナンスへの注文をつけつつ、将来に向かって「国民的コンセンサス」の形成を求めた。チセケディ新大統領誕生は、総じて「デファクト」として進みつつある。


これに対して納得できないのは、自らの勝利を主張したマルタン・ファユル候補だ。同氏は、今回立候補が認められなかった2人の大物、ジャン・ピエール・ベンバ元副大統領と、モイーズ・カツンビ元カタンガ州知事の支援を受けている。いわば「正当な」野党統一候補だ。チセケディはむしろ裏切り者のはず。ファユル氏は、チセケディ陣営を、カビラ前大統領と共謀した「選挙上のクーデター」であると断じた。

旧宗主国ベルギーを筆頭に、国際社会も一時はファユル候補支援の構えを見せた。しかし西欧諸国の傲慢な介入、との批判を恐れてか、上述のとおり、憲法裁判所の判断以降はチセケディ新大統領を是認する姿勢に転化している。


カビラ大統領は、アフリカ誌'Jeune Afrique'(3027号)の取材に答え、憲法上の規定を圧してまで、権力の座にしがみつくつもりはない・・・・・・と自ら身を引く選択をした経緯を語っている。そして姻戚に当たる元内務大臣、エマニュエル・シャダリー・ラマザニ候補を通じて権力側の地位を確保しようとした。さらにそれに失敗すると、今度は「与しやすい」側の野党勢力と徒党する道を選んだ。このインタビューはコンゴ現代史において、非常の興味深い内容を含んでいる。追って詳しく記事にしてみたい。


何が真実で、何が正義か。国際社会は民主主義の擁護者か、それとも大国の傲慢か。統治能力に大きな問題を抱える国において、国家主権はどこまで正当化されるのか。そして既成事実が先行すれば、それが真実に転化するのが常なのか。事態がデファクトで進む中、空間識失調に陥った国際社会の臨席のもと、新政権はあと数時間後に発足する。時計の針は黙々と進んでいる。

(つづく)


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