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歴史から見るコンゴ民主共和国・大統領選挙2018の行方(4)〜ライバルを消せ

2018-09-26 07:30:00 | アフリカ情勢
12月23日に近づくコンゴ民主共和国の大統領選挙、混迷するコンゴの政局を国際社会が注目している。そこでよくわかるコンゴ選挙戦のポイント、ということで、このブログ『ぶら★アフ』では、同国の選挙史を遡ってレビューしている。

第一話、第二話では過去2回の選挙について振り返った。
第一話 2006年、初の民主的選挙
第二話 2011年、象牙ショックに揺れた選挙

そして第三話では、「幻の大統領選挙」、つまり今回まで延び延びになっている選挙、何が問題なのか、一つ目の論点をご紹介した。
第三話 2016年、幻の選挙と憲法問題

そして、もう一つ大きな論点がある。それは・・・もちろん政局。そう、カビラ陣営にとって、政権維持のためには、並み居るライバルたちを「消す」必要があるのだ。


2011年までの選挙戦において大きな政敵となったのは伝統的野党のエチエン・チセケディであった。しかし野党は候補一本化に失敗し、チセケディ候補の主張も一貫性を欠いた。老害を思わせる場面もあり、知識層から失笑を買う場面もあった。訴求性に乏しいアピールは、残念ながら当選につながるものとはならなかった。


今回の選挙において、カビラ陣営が特に恐れているのはおそらく三人だ。

(左からジョセフ・カビラ大統領、モイーズ・カツンビ、ジャン・ピエール・ベンバ、フェリックス・チセケディ。Congovox.comウェブサイトより。)


一人目は伝統的野党勢力UDPS候補のチセケディだ。カリスマ的永遠のリーダー、テチエンは上記のとおり、前回選挙で敗戦。しかもすでに齢80を超え、政界への再登場はすでに無理とみられていた。エチエンの後継は、息子のフェリックスが継ぐ。しかし彼は今、そこまでの人気も求心力もない。現政権にとっては、さほどの脅威とは見られていなかったであろう。

しかしそこに予期せぬことが起きた。選挙をめぐる政局の大きな混乱の中、2017年2月にエチエンがベルギーで逝去したのだ。エチエンの死は野党支持者のみならず、国民的なショックとして受け止められた。

・・・これは都合が悪い。弔い票を持っていかれる・・・。

政府はカリスマ指導者の遺体のキンシャサ搬送を頑なに拒んでいる。永遠の野党リーダーの凱旋帰国は、野党勢力の再結集、あるいは支持拡大に繋がる恐れがあるからだ。2018年9月現在、チセケディの遺体は今もブリュッセルで帰郷の時を待っている。


二人目の脅威は、モイズ・カツンビ元カタンガ州知事である。

カツンビはこのブログでも頻出の重要人物、これまでもかなり深く掘り下げた記事を重ねてきた。カタンガ州、コッパーベルトに位置する、コンゴで最もリッチな州。その州を率いた前州知事。知事というよりはビジネスマン。眠れる資源を成長につなげていく手腕、バッドガバナンスの払拭。世界に冠たるサッカーのアフリカクラブチーム、TPマゼンベのオーナー。現実的で、実務的な政策運営は、人々から高い人気を誇った。ベルギー人のノンフィクション映画監督テュエリー・ミッシェルは、’Katanga Business’で彼の姿を描いている。

カビラ大統領と同郷のカタンガ州出身。両者は当初信頼関係にあったとされる。しかしカツンビの手腕をカビラは警戒した。国の経済を支えるカタンガ州に、キンシャサ政権は開発資金をほとんど回さなかったと言われてきた。カツンビには武器を与えなかったのだ。

もう一つ。カビラ陣営にはカツンビ人気を分断する必要があった。その中で援用されたのが地方分権化法だった。それまで11州から構成されたコンゴ民主共和国。同法の適用により、26州へ再編された。カツンビのカタンガも4州に分断、同氏の支持地盤は切り裂かれた。

他方、カツンビはカビラに牽制をかけた。地方分権化法の適用を理由に地方選挙の繰り延べを繰り返す政権。カツンビは「自らの知事任期は憲法規定にもとづきすでに終わっている。自分はもはや州知事ではない。」そしてカビラに迫る。「民主国家は法の定めのもとで運営されるものだ。大統領にも三選立候補の資格はない。」

現政権がカツンビ排除に動くことは火を見るより明らかであった。カツンビがいつ逮捕されるか、政治的に無力化されるか。焦点はそこに移された。

(おわり)


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