色白で二重まぶたのつぶらな瞳、肩までの髪はさらりとしていて
クセがなく、いつも真ん中で分けていた。
白いタートルネックのセーターがよく似合う、清楚な感じの彼女。
言葉も態度も常に穏やかだった。
やがて、大恋愛の末一緒になった彼と幸せな家庭を築き、二女を
儲けた。
順風満帆に見えたその家庭が、崩壊した、と耳にしたのはかなり
早い時期だった。 次女を出産した、と聞いてから間もなくだった
ように思う。
何故?
当時、彼の病気が原因らしい、と噂が立った。 病気の彼を見放した
のだという。
「えェッ! それはないでしょう?」 どうしても信じられなかった。
あの頃、毎年1回開かれるOB会に彼女の姿はなく、連絡の電話も
拒んでいるのだと聞いた。 「彼に電話番号を知られたくない」 という
ことらしかった。
風の便りでその彼が亡くなったと聞き、いっとき友達らの間にまた
その話題が上ったりもした。
先日、街でバッタリその彼女に会った。 お互い懐かしさで会話が
弾んだ。 しかし・・・ 実は、一瞬 ウゥッ!・・・・・・
若かりし頃の面影を僅かに (失礼ながら) 留めてはいるものの
あまりの変わりようだもの。
今、嫁いだ娘さん一家と幸せに暮らしていると聞いて安心した。
「婿がやさしくしてくれるので」 と。
「わたしたち同じ頃に産休をとったんだったよねぇ」
当時産休、授乳時間をとる人が重なり、上司は服務調整に悩まれた
ことだと思う。 穏やかなお人柄のS課長さんも I係長さんも
すでに他界されてしまったけれど、思い出は尽きない。
話題はどんどんさかのぼって、二人は完全にあの頃の○○ちゃんと
○○ちゃん。
人生色々なことがあるけれど、それが宿命。 敷かれたレールの上を
ひたすら終着駅まで下って行くのみ。
もう一度あの頃に戻れるものならば、 一日だけ戻してもらえると
いうならば、 どの一日にしようか、 遠い昔の父母との日?
それとも, 幼い我が子とのあの語らいの日?
詮無い戯言である。