日本の建物の平均寿命は30年弱と言われています。
ところで「寿命」ってなんだと思います。
生き物であれば寿命は生死で判断できますが、モノの寿命ってどうなんでしょうか。
確かに建物も朽ち果てた姿を見れば「これは寿命だな」って思いますが、建物が30年で朽ち果てるとは思えませんし、見た事もありません。ついでに言えば、朽ち果てるはずがありません
。
実は寿命には二つの区別がありまして、モノが朽ち果てる経過は「耐久性」と表現します。つまり、時間
が経つにつれて次第に最初の性能が劣化する事
。
一方、日本の様な寿命の短い住宅は「耐用性」の低下が原因の一つと言えます。つまり、モノの性能は変わっていないのに、時代が変化する事で性能の基準が上がり、その性能が低い評価になってしまう事。例えば、耐震基準が時代ごとに厳しくなる事で最初の耐震基準が低くなってしまう事だったり、当時は最新の携帯電話
だったのに、便利な機能が次々に増えて、いつの間にか時代遅れの機種
になっている事です。
このギョーカイでは昨年より長期優良住宅が施行され、税制優遇
や補助金
が受けられる事で今やトレンド
になっています。
補助金に関しては7月15日現在で1961戸の申請があり、わずか3カ月で予算を使い切ってしまう程の勢いです。
この長期優良住宅も耐久性や耐用性を意識した法律になっています。耐震性や省エネ性の向上が目立ちますが、劣化対策や維持管理・更新の容易性を上げる事で性能の変化(耐用性)に対応できるようになっています。
へぇ、こんなに親切な法律だったんだと感心されそうですが、この法律にも踏み込めない領域
があります。
一つ目はデザイン。モノの見た目を具体的に規制する事はなかなか難しいですからね。でも、「見た目」は耐用性以上に時代変化が激しい
部分です。
どんなに耐久性と耐用性
を上げた所で、見た目
が時代遅れになってしまえば寿命は早く訪れる
かもしれません。たぶん、日本の建物の寿命はこの部分が一番大きいんじゃないでしょうか
。
悪く捉えると、税制上の優遇や補助金
を受ける為に長期優良住宅を利用しているだけで、建物そのものを資産価値のある建物として長期的に利用しようとは思っていないんじゃないかと思わせてしまう住宅(デザイン)もなくはない様な気もします。←ちょっと長い
。すいません
。
流行に流されない飽きのこないデザインを真剣に考えなければいけません。もしくは、時代に関係なく象徴になれるようなデザインか。
と言いながらも、私自身は形そのものに影響はさほどない様な気がしています。大事なのは材料。常日頃言っていますが、普遍的な材料を使っているかが大切だと思います。
もう一つは、今の法律も何時かは時代遅れになるという事。
だから、基準ぎりぎりの対応では本当の長期優良住宅とは言えないと思います。それは今の基準を踏まえた上で設計者がどこまで先を見据えるか。当然、スタンダードになっていない場合、コストに跳ね返ってしまう
でしょう。だから、コストコントロールしながら、どこまで大きな一歩
を踏めるのかが建物の寿命を延ばす方法の一つだと思います。
ですから当事務所では様々な施策に関係なく、耐震等級2、熱損失係数1.9W/(㎡・K)以下、隙間相当面積を1.8c㎡/㎡以下としてご提案しています。但し、これも当事務所での最低基準と思って下さい。それ以上の提案も行います。
デザインは今を見すぎない事、性能は先を見る事。
なんか哲学的な世界に入り込みそうなので、この辺で閉めます
。この話題でお酒
が飲める人は連絡下さい。付き合いますよ。
勿論、設計依頼の連絡でも構いませんが
。
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