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今日は何の日?

昔の今日は何があったのでしょうか?ちょっとのぞいてみましょう。

DDTの国内向け生産を中止(1969年12月10日)

1969-12-10 00:49:34 | 化学系
1969年12月10日

戦後の日本で,アメリカ軍がシラミなどの防除のため,白い粉末のDDT(Dichloro-Diphenyl-Trichloroethane)を撒いているシーンをTVなどで見た事のある人は多いのではないかと思います。
非常に効果の高い農薬として活用されてきたDDTは、1873年に合成されていた物質であるといわれています。ストラスブール大学の学生が博士論文の中に合成方法を書いていたのです。
その後1939年に、スイスのガイギー社のミュラーがDDTが殺虫作用がある事に気づいたのです。

戦中戦後などの劣悪環境下での公衆衛生面の維持には欠かせない薬剤の一つとして大量に使用されました。
また、古くからマラリアの流行域では、DDTの目覚ましい効力で蚊を撃滅させ、地球上からマラリアが姿を消すのではないかとまで考えられたのです。

DDTは、化学工場からの副産物の塩素を利用するため,非常に安価に大量生産が可能でした。さらにその強力な殺虫効果で,森林保護のため,不快昆虫撲滅のためと,使用開始から30年間で全世界で300万トン以上が散布されたと推察されています。

魔法の薬品のように思われていたDDTですが、一部の生理学者の間では1950年頃には生物濃縮や蓄積が行なわれている事に気づいていました。作家のレイチェル・カーソンは、それらの生理学者と連絡をとりあい、「サイレントスプリング」を出版しました。しかし、随分長い論争の末,最終的には1960年代後半から1970年にかけて公害防止のための法案の策定などのきっかけになり、DDTの大量散布も取りやめになりました。

日本では,サイレントスプリングが「沈黙の春」として和訳され出版されました。アメリカとはDDTの利用方法が随分違ったのですが,DDT=悪と単純化され,1969年には国内向けの製造と稲作への使用が禁止,1971年には全面的な販売の停止となりました。

日本を皮切りに,先進諸国では1980年代までに使用禁止となったDDTですが、発展途上国では現在でも活用されているのです。現在はDDTの毒性について再検討され,飛び抜けて強い毒性ではない事や脂肪組織に蓄積はされるものの、どのような悪影響があるのかという事などもはっきりと結論づけられていないのです。ただ,DDTを1960年代のように大量に使用し続けていたらもっと高い濃度で自然界に蓄積していった事はほぼ間違いのないことだったでしょう。