6月頃に米軍首脳が立案し実行しようとしていた「航行の自由作戦」に渋っていたオバマ大統領が、ハリー・ハリス米太平洋軍司令官に「南シナ海での作戦を承認する」と伝えたのは、9月24日の習近平主席との夕食会の直後だったという。 この様子を25付日本経済新聞(風見鶏)は、次のように前書きし、遅すぎるオバマ大統領の怒りを生々しく伝えている。
~・~ 世界の指導者は2つのタイプに分かれる。どんな相手とも「話せば分かる」と信じる人と、その逆だ。 前者の典型は、オバマ米大統領である。 彼に接したことがある政府高官らは「オバマ氏は軍を動かすのをいやがる」と語る。 なぜなら、たいていの問題は、話せば何とかなると思っているからだ。 そんな彼がついに怒りを爆発させ、対話に見切りをつけたという。 9月24日、ワシントンにやってきた習近平中国国家主席との夕食でのことだ。 ~・~
妖艶なエコノミスト・浜矩子は、オバマ大統領が就任して間もなく「オバマはどこまで不本意男化するのだろう」と危惧していたが全くそのとおりだ。 「習近平と話し合えば解決できる」というオバマの安易な思惑は、時が経つほど南シナ海を混沌とさせてしまった。
日本でも、安保法案に反対する映画監督・宮崎駿が7月13日、都内の記者会見で「軍事力で中国の膨張を止めることは不可能、なにか別の方法を考えるべき」と語った。 こういう考え方が対中外交を難しくさせるのだ。
中国「100年戦略」は、東シナ海でも似たような作戦を展開し尖閣奪取に動き、沖縄に手を出すのも、そう遠くない将来の話だ。
5大紙社説は28日と29日に「航行の自由作戦」支持を主張した。 日本及び日本政府の対応に言及したのは産経・日経・読売の3紙。 気になるのは朝日で、「そこは中国の領海」と思わせるような書き方だった。
■朝日:南シナ海 各国共通の利益を守れ
南シナ海は、あらゆる国の船に対して通航の妨げのない、開かれた海でなくてはならない。
それが、この海域をめぐる複雑な主権問題を考える際の出発点である。
領海内であっても、軍艦の通航が、いわゆる「無害通航」なら、認めるのが国際ルールだ。事態をエスカレートさせず、説明通りの目的に沿うものなら、米国の主張は支持できる。
■産経:航行の自由作戦 平和の海へ日米連携せよ
この作戦は国際法にもかなうものだ。何よりも中国の南シナ海支配を防ぐために欠かせない。
アジアの平和と秩序を守る意思を、米国が行動で示した意義は大きい。今後も人工島周辺での航行や飛行は随時、行うという。
安倍晋三首相は「国際法にのっとった行動であると理解している」と述べた。より明確に支持を表明すべきだろう。
中国は「主権と安全を脅かした」と反発している。 だが、領海とは認められないのに、他国の自由な航行を妨げようとしてきた対応こそ、国連海洋法条約に反している。 米軍への挑発や攻撃が許されないことは言うまでもない。 強く自制すべきは中国の方だ。
■日経:米軍作戦が迫る中国の国際ルール順守
中国は国際ルールを順守し、責任ある行動に出ることで緊張を和らげてもらいたい。
あえて中国の許可を得ずに軍艦を進入させることで、人工島が中国の領土であることを認めない姿勢を鮮明にするためだ。
中国政府は「必要に応じてあらゆる措置をとる」と反発しており、対立が激しくなっている。しかし、国際法に照らせば、米国側に道理があるのは明らかだ。
米軍の行動を問題視する法的な根拠が、中国にあるとは考えられない。
解決には圧力だけでなく、対話も欠かせない。11月上旬には、東南アジア諸国連合(ASEAN)の拡大防衛相会合が開かれ、日米中も出席する。日本はこの機会も利用し、米国やASEANと連携して中国に自制を求めてほしい。
■毎日:南シナ海と米国 法の支配へ関与続けよ
「開かれた海」と法の支配を実現する一歩と考えたい。
各国それぞれに言い分はあろうが、強大な軍事力を背景とした中国の強引さが目立つのは明らかだ。
そもそも中国は南シナ海をほぼ全面的に包む9本の破線(九段線)によって自国の権利を主張してきたが、法的根拠に乏しい。1992年に中国が制定した領海法なども国際社会で物議をかもしてきた。
軍用艦を投入した作戦行動を手放しでは歓迎できない。 だが、南シナ海問題は先月の米中首脳会談でも進展がなかった。 情勢悪化を座視せずに、法の支配と国際正義を掲げて米艦をあえて派遣したオバマ政権の意図は理解できる。
■読売:米艦南シナ海に 中国の軍事拠点化を許さない
中国が「領海」と主張する海域で公海と同様に巡視することで「航行の自由」を体現し、アピールする作戦だ。 国際社会の利益である海上交通路(シーレーン)を脅かす行為は容認しない姿勢を明確に示したことは評価できる。
菅官房長官は「開かれた、自由で平和な海を守るために国際社会が連携することは極めて大事だ」と語り、米国の艦艇派遣を支持した。フィリピンやオーストラリアも歓迎している。
日本は、米国や関係国と緊密に連携しつつ、南シナ海での中国の動きを警戒せねばならない。
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