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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(117) 復興会議提言への提言

2011年06月28日 | 浜矩子語録

政府の東日本大震災「復興構想会議」は25日「復興への提言」を決定、退陣意向を示している菅直人首相に、虚しい答申をした。内容は「増税」による「減災」である。

26日のNHK・日曜討論は復興構想会議から2人、政府から1人を呼んで提言を確認すると共に、妖艶なエコノミスト・浜矩子を招いて検証を行った。

<<出演者>>

復興構想会議議長:五百旗頭真(防衛大学校長)

復興構想会議委員:村井嘉浩(宮城県知事)

被災者生活支援チーム事務局長:平野達男(内閣府副大臣)

同志社大学大学院教授:浜矩子

 

以下、QはNHK解説委員:島田敏男、Aは浜矩子の語録である。

●復興会議提言、復興への道筋は

Q~・~ 世界からの見られ方という視点で、復興構想会議の提言は如何?

A~・~ ご苦労と知恵のいっぱい詰まった提言だったと思いますけれども、グローバルな視点からというふうに考えてみた時に敢えて申し上げれば、言葉になっていない(のではない)かなという印象を受けました。

さきほども菅(首相)さんの「燃え尽きる覚悟」という言葉がありました。

五百旗頭さんからは、「東北の魂の叫び」という言葉もございました。

こういうものを受け止めた、復興への燃える思い、そういうものが語られているという雰囲気が伝わって来て欲しかったと思うのです。

やはりこの事態に相応しい、活きた言葉を使って欲しかった、そしてグローバルな見地も欲しかったですね。

世界の中でとても大きな位置付けを占めている日本が、どういうふうにこの問題を受け止めて、どういう形で物事を進めて行こうとしているのか、それを示すことは世界に対する日本の社会的責任だと思います。

 

Q~・~ 先ほど、言葉のパワーについて語られましたが、構想会議提言の7原則に掲げられている基本的な考え方についてはどうお考えか?

A~・~ 島田さんが「一周遅れ」という事を仰いましたが、私は東北の問題だけでなくて日本全体が、或いは数周遅れだったのではないか?

グローバル時代をどう生きて行くのか、どういう経済社会の構造が今の日本のように成熟度の高い債権大国に、よくマッチしたあり方なのか?

こういう考えとかけ離れた旧態依然の状況で、あまりにも一極集中・巨大化の中で震災に遭遇したという問題がもたらした事がたくさんある。

震災がなくてもやっておくべき事を、やっていなかったからこうなった、という事がたくさん出てきたと思います。

その一周遅れ度を日本全体としてキャッチアップするというのが、実は根底的テーマであることを、我々は思い知らされているのではないでしょうか。

 

●防災から減災へ

Q~・~ (提言の言う)リスク、ダメージをコントロールするというのは新しい考え方ではないか?

A~・~ 減災というのは非常に現実的な考え方です。現実的になることは良いことです。

が、この際ぜひ言いたいことは、再び「想定外」という言葉を使わないで減災に取り組んで頂きたい。

下手をすると「想定外」という言葉がローマ字で世界にそのまま流行ってしまいそうな雰囲気になりそうで、非常にまずいことです。

地域で取り組むことになるほど「Souteigai」という言葉はどんどん少なくなっていくことが期待されます。

そこに焦点を当てて減災という命題に取り組んで頂きたいと思います。

 

●どうする、経済の復興

Q~・~ 経済の活力は復興に欠かせないが、東北6県の鉱工業生産指数改善に必要なものは?

A~・~ (震災に関わらず)日本全体としても問題があるわけですが、国と自治体との関係の中でどう立ち直って行くか?

基本姿勢として、「権限いじょう」という言葉がありますが、これは通常は「権限いじょう」の「い」は移行の「移」、権限を移し渡す主体は国のほうであると理解されていますが、この発想を逆転しないと、この落ち込みから急速に回復することはなかなか難しいのではないかと思います。

「権限いじょう」の「い」は移すの「移」ではなくて委託の「委」であって、その委託・委任をする主体は国ではなくて地方・自治体であり、全ての権限は本質的に、初めにおいては地方・地域の方にある、そして地域で出来にくい事を「だったら国に委任する」という、本格的、言葉の本来の意味での「権限委譲」といいう認識を双方が共有することがないとなかなか、しっかりと目処が立って来ないのではないかと思います。

 

Q~・~ 「秋口には鉱工業生産指数は回復すると思われるが、海外移転を考える企業に対するインセンティブについては危機感を持っている」との村井さんの発言、世界経済の動きの中で回復を実現するため、どういう努力が必要か?

A~・~ (日本は)グローバル・サプライチェーンの中に大きな位置付けを占めているわけですから、一刻も早く元に戻すことはグローバルな社会的責任だと思います。

しかし、そこに大いに注力することは必要ですが、以前と全く同じ状態に戻すという事になれば、以前と同じ事が起こったときにまた同じ状態になってしまう。

そこを考え直して、一極集中的である、均一化であるということでない、多様で小振りで分散でという、従来型の選択と集中で「このオンリーワンでやって行くんだ」というのではない多機能型、多彩な地域的展開を考える必要があると思います。

 

●復興「特区」、民間の参入は

Q~・~ 漁業特区の考え方は、産業構造を変える事にもつながるのでは?

A~・~ これについて、大急ぎで言いたいことが2点ありまして、

1つは、特区という言葉が気に食わない。特区とか先ほどパネルに出ていた規制緩和とか手続きの簡素化とかいう通り一編な既存の言葉でこのテーマを語ってしまうと、先ほど申し上げたように言葉が死んでゆく、中身が死んでゆく。

もう1つは、先ほど議論になっておりました、民間が参入してくる、大資本が入って来ると人々が潰れてしまうという考え方、ここを乗り越えて行かなければいけない。

大きなものと小さいもの、強いものと弱いものがうまく共存・共栄して行ける形をつくって行く。

いわば狼と子羊が共に生きる、楽園の姿を目指す発想がなければ、特区という言葉の中に埋没してしまうのではないでしょうか。

 

 ●どうする、復興財源

Q~・~ 復興には巨額のお金が必要、やはり増税という手法は何かの形で使わなければなりません。

A~・~ その前に、言っても詮無いことですが、こういうふうな事になるということがあるというのですから日常的には普通、「財政は均衡或いは黒字を旨とすることが如何に重要か」という事がはっきりと見えてきました。肝に銘じなければなりません。

そのうえで、建設国債を発行するのが筋ですが、これには償還財源が必要、なんらかの増税は必要な事だと思います。

ちなみに東西ドイツの統一の時に連帯税というものをつくりましたね、そのような発想になるのでしょう。

ということは、色んなものから(税金を)取っていくのは当然ですが、ドイツの連帯税も一度やるとなかなかやめられず、臨時が恒久化しているという問題がありますが、それに対する対応を忘れてはなりません。

 

●原発事故被災地の復興は

Q~・~ 原発事故に対して、提言は「国の責任を明確にしろ」と言っている。

A~・~ そのとおりです。

原発問題の克服なくしてまともに復興は実現しません。

過去に遡って日本のエネルギー政策の問題があったのか、なぜここに古いものも含めて原発が集中しているのか、全部洗い出して、それについて徹底的反省を日本の政治が、今の政府、前の政府問わず対応する、「それなくして復興は、話にはならないでしょ?」と、復興会議からはもっと更に強く言われて然るべきところです。

 


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