16日販売の日刊ゲンダイは、妖艶なエコノミスト・浜矩子の言葉として次のように書いた。
~・~・~ 同志社大学教授の浜矩子氏(国際経済学者)が言う。
「多くの国民は、菅政権に歯がゆい思いをしています。
自分達の手で実現した歴史的な政権交代は大切にしたい。
それだけに、政権交代の大義を踏みにじっている菅内閣に苛立ち、腹立たしさを感じています。
ただ、菅政権の否定は政権交代の否定につながりかねないから悩ましい。
国会よりもわれわれの内臓の方がねじれてしまいそうです」 ~・~・~
ところで、浜矩子には一昨年の政権交代に対するホットな思い入れがあった。
09年2月22日付毎日新聞“時代の風”欄に「さらば 朦朧政治――落語が示す責任の所在」を寄せた。
『ちなみに、落語家にとって一番いやなのは、語り終わって座布団から腰を上げ、退場しようとした瞬間に、「待ってましたあ」と掛け声をかけられることだそうである。今、我々は政治職人たちにそのいやな掛け声をかけようと待ち構えている』
その政治職人とは、当時の自公政権であり、「待ってましたあ」と叫ぶのは政権交代を望む国民であるが、浜矩子自身でもあったと感じられる。
また、浜矩子は08年11月2日のフジTV新報道2001に出演し、国家の行方の夢と希望ついて、こう述べた。
『グローバル時代は、最もローカルで、最も弱いものが、最も傷つく時代です。(政治は)そこにも夢が花開いてゆくような形に持ってゆかなければなりません』
この言葉は、新政権担当予定党の民主党に対する浜矩子の期待であった。
そして国民は09年6月頃から、総選挙での政権交代とバラ色の日本を夢見始め、いよいよ運命の8月30日が近づいて来る。
しかし、総選挙に向けた民主党のマニフェストに疑念を抱いたのであろう浜矩子は、警鐘を鳴らした。8月15日付の毎日新聞“時代の風”に「ドン・キホーテのマニフェスト」と題して次のように書いた。
『老人たちは夢を見て、若者たちはビジョンを抱く。旧約聖書「ヨエル記」の一節だ。
あえて「老人たちを」を旧政党、「若者たち」を新政党に見立ててみよう。すると2009年夏の日本はどんなイメージになるのだろう。
延々と政権を独り占めにしてきた旧政党は、もはや、夢を見る力さえ失っている。情眠をむさぼる烏合の衆だ。
一方で、実をいえば、もはやあまり若くも新しくもないチャレンジャーたちは、どうだろう。彼らはビジョンを抱いているか。政権が目の前にちらつけばちらつくほど、それは失われていくようにみえる。「現実路線」の名の下に、新しいビジョンを掲げて突き進む気概と決意を封印しようとしている風情だ。
夢とビジョンを併せ持つ人はいずこに? その人の名は? 答えは簡単だ。
その人の名は、ラ・マンチャの騎士、ドン・キホーテである。
ドン・キホーテは老人だ。
だが、彼の夢は大きく、心は若きビジョンに満ちている。
彼の夢とビジョンを結びつける要には、強気をくじいて、弱気を救う騎士道精神がある。耐え難きに耐え、正し難きを正し、天命とあらば、地獄に踏み込むを辞さず、これぞ、我が定めなり。
こうしたドン・キホーテの心意気を歌にしたのが、ミュージカル「ラ・マンチャの男」だ。これぞ、ドン・キホーテのマニフェストに他ならない。
そこに信条と心情の吐露がないものを、マニフェストとはいわない』
果たして、政権交代は成った。
だが、友愛というまやかしの言葉でデビューした鳩山由紀夫首相から『信条と心情の吐露』はなく、10年6月に菅直人首相に代わった。
今、鳩山氏は「方便」で攻め立てられ、菅氏は首の皮一枚である。
民主党に、ドン・キホーテはいなかった。
今や、連立する国民新党の亀井静香代表さえ「民主党は"連合赤軍"と同じ」と酷評する始末である。
政権交代直後の浜矩子は毎週のように民主党に請われ、NHK・日曜討論では藤井裕久氏や野田佳彦氏と与党席で、TBS・時事放談でも藤井氏と共演し、新政権の財政政策の守護神役を演じさせられた。
けれども、民主党に対する浜矩子の思い入れの熱は一年で、 very hot から coldに、そして今やfrozen に下がってきた。
10年2月22日、ヒルトン・大阪での講演会では、
『日本の政策の在り方は、英語でよく言われるように、頭を切り取られた鶏たちが右往左往方向感なく走り回っている「running around like a headless chickens」というのがいまの政府の状況であるように見えて仕方がありません。民主党政権になって、それが少し変わるのを期待はしていましたし、まだその希望を完全に捨てているわけではないのですが、非常に情けない状態になっているのが実態かな、というふうに感じます』
と、まだ期待感を述べていたが、10年10月17日のNHK・日曜討論では、海江田万里経財相のヘルプを請われて与党席に着座したにも関わらず、菅政権の経済政策を問われた浜矩子は、
『自分たちの姿勢に従ったメリハリとか、姿を示してくれてこそ、今までとは違う政府であり政権であると思うのですが、全然そういうところの見えない、いわんや、野党の御用聞きをして「皆さんが言ったこと、全部盛り込みました」とか言って「本当かどうか精査するぞ」と言われてしまうような格好では何のため存在している政権なのか分からない』
と完全に冷め、今やfrozen
『国会よりもわれわれの内臓の方がねじれてしまいそうです』
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます