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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(177) Jolly Old Nation

2012年12月18日 | 浜矩子語録

総選挙の開票が進行する17日未明、NHKはBS1で、衆院選2012「討論 日本の選択 世界はこう見る」を敢行した。 招かれた論客は6名。

英国:ビル・エモット(ジャーナリスト)、米国:ケント・カルダー(米、ジョンズ・ホプキンス大学教授)、中国:呉建民(上海国際問題研究センター主席)、日本:田中均(日本総研戦略研究所理事長、元アジア太平洋局長など)、日本:浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科長)、日本:辻野晃太郎(ネット関連企業経営、元グーグル日本法人社長)、NHK:島田敏男(解説委員)、キャスター:傍田賢治、鎌倉千秋(NHKアナウン-)

以下、番組の浜矩子中心語録である。 但し、番組冒頭と終了間際は記録できなかった。

●日本経済 何が課題か、再生の処方箋は

(傍田)今回、安倍さんは「成長なくして財政再建なし」という立場、各党も高い成長を競い合うような目標の提示をしてきましたが、そういった方向性をどのようにお考えか?

(浜)今の日本に必要なのは成長戦略ではなく成熟戦略です。 ここまで高い成長を遂げた経済なのに、なお鞭打って「もういっぺん突っ走れ!」という、年寄りの冷や水的なことを競い合うことは、実に鏡の中の自分が見えていないということで、それが日本の経済社会で非常に問題だと思います。 ここにお並びの男性方のように、こんなに素敵な大人になっているのに、そこ(鏡の中)に若かりし頃の自分をどうしても見たいと、100㎞マラソンでも走るかというような自分をみたい、というような感覚が付きまとう限り、日本の経済社会を閉塞感の無い、人々が生き生きとしているものに持って行く事はできません。 そこは、政策と政治が完全にピントを外しているというように思いますね。

●TPP、日本はどうするのか

(浜)TPPには大反対なのですけれども、その反対の理由は少なくとも多くの日本で反対されている方々とは正反対なのでややこしいところです。

それこそ第三の開国に反対してもいいのか、もう一段の貿易自由化を受け入れていいのかという形で賛否が議論されていますけれども、それは全くピントが外れています。 より一段の貿易自由化をもたらしという話ではなくて、この手の自由化というのは確実に貿易を不自由化してしまうことになるわけでございまして、これはシンプルな話ですが、特定の相手同士だけで関係を強化していこうという構想です。

TPPというのは一つの自由貿易協定ですが、この言い方が間違いだと思っております。 自由貿易協定を正しく表すネーミングを使うとすれば、すなわち地域限定排他貿易であると思います。 特定の相手と特定のエリアを、いわば囲い込んで、その中だけで貿易関係を強化すれば、その他の地域の人々にとって貿易は明らかに不自由化となるわけですし、中に入っている諸国もその他の国々との貿易があっても閉ざされてしまう、途絶えてしまうことに繋がる可能性があるわけです。 グローバル時代は、相手によって態度を変えず無差別に貿易を自由化して行くことによって恩恵を施し合う、いわゆる互恵という原則のもとに戦後の通商が形成されています。

なぜそうかと言えば、それ以前互恵にならなかった故に、1930年代の世界の国々が、自分の手で切り刻んでいくブロック化の方向に向かったわけです。 それと同じ間違いを犯す、今度は地球経済を切り刻んで行くという方向に向かうことは愚の骨頂です。 そういう観点から私は、大いに警戒すべき事だと考えています。

●エネルギー政策

(傍田)日本のエネルギー政策の進むべき道

(浜)エネルギー政策についても古色蒼然たるものをずっと引っ張ってきまして。 自民党時代に作られたものをそのまま踏襲してきた結果、原発問題なども出てきました。 ということですので、今までイズムで来ている感が強いわけですが、今までと違うエネルギーを開発して行くタイミングだと思いますし、原発については、ゼロという状態の中でどうするか。 成熟経済にとって原発に大きく依存して行くことが必要なのかどうかを真摯に見直すべきでございましょう。 

番組中断のニュースで、野田佳彦総理が民主党代表辞任の意向を示す記者会見をした。 

●日本の選択、世界はこう見る

(鎌倉)2011年の日本が世界に占めるGDP(購買力平価)は7%だったが、OECDの長期予測では、2030年4%、2060年3%と、じり貧になるとのことです。 また、最近発行された英国のエコノミスト社の予測誌“2050年の世界”は「世界の中で日本は急速に存在感を失う」と予測しています。

(傍田)浜さんの成熟戦略について、エモットさんからエールが贈られましたが、負担増が避けられない中で、それに耐えられる社会にするにはどういう方向を目指すべきか?

(浜)老楽国家を目指すべきだと思います。 英語に訳し難いですが、jolly old nation とでもいうべきでしょうか? そういう心意気、大人であること、大人の知恵を持っている、そういうことでグローバルに貢献できる成熟社会に進んで行くことができると思います。 GDPの比率が小さくなるのは、他が大きくなれば当たり前の話ですし、グローバル時代を皆で上手に抱きとめていくために知恵を出して行くことのできる賢き老楽国家です。 そのベースは十二分に形成されていると思います。

●日本の政治に何が必要か

(傍田)皆さま、日本の政治に何が必要か、一言で

(ビル・エモット) economy 経済を解決すれば日本は大丈夫!

(呉建民)堅持和平発展 平和的発展が鍵

(島田敏男)政権交代の習慣化 政治家も有権者も経験が足りません

(ケント・カルダー)political stability、policy reform、energy supply、の三点です。


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