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黛信彦の時事ブログ

5大紙社説:政府原発政策は「軽率な意欲」

2012年09月22日 | 5大紙社説

以下は、21日付読売新聞:「政 まつりごと」欄の全文の記録である。

米海兵隊が戦争における行動理念を隊員向けに解説した「War fighting」(戦争遂行)という小冊子に、「軽率な意欲」を戒める一文がある。

「リスクを許容するということは、ありそうもない一つの出来事に成功の全可能性を賭けるという軽率な意欲と同等ではない」(芙蓉書房出版「アメリカ海兵隊のドクトリン」)

米海兵隊普天間飛行場移設問題を取材していた鳩山政権当時、この一文に触れ、野党体質の抜けない民主党政権が失敗する理由を言い当てているようで、妙に納得した記憶がある。

同飛行場の県外移設を唱え、沖縄や米国との信頼関係を損なった事例は、まさに「軽率な意欲」の典型だろう。

野田政権ではこうした失敗は目立たなかったが、最近まとめられた2030年代に「原発ゼロ」を目指すという政府・民主党の方針には、「軽率な意欲」に終わるのではないかという疑念を抱かざるを得ない。 原発を廃止する分のエネルギーを、再生可能エネルギーなどで確保できるかどうかの検証を先送りしたまま、原発立地自治体や米国との信頼関係、経済や雇用を危険にさらしているからだ。

前掲の海兵隊本では、若いリーダーの大胆さに伴う軽率な行動は、学習の一部であり、寛大に扱うべきだともしているが、政権交代から3年を経た民主党による、国益をかけた新たな“学習”を寛大に見守る余裕は、今日本にはない。 (小川聡) 

政府は、討論型世論調査の結果から14日に「革新的エネルギー・環境戦略」を掲げ「2030年代に原子力発電所の稼働をゼロにする」という目標を発表した。 しかし、19日の閣議では決定を見送り「不断の検証と見直しを行いながら遂行する」という方針だけを決めた。 選挙目当てとも思える耳に優しい「原発ゼロ」戦略を、予想された反対意見に押しつぶされて閣議決定できなかった野田内閣の呆れた迷走について、20・21日付の5大紙社説は、原発ゼロ賛成紙も反対紙もこぞって「がっかりした」という意味合いで論評した。

小欄は、産経・日経・読売と同じく、原発ゼロを掲げる愚策の撤回と、原発を含めたエネルギー政策の策定を求める。

国民感情としては「原発ゼロ」を望むし、ガソリンも安く、高速道路は無料で、普天間に限らず軍事基地は欲しくない。 しかしそれで、国家が成り立つのか? このような約束を反故にした民主党とその歴代政権は国民をだまし続けたわけで、「軽率な意欲」という善意の見方で許すことはできない。 百歩譲って「愚か者の意欲」であり、実態は犯罪行為だ。

以下、5大紙社説の要点である。

社説タイトル

●朝日:脱原発政策―うやむやにするのか

●産経:原発ゼロ政策 首相は破綻認めて出直せ

●日経:思慮の浅さが招いた「原発ゼロ」目標の迷走

●毎日:社説:原発ゼロ政策 政権の覚悟がみえない

●読売:原発ゼロ方針 「戦略」の練り直しが不可欠だ

野田内閣の「軽率な意欲」

●朝日:まことに情けない。

●産経:目を覆うばかりの迷走。

●日経:あまりにおそまつな顛末(てんまつ)だ。

●毎日:腰砕けとも思える修正

●読売:こんな決着

原発依存に関する各紙の主張

●朝日:原発のリスクがゼロにならない以上、再稼働は最小限に抑えるべきだ。

●産経:政府は直ちに原発ゼロを撤回し、原発利用を含めた実効性あるエネルギー政策の策定に踏み出さなければならない。

●日経:私たちは「原発ゼロ」を掲げるのは賢明ではないと繰り返し主張してきた。

●毎日:「原発ゼロ」への覚悟を改めて示すよう求めたい。

●読売:「原発ゼロ」を明確に撤回し、現実的なエネルギー戦略を練り直すべきである。


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