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ACIPの高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの推奨(情報更新4)

2015-09-05 | Vaccine トピックス

2015年9月4日のMMWRで、正式に6月25日にACIPが提案したPCV13とPPSV23の接種間隔の変更内容が推奨された。
Intervals Between PCV13 and PPSV23 Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
September 4, 2015 / 64(34);944-947

これまでの推奨:
ACIPはPCV13とPPSV23の両ワクチンを全ての65歳以上の高齢者に接種することを推奨する。
最初にPCV13を接種して、6-12月後にPPSV23を接種する。
PPSV23を既に接種している65歳以上の高齢者にも1年以上の間隔をあけてPCV13を接種することを推奨する。
65歳以上の高齢者を含めた、2歳以上の免疫不全者、機能的・解剖学的無脾症、人口内耳、脳脊髄液漏出などのPCV13とPPSV23の両方を接種する医学的適応がある者は、PCV13接種後、8週間以上の間隔でPPSV23を接種すべきである。 

今回の修正点:
65歳以上の健康な高齢者でPCV13を接種してからPPSV23を接種する間隔は少なくとも1年以上とする(これまでは6-12月後)。
PCV13とPPSV23は同時接種するべきではない。
もし誤ってPPSV23を1年未満の接種間隔で接種してしまった場合でも、接種をし直す必要はない。 

今回の修正の理由:
先にPPSV23を接種している場合の接種間隔に合わせて、健康な高齢者に対するPCV13とPPSV23の接種間隔の推奨を単純化するため。

 

2015年6月月25日にACIPがPCV13とPPSV23の接種間隔を6-12月から少なくとも1年以上の間隔で接種することを推奨する修正を行った。
(ACIP agenda

Recommended Adult Immunization Schedule, by Vaccine and Age Group United States, 2015
 

 

 

2014年9月19日に、65歳以上の高齢者における肺炎球菌ワクチンの推奨を変更
Use of 13-Valent Pneumococcal Conjugate Vaccine and 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine Among Adults Aged ≥65 Years: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)September 19, 2014 / 63(37);822-825

推奨内容:
PCV13とPPSV23の両ワクチンを65歳以上の全ての高齢者に接種することを推奨。
PCV13接種の推奨は2018年に再評価を行い必要に応じて改定する。
また19歳以上の免疫不全者、無脾症、 機能性無脾症、脳脊髄液漏、人口内耳の基礎疾患がある者へのPCV13接種の推奨についてはこれまで通り

PCV13及びPPSV23の接種順序と接種間隔

 

2014年8月13日にACIPの追加会議があり、65歳以上の全ての高齢者に対してPCV13の接種を推奨することと決議された

  • 65歳以上で過去に肺炎球菌ワクチンを接種していないか接種歴が分からない者はPCV13を最初に接種して、その後PPSV23を接種すべき
  • 65歳以上で過去にPCV13を接種していない者で1回以上のPPSV23を接種歴がある場合には1回のPCV13を接種すべき
  • 65歳でのPCV13の推奨は2018年に再度評価を行い必要に応じて修正する
CAPITAの結果では、65歳以上の高齢者において、PCV13に含有される血性型の侵襲性肺炎球菌感染症を75%、菌血症を伴わない肺炎を45%予防可能とした(前回のACIPで費用対効果評価の際にはPPSVではそれぞれ74%と0%と計算)。
 
また、PCV13及びPPSV23の65歳以上における予防接種費用をCDC price listからそれぞれ85米ドル、44.5米ドルと計算(実際にはCMS<The Centers for Medicare & Medicaid Services> priceで、ぞれぞれ78米ドル、154米ドル)
 
PCV13及びPPSV23の免疫減衰による予防効果の消失については、65歳で接種後PCVは100歳まで50%が免疫を保持と過程、PPSV23は70歳までで50%、75歳までで70%、80歳までで100%が予防効果がなくなると仮定。
 
2013年における65歳以上の高齢者での疾病負担は、ワクチンに含有される血性型の侵襲性肺炎球菌感染症は2600例、入院を伴う市中肺炎は5万例以上とした。
 
短期的に米国では、65歳以上の高齢者において、PCV13に含有される血清型の侵襲性肺炎球菌感染症は20-25%、市中肺炎は10%未満とした。
 
結果として得られるCost/QALYは62,065米ドルと推計
 
6月の検討の際に指摘を受けて費用対効果を再度評価
・65歳で接種したPCVの予防効果が70歳までは減衰がなく、その後85歳までに100%減衰したとするとCost/QALYは65,681米ドルに変化
 
・PPSVの菌血症を伴わない肺炎の予防効果を45%とすると、Cost/QALYは309,211米ドルに変化
 
・ワクチン接種費用をCDC priceからCMS priceに変更すると、Cost/QALYは110,284米ドルに変化
 
接種間隔に関するWorking Groupの推奨はPCV13接種後6-12ヶ月、PPSV23を先に接種している場合は1年以上
 
現在の保険システムでは65歳以上の肺炎球菌ワクチンをPCV13もしくはPPSV23のどちらか一方のみを接種できる規定となっており、2015年から両製剤を接種できるように規定の改正手続きが行われる。
 
2014年8月23日現在、CDCによるMMWRでの正式な推奨は行われていない。
 
 
 
 
 
 

 

2013年7月の時点で英国におけるJCVI (Joint Committee on Vaccination and Immunisation)での検討においては、小児のPCV13定期接種により間接的に13価の血清型については予防効果が見られていること、高齢者におけるPCV13の予防効果のエビデンスが欠如していること、費用対効果が明らかではないことから、ハイリスク者を含めて高齢者にPCV13を接種することは推奨されていない。


Reference:
JCVI statement on the wider use of pneumococcal conjugate vaccines in the UK July 2013 

 

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