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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

世界で最も有名な日本人 葛飾北斎の「北斎vs北斎」を観に小布施へ。圧巻の展覧会でした(妻女山里山通信)

2019-12-22 | 展覧会・イベント・コンサート

 週末は、信州小布施の北斎館で1月19日(日)まで開催中の「北斎vs北斎」富嶽三十六景と富嶽百景を観に行きました。人気の展覧会なので入場者が多いと読んで、開館すぐに着くように家を出ました。9時20分に入館。世界で一番有名な日本人、葛飾北斎の展覧会を地元で観られる幸せ。2005年に東京国立博物館で開催された北斎展には家族で行きましたが、とんでもない混雑と素晴らしい展示でした。日本国内はもとより、大英博物館、ベルギー王立美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館ほか多数の欧米の美術館から出品という途方も無いものでした。

 展覧会の看板。これですら見ごたえがあります。1998年に出版されたアメリカのフォト・ジャーナル紙『LIFE』が選んだ『過去1000年の間で最も重要な人物』調査でベスト100に選ばれた、たったひとりの日本人。それが葛飾北斎です。
信州小布施 北斎館(画狂人葛飾北斎の肉筆画美術館)ホームページ

(左)エントランス。画狂人北斎。もうここからワクワクします。昔、小さかった息子達と訪れたときとは内装も展示スタイルも一新されています。(右)さてさてどんな展示になっているのでしょう。彼の作品の魅力は、その西洋の芸術家も魅了した構図や色彩ですが、江戸時代の庶民を生き生きと描いた点も惹きつけられるのです。

(左)クルクル回すと動いて見え北斎漫画と北斎の絵のスタンプ。惜しむらくは、スタンプする紙が用意されていない。これは残念です。(右)北斎の作品をモチーフにした旗と北斎の画号の変遷。

(左)30種以上の異称を持っていた葛飾北斎。(右)宗理型美人の誕生。後で見たビデオでは、北斎と娘の描いた女性に対する描写や想いの違い。非常に興味深いものがありました。

(左)挿絵1000図以上。イラストレーターのパイオニアに。(右)シーボルトとの関係。「北斎漫画」で世界の北斎に。日本が世界のアニメ大国となる萌芽。そのさらに昔に鳥獣戯画。

(左)ドビュッシー、カミーユ・クローデル、マネ、モネ、ドガ、ゴッホ、セザンヌ、ロートレックに多大な影響を与えた。彼の大胆な構図は、世界の芸術家にとって驚愕のものでした。(右)80歳頃から肉筆画に傾注。90歳で永眠。
 翁死に臨み、大息し天我をして十年の命を長ふせしめバといひ、暫くして更に謂て曰く、天我をして五年の命を保たしめバ、真正の画工となるを得べしと、言吃りて死す。
 辞世の句は、「悲と魂で ゆくきさんじや 夏の原」(人魂になって夏の野原にでも気晴らしに出かけようか)というもの。

 作品は撮影禁止ですが、フォトブースがあって記念撮影ができます。版画はもちろんですが、特筆すべきは肉筆画です。北斎が描いた生の線と彩色が観られます。凄いです。秦の始皇帝の命で不老長寿の薬を探して村人3000人と来訪し、裏切って帰らなかった大和王権の祖ともいわれる徐福の絵もあります。

 赤富士。原作はこんな大きくないですが。麓の赤い線は流れ出した溶岩でしょうか。晩年に善光寺地震にも遭っているはずです。次に富士山大噴火が起きたら東京は壊滅するかもしれません。

 超有名な「神奈川沖浪裏」。これは複写ですが、展示では本刷りと制作過程が観られます。この波の描写は、天才と呼ばれた宮彫氏、諏訪立川流の和四郎富昌にも影響を与えました。諏訪大社秋宮など信州には各地に彼の見事な木彫が残っています。右上のブログ内検索で記事を探してください。北斎の影響力の凄さが分かります。
 葛飾北斎は生涯に2度結婚しています。それぞれの妻との間に一男二女を設けていて二男四女がいました。北斎が娘のお栄(画号:応為)とともに小布施に来たのは80歳。理由は幕府の浮世絵に対する締め付けが厳しくなったから。実は応為は、北斎を支えるために春画を描いていたといわれています。私はその春画を集めた本を持っていますが、これは江戸時代のAVだったのでしょうね。人の営みや欲望は不変なのでしょう。むしろ、化学物質や放射能で性欲が激変した現代ほど危機的な時代もないかもしれません。

(左)2時間半も滞在しました。小布施の二基の屋台も必見。ビデオの「北斎ミステリー」も観ました。娘の葛飾応為の話が非常に面白かった。北斎作といわれている作品に応為の影が。必見です。映像ルームのオランダの話も必見です。生き生きとした江戸時代の日本人が描かれています。左に北斎館。(右)冬の木漏れ日の小路を歩きます。表通りは外国人観光客でいっぱいですが、小路は静かです。

(左)小布施堂の壁面の椅子。(右)土産物屋。栗、林檎、りんごパイ、シードルやワインなどなど。長野オリンピックの頃でしょうか、マーガレット王女が小布施に来訪した時に、ホテルオークラに勤めていた義父が食事のサーブを取り仕切った話を聞きました。小布施の栗はおすすめです。

 栗菓子や栗おこわなどは近所の支店でも食べられるので、昼は須坂の龍音(るおん)で、煮干し出汁の味噌ラーメン600円。美味でした。

 今回の土産。「北斎館肉筆画大図鑑」とTシャツと北斎研究所の本。パンフレットなどなど。「北斎館肉筆画大図鑑」は、秀逸です。大満足の一日でした。さて今夜は早く寝て、深夜に行われるクラブワールドカップ決勝、リバプールvsフラメンゴを観ます。どちらが勝っても初優勝。結果は、リバプール1-0フラメンゴで、リバプールが世界一。なんとこのウルトラスーパーなチームに、日本代表の南野が加入するのです。期待しかありません。
葛飾北斎(Wikipedia)

 拙書でも、雁田山のページで、岩松院と有名な鳳凰の天井絵を許可を得て載せています。今回買い求めた研究紀要には、その制作過程や製作者についての論文が載っています。北斎は高齢だったので、雁田山には登らなかったと思いますが、翼を広げた雁の様なこの山を毎日見ていたのでしょう。そう遠い昔の話ではありません。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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コメント (2)
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