恋するという事。

2010-09-05 22:02:09 | 飛行機

さて、と。

「えっ、なになに牛が恋?珍しい事もあるもんだね何かイイ事あったの?イジらせなよ」的な好奇心で集まった友人の皆さん、こんにちは。なんとなく見かけちゃったかたもこんにちは。

今回、タイトルを書くのに躊躇したので恋にしました(笑)
最初「無機物に恋するという事」にしてたんだけど、よく考えたら有機物だったので無機物だけ外しました。
今までだったら「セグウェイに乗ってきました。」だの、「仙台空港に着陸してきました。」だの、温泉いい湯加減だったよ感覚のタイトルになったわけですが。

今回はマジパネェっすよ。(←「聖☆おにいさん」のペトロとアンデレ風味)
そのへんのヌルい温泉とは違います。冬でも夏でもガッツリ猛烈に暑い飯坂温泉のお湯のような…だから温泉の湯加減じゃなくて。
牛の友人諸氏、及び偶然目にしてしまった皆様、最初にお詫びしておきます。
ごめんなさい。
牛が…牛ごときが…ただの白黒の偶蹄目がこんな機会に恵まれるなんて身の程知らずと思われるかもしれません。
が、この情熱と好奇心と深い愛は誰にも負けないつもりなのです。

このヒトに乗せてもらってきました。

Sany0057

よく見えない?
しょうがないなぁ、モウ。

Sany0049

Pitts Special。
ふくしまスカイパークで出会い、淡い想いをよせていた美しい複葉機。
乗っている方はずいぶん熱心に練習していらっしゃるなと思いつつ、スカイパークに行くたびに空を舞う姿を見かけていました。
今回、その方…MikeWhiskyさんのご好意によって牛はPittsに乗せていただく事になった、という事です。

Pittsに乗れる。
Pittsに乗れる。
Pittsに乗れる。
Pittsに乗れる。(以下繰り返し)

牛の人生にいったい何が起きたのか。
ええ、そうですよ、にわかには信じ難いこの事実。
「物」と恋に落ちるのは牛の特技(というか病気)ですが、インプレッサwをはじめとして、漆黒のThinkPad、マツネシリ民芸店のアイヌ文様のかんざし、アルファロメオ155、琥珀、ローゼンバウアー社の消防車、ブラリーノさんの999R、JUKAなどなど…今まで恋に落ちた相手を思えば、今回だって何の不思議も無い。
(最初の2つが並んでいる段階で牛のカオスっぷりが。)

だがしかし。
今回は非常に中毒性が高くて牛も困ってます。
いえ、浮気じゃありませんよ。インプレッサwへの愛にはいささかの変化もありません。
それにインプレッサwならわかってくれているはず、長い付き合いだし。
このヒコウキ、たたずむ姿は牛が昔かわいがっていた三つ尾金魚みたいで可愛らしいのに、大地を離れたその瞬間、その音と姿と挙動は牛の心を捉えて離してくれません。

Sany0046

もちろん、相手はタダモノではないのでポンと乗れるわけじゃありません。
Mikeさんは牛がPittsに乗っても大丈夫かよくよく考えてくれてたみたいです。
経験した事の無いGでパニックに陥ると、目の前にある操縦桿にしがみついてしまうヒトもいるんだそうです。
Pittsは前後に座席が並んでいて牛は前に乗る事になるんですが、こちらにも操縦桿とペダルがあるわけです。
飛んでいる間に牛がそれらの動きを妨げてしまったら大変な事になるわけで。
まずはエアロスバル-FA200で仙台空港から山形空港に連れて行ってもらったり、ふくしまスカイパークへ行ってみたり。
FA200での水平飛行、ちょっとした急旋回は全く問題なくEnjoy。(というより、6連星のついたエアロスバルに乗るだけでも牛は大感激!)
しかもSUGO上空でロードレース選手権観戦という素敵オプション付き。もちろん走行中のマシンは点のようだけど、コーナーで競ってたりストレートでものすごい速度になってるのがわかります。ヒコウキから「バイクって速いですねぇ」とw 楽しかったぁ♪

Pittsに乗る前日、今までの経験に照らして一生懸命似たものを考えてみました。

「横転したラリーカーのオンボード画像なら何回転がったか数えられる」
→これ、自分転がってないもんなぁ。
「富士急ハイランドでフジヤマに乗った時は、動き出す前から両手を上に上げて一度もバーにつかまらずに乗り終えた」
→ちょっと近くなってきたかも。
「パラグライダーでアクロやってもらった時はうれしくてウヒャヒャヒャヒャ」
→結構いけそうな気がしてきましたよ(笑)

当日。

朝、Mikeさんと仙台空港で待ち合わせ。
空はなんだか白くってあまりコンディションは良くなさそう。ぜんぜん見えないじゃん…。
今日はダメかなぁ、と半ば諦めつつハンガーへ向かいます。

Sany0052

仙台の空を舞うPittsを、実はまだ見た事がありませんでした。
週末はヒマさえあればスカイパークに行っていたし、何より仙台空港周辺へ行く事が…通っていた乗馬クラブ「スズキランチ」がなくなってしまってからは、草ばかりが元気に生えた馬場を見るのが切なくて、行かなくなっていたから。
ジーナとハヤテは無事新しい地へ旅立ったようだけれど、牛を育ててくれた彼女達に会えなくなってしまったのは、牛の毎日に少なからず影響してました。
そうだった、Mikeさんとは彼女たちの件でもお話した事があったっけ。

注意をよぅく聞いて、パラシュートの装着方法を教えてもらい、愛しいPittsを蹴飛ばさないようにゆっくり乗り込んで、実際にシートに座ってベルトの締め方を教わって。
ベルトは7点式。逆さまになっても平気なように固定しなきゃいけないんだ。
カチャリ、カチャリと金具を締めて、最後はラチェットでお尻をむぎゅむぎゅ動かしても動けないくらいまで締め上げる、と。
座った状態でスティックとペダルを動かしてもらい、操縦のジャマにならない範囲を確認して牛の足の置き位置を覚えます。キャノピー閉めるとつかまるところは無し。
足の位置を変えないようにするのと、とっさに手が出ないように手は自分の膝の裏あたりを掴んでおくことにします。

その後、上空の様子を見つつ「スカイパークまでは行けないけど仙台空港の周りなら大丈夫」ということで、いざ!

あれ?さっき教わったばかりのパラシュートの装着方法が???…う。それで気づいちゃった。
牛、緊張してる。
滅多なことでは緊張しない(その代わり終わった後に緊張する)タチの牛が。
だって、Pittsに乗ってるんだもん。
スカイパークで見かけるたびにいつもいつも見上げてたあのPittsに、何故、どうして自分が乗っているのか。
怖い?ううん、怖いんじゃない。
Mikeさんとはいろいろと話をしたけれど、牛は信頼してる。
パラグライダーの時もそうだった。飛ぶ前にお話させてもらってたからこそ心から楽しめた。
あらゆるヒトと出会って牛が心に刻むもの。
それはそのヒトの、物事に対峙する時の姿勢。
ドライバー、ライダー、メカニック、木彫り職人、鍼灸師、串焼屋だってそうだ。
ムツカシイ言葉じゃなくても、会話しているとそういったものが伝わってくる。
会話じゃなくてもいい。その対象へ注がれる視線、空気。
たとえどんなにふざけてたって、ある一瞬ピリッと伝わる何か。
それが、それこそが牛の見たい世界そのもの。
だからこの緊張は恐怖じゃない。
その世界を垣間見る事ができる喜び、畏敬の念だ。
そう思える瞬間、緊張は心地よい期待に変わる。

尾輪式のヒコウキは、乗ると既に空を見上げる状態になってます。
薄い雲が広がる仙台空港上空の青空。
前方は見えないし、横ばかり向いていると気持ち悪くなるかもしれないので、タキシングの間も牛はずっと空ばかり見てました。
後ろからこまめに声をかけてくれるMikeさん。
管制とのやりとり。

ああ、YさんやSっちゃんが牛をここに繋いでくれたんだなぁと思いながら、背中にGを感じた後。

ゆるい弧を描く二ノ倉の波打ち際、細く伸びる貞山堀、阿武隈川と田園風景。
…………………………飛んでる!
エアロスバルじゃなくPittsで!!!

当初、Mikeさんは水平飛行だけにしようと言ってましたが、モウうれしくて言葉も無く笑い顔の牛に「ちょっと背面飛行してみようか?」と。

   (゜▽゜*)
     ↓
  /(。△。*)
     ↓
ヽ(+∇+)ノ

「大丈夫?」「ハイ♪」「じゃループね」

(^_^) (^-^) ( ^ ) (。 。) (・_・) (^▽^)

牛、形容詞喪失。
無条件完全幸福。

キャノピー越しに広がる景色…空が、山が、牛の頭上を流れて、なんて鮮やかに見えるんだろう!
ああ、大地が牛の頭の上にあるッ!!

ループの間、牛は胸の前で手を合わせてうっとりしてました。
もちろん、それほど強烈なGがかかるようなマニューバではないからですが(あ、最初のアレは牛の中でノーカウントになってるので大丈夫ですw)、とにかくその景色を、一瞬たりとも見逃したくなくて。
♪瞬きする事も惜しむような…ああそうだ、きっとこのヒトもまた旅人なのだ。

少し傾げて滑走路へ戻るPitts。ランディングの様子はスカイパークで何度も見てるけど、Pittsからはこんなふうに見えるんだぁ。
地上に降りた後、牛は感動のあまり言葉がありませんでした。
わかるでしょう?本気で感動すると言葉なんて出てこないんです。

Sany0084

Pitts S2B。
アイヌモシリの空を行くピリカチカプ。
あの音が、Gが、流れた景色の記憶が今もまだ牛の血液の中に残っていて、眠る前によみがえります。
あれから数日の間、牛は食事もろくに取れず、ずっとPittsの写真を見つめてました。ため息をついては空を見上げる毎日。これってやっぱり恋でしょ?(笑)

近頃の牛の毎日はとてもエキサイティングで、ジェットコースターみたいにいろんな事がおきてます。
だけど大丈夫。Pittsから出てきた1セント硬貨をお守りにして、空を見上げたら牛はいつも元気です。

牛をMikeさんに引き合わせてくれたYさん。本当にありがとね。
牛の興奮を分かち合ってくれるSっちゃん、牛は幸せモノです。

もちろんPittsとMikeWhiskyさんにありったけの感謝と敬意を。
そして祈りを。
レラカムイがいつも見守ってくれますように。