monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

雪如花(ゆきはなのごとし)

2013年12月24日 | 日本古典文学-和歌-冬

霜枯れの籬のうちの雪みれば菊より後の花もありけり(千載和歌集)

霜がれの枝となわびそ白雪のきえぬかぎりは花とこそみれ(後撰和歌集)

松の葉にかかれる雪のそれをこそ冬の花とはいふべかりけれ(後撰和歌集)

雪ふれば冬ごもりせる草も木も春にしられぬ花ぞ咲きける(古今和歌集)

庭のおもに散るかと見れば梢にもいまをさかりと雪の花かな(邦高親王御百首)

夜もすがら降りつむ雪の朝ぼらけ匂はぬ花をこずゑにぞ見る(新後撰和歌集)

木にもあらず草にもあらで咲く花や竹のさ枝にふれる白雪(新後拾遺和歌集)

梅が枝(え)にわきて降らなむ白雪は春よりさきの花と見るべく(玉葉和歌集)

雪ふれば木々のこのはも春ならでおしなべ梅の花ぞ咲きける
梅ははや咲きにけりとて折れば散る花とぞ雪のふれば見えける(和泉式部日記)

梅がえにふりをける雪を春近みめのうちつけに花かとぞみる(後撰和歌集)

年のうちに咲ける花かと梅が枝を折れば袂にかかる白雪(玉葉和歌集)

冬ながら空より花の散りくるは雲のあなたは春にやあるらむ(古今和歌集)

春ちかく成りぬる冬のおほ空は花をかねてぞ雪は降りける(続古今和歌集)

白雪のふりしく時はみよし野の山した風に花ぞちりける(古今和歌集)

春ならぬ花もみよとや三吉野の玉松がえにふれる白雪(玉葉和歌集)

にほの海やつりするあまのころもでに雪の花ちる志賀の山風(千五百番歌合)

さらにまた花の春にぞなりにける志賀の山ぢの雪のあけぼの(正治初度百首)

(2011年12月30日の「雪如花(ゆきはなのごとし)」の記事は削除しました。)

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古典の季節表現 冬 雪

2013年12月23日 | 日本古典文学-冬

夜をさむみ朝戸をあけてわがみれば庭しろたへにあは雪ぞ降る(秋萩帖)

雪歌に 従三位盛親
夕暮のみそれの庭やこほるらん程なくつもる夜半の白雪
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 藤原朝定
さゝの葉のうへはかりにはふりをけと道もかくれぬ野への薄雪
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

山家初雪
春の花秋の月にもおとらぬはみやまのさとの雪のあけぼの
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

雪満衣といへる心を 法皇御製
けぬかうへにつもらは積れ降雪のみのしろ衣うちもはらはし
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

雪の歌とて読侍ける 右のおほいまうち君
山さとのかきねは雪に埋れて野へとひとつに成にける哉
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

見わたせは今はたおなし草も木もわかすつもれる野への雪かな
(建長八年九月十三日・百首歌合~日文研HPより)

雪を 法皇御製
白妙の色より外の色もなしとをき野山の雪の朝あけ
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

宝治元年十首歌合に、野外雪 後嵯峨院御製
いとゝ又かきりも見えす武蔵野やあまきる雪の曙の空
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

後九条内大臣家百首歌に、嶺樹深雪といふことを 藤原隆祐
雪おれの音たに今朝は絶にけり埋れ果る峰の松原
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

ゆくさきもすきゆくかたもみえぬかなふふきにまよふたにのほそみち
(建仁元年十首和歌~日文研HPより)

雪の歌とて読侍ける 右近大将実房
あともたえしほりも雪に埋れてかへる山路にまよひぬるかな
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 後鳥羽院御歌
鳥かへる谷のとほそに雪ふかし爪木こるおの道や絶南
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

山路雪を 侍従行家
ふみ分る我よりさきの跡をみは雪そ山ちのしほりならまし
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 源有長朝臣
誰か又おなし山路をたとるらんこゆれはうつむ跡の白雪
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

行路雪といへる心を読る 西住法師
こまの跡はかつふる雪に埋れてをくるゝ人や道まとふらん
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

おなし心(野径雪)を 前大納言実教
旅人のあさたつ後や積るらん跡こそ見えね野への白雪
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

亀山殿の千首歌に、雪 前大納言実教
我よりも先立人やまよふらん跡さたまらぬ野への白雪
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

行路雪を 藤原為守
旅人のさきたつ道はあまたにて跡なきよりもまよふ雪かな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

家々のかきねのたけもうづもれてたが里わかぬ今朝のしらゆき(光経集)

山家雪朝といへる心をよめる 大納言経信
朝戸あけて見るそさひしきかた岡のならのひろはにふれる白雪
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

野亭雪をよみ侍ける 藤原国房
さひしさをいかにせよとてをかへなるならのはしたり雪のふる覧
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

あさぼらけすすきおしなみふる雪にげにさびしさは冬のやまざと(光経集)

正治二年石清水若宮歌合に 藻壁門院但馬
さらぬたに人めかれ行山里に物さひしかる庭のしら雪
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

雪歌中に 前中納言俊光
ふみわけし昨日の庭の跡もなくまたふりかくす今朝の白雪
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

百首歌の中に雪をよめる 皇后宮肥後
道もなくつもれる雪に跡たえてふる里いかにさひしかるらむ
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

古渓雪をよみ侍ける 中宮大夫通方
谷ふかみ雪のふる道跡たえてつもれるとしをしる人そなき
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

吉野山にて雪の降る日よませ給ひける 吉野の女院
踏み分けて来る人あらば問ひてまし都もかくや雪積もるらん
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

百番歌合に、山雪を 永福門院
鳥の声松の嵐の音もせす山しつかなる雪の夕くれ
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬のころ、小野に移ろひ給ひけるに、日ごろ心もとなかりける雪、かき暗し降りて、風の音もいとはげしければ 目も合はぬの右大臣
山深く今日慣れそむるあらしよりやがて激しく荒るる雪かな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

四十九院の岩屋のもとにゐたる夜、雪のいみしうふり風のはけしく吹侍けれはよめる 増基法師
浦風にわか苔衣ほしわひて身にふりつもる夜はの雪哉
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

雪のふりけるに
花とみる梢の雪に月さえてたとへむ方もなき心地する
(山家集~岩波文庫)

にはもせのはなのしらゆきかせふけはいけのかかみそくもりはてぬる
(拾遺愚草員外_定家~日文研HPより)

冬池雪
冬の池のはすの朽はも雪に又にこりにしまぬ花や開(さ)くらん
(草根集~日文研HPより)

題しらす 小侍従
かき曇あまきる雪のふる里をつもらぬさきにとふ人もかな
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

禁中雪と云る事を 藤原秀長
花ならぬ雪にもつらし朝きよめまた心あれともの宮つこ
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

たいしらす 和泉式部
まつ人のいまもきたらはいかゝせむふまゝくおしき庭の雪哉
(詞花和歌集~国文学研究資料館HPより)

文保百首歌奉りける時 権中納言公宗母
しはしなといとはさりけん問人の跡よりきゆる庭の白雪
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

弘長百首歌奉りける時、雪 衣笠内大臣
しられしなとはぬを人の情とは我こそみつれ庭の白雪
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

高陽院家歌合に 康資王母
ふみみけるにほの跡さへおしき哉氷のうへにふれるしら雪
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

延文百首歌に、雪を 後深心院前関白左大臣
ふみ分てとひくる程はいとはぬを帰る跡こそ雪におしけれ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

雪歌の中に 前大納言為世
ふみわけん我跡さへに惜けれは人をもとはぬ庭の白雪
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

十二月廿日比に雪のいたくふりたりしにつとめてもくのさきのかみ俊頼の君前の兵衛佐顕仲かもとにおなし歌をやりて侍し
雪ふれはふまゝく惜き庭の面をたつねぬ人そ嬉しかりける
俊頼のきみかへし
我心雪けの空にかよへともしらさりけりなあとしなけれは
あきなかのきみ
人はいさふまゝくおしき雪なれと尋てとふは嬉しき物を
(六条修理大夫集~群書類従)

雪のふりけるに、跡こそみえすとも心はかよふとしれ、と申て侍ける人の返事に 法印長舜
かよふらん心もいさやしら雪の跡みぬ程はいかゝたのまん
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

雪のあしたに、源義行かもとへ申つかはしける 前参議能清
ふみ分る跡こそなけれ心たにかよはぬ宿の庭のしら雪
返し 源義行
踏わけん庭には跡の惜けれは雪より外の道や尋ねん
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

依雪待人といへる事を 今上御製
跡つけぬ程をも見せん庭の雪人のとふまてきえすもあらなん
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

庭雪を 藤原隆祐朝臣
とへかしな跡もいとはてまたれけりまた空晴ぬ庭の白雪
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 権中納言兼信
こぬ人も今朝は恨し我たにも跡つけかたき庭の白雪
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 権僧正道我
問人の跡さへやかてうつもれてかこつかたなき庭のしら雪
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 三善遠衡朝臣
よしさらは人とはすとも庭の面に跡なき雪を独こそみめ
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

嘉元百首歌奉りける時 贈従三位為子
跡おしむわかならはしにいひなさんさのみとはれぬ庭の白雪
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 法眼行済
とはてふる日数のみこそつもりけれけふも跡なき庭のしら雪
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 平時茂
まつ人のとはぬ日数やつもるらむ跡たえはつる庭の白雪
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

貞和百首歌たてまつりける時 前左兵衛督直義
けふいくか問人なしに跡たえて雪にこもれる宿のさひしさ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

見れば小柴をしたる。そのあなたにをかしき女房わらはべなど見え侍り」といへば、たれも「をかしのことや」とて、しばし車をやりとゞめてやをら下りて、立てたる門(かど)をおし開けて、小柴のもとにて見れば、わらはのきよげなる二三人、雪をとかくもてあそぶ。内にも人あるべし。簾(すだれ)を少し引き上げたる人、かたちいときよらなり。
例の色なる人の心どもは、「いかで見つと知らせてしがな」とて、左少将資盛、笄(かうがい)の先して書きて、
 雪降ればふるさと寒く成りにけり すむ人さへやさびしかるらむ
とて、こと人は立ち隠れて、有盛の朝臣して取らせつ。さて聞けば、小さきわらはの簾(す)の本(もと)に寄りて、「あそこにうつくしげなる殿のおはしつるが、「まゐらせよ」とて、これをなむたびたる」といへば、内の人、「おぼつかなく、見る人のありけるにや」などいふ。
さて白き薄様のえならぬに、書きて出(いだ)したり。
 白雪の降るにつけても山里に ふみわけてとふ人をこそ待て
墨つき、筆の流れ、よしあるを、思ひの外にをかしう思ふ。(略)
(平家公達草紙~岩波文庫・建礼門院右京大夫集)

冬の果てつ方、雪のいみじう降る日、人がりやる
ふりはへて誰はた来(き)なんふみつくる跡みまほしき雪の上かな
(和泉式部集~岩波文庫)

ささたけの野へのふるみちまよふとも雪ふみならしとふ人もかな
(宝治元年九月・院御歌合~日文研HPより)

題しらす 権中納言宗経
問人の跡こそあらめ松風の音さへたゆるやまのしら雪
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

大納言忠頼の七十賀の屏風に、山に雪高う降れる家ある所 よみ人知らず落窪
雪深く積もりて後は山里にふりはへて来る人のなきかな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

題しらす かねもり
山里は雪ふりつみてみちもなしけふこん人をあはれとはみむ
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

はなのはるつきのあきこそこひしけれゆきにひとこぬふゆのやまさと
(正治二年初度百首~日文研HPより)

題しらす 祐盛法師
ふる雪に往来の道も跡たえていくかになりぬ小野の里人
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

雪の朝(あした)にあはれといふことを置きて、歌あまたよみける中に ふたよの友の上人
道絶ゆることや憂からむ降る雪をあはれと見ても人のまたれば
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

道とちて人とはすなる山郷のあはれは雪にうつもれにけり
(西行法師家集~日文研HPより)

文保三年、後宇多院に奉りける百首歌の中に 権中納言公雄
庵結ふ山路の雪も年ふりてうつもるゝ身は問人もなし
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

ふりすさむこのゆふくれのゆきのいろにこころをとめてひとりみるかな
(嘉元百首~日文研HPより)

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古典の季節表現 冬 冬の夜

2013年12月21日 | 日本古典文学-冬

 忍びたるところにありては、夏こそをかしけれ。(略)
 また、冬の夜。
 いみじう寒きに、埋もれ臥してきくに、鐘の音の、ただものの底なるやうにきこゆる、いとをかし。
(枕草子~新潮日本古典集成)

冬御歌の中に 章義門院
床さえてねられぬ冬の夜をなかみまたるゝ鐘の音そつれなき
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬の夜の月は、人に違ひてめでたまふ御心なれば、おもしろき夜の雪の光に、折に合ひたる手ども弾きたまひつつ、さぶらふ人々も、すこしこの方にほのめきたるに、御琴どもとりどりに弾かせて、遊びなどしたまふ。
(源氏物語・若菜下~バージニア大学HPより)

千五百番歌合に 宜秋門院丹後
冬の夜はあまきる雪に空さえて雲の波路にこほる月かけ
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬の歌中に 平政長
かくはかり身にしむ色は秋もあらし霜夜の月の木からしの風
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

ふかくさのうつらのとこもあらはにてかれのにさひしふゆのよのつき
(為兼家歌合~日文研HPより)

題知らず 妻恋ひかぬる三位中将
嘆きわびうち寝(ぬ)る床の寂しきにあはれを添ふる冬の夜の月
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

冬歌の中に 権大納言公蔭
吹とをす梢の風は身にしみてさゆる霜夜の星きよき空
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬御歌の中に、雪を 院御製
ほしきよき夜半のうす雪空晴て吹とをす風を梢にそきく
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

星きよき梢の嵐雲はれて軒のみ白きうす雪の夜半
(光厳院御集)

いましはやしもおくらしもさよふけてほしのひかりのまとにさやけき
(為兼家歌合~日文研HPより)

みやまへのおくのかよひちいかならむあられたはしりさむしこのよは
(正治初度百首~日文研HPより)

よをさむみあられたはしるやまさとはこけのむしろにねさめをそする
(堀河百首~日文研HPより)

久安百首歌に、霰 左京大夫顕輔
さらぬたにね覚かちなる冬の夜をならの枯葉に霰ふる也
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

女院行方知らで嘆きけるころ、木枯し荒くしぐれうちして、また吹き返し、あられの音おどろおどろしきを聞きて 末葉の露の右大臣
恋ひわぶる冬の夜すがら寝覚めして時雨が上のあられをぞ聞く
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

冬歌とてよみ侍ける 守覚法親王
むかし思ふさ夜のねさめの床さえて涙もこほる袖のうへかな
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 増基法師
冬の夜にいく度はかりねさめして物思ふ宿のひましらむらん
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

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古典の季節表現 冬 霰(あられ)

2013年12月20日 | 日本古典文学-冬

建保五年内裏歌合に、冬野霰 正三位知家
花すゝきかれのゝ草の枕にも玉ちるはかりふるあられかな
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

野径霰を 藤原為冬
分ゆけは野へのを篠のうへよりも袖にたまらて降霰かな
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬ざれのをののしの原うちそよぎ雪げの雲に霰ふるなり
(永享百首~新編国歌大観 第四巻)

野外霰と云事を 如法三宝院入道前内大臣
霜こほる野へのさゝ原風さえてたまりもあへすふる霰かな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

前内大臣家百首歌合に 土御門院小宰相
はかなくもひろへはきゆる玉さゝの上にみたれてふるあられかな
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

たいしらす よみ人しらす
かきくらしあられふりしけ白玉をしける庭とも人のみるへく
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

いたまよりあられもりくるわかやとはぬきみたれたるたまそちりける
ふるさとのまきのいたとのつまひさしあられたはしるふゆそさひしき
(堀河百首~日文研HPより)

霰を 権僧正永縁
冬の夜のね覚にきけはかた岡のならの枯葉に霰ふるなり
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

夜を寒み竹吹く風は音さえて寝ざめの窓に霰をぞ聞く
(伏見院御集)

暁更霰
あり明の庭の木の葉に玉霰ひとつふたつそ落ちてさひしき
(草根集~日文研HPより)

題しらす 馬内侍
ささのはにあられふる夜のさむけきにひとりはねなん物とやはおもふ
(千載集~日文研HPより)

竹の葉にあられ降るなりさらさらに独りは寝(ぬ)べき心地こそせね
(和泉式部続集~岩波文庫)

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古典の季節表現 冬 十二月

2013年12月15日 | 日本古典文学-冬

十二月ついたちごろなりしやらん、夜に入りて、雨とも雪ともなくうち散りて、むら雲さわがしく、ひとへに曇りはてぬものから、むらむら星うち消えしたり。ひきかづき臥したる衣(きぬ)を、ふけぬるほど、(略)ひきのけて、空をみあげたれば、ことに晴れて、浅葱色なるに、ひかりことごとしき星のおほきなる、むらなく出でたる、なのめならずおもしろくて、花の紙に箔をうち散らしたるによう似たり。こよひはじめてみそめたる心ちす。さきざきも星月夜みなれたることなれど、これはをりからにや、ことなる心ちするにつけても、たゞ物のみおぼゆ。
月をこそながめなれしか星の夜のふかきあはれをこよひしりぬる
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

 雪のいたう降り積もりたる上に、今も散りつつ、松と竹とのけぢめをかしう見ゆる夕暮に、人の御容貌も光まさりて見ゆ。(略)
 月は隈なくさし出でて、ひとつ色に見え渡されたるに、しをれたる前栽の蔭 心苦しう、遣水もいといたうむせびて、池の氷もえもいはずすごきに、童女下ろして、雪まろばしせさせたまふ。
(源氏物語・朝顔~バージニア大学HPより)

 師走の十余日のほどに、雪いみじう降りたるを、女官どもなどして、縁にいと多く置くを、
 「おなじくば、庭に、まことの山をつくらせはべらむ」
とて、侍召して、仰せ言にていへば、集まりてつくる。主殿の官人の、御きよめにまゐりたるなども、みな寄りて、いと高うつくりなす。宮司などもまゐり集まりて、言加へ興ず。三、四人まゐりつる主殿寮のものども、廿人ばかりになりにけり。里なる侍、召しにつかはしなどす。
 「今日、この山つくる人には、日三日賜ぶべし。また、まゐらざらむものは、またおなじ数とどめむ」
などいへば、ききつけたるは、まどひまゐるもあり。里遠きは、得告げやらず。
 つくりはてつれば、宮司召して、絹二結とらせて、縁に投げ出だしたるを、一つ取りに取りて、拝みつつ、腰に挿して、みなまかでぬ。袍など着たるは、さて、狩衣にてぞある。
 「これ、いつまでありなむ」
と、人々にのたまはするに、
 「十日はありなむ」
 「十余日はありなむ」
など、ただこの頃のほどを、あるかぎり申すに、
 「いかに」
と、問はせたまへば、
 「睦月の十余日までははべりなむ」
と申すを、御前にも、「得さはあらじ」と思しめしたり。女房はすべて、
 「年のうち、晦までも、得あらじ」
とのみ申すに、「あまり遠くも申しつるかな。げに、得しもやあらざらむ。『朔』などぞ、いふべかりける」と、下には思へど、「さばれ。さまでなくとも、いひそめてむことは」とて、固うあらがひつ。
 廿日のほどに、雨降れど、消ゆべきやうもなし。すこし、たけぞ劣りもてゆく。
 「白山の観音、これ、消えさせたまふな」
など祈るも、もの狂ほし。
 さて、その山つくりたる日、御使に、式部丞忠孝まゐりたれば、茵さし出だして、ものなどいふに、
 「今日、雪の山つくらせたまはぬ所なむなき。御前の壼にもつくらせたまへり。春宮にも、弘徽殿にも、つくられたり。京極殿にも、つくらせたまへりけり」
などいへば、
  ここにのみめづらしと見る雪の山ところどころにふりにけるかな
と、かたはらなる人していはすれば、たびたびかたぶきて、
 「返しは、つかうまつり汚さじ。あ、されたり。御簾の前にて、人にを、語りはべらむ」
とて、起ちにき。歌いみじう好むときくものを、あやし。御前にきこしめして、
 「『いみじうよく』とぞ思ひつらむ」
とぞ、のたまはする。
 晦がたに、すこし小さくなるやうなれど、なほ、いと高くてあるに、昼つかた、縁に人々出でゐなどしたるに、常陸のすけ出で来たり。(略)
(枕草子~新潮日本古典集成)

比は十二月十日餘の事なれば、雪降積り、つらゝいて、谷の小川も音もせず、峯の嵐吹凍り、瀑の白絲垂氷と成り、皆白妙に押竝べて、四方の梢も見え分かず。
(平家物語~バージニア大学HPより)

雪ばかり主(あるじ)げに降り積みたる庭の面(おも)、はるばると心ぼそげなるを、(略)
(狭衣物語~岩波・日本古典文学大系)

 しはすに月のあかき夜きゝに雪のふりかゝりたるを
月影は花の色かとみゆれともまたふるとしの雪にさりける
(赤染衛門集~群書類従15)

 師走になりぬ。横川にものすることありてのぼりぬ。「人雪にふりこめられていとあはれにこひしきことおほくなん」とあるにつけて
こほるらんよがはのみづにふるゆきもわがごときえてものはおもはじ
などいひてそのとしはかなくくれぬ。
(蜻蛉日記~バージニア大学HPより)

前大納言公任なが谷に住みける比、十二月ばかり言ひつかはしける 中納言定頼
故郷の板間の風に寝覚つつ谷の嵐を思ひこそやれ
返し 前大納言公任
谷風の身にしむごとにふる郷の木のもとをこそ思ひやりつれ
(続詞花和歌集~校註国歌大系)

おもひすてにしうき世ぞかしと思へども、なれこし宮のうちも恋しく、をりをりの御なさけも忘られたてまつらねば、ことのたよりには、まづ、こととふ袖の涙ぞ色ふかく侍る。雪さへかきくらしふりつもれば、眺めのすゑさへ、道たえはつる心ちして眺めゐたるに、あるじの尼君がかたより、「雪のうちいかに」と申したりしかば、
  おもひやれうきことつもるしら雪のあとなき庭にきえかへる身を
(問はず語り~岩波文庫)

 雪いたう降りて、まめやかに積もりにけり。(略)
 梅の花の、わづ かにけしきばみはじめて雪にもてはやされたるほど、をかしきを、御遊びなどもありぬべけれど、なほ今年までは、ものの音もむせびぬべき心地したまへば、時によりたるもの、うち誦じなどばかりぞせさせたまふ。
(源氏物語・幻~バージニア大学HPより)

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