あさましやこよみのおくをけふみれはひとくたりにもなりにけるかな
(実国家歌合~日文研HPより)
年のおはりにこよみのちくのもとまてまきよせたるこゝろを人々よむに
まきよするこよみの心恥しくのこりのひらにおいみえに鳧
(恵慶法師集~群書類従15)
つきよめはとつきにあまりふたつきのみそかになるはこよひなりけり
(堀河百首~日文研HPより)
斎院の御屏風に、十二月つこもりの夜 かねもり
かそふれはわか身につもるとし月をゝくりむかふとなにいそくらん
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
百首歌奉し時 関白右大臣
今年また暮ぬと思へは今更に過し月日のおしくも有かな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
としのくれによみ侍ける 基俊
いつくにもおしみあかさぬ人はあらしこよひはかりの年と思へは
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
としくれてこよひはかりやあしかきのまちかきはるのへたてなるらむ
(正治初度百首~日文研HPより)
しはすのつこもりあはれなることともおもひつゝけてうちもまとろまぬにかねのをといと心ほそし
春ちかきかねのひゝきのさゆる哉今宵はかりと霜やをく覧
(兼好法師集~群書類従15)
とにかくに身にもおぼえぬ年暮れてなやらふ夜にもなりにけるかな
(後小松院御百首)
あらたまのはるをむかふるとしのうちにおにこもれりとやらふこゑこゑ
(正治後度百首~日文研HPより)
もろひとのなやらふおとによはふけてはけしきかせにくれはつるとし
(拾遺愚草員外~日文研HPより)
雪中歳暮 前右兵衛督為教
道もなく降つむ雪はうつめとも暮行としはとまりやはする
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
年の暮によめる 我が身にたどるの皇后宮の宰相
雪降りて暮れゆく年の数ごとに昔の遠くなるぞ悲しき
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
年のはてに鏡を見て
白雪をよそにのみ見てすぐせしがまさに我が身につもりぬるかも
(良寛歌集~バージニア大学HPより)
こもりゐて侍けるとしの暮によめる 前左衛門督公光
さりともと歎々て過しつる年もこよひに暮はてにけり
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
世をそむきて後、山里に住侍けるに、年のくれていほりのまへの道を樵夫とものいそかしけに過侍けれは 藤原為基朝臣
山人の軒端の道にいそかすはしらてや年の暮を過まし
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
ふるとしはこよひはかりになりにけりわかみのはてもいつとしらはや
(夫木抄~日文研HPより)
蔵人の源少将、つごもりの夜、御読経の後、内裏よりまかでてかく聞こえたり。
うかりける年さへけふにとぢむればいつを思ひのはてといふべき
御返りなし。
(うつほ物語~新編日本古典文学全集)
女の思ひにて読侍ける 前大納言忠良
さめやらて哀夢かとたとるまにはかなく年のくれにける哉
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
女の思ひにて侍りけるに、年の暮れ果てぬるも驚かれて 夢語りの前関白
年暮れて憂かりし日をば隔つれどありしにまさる我が涙かな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
妻の身まかりてのとしのしはすのつこもりの日、ふることいひ侍けるに 兼輔朝臣
なき人のともにしかへる年ならはくれ行けふはうれしからまし
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
師走の晦の夜
なき人の来る夜と聞けど君もなしわが住む里や魂(たま)なきの里
(和泉式部続集~岩波文庫)
ことしいたうあるゝとなくてはだらゆき二度許ぞふりつる。すけのついたちのものどもまたあをむまにものすべきなどものしつるほどにくれはつる日にはなりにけり。明日の物をりまかせつゝ人にまかせなどしておもへばかうながらこひつゝけふになりにけるもあさましう、御魂 などみるにもれいのつきせぬことにおぼほれてぞはてにける。年のはてなれば夜いたうふけてぞたゝきくなる
(蜻蛉日記~バージニア大学HPより)
つき日はさながらおにやらひきぬるとあればあさましあさましとおもひはべるもいみじきに人はわらはおとなともいはず「なやらふなやらふ」とさわぎのゝしるをわれのみのどかにてみきけば、ことしも心ちよげならんところのかぎりせまほしげなるわざにぞ見えける。ゆきなんいみじうふるといふなり。としのをはりにはなにごとにつけてもおもひのこさざりけんかし。
(蜻蛉日記~岩波文庫)