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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

をだまき(苧環)・をだま(苧玉)

2021年07月28日 | 日本古典文学-人事

むかし、ものいひける女に、としごろありて、
いにしへのしづのをだまきくりかへしむかしをいまになすよしもがな
といへりけれど、なにともおもはずやありけむ。
(伊勢物語~バージニア大学HPより)

わかこひは-はしめもしらす-しつのめか-あさのをたまき-すゑのみたれに
(夫木和歌抄- 知家~日文研HPより)

しのふるは-くるしきものを-いやしきも-おもひみたるる-しつのをたまき
(洞院摂政家百首~日文研HPより)

(こひのうたのなかに) 土御門院御歌 
恋をのみ/しつのをた巻/いやしきも/思ひはおなし/涙なりけり 
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより) 

ちきりこそ-なほかたいとの-みたるとも-あはすはたゆな-たまのをたまき 
(弘長百首-家良~日文研HPより)

やむことなき女のもとにつかはしける 前中納言匡房 
くりかへし/思ふ心は/ありなから/かひなき物は/しつのをた巻 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより) 

(たいしらす) 源師光 
くり返し/くやしきものは/君にしも/思ひよりけむ/しつのをたまき 
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより) 

いとはるる-みはくりかへし-なけかれて-たえぬおもひを-しつのをたまき 
(新葉集~日文研HPより)

おもはしと-おもひたへては-いくかへり-とけやらぬこひを-しつのをたまき
(明日香井集~日文研HPより)

いかにせむ-しつのをたまき-なれなれて-いまはまとほの-あさのさころも 
(壬二集~日文研HPより)

(ほりかはゐんのおほむとき、ひやくしゆのうたたてまつりけるとき、こひのこころをよめる) 中納言師時 
恋をのみ/しつのをたまき/くるしきは/あはて年ふる/思ひなりけり 
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより) 

題しらす 前大納言実冬 
恋をのみ/しつのをた巻/年をへて/又くり返し/逢よしもかな 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより) 

被忘恋の心を 前大僧正慈鎮 
思ひいつる/かひこそなけれ/くり返し/契し物を/賎のをた巻 
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより) 

 中納言、よそながら語らひける女を、つひには見るべきものに思ひて侍りけるに、親ひき違(たが)へ、こと人に付けて侍りければ、「繰り返しなほ返しても思ひ出でよかく変れとは契らざりきな」と申して侍りければ  浜松の大弐女
契りしを心一つに忘れねどいかがはすべきしづのをだまき
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

 七月七日、ときどきはきし女の、うらみたるにやる
あふことはそれならねどもたなばたにしづのをだまきながきこころぞ
(為信集~新編国歌大観7)

絶恋
手になれしむかしそつらき中たゆる契のままのしつのをたまき
(草根集~日文研HPより)

ももしきを昔ながらに見ましかばと思ふもかなししづの苧環
(夜の寝覚~「新編日本古典文学全集」)

をのことも述懐歌つかうまつりけるついてに 御製 
くり返し/しつのをたまき/いく度も/とをき昔を/恋ぬ日そなき 
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより) 

返してもくり返しても恋しきは君に見馴れし倭文(しづ)の苧環(をだまき)
(とりかへばや物語~講談社学術文庫)

夕幽思
くり返し昔にもあらぬ夕暮の色に思ひをしつのをたまき
(草根集~日文研HPより)

(たいしらす 読人不知) 
古の/しつのをたまき/いやしきも/よきもさかりは/ありし物也 
( 古今和歌集~国文学研究資料館HPより) 

されはわれ-いつのさかりの-ありけれは-こころにかかる-しつのをたまき 
(弘長百首-行家~日文研HPより)

をたまくりかけて手引し糸よりも長しや夏のくるゝ待間は
(曾禰好忠集~群書類従15)

夏夜月
手にまきてくり返すまも夏のよの月そみしかきしつのをたまき
(草根集~日文研HPより)

初雁来
あさ衣しつか手なるるをた巻のくる秋なかき夜はのはつ雁
(草根集~日文研HPより)

懐旧
くり返し世世の昔をしのふれは冬の日なかし賎のをた巻
(草根集~日文研HPより)

やまかつの-しつのをたまき-いやしきも-おのれいとなむ-としのくれかな 
(寛喜元年女御入内和歌~日文研HPより)

如何して彼人の行末を知べきと様々計けるに、母が云、其人夕に来て暁還なるに、注しをさして其行末を尋べしとて、苧玉巻と針とを与て、懇に娘に教て後園の家に帰す。其夜又彼男来れり。暁方に帰りけるに、教への如く、女針を小手巻の端に貫て、男の狩衣の頸かみに指てけり。夜明て後に角と告たれば、親の塩田大夫、子息家人四五十人引具して、糸の注しを尋行。誠に賤が苧玉巻、百尋千尋に引はへて、尾越谷越行程に、日向と豊後との境なる嫗岳と云山に、大なる穴の中へぞ引入たる。
(源平盛衰記~バージニア大学HPより)

見形厭恋
みむろ山をろちにつけしをたまきの末のちきりそたえてやみぬる
(草根集~日文研HPより)

「いで、あはれ、故大臣おはせましかば、いみじき宮と申すとも、思はむところいとほしくて、他人まぜざらましを。いと心やすしや。しづの苧環、かかるにつけても思ひ出づらむかし」と、推し量らせたまふを、(略)
(夜の寝覚~「新編日本古典文学全集」)

音羽の里をうちはじめて、尼上のさばかりにくかりしだに、しづのをだまき取り返さぬくやしさを思しつる人は、(略)
(我が身にたどる姫君~「中世王朝物語全集20」笠間書院)

賤の苧環(をだまき)ならぬ世の中ぞ、かへすがへすも恨めしう、身も浮きぬべき心地ぞする。
(八重葎~「中世王朝物語全集13」笠間書院)